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ハンナ・アーレント

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映画「ハンナ・アーレント」 平成25年10月26日公開 ★★★☆☆



1960年、ナチス親衛隊でユダヤ人の強制収容所移送の責任者だったアドルフ・アイヒマンが、
イスラエル諜報(ちょうほう)部に逮捕される。
ニューヨークで暮らすドイツ系ユダヤ人の著名な哲学者ハンナ(バルバラ・スコヴァ)は、
彼の裁判の傍聴を希望。
だが、彼女が発表した傍聴記事は大きな波紋を呼び……。(シネマ・トゥデイ)


「難しい哲学の映画が 日本で予想外に大ヒットした!」 
とニュースで聞いた記憶があります。
単館上映の岩波ホールは連日満員御礼だったとか・・・

この人物1906年生まれのユダヤ系ドイツ人。
哲学者で大学教授。
でも結婚2回していて、若いころには(私でも名前をしってる)ハイデガーと不倫関係だったとか。
なかなか波乱万丈な人生で映画にしたら面白そう・・・
とおもっていたら、ぜんぜん予想が外れました。

1960年、アルゼンチン逃亡中のナチスSSのアドルフ・アイヒマンが
イスラエルの諜報機関であるモサドにつかまり、エルサレムで裁判が行われます。
ハンナ・アーレントは、雑誌社の依頼により、
その裁判を傍聴してドイツ系ユダヤ人記者としての傍聴記録を書くことになります。

当時ハンナは54歳の哲学の教授。
彼女の家にはいつも親友の作家メアリー・マッカーシーやドイツ人の研究者連中がいつも集まっていました。
ハンナは研究者としても日々膨大な量の仕事をこないしていたのですが、
夫にも相談してこの仕事を引き受けることにします。
エルサレムでのアイヒマンの裁判の様子は法廷記録の実写フィルムで映し出されるのですが
ガラス張りの被告席にいるアイヒマンはふてぶてしい悪人顔とはかけ離れた
おどおどした小役人の姿で、
彼女によれば
「ガラスケースのなかの風邪ひきの幽霊」みたいでした。そして、
「命令にしたがってやっただけ」を繰り返すばかり。

帰国後、出版社のたびたびの催促にもかかわらず、なかなか書きあがらないのですが
ようやく脱稿。
彼女は「ザ・ニューヨーカー」誌の5回分の連載を一気に書き上げました。

これが(ある程度は覚悟のうえ出したのですが)発売直後からものすごい反論とバッシングを受け、
「地獄へ堕ちろ、ナチのクソ女!」といった罵倒を浴びせられることとなります。

問題となったのは2点。
①上官の命令に従ったアイヒマンの行為は「根源的悪」ではなく、「悪の凡庸」である。
これは思考が停止して判断することが出来なくなった状態で、協力と抵抗の中間にある。
そこには信念も邪心も存在しない。
②ユダヤ人指導者のなかにも、ナチスに協力的な人はいて、それが犠牲者の数をふやす原因となった。
これは事実である。

本が一冊書けるほどの分量の記録ですから、他にもいろんなことを書いているはずなのですが、
この部分だけが強調されて伝わり、彼女は
「殺人鬼アイヒマンを擁護し、ユダヤ人を誹謗する裏切り者」といわれ、
大学での職も失うこととなるのです。

ハンナは強制収容所にはいかなかったものの、フランスの勾留キャンプから逃げ出し
命からがらアメリカへ亡命したれっきとしたユダヤ人当事者でありながら
心情的にも憎いはずのナチスの幹部を冷静に分析していることを評価すべきと思うのですが、
「ナチス狩り」賞賛の風潮のなかでは、ハンナのような考えはとうてい支持されることはありませんでした。

だいたい、アルゼンチン政府に断りもなくアイヒマンを拉致し、
当事国でもないイスラエルで行われる裁判が有効なのか?
こんなことを思っても口にするのはタブーでした。

むろんハンナはアイヒマンの刑を軽くすることを望んだわけではなく、
「死刑は妥当」だとも言っています。
それでも思考することをやめ、その時の流れに迎合するだけでは
また同じような過ちを犯すことにはならないか?
まさにそうなんですけど、ハンナをバッシングする人のほとんどが、論文をすべて読んだわけでもなく
「ユダヤ人のくせにナチ野郎の肩を持った裏切り者」ときいて
「そうだ、そうだ」と言ってるだけなんですよ。

ハンナは自分への誹謗中傷にいちいち反論することはせず、
大学で学生たちへの講義という形で8分間のスピーチをします。
これがとても感動的なんですけど、聴衆はすべて彼女の信奉者というわけではなく
反対意見の人たちがすべてこれを聞いて考えをかえたわけでもないから、
映画的にはイマイチ盛り上がりには欠けるのですが、ここでTHE ENDです。

恩師ハイデガーとの不倫をにおわすシーンはちょっとだけありましたが、
収容キャンプ時代の苦しい体験も、
危機一髪でアメリカに亡命できたスリリングな体験も回想シーンではゼロ。

登場人物も地味だし、キャストも地味。
知っているのはメアリー役のジャネット・マクティアだけでした。
ハンナを支える明るくて大柄な彼女の存在はとても貴重でしたね。

あと、誰もが感じたと思うのですが、ハンナは驚くほどのチェーンスモーカーで
くつろぐときも、執筆するときも、ソファーに横になっても、電話しても・・・
とにかく常にタバコが手放せず、最後の講義では、
なんと最初からずっとタバコを吸い続けながらスピーチしていました。

もうひとつ、夫のハインリッヒとは常にハグ&キス。
見た目は50代の地味で堅物な二人のラブラブな様子はほほえましくもあり、
少々うっとうしかったかな・・・

正直、岩波ホールに行列してみるほど面白いか??
って思いましたけど、(理解できない個所も多いですが)
テーマは至ってシンプルなので、DVDが出たらぜひご覧になってください。
8月5日発売予定、とのこと。


オー!ファーザー

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画「オー!ファーザー」 平成26年5月24日公開 ★★★☆☆
原作本「オー!ファーザー」 伊坂幸太郎 新潮文庫 
★★★★☆

 
大学教師の悟(佐野史郎)、ギャンブラーの鷹(河原雅彦)、体育教師である勲(宮川大輔)、
元ホストの葵(村上淳)と父親を自称する男4人と同居する高校生の由紀夫(岡田将生)。
何かと干渉してくる父親たちをわずらわしいと感じてしまう中、彼は何者かに監禁されてしまう。
悟、鷹、勲、葵は、一致団結して由紀夫を救出しようとするが……。(シネマ・トゥデイ)

伊坂幸太郎のベストセラーだったら誰が撮っても面白いでしょ!
と思っていたら、最高傑作の「ラッシュライフ」を素人が撮って散々だったのをみて
中村義洋監督の偉大さを実感しました。
「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」「ゴールデンスランバー」「ポテチ」・・・
コメディー系の作品のほとんどを中村監督が撮っていますが、今回は藤井道人氏の脚本と監督によるもの。
期待感と不安感ハーフハーフで見に行きました。

高校生ユキオには父親が4人・・・という前代未聞のシチュエーション。
「マンマ・ミーア」でも、娘の結婚式の時に「自称父親が3人集まる」という設定でしたが
ユキオは生まれた時からこの4人と同居して育てられてきたというのです。
彼らは母トモヨに4股かけられた恋人たち。
我こそが本物の父親だと主張しながらも、4人プラス2人で仲良く暮らしています。
かなりめんどくさい関係ではありますが、慣れてしまえばそれなりに楽しいのかな?
息子からしてみたら、大学教授の父からは勉強を教わり、体育教師の父からは護身術を教わり、
元ホストの父からは女子に持てるコツを、ギャンブラーの父からは人生をサクっと生きる術を教わります。
ある意味、スーパー高校生かも・・・・
ただ「そのことを周りの人が誰一人知らない」という状況は、映像にしてしまうと難しいかな?

伊坂作品の面白さは、荒唐無稽な設定にもかかわらず、
そこはかとなく漂うリアリティと深刻になりすぎない軽妙さだと思うんですが
実写になって「わかりやすく」なっちゃうとむしろ突っ込みどころ満載になってしまう。
そのせめぎあいですね。

だいたい24歳の岡田将生を「平凡な高校生」にした時点で無理がすぎ、
4人の父親たちも原作読んで想像した以上にタイプがバラエティに富み過ぎで、
トモヨさんはどれだけ守備範囲広いんだよ!と思ってしまいます。
違和感をてんこ盛りすることで、逆に観客にリアリティを諦めさせる「手」なんでしょうかね。

それにしても4人の父と生活する日常。
突拍子もないけれど、これ、意外と楽しそう。
もっとずっと見ていたかったのですが、
「父を自称する男がたくさん現れてびっくりさせて観客の笑いをとる」だけで、
その後すぐユキオが犯罪に巻き込まれてしまって
「サスペンスパート」に突入してしまうのは残念です。
こちらが面白ければいいのですが、メインにしてはそれほど面白くないしね。

「ランナウエイプリズナーの電線脱出劇」「手旗信号」「携帯の着メロ」・・・
記憶に残る伏線はこれくらい。
しかも本では「ETの着メロ」だったのを変えたのは、承諾がとれなかったのか?
別にETでなくても、万人がピンとくるような着信音にしないと成立しないのでは?


むしろ4人の父親のいる高校生とおせっかいなガールフレンド、ヘタレなおさななじみ・・・
彼らが毎週なんかの事件にまきこまれてしまうTV番組のシリーズもののひとつ、
という程度ならOKでしょうけどね。

原作より生き生きしていたのは唯一、柄本明の演じるトンダバヤシ(富田林)。
街を仕切る超大物ながら物腰は優しく・・・でもやっぱり残酷でおっかな~い!
中村監督でもきっと彼をキャスティングするでしょうね。
やっぱり伊坂作品には絶対に必要な人だと思いました。

4人の父親たちですが、初めて見る人もいて、個性的だから見た目には楽しいけれど
年齢やビジュアルをある程度そろえたうえでのキャラ設定してくれた方が納得できます。

右利きの奴に襲われたら
「ダッキング、左ボディ、右アッパー!」
というイサオ(体育教師)の技はすぐにも使えそうだし
「女の子にはとにかく優しく、頼まれごとはことわらない、自慢話はするな」
「嘘をつくなら徹底的につくのが最低限のマナー」
「ひきこもりなんて飯を食う家具みたいなもん」
「「俺は何でもしってるぞ」といって相手の出方をみる」
親父たちのアドバイスもなかなかですが、
原作はもっとしゃれたセリフの宝庫でありました。

それにしても、ユキオが可愛くてたまらないオッサンが4人も集まれば、
たいていのことが起きてもなんとかなりそうです。
うらやましい!

監禁され危機一髪の状況から小ネタをつかっての脱出劇・・・
が、映像的には派手でしたが、それよりも
「(血のつながりとは関係なく)長いこと一緒に暮らしてきた家族の映画」だと思ったんですが、
タエコの父やマスジの父、そして母のトモヨが最後まで登場しなかったのは
話をシンプルにするためか、予算の関係か?

その割には最後までけっこうもやもや感が残りました。

ブルージャスミン

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映画「ブルージャスミン」
 平成26年5月20日公開
 ★★★★☆

 
  ジャスミン(ケイト・ブランシェット)は夫ハルとニューヨークでぜいたくな生活を送っていたが、
全てを失い、サンフランシスコに暮らす妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)のアパートに身を寄せる。
過去のセレブ生活にとらわれ、神経をすり減らしていたジャスミンだったが、
ある日お金持ちの男性ドワイト(ピーター・サースガード)と出会い、
自分の身の上についてうそをついてしまう。               (シネマ・トゥデイ)

ニューヨーク舞台、という印象の強かったウディ・アレンが最近はロンドン、ローマ、バルセロナ、パリ・・・
などヨーロッパの都市を舞台にシリーズもので撮っていましたが、
今回の舞台は(はじめて?の)アメリカ西海岸。
おちぶれたセレブがニューヨークからサンフランシスコに流れていく・・・という話です。
映画的には堕落のあとにはきまって「再生」があるんですが、
はたしてジャスミンは再生できるのでしょうが?


一世を風靡していたセレブ女が見るも無残な生活をしているのを見るのって、
実はたいていの人の「好物」なんですよね。
「軽妙で残酷」というのはウディ・アレン監督のお家芸なので、ケイト・ブランシェットもお気の毒・・・
と思っていたら、GG賞アカデミー賞の主演女優賞W受賞で、
女優的にはウハウハの作品になってしまいました。
「8月の家族」のメリル・ストリープよりどこが良くて勝ったかはともかく、
アレン監督の持ち駒にならないで自分の芝居をやりきってるところがすごい。
個人的には「コーヒー&シガレッツ」の一人二役の彼女のほうがうまいと思ったのですが、
ケイトやメリルやジュディ・デンチのレベルになったら、一等賞を決めるほうが無理!って思ってしまいますね。

さて、かつてNY社交界の花だったジャスミンはすべての財産を失い、借金の山。
一文無しになってサンフランシスコの空港に降り立つのですが、
見た目はまだまだセレブ感たちのぼるエレガントな女性です。
彼女は裕福な実業家ハルの後妻で、夫の商売が傾いて自転車操業にあけくれていることも
違法取引に手を出してかなりヤバい状況に陥っていることも勘付きながらも
見ないふりをしているうちに、夫の複数の浮気が発覚。
中でも10代の留学生と「真剣交際」しているのをつきとめ、怒りでマジ切れした彼女は
夫の悪事を密告してしまうのです。
夫は逮捕、財産没収、そして夫はあっけなく自殺でこの世から去ってしまいます。

すべてを失ったジャスミンは、唯一の肉親(といっても血はつながっていない)
SFに住む妹のジンジャーの家を訪れます。
しばらく居候させてもらいにきたのですが、ジンジャーの元夫のオーギーは大反対。
というのも、彼が宝くじで当てた20万ドルとコツコツ働いて貯めた1万ドルの合計21万ドルという全財産を
ハルに運用を任せたら、あっさりすべてパアにされてしまったのです。
今や一文無しの義姉なんて「いい気味」以外の何物でもなく、冷たく当たるのもやむなし、なんですが、
妹のジンジャーは
「辛い思いをして心も病んでいるんだから、立ち直るまで私が面倒をみる」
と、なんてやさしい対応!
ただ、お金ないのにファーストクラスで来たり、ヴィトンのすごい旅行鞄を持っていたり、
なんか納得のいかないジンジャー。
しかも居候の分際でなにかと上から目線なのも失礼千万です。

ジンジャーはそんなブスというわけでもないのに、なんか見た目が安っぽい。
世話好きで働き者で切り盛り上手。
パートから帰って疲れてるのに手早く夕食を作るような、とてもよくできた妻です。
部屋もきちんとしていて、心地よい空間。
オージーと別れてスーパーのレジ打ちをしているけれど、特別「貧乏」なわけではありません。

でもこういう庶民の生活をしていると、知り合う男もそれなりのレベル。
チンピラ風情のオーギーとは別れたものの、
新恋人のチリもやっぱりガサツ男で、ジャスミンはばい菌を見るような視線を送ります。

妹の家にいつまでも居候というわけにもいかず、
ジャスミンもさすがに自立して自分で部屋を借りようとは思ってるのですが
資格も経験もなし。な~んにもできないくせに、
「学校に戻って学位とって立派な仕事につきたい」
なんて夢みたいなことを言っています。
自分が何歳だと思ってるんでしょ?
そこいらへんの下賤な仕事は絶対にしたくないというし・・・

結局自分のセンスをいかして「インテリアコーディネーター」になると決めます。
学校に通うお金がない→ネットで資格をとれば安上がり→でもパソコン使えない
→パソコン教室で習う→その学費稼ぎのために歯医者で受付のバイト

という、なんだかえらく遠回りの道を選びます。
レジ打ちやウエイトレスはいやだけど、歯医者の受付は彼女が受容できるぎりぎりラインだったのでしょう。

そこでも仕事ぶりはけっして褒められたもんじゃないけれど、
なんと歯医者から告白されるのです。
「君の服の着かたが色っぽくてそそられる」
そして
「歯科麻酔でハイになろうぜ~!」
と迫られます。
歯科医の妻におさまったほうが、とりあえず生活の不安が解消しそうなものですが
「たかが歯医者のくせに、私とつきあいたいなんて生意気な!」
とでも思ったか、さっさと逃げ出します。

つぎに友人のパーティで外交館のドワイトと知り合い意気投合、
この独身セレブから見事プロポーズを取り付けます。
「亡くなった夫は外科医、私はインテリアデザイナー」なんて
嘘八百の職業詐称でまんまと騙した結果です。
ドワイト役もピーター・サースガードでかなり胡散臭いんですが、どうもこちらは本物。
こんど選挙に出ようとしているような人物がジャスミンなんかにひっかかってどうすんだ!
と思いますけど、彼女のただよわせる上流階級の香が男を惑わすんでしょうか?

それにひきかえ、妻にしたら絶対良さそうなジンジャーに近づくのはゲスい男ばかり。
「プライドの高いセレブ階級」をばっさり切るだけでなく、庶民サイドにも辛辣で手厳しいアレン監督。
品も教養もないチリなんかといちゃついて幸せそうにしているジンジャーまで、ちょっと哀れに思えてきます。

ジンジャーは何にも悪くないんですけどね。
でもオーラのない庶民的な彼女の周りにはそれなりの男しか寄り付かない。
逆にお金もないのにファーストクラスに乗ったり、運転手にチップをはずんだり、
庶民からしたら「無駄遣い」とおもえるような行動パターンや
全身ブランドのコーディネートや「ウォッカティーニ」なんていうこだわりのドリンク。
そういうのに男はころっと騙されるんでしょうか・・・

NYセレブ時代の映像がたびたび挿入されるので紛らわしいんですが、
SFに来てからのジャスミンの衣装はあのスーツケースに入ってる分だけだから、
けっこう同じ服を上手に着まわしているのに気づきました。
バッグもあの茶色のバーキンひとつしかないし・・・
後半になるにつけ、だんだん衣装がくたびれてきて、
最後の方はコーディネートも乱れてませんでしたか?
なんかこのへん、妙にリアルでした。

ドワイトをうまいことダマくらかして、「婚約指輪を買ために宝石店にいく」ところまこぎつけたものの、
妹の元亭主のオーギーとばったり会う、という最悪のパターン。
ここでジャスミンの素性がドワイトに知れ、あわれ婚約破棄となります。
まあ結婚したところで、うまくいくはずもないんですけどね。

そして、オーギーの情報で、行方の知れなかった息子のダニーの行方がわかります。
ダニーはハルの連れ子なのでジャスミンが生んだわけではないのだけれど、彼女のお気に入り。
彼は父の逮捕、自殺のあと大学を辞め、オークランドの楽器店で地道に働いているのでした。
再会を喜ぶジャスミンを彼はかたくなに拒否し、ジャスミンはさらに絶望の淵に・・・

ただ、最後にきてやっとまっとうな人物登場で、観てる方はちょっとだけおさまりがつきました。

この映画は多分「コメディ」のカテゴリーなんでしょうけれど、たいていの人がいや~な気分になるはず。
お金なんてあってもなくても、変に背伸びしたりさげすんだりしないで、自分が満足していればいいじゃん!
と思うんですけどね。

若い人たちはご存じないと思いますが、バブル前期で日本中が総中流と言われた80年代初めに
「まるきん(〇に金の文字)まるび(〇のビの文字)という流行語がありました。
本物の金持ちに対して、安物でその気になってる人たちを痛烈に笑いものにしていて
確かに笑えるんだけど、あとからすごくいや~な気持になったのを思い出しました。
(こんなの↓です)


ぼくたちの家族

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映画「ぼくたちの家族」平成26年5月24日公開 ★★☆☆☆
原作本「砂上のファンファーレ」 早見和真 幻冬舎 ★★★☆☆

ぼくたちの家族

 
 重度の物忘れにより病院で検査を受けた玲子(原田美枝子)は、末期の脳腫瘍で余命1週間と宣告される。
そして認知症のような状態になった玲子は、それまで話すことのなかった家族への本音をぶちまけ、
長男・浩介(妻夫木聡)、次男・俊平(池松壮亮)、夫・克明(長塚京三)はうろたえてしまう。
やがて経済破綻や家庭内不信など、ごく普通の家族に隠されていた問題が明るみに出てきて・・・
                                         (シネマ・トゥデイ)

「物忘れネタ」では話題にことかかないお年頃の私としましては
いつも「ほんとはどこか病気じゃないの?」とひやひやしているので
もうこの映画の設定を聞いた時から、気になって気になってしかたない作品でした。

でも、結論からいってしまうと、この映画完璧に若者目線なんですよね。
親の気持ちが伝わってこないし、
わかったとしても、この母親、1ミリも共感できない、絶対に友達になりたくないタイプなんですよ。
「8月の家族」の魔女、メリル・ストリープの母のほうがよっぽどシンパシーを感じますよ。

各サイトでの評価があんまりにも高いので、ちょっと悪いこと書きづらい雰囲気なんですが、
ハンナ・アーレントに背中をおされて思い切って書きますけど(大げさ!)
あんまり両親が馬鹿すぎて、同世代としましては、気分が悪くなっちゃったんですけど・・・

郊外に瀟洒な一戸建て。結婚した長男には子供ができ、二男は東京の大学へ。
ちょっとみ、ごく一般的な中産階級の家庭に見えるんですが、
母が脳腫瘍で余命宣告を受けたことで、この家の経済状態がかなりヤバいことになってるのがわかる、という話。

一見「泣ける難病もの」みたいですが、息子ふたりの執念で母の病気の治療法を見つけ出し
加えて高額な医療費や父の莫大な借金、母のサラ金への借入、保険料の滞納。
などをひとつひとつ解決していく、
という、親子逆転劇なんですね。

「頭金10万円でOK」と言われて「10万円あるわ!」と、家を買っちゃう人、
返すあてもないのにカードの限度いっぱい借りて「お金が足りてよかった」と安心しちゃう人。
世の中にはそんな部類の人が実在しなくもないんでしょうが、
それを「ごく普通の家族」にする時点で無理じゃないですか?
原作によれば、長男は大学卒業していますが、学費は奨学金という名の教育ローンで
子どもが就職してから返し続けなければいけないもの。
優秀な学生に支給される(返さなくていい)奨学金との違いもわかってないのかな?

最初のシーンは母玲子が友人たちとお茶しているんですが
そこでの玲子の受け答えがおかしいとみんなに言われ、気に病むんですけど、
私はそんなことよりも、こいつらの会話のレベルが低すぎて
たかたかパック旅行で行ったハワイの話を得意げにしたりとか、
つまんないことでワーワーキャーキャー・・・もう、イライラしました。
みんなにアルツハイマーじゃないかと思われないようにと、
わざと難しい言葉を使おうとする玲子の対応も意味不明。
いちいち「上京」しては、都心に住む友達とつながっていたい、という気持ちも理解不能。
「自分の物忘れを心配する50代主婦(原作では61歳でしたが)」という共感ポイントもどこへやら、
冒頭10分で冷めた目で彼女を見るようになってしまいました。
そのあと、経済観念ない見栄っ張りでの夫と、金をせびる二男が登場。
長男の嫁の両親と会食中にまた玲子が奇行に走り、病院へ行ったら
「末期の脳腫瘍で余命一週間」と宣告され・・・

「難病もの」の映画では、何の問題もない幸せな家庭にいきなりの余命宣告、
あんまりお金のこととかは話題にならず、本人は必死で病気と闘い、
家族は残された時間を幸せなものにしてあげようと奔走するが、ついに力尽き・・
みたいな流れですが、本作は病気以外にも、経済状態とか、夫婦関係とか、嫁姑関係とか問題山積で、
鬼のような私は「玲子が亡くなればいろいろリセットできるかも」
なんて残酷なことを考えてしまったのですが、
孝行息子ふたりは、能無しの父に代わって、母を死なせないために八面六臂の働き。
性格のまったくちがう二人が連携しながら医療費の工面や、借金の整理や
母を救ってくれそうな医者を求めて走り回ります。
「難病もの」よりは現実的な感じはしますが、映像にすると(原作以上の情報が映るので)
逆にリアリティを感じませんでした。
借金まみれなのに差額ベッド代高そうな個室に(退院を薦められても)居座っていたり
収入をアップさせるために「外資系企業に転職する」とか、なんてイージーな対策なんだ!
キャバクラのくだりも、意味もなく出てくるユースケ・サンタマリアも原作にはなく、
これ必要でしたか?
一番まともに思える長男の嫁が悪者扱いで、最後にようやく「心をいれかえて家族の一員になれた」
的な流れも気に入りません。

ただ、頼るもののいなくなった兄弟がとにかく家族のために頑張る・・・
と、それだけをピックアップなら納得です。
「砂上のファンファーレ」という原作のタイトルも「ぼくたちの家族」に変更していますし。
内容は原作者の早見和真氏の実体験に基づいたもののようで、
たぶん本当にこれに近いことがあったのでしょう。
ただ、彼に兄弟はおらず、堅実な兄もフワフワした二男も、両方とも彼自身なんですって!
なるほど。
これを聞いてすごく納得しました。


石井裕也監督は将来を嘱望される若手監督といわれていますけど、
傑作といわれた「川の底からこんにちは」の次の「あぜ道のダンディ」で
大人を描ききれない人だという印象をもってしまったため、
評価の高い「舟を編む」でも、日本語に魅せられ辞書編集に魂をそそぐ人たちの心が
ちっとも伝わってきませんでした。
サラリーマンもやったことないし、大きな病気もしたことないし、子どもを育てたこともない人でも
なんで?と思うほど心に沁みる映画を作る人いますけど、
石井監督がそうなるにはまだまだ時間がかかりそうです。
16ミリフィルムの柔らかい光の表現とか、映像作家としての腕は認められていますけど。
私は断固苦手、です。

これから観たい映画(49)

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4月公開
▲「アデル、ブルーは熱い色」  感想UP
▲「ワールズエンド 酔っぱらいは世界を救う」 感想UP
×「レイルウエイ運命の旅路」 
▲「チョコレートドーナツ」  感想UP
▲「8月の家族たち」  
 感想UP
▲「ある過去の行方」 
 感想UP
▲「アメージング・スパイダーマン2」 
 感想UP

5月公開
 〇「とらわれて夏」 (TOHOシャンテ)
▲「ブルージャスミン」 感想U
▲「WOOD JOB神去なあなあ日常

▲「ぼくたちの家族」 感想UP
▲「オー!ファザー」 感想UP
〇「X-MEN ヒューチャー&パスト」

〇「美しい絵の崩壊」 (ヒューマントラスト有楽町)
〇「万能鑑定士Q」

6月公開
6/6 ◎「グランドブダペストホテル」 (イオン板橋)
6/7 〇「ハミングバード」
6/14〇「春を背負って」
6/21〇『超高速参勤交代」
6/21〇「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」(シネマ・シャンテ)
6/21◎「人生はマラソンだ!」 (シネスイッチ銀座)
6/21◎「私の息子」 (ル・シネマ)
6/28〇「パークランド ケネディ暗殺真実の4か月」(ユナイテッドとしまえん)
6/28◎「her世界でひとつの彼女」 (ヒューマントラスト有楽町)


                ◎はぜひみたいもの、

                〇はできればみたいもの。

                ×は上映終了してしまったもの
               ▲はすでに観たものです
      

                   (ミニシアター系の作品には近場の上映をメモしています)

早いもので、今月で26年の上半期終了です。
半年間に映画館で新作が100本くらい見られれば
ベスト10を決める意味ありそうですが、まだ今年も60本がせいぜい。
それでも私のひそかな楽しみでもありますので、またお付き合いください。
6月は早々に「グランドプタペストホテル」を近所のシネコンでやってくれるのがうれしいです。

わたしのハワイの歩きかた

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映画「わたしのハワイの歩きかた」 平成26年6月14日公開予定 ★★★☆☆



恋も仕事も普通の雑誌編集者の小山田みのり(榮倉奈々)は、
ハワイで挙式をする友人の2次会の準備をすることに。
ハワイ特集の取材を口実に、さっそうとハワイに乗り込む。
ハワイで金持ちとの結婚を夢見る吉村茜と出会い、茜に連れられて夜な夜なパーティーに顔を出すみのり。
さらには実業家の鎌田勉(瀬戸康史)や大富豪の息子・阿部知哉(加瀬亮)と出会い……。(シネマ・トゥデイ)


私の人生の中での「苦手なもののひとつ」に「ハワイ帰りの土産話」というのがあって、
レストランで何食べたとか、免税店で何買ったとか、ほんとに興味ないんですけど・・・
先日も「たかだかハワイのパック旅行で威張るな」みたいなことを書いてしまって
気分悪くされた方がいたらごめんなさい。

「わたしのハワイの歩きかた」というタイトルは、少し前に大流行した
一連の「〇〇の△△の〇〇かた」の映画タイトルのパクリかと思ったら、
ヒロインはガイドブックの出版社につとめており、
間違いなく「地球の歩き方」由来のタイトルでした。

「地球の歩き方」、私もたくさん持っているのですが、本棚をみたら、やっぱりハワイはないな・・・
 
  
 
「地球の歩き方」はもともとバックパッカーが見知らぬ土地で生き延びるための手引き、  
だったから、ランチ情報や現地のトレンド情報なんてなかったはずなんですけどね。

・・・なんてグダグダ言いながらも、試写会当たって、喜んで行ってしまいました~
応募総数13000通のうちの350組。倍率37倍ですって!
メトロの試写会はいつもそんな感じですけど、ちょっぴりテンションUP!

さて本編。

会社ではいくら仕事しても報われず、うわべだけの女子や適当な上司に翻弄される毎日。
そこへ女友達からハワイの結婚式の二次会の手配というめんどくさい依頼が。
客室乗務員と青年実業家の派手な結婚式。
できればかかわりたくない仕事だけれど、思い切ってこれに乗ってあれこれリセットしてみようと・・・
「ハワイの新しいガイドブックの取材」という名目で会社の金でハワイ行きを決行!

「食べて祈って恋をして」の日本版ともいわれますけれど、こちらの方がヒロインには共感できました。
食べるシーンよりは飲んだくれるシーンの方が多かったから
「飲んで飲んで恋をして」というところでしょうか。
サバサバしたハワイ在住の茜(高梨臨)と意気投合し、あちこちのパーティーに潜り込むことに成功。
現地セレブたちのパーティーはタダ飯タダ酒にありつくだけじゃなくて、
有力者と知り合ってビジネスチャンスをものにする真剣勝負だったのです。

ここで必死でパイナップルワインを売り込んでいたのがツトム(瀬戸康史)
彼は竹炭シャンプーやこんにゃくダイエットや抹茶クッキーやいろんなものを企画しては撃沈していました。
もうひとり、みのりの前に現れたのは、空き瓶集めてるおかしな青年トモヤ。
実は彼は資産家の御曹司で、金目当ての他の女性とはちょっと違うみのりに興味を持ち
彼とはちょっといい関係になるのです。

そもそもみのりは男運の悪い女性で、過去に付き合ったのはダメ男ばかり。
そういうのってしっかりした女性のサガのようで、頼られたり甘えられたりしちゃうんでしょうか。
でもここではみのりの一言でツトムは本気で「お茶漬け」ビジネスで全米制覇を狙うようになり、
トモヤも後継ぎとしての自覚に目覚める、という理想的展開。
トモヤはみのりが人生初釣り上げた「誰もがひれ伏すような上流男」だったわけですが、
彼女の心は、自分の夢をかなえるのに必死のツトムに向いていく・・・というような流れです。

ハワイの観光案内映画ですから、日本やハワイの企業とタイアップして
全編CMみたいな映像の切り貼りかと思っていたんですが、
実際は、現地の人のライフスタイルやハワイ式の葬儀とか、
観光というより、普通にそこに生活している人たちが主役でした。
それに(のだめとかテルマエ方式ではなくて)現地の人はみんな英語やハワイ語。
榮倉奈々はほぼ日本語でしたが、そのほかの人はかなり英語のセリフも多くて
帰国子女の加瀬亮に遜色なく思えた瀬戸康史の英語力にはびっくり。
せっかくハワイでロケしているのに日本語ばかりではやっぱりねぇ。

榮倉奈々は今までオクテでおどおどしているような役が多かったように思うのですが
本音全開のぶっちゃけキャラなのが新鮮です。
ビジュアルも、それまで多かった地味な制服とかではなくて、
パーティドレスにもカジュアルウエアにも生える長い手足がまぶしかったです。
ファッションモデルのような「スタイルの良さ」ではなくて、バレーボール選手のような健康美。
今までのどの役より生き生きして見えましたけどね。

それにしても一番気になったのは、やっぱり「地球の歩き方」との関係でして、
鶴見辰吾演じる社長室に飾られていたのは絶対に「地球の歩き方」ですよね(↑画像の左下)
ここの会社は他にも「おすすめスパガイド」とか「小顔になるリンパマッサージ」とか
流行物は節操なく書籍化する、という会社のようでしたが、
ビジネス本の会社と思っていた(地球の歩き方を出している)ダイヤモンド社も
なにげにダイエットのムック本とか出してるんですね。
でも「この会社のモデルはうちです!」なんて絶対に言いたくないと思います。
一番許せないのは、みのりが会社に送った「ハワイのガイドブックのラフ原稿」でして、
まるでプライベートな個人ブログのレベル。
会社の経費を使ってこれはないだろ!と唖然としました。
「仕事できる女性」という設定までもが怪しくなってきて、ここはもっと力を入れるところだったと思います。

けっしてつまらなくはなかったけれど、
ハワイ好きの人にはとことん面白いんでしょうけれど、
私のように興味ない人には、何をおいても「ハワイ行こう!」とは、やっぱり思えませんでしたね。
         
                                

グランド・ブダペスト・ホテル

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映画「グランド・ブダペスト・ホテル」平成26年6月4日公開 ★★★★☆

 


1932年、品格が漂うグランド・ブダペスト・ホテルを仕切る名コンシェルジュのグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)は、
究極のおもてなしを信条に大勢の顧客たちをもてなしていた。
しかし、常連客のマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺されたことでばく大な遺産争いに巻き込まれてしまう。
グスタヴは信頼するベルボーイのゼロと一緒にホテルの威信を維持すべく、ヨーロッパ中を駆け巡り……。
                                                                                                (シネマ・トゥデイ)

 

ホテルが舞台で、↑ こ~んなに豪華キャストだったら、
客室あちこちで同時進行にドラマがくりひろげられる「グランドホテル方式」に違いない!
と思ってしまいますが、予想は大ハズレ!
ただただウェス・アンダーソン監督の世界を満喫する映画でした。

主役のコンシェルジュ、グスタヴはレイフ・ファインズ。
それに、ジュード・ロウ、シアーシャローナン、レア・セドウなんかも出てますが、
脇を固めるのはいつものウエス・アンダーソンファミリーの面々。
設定は全然違うけれど、「ダージリン急行」や「ムーンライズ・キングダム」にとっても似ています。
殺人事件や遺産相続、冤罪、脱獄・・・なんていうのも出てくるから
今回は多少は「まったり感」薄いので、私は一番好きかも知れないです。
ただ、ミステリー仕立てに騙されてはいけません。
こちらも何のひねりもなく、犯人捜しのワクワク感もありません。

ただ、たくさん人が出てくる割に人間関係は複雑ではないので、混乱はしないです。
知ってる人(俳優)がほとんどだからかもしれませんが・・・
(ちなみに今NHK地上波でやっている「ダウントン・アビー」はすごく面白いんですが
マギー・スミス以外ひとりも知らないので、もう誰が誰やら・・・相関図と首っ引きで見ています。)

唯一複雑なのは、この話、なんと4つの時代を回想でつないでいるのです。
「入れ子方式」というやつです。
去年観た「ザ・ワーズ 盗まれた人生」がこの分野ではすごくよくできていると思ったんですが、
本作では「これって必要?」ってレベル。
① 現代     若い女性がある作家の墓参りに来る
②1985年   その作家が生前、自分の著作に影響を与えたある人物について語る
③1968年   若き日の作家(ジュード・ロウ)がさびれたホテルに泊まるとそこで
          超金持ちながら使用人部屋に泊まる不思議な老人に遭遇。
          彼はベルボーイだったころのグランドブダペストホテルとそこの伝説のコンシェルジュについて語り始める。
④1932年  ここからが本編                                                                                                                   

・・・・というわけで、話のほとんどが④のパートですから、あとは後日談で最後に付け加えるか、
「ライフ・オブ・パイ」のような回想形式にするなら、③と④がせいぜいで、
①と②は全く不要なんですよ。
つまりここは「包み紙」みたいなものですね。
同じケーキだっておしゃれなラッピングでうんと価値がアップするっていうもの。
ストーリー自体はなんてことない話なので、あんまり期待すると裏切られますが、
とにかくすべてのシーンの構図や色づかいがそれはそれは魅力的なので、ほとんどの人が
「楽しかった!」と思うんじゃないかな?
箱庭のような・・・可愛い絵本のような・・・・豪華なデコレーションケーキのような・・・
「監督の作家性がすべて」の映画なので、ツイッターなんかでも、誰も内容に触れてないのが笑える!

あえてストーリーを説明しますと、
1932年。東欧のブブロフスカ。
高級ホテルグランドブダペストホテルにはグスタヴ・Hという伝説のコンシェルジュがいて
「金持ちで金髪でさびしがり屋」の客たちの心を癒し、秘密を守る彼の最高のおもてなしでホテルは大盛況。
なかでも19季連続で逗留しているマダムDは一番の上得意で、「夜のおもてなし」なんかもあったようですが、
彼女がある日自宅で殺されてしまいます。
マダムDから絵画を貰い受けることになっていたグスタヴはベルボーイのゼロをつれて
屋敷に乗り込むのですが、そこで殺人犯の濡れ衣を着せられ、結局逮捕されて監獄送りに。
ゼロやメンデルケーキ屋の娘で彼のフィアンセのアガサたちの協力で脱獄に成功し、
真犯人をみつけて一発逆転を試みる・・・・みたいな話です。

メリケンサックの殺し屋はかなり残虐で、指を切り落としたり生首が転がったりするし、
刑務所からの逃走劇なんて、手に汗にぎりそうなもんですが、
全編にただようのはユルユルしたまったり感で、おとぎ話をみているようです。
だから生首とか出てきても作り物にしかみえないし。
この不思議な感覚を心地よいと感じるか、厳しい目でみるかは観る人次第ですね。
ストーリーのほうは突っ込みどころ多数ながら、
緊張感ないドラマの苦手な私でも、細部まで作りこんだ映像美でもって、
ずっと集中して見られました。
あんなにハイテンションでしゃべりまくるレイフファインズを観るのも初めて。
エキセントリックな婆さんがティルダ・スウィントンというのもビックリすべきなんでしょうが
「スノーピアサー」で、もっとスゴイの観ちゃったので驚きませんでした、残念。

1932年にはピンク色のお菓子の城みたいだったホテルが
30年後にはすっかりさびれてしまったけれど「魅力的な廃墟」でマニア心をくすぐります.

ホテルはいい感じに枯れていますけれど、同じ人物の若いころと30年後がどうしてもつながらなくて・・・・
とくにベルボーイのゼロは30年ちょっとの間に風貌が全く変わり、人種まで変わっちゃったのは
どういう「こだわり」があったのか??これは納得できないなぁ・・・
だいたい、東欧のどっかの国の設定なのにみんな英語で話していましたし、
エンドロールのかわいいイラストもいろんな形のバラライカとコサックダンスでしたが
ロシアってどこかに出てきましたっけ?
でもこれ、とても可愛いので、エンドロールになっても席をたたないのをお勧めします。

万能鑑定士Q モナリザの瞳

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映画「万能鑑定士Q モナリザの瞳」 平成26年5月31日公開 ★★★☆☆
原作本 「万能鑑定士Qの事件簿Ⅸ」松岡圭祐 角川文庫 
★★★☆☆

 
名画モナ・リザの40年ぶりとなる再来日が決定し、
万能鑑定士Qの店主莉子(綾瀬はるか)が臨時学芸員に抜てきされる。
莉子は、彼女の密着取材を続行中の雑誌記者悠斗(松坂桃李)と共にパリへと赴き、
ルーヴル美術館で実施された採用テストに無事パスする。
莉子は同様にテストに受かった美沙(初音映莉子)と一緒に特別講義に出席するが……。(シネマ・トゥデイ)

テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」でも、器だったら中島さん、掛け軸だったら安河内さん、
おもちゃだったら北原さん・・
と専門が決まっていますが、凛田莉子は、どんなものでも鑑定できるから「万能鑑定士」だというのです。
経験も浅い若い女性がそれは無理でしょ!と思うし、高校生まではバカだった・・・という思い切った設定。
このムチャブリとも思える莉子の設定ですが、
天然だけどポテンシャル高そうな綾瀬はるか様のキャラに救われてる感じです。

原作は人気シリーズなので12冊も出版されており、私は2冊しか読んでないのですが、
飯田橋の雑居ビル(でも路面店)で莉子が鑑定する骨董品から食品、生活用品、
あらゆるものから小さな事件を解決していく、
・・・刑事事件に発展することはあっても、けっして殺人は起こりません。
そして9巻目がルーブルまで足をのばして、てれびで行ったら「拡大版」「スペシャル」の様相。
映像化するんだったら、探偵ものの1時間枠で、今回のが「劇場版」でいいと思うんですが、
いきなりの映画化でしたね~
なんだかちょっともったいない気がしました。

シャーロック・ホームズも依頼人を一瞥しただけで、職業から依頼内容まで御見通しでしたが
ホームズが現代によみがえったかのような莉子の観察眼はすばらしくて、
別に事件なんて起きなくてもこればっかりずっと見ていたい感じ。

今回もつかみの「チラシの鑑定」は面白かったし、トルコ料理の食材から調理の順番、音のマスキング・・・
のあたりは、彼女がキャッチする些細な違和感からいろんなトリビアが引き出されて、
とても楽しかったんですが、本編の方がねぇ・・・・

名画モナリザの日本公開のためにその真偽を鑑定する臨時学芸員のテストにパスした莉子が
国際窃盗グループの罠にはまっていく・・・と言う話で、
ルーブル美術館内でのロケとか、フランス人たくさん登場させたり、
話が大きくなっていくにしたがって、話はどんどんつまらなくなっていくんだなぁ・・

「観察せずに直感で、二人一組で二者択一しながら本物を残していく方法」とか、
私でもすぐにトリックとわかるのに、論理的思考の莉子がなぜ騙されたか?
雑誌記者の小笠原が監禁され火をつけられた名画を必死で守ろうとするところ・・・
あそこもいくらなんでも引っ張り過ぎでしょう!
「ハラハラして損した~!」と全員が思うはず。


オープニングのクレジットで、「日仏文化協力90年記念」と出ましたが、
モナリザに関するトリビアは出てくるものの、絵の素晴らしさには言及してないし、
あちらの俳優も一流ではないし、結局小悪党だったし、フランス人がみても楽しくないんじゃないの?

なんだか、頑張るところ間違えているような気がして、
むしろ低予算のテレビシリーズを綾瀬はるか主演でやってくれたら、ぜひ見たいと思います。
公式サイトに15分のスピンオフミニドラマがあり、映画よりこういうドラマ向きの原作ではないかな?

ホドロフスキーのDUNE

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映画「ホロドフスキーのDUNE」 平成26年6月14日公開 ★★★☆☆
原作本 「DUNE砂の惑星」 フランク・ハーバート 早川書房
 

『ホーリー・マウンテン』などの鬼才、アレハンドロ・ホドロフスキーが監督を予定していた『DUNE』は、
スタッフにメビウスやH・R・ギーガー、
キャストにサルバドール・ダリやミック・ジャガーといった人物が参加予定の斬新な企画だった。
ところが製作は中止になってしまう。
その一連の騒動を監督本人やプロデューサーのミシェル・セドゥーらが語る。 (シネマトゥデイ)


DUNEというのは砂漠の惑星アラキスのことで、
水はないし巨大ワームが生息してたりする過酷な環境ながらそこで生産されるフリンジ(スパイス)めあてに
利権争いが絶えず、ポール(アトレイデス家)たちは悪のハルコンネン一族と闘う・・・

ま、そんな話なんですが、原作はかなり長編サーガで、フランク・ハーバートが亡くなるまでに6巻、
その後も息子たちによって今も書き継がれています。
私は1巻しか読んでいないけれど、
砂漠に住みすべてをのみこむ巨大な砂虫や、醜く太ったハルコンネン男爵の造形なんかは
映像作家の魂に火をつけること必至。
初めて聞く言葉のオンパレードで、いちいち注釈をつけるのも不可能なので
37ページにわたって巻末に「帝国における用語集」が辞典のようについているのも
オタク心をいたく刺激します。

そして、40年前、
この大作の映像化にチャレンジしようとしたのがアレハンドロ・ホドロフスキー。
彼は70年代前半に「エルトポ」「ホーリーマウンテン」で成功して、次にやろうとしたのがSF映画。
そしてこの原作に目を付けたのです。
結論を先に言ってしまうと、この作品は未完に終わってしまいました。
なので私たちがホドロフスキー版のDUNEを観ることはできないんですが、
この「未完に終わった映画の顛末」をそっくり映画にしたのがこの作品なのです。

今となっては、故人になってしまった関係者も多く、
インタビュー映像のほとんどは85歳になったホドロフスキー本人。
まったく年齢を感じさせない、超ハイテンションな熱弁をふるってくれます。

フランスの若きプロデューサー、ミシェル・セドゥーと組んで、
原作とは別の視覚的な世界観を作るべく、製作スタッフをリクルートするところから・・・
カリスマ的バンドデシネ作家のジャン・ジロー(SF作家としてはメビウス)との出会いがあり、
彼がとてつもなく斬新なキャラデザインをものすごいスピードで書き上げると、
メカデザインはクリス・フォス、特撮はダン・オバノン、さらにHRギーガーも加わります。
何かに吸い寄せられるように素晴らしい人材がたちどころに集まって、
ストーリーボードがどんどん仕上がり、
ものすごいものができる高揚感に満ちあふれます。

そしてキャスティングがまたすごい!
「演技力」なんてほとんど無視で、各界のカリスマに大胆にも声をかけちゃいます。
銀河帝国の頂点に君臨するシャッダム4世には、あの美術界の巨匠サルバトーレ・ダリ!
(時給10万ドルを要求する彼に出演時間1分あたり10万ドルで出演をとりつけます)
悪の帝王ハルコンネン男爵にはあのオーソン・ウェルズ。
(デブの体型維持のため、お気に入りのシェフ込みの契約です)
ハルコンネンの甥のフェイドにはミック・ジャガー、音楽はピンクフロイド・・・とか豪華絢爛。

映画の構想はほとんど仕上がっていたにもかかわらず、
このままでは上映時間は10時間とか20時間とかになる計算で
経費もとてつもない金額に跳ね上がり、
結局撮影もままならずに、この作品は頓挫してしまったのです。

映画をビジネスとして考えるなら、まあ妥当な判断だったと思いますが、
2年半もかけて作り上げた企画が宇宙の藻屑となってしまったのは残念無念。
それまでも組合を無視していろいろ勝手をやってきた経歴もあるので、仕方ないとは思いつつ、
「傑作を生み出すには狂気のかけらが必要」というのにも賛同してしまいます。

結局DUNEは、1984年にデヴィッド・リンチ監督によって映画化が実現します。
これが公開されたとき、ホドロフスキー氏は悔しさと怖さで見に行けなかったのですが、
息子から「本物の戦士なら観に行け」と言われ、
恐る恐る見に行ったら、あまりにひどさに嬉しくなった!
「これは大失敗だ~!!キャハハハ・・・」
と、大人げなく大笑いの監督。

私もこの劇場版をちょっと前に観たのですが、製作費120億円もかかってますが
あの大長編を137分の時間にこじんまりとまとまめて、
「砂の帝国の映像化」としては、これはこれでアリ!と思ったのですが・・・
ホロドフスキー版のクオリティの高さも見てみたい気はしますが、
ただ、アニメーションではなくて実写なわけで、あのスクリプト通りに撮影できるんでしょうか?
やり直ししてるうちに製作費はどんどん膨らみ、結局どこかで中止の判断がされるんじゃないかな?

でも彼は未完に終わったことをけっしてマイナスにはとらえていません。
「人生で何か近づいてきたらYESと受け入れる。
離れて行ってもYESだ。
DUNEの中止もYESだ。
失敗がなんだ?だからどうした?」

そして製作にかかわったスタッフたちはのちのSF映画の製作者として大活躍し、
DUNEのストーリーボードに書かれたアイディアは、「エイリアン」や「プロメテウス」や「スターウォーズ」
「マトリックス」「ブレードランナー」等々・・・
たくさんのSF映画の中で間違いなくパクられています。
法的にどうよ?って気もしますが、未完に終わったにもかかわらず、そのDNAをあちこちに蒔いて、
永遠の命を得た、幸せな作品なんじゃないか?とも思います。

そしてこのドキュメンタリー「ホロドフスキーのDUNE」は
私のように特別カルトファンでない人が見ても、
間違いなくこの元気なおじいちゃんにめちゃくちゃ親近感をもつことでしょう。

「世界を照らすものは己の身を焼かねばならぬ」
「LSDをやらなくても同じような高揚感を味わえる映画を作る!」
「人間の魂の探求、それが映画だ」
「原作を大きな愛をもって犯し、新しい命が宿るのだ」
「「私は映画をビジネスではなく新しい視点で自我を知性を解き放ちたかった」
「300歳まで生きて最高にアートな映画を作りたい。
失敗してもいいからずっと挑戦し続ける」


そうまで言い切るホドロフスキーの作品を是非見たい!と誰もが思うでしょうが、
なんとタイミングのいいことに、彼の新作「リアリティのダンス」が7月に公開されます。
これは監督の自伝的作品のようです。
なんだか、本作はこの映画の「プロモーションの一環」と思えなくもないのですが、
これは是非にも見に行きたいですね。
アップリンクの単館上映と思ったら、ヒューマントラスト有楽町とシネマカリテでも上映があるようです。
ちなみにアップリンクでは「ホドロフスキー新聞」をvol. 1~3まで出しています。



 

私はいろいろいただいてきましたが、内容はアップリンクのサイトからも読めるようです。→ こちら
とにかく推薦文を寄せている人がそうそうたるメンバーで、読めるだけでも楽しいです。
「ドライヴ」でファンになったレフン監督は映画にも出ていたし、ホロドフスキーの大ファンだそうで
「オンリー・ゴッド」は彼へのオマージュだったそうです。
(なんか赤い光がずっとチカチカしていて、私にはよく理解できなかったけど)

まあアートに関しては理解不能なところもありますけど、
85歳になってもまだまだやりたいことがたくさんあって、
世間に迎合しないでマイペースを貫けるのは観ていて爽快ですね。
本作は低予算で尺も短く(90分)エコな映画です。
映画大好きな人でもそうでもない人でも、
根拠のない元気がむくむくわいてくるから不思議!

ホーキング

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映画「ホーキング」 平成16年BBC製作  ★★★★☆

 
1963年イギリス。
ケンブリッジ大学院で理論物理学を学んでいるスティーヴン・ホーキングは、自宅で21歳の誕生日を迎えていた。
ほのかに恋心を寄せるジェーンの存在と、彼の好奇心を満たす宇宙の研究。
その将来は、順風満帆かに思えた。
そんな中、突如スティーヴンは脳の命令が筋肉に伝わらないALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症。
身体の筋肉は次第に衰弱し、余命は2年と宣告される。
両親は、スティーヴンを支えるのは今まで通りの生活だと思い、彼を大学院に戻す。
しかしその身体は、溺れるように自由が利かなくなっていった。
彼は、その恐怖を打ち消すかのように研究に没頭するが…。(DVD情報より)

昨今のベネディクト人気で、ブレイク前の主演作が日本公開されたり、DVD化されるのは嬉しいことです。
私は「メジャー映画に登場する存在感ある脇役」で充分満足なんですが、
主役だと(当たり前ですが)出てる時間が長いから、やっぱりありがたいなぁ・・・
去年のショートフィルムの映画祭でどうしても見たかった「二人」も、webで見られました→ こちら

さて、「ホーキング」は劇場映画ではなく、2004年にイギリスBBCで作られたテレビ映画ですが
こちらもようやくDVDで見られるようになりました。
筋萎縮性側索硬化症を発症した若き日のホーキング氏をベネディクトが演じます。
去年日本公開された「僕が星になるまえに」でも重い病気をかかえた青年役でしたが
病気の内容も明らかにされず、彼の望んでいることもちょっと共感できないものだったので
今回のホーキング役の方が迷いなく役作りしています。
それにしても上手い!

本作はベネディクトの演じる若き日のスティーヴン・ホーキングがビッグバン理論にたどり着くまでのドラマですが、
1978年12月、ペンジアスとウィルソン、二人の研究者がテレビインタビューに答えるシーンが
冒頭から何回も挿入されて、彼らの名前も業績を知らない私には意味不明だったのですが
最後になってようやく理解できました。
日本人が湯川さんや朝永さん、江崎さんたちの受賞理由や年代をなんとなく知っているように
BBC放送のTVドラマですから、この二人が登場した理由はイギリス人だったらみんなわかるのでしょうね。

スティーヴンは教育熱心な学者の家に生まれ、オックスフォードの優等生だったんですが、
21歳の時ALSを発症し余命2年を宣告されます。
進行は早く、どんどん体の自由が利かなくなっていくのですが、
その恐怖と闘いながら研究に没頭するスティーヴン。
恋人のジェーンは研究のことは何もわからず、神を信じ、ラフマニノフとブラームスを愛する女性。
ワーグナー大好きなスティーヴンとは趣味も性格も異なるのですが、ホントにほほえましいふたりです。
ドラマの中ではプロポースまででしたが、のちに彼らは結婚します。
これが結婚式のふたり。↓ 車いすでない若き日のホーキングです。
かわいい!

 
 フレッド・ホイル教授とデニス・シャーマ教授、先輩研究者のロジャー・ペンローズ・・・
ペンローズってあの「ペンローズの三角形の?」と思ったら、なんとその人でした。

 
  エッシャーや安野光雅が描くあの有名な「不可能図形」は彼が考えたものだったんですね。
いきなり数学が身近に感じられました。

相対性理論や特異点定理なんかをいくら丁寧に説明されたところで、一般人には理解不能ですが
星空を見上げながら宇宙や神について話す彼はとてもロマンチック。
「相対性理論で美人をくどく」という同僚のムチャブリにも見事に応えるスティーヴン。
そのときの女性がどこかで観たことあると思ったら、ブレイクまえのアリス・イヴでしたね。
「時間は万人に共通ではない」ということを熱く語る若者に心惹かれる気持ち理解できます。

先日みた「キル・ユア・ダーリン」に出てきたギンズバーグやケルアックたちは
同じエリートでもアメリカ、コロンビア大学の40年代の文系男子たち。
彼らは詩を引用したり創作したりして女性をくどいていましたが、
ドラッグとか酒とか同性愛とか、いかにも退廃的でした。

どちらかと言ったら、アインシュタインでさえ予測しつつ避けた問題、
「宇宙の起源」とかで口説くほうに一票!

エンドロールに彼がジェーンと25年の結婚生活を送り3人の子どもを授かったこと
そして余命2年と言われたのに50年後の現在も車いす生活ながら存命していることなど。

理性や知性がそのままに、体の筋力だけが衰えやがては死に至る・・・・
この上なく残酷な難病ですが、その日その日を力いっぱい生き、
ユーモアを絶やすこともなく、ロマンチックに愛を語るスティーヴン。
感傷的な「泣き映画」ではけっしてありません。

福山ガリレオのように黒板一杯に難しい数式書いたりしますけど、
分かりやすく説明してくれるのもありがたい。
なによりベネディクト・カンバーバッチを堪能できるドラマなので、ホントに満足!(本音)

美しい絵の崩壊

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映画「美しい絵の崩壊」 平成26年5月31日公開 ★☆☆☆☆
原作本「グランド・マザーズ」 ドリス・レッシング 集英社文庫 ★★★☆☆


オーストラリア東部の海辺の町で、ロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)は
幼いころから姉妹のように育ってきた。
現在は二人とも結婚して家庭を持ち、お互いの息子トム(ジェームズ・フレッシュヴィル)と
イアン(ゼイヴィア・サミュエル)も母親たち同様親友同士だった。
早くに父親を亡くしたイアンは、ロズを2人目の母親として慕っていたが……。(シネマ・トゥデイ)

親友の母親ふたりが、お互いの息子と寝ちゃう話、というのは承知の上で観賞。
予告編でも普通に言っていたから、ほとんどの人がそうだと思いますよ。

少女の頃から何をするにも一緒だったロズとリル。
幼馴染の女の子って、一般的には好きな男ができたあたりからバラバラになったりするんですが、
この二人、同じ時期に結婚して同じ時期に男の子を授かって・・・・
その後もずっと近所に住んでいるから家族同様のつきあいが続いて、
二人の息子イアンとトムもまた親友同士です。

ちょっと整理すると
ロズ(ロビン・ライト)の夫が演劇教師のハロルド、その息子がトム。
リル(ナオミワッツ)の夫は事故死し、イアンをひとりで育てています。
あとは未亡人のリルにつきまとって求婚する中年男ソール・・・

登場人物はものすごく少なく、オーストラリアの海は美しく開放的なんだけど
なんだか密室劇みたいです。
しかも二人の少女時代から時系列に進むので、ものすごく単調。
どちらかの家でお酒飲んでるか、海辺でごろごろしているか、どっちかです。

ひきしまった体に美貌の息子たち。
サーフィンに興じる彼らを見ながら
「私たちの自慢の作品ね」
なんて自分たちも水着姿で悦にいってるリルとロズ。

こんなシーンがず~っと延々続くのかと思ったら、意外と早くにこの二組『深い関係」に・・・
「変形スワッピング」状態ですね。
「親友の息子とやっちゃう」にはよほどの理由がありそうなもんですが、
結局他に人がいなかったから?
勤務先とか職場の同僚たちはほとんどストーリーに絡まず、
ハロルドも妻とロズのレズビアンを疑って家をでてしまったから、
レズビアン疑惑を逆手にとって、もうこの4人のやりたい放題です。

この関係は2年くらい続き、これまた立て続けに息子たちが若い女性と恋に落ちて結婚。
それでもこの禁断の関係は孫がうまれてからもずるずる続く・・・・

母親たちが主役の映画ですが、
シングルマザーで息子を育ててきたリルの苦労とか、日々の家事労働とか、
そんなリアルな描写も全くなし。
少女時代からは30年以上たっているのに、沖の秘密基地のような木製の浮島も同じ。
20代も40代も、まったく変わらない美魔女二人の美貌とスタイル。

まあ、こんな話にリアリティを求めちゃいけないと思うのですが、
そうだったらいっそのこと、(夫もいないのに)二人が同じ時期に子どもを産んじゃったり、
トムとイアンがゲイに走ったり、こんどは近親相姦が発覚したりとか、
ぜひ考えられる限りのめちゃくちゃをやっていただきたい。

これがもし男女設定が逆で、男やもめの親友同士がそれぞれの娘に手を出したら
もうこれは犯罪扱いですよね。
きれいな熟女だったらいい、ってわけ?
逆セクハラって気がします。

中年のオバサンが若い子にモテる、という話は
たしかにオバサンの女の部分をけっこう刺激しますけど、
ほとんどすっぴんで人前もオッケー!
透け透けファッションもビキニの水着もオッケー!の
ロビン・ライト 48歳
ナオミ・ワッツ 45歳
にライバル心をもやす中年女性はごく限られた人でしょう。
金妻(古くてすみません)だって、観てる人が自分を重ね合わせられる
森山良子みたいな「共感キャラ」の存在は必須なのにね。
「オバサンの都合のいい妄想」にしても、なんか無理無理です。

二人が美人でスタイルいいのは女優さんなんだから驚きませんけど、
若い子に心映りされて、自分の顏のしわを嘆くシーンが1か所だけあります。
(たいしたしわじゃないんですけどね)
あんまり女優さんはこういうのやりたくないでしょうけど、
最近「汚れ役」づいているナオミ・ワッツの方だけ、このシーンOKを出したのでしょうか?

 
ロズの夫、ハロルド役はノワール映画常連のベン・メンデルソン(↑左)
絶対になにかやらかしてくれそうな予感がしたのですが、
普通に真面目な演劇の講師でした。
アニマル・キングダム」のコディ家の悪い長男役もすごく良かったのですが、
そのとき、母を亡くして一家にひきとられてきた甥のジョシュアをやっていたジェームズ・フレッシュヴィル。
今回ベンデンデルソンの息子のトムの役ですね。
あの時はちょっとほっぺの赤いほわんとした高校生でしたけど、すっかりかっこよくなっていました。
(アニマル・キングダムのときの画像。右端と左端がそうです↓)

イアン役のセイヴィア・サミュエルのほうがおばさんたちには人気のようですが、私はジェームズの方がタイプです。
・・・なんてどうでもいい感想しかありません。

原作書いたのはノーベル賞作家だというので、ホントか?と思いながら読んでみました。

 
表題の「グランド・マザーズ」は80ページほどの短編小説で
タイトル通り、孫娘たちと遊ぶふたりの60代のおばあちゃんのシーンから。
彼らのほほえましい姿を目撃したウエイトレスのテレサの視点で物語は始まり
そして回想形式で彼らの過去が語られます。
リルの亡くなった夫は愚かなスピード狂ではなく、
大きなスポーツ店の経営者で莫大な資産を妻子に残していたし、
息子たちは年中サーフィンばかりしてるわけではなく、ちゃんと高校にも大学にも通っていたし、
短編なのに情報量は2時間の映画を大きく上回り、
濃密な人間関係を堪能できました。
絵的に観客のよろこびそうなシーンを引き延ばした結果が
安っぽい三文ポルノになってしまったんですね。

ナオミ・ワッツとロビン・ライトのビキニ姿に刺激されて
アンチエイジングやダイエットに精を出したいという人以外には、ちょっとおススメできない映画です。

ハミング・バード

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映画「ハミング・バード」 平成26年6月8日公開 ★★★☆☆



以前特殊部隊を率いていた元軍曹ジョゼフ(ジェイソン・ステイサム)は、戦場で罪を犯したのをきっかけに、
心に傷を抱えながらひっそりと暮らしていた。
そんなある日、ただ一人打ち解けていた少女が誘拐されてしまい、彼女を救うためロンドンの暗黒街を突き進む。
しかし、最悪な結末を迎え怒りを爆発させた彼は、リベンジを胸に誓い……。(シネマ・トゥデイ)


作品によってすごい役作りをしてくる人もいいですが、
画像だけではどの役の時か見分けられないくらいワンパターンのジェイソン・ステイサムも私は好きで、
彼の主演作は多分全部みています。
持ち前の身体能力で吹き替えなしのアクションは文句なしに素晴らしいですから。


今回は、最初の方でちょっとだけ、まさかのロン毛(?)を披露してくれます。
「パーカー」のときの「変装用かつら」ではなくて、
「ハゲの人がずっと散髪してなかったらどうなるか?」ってそんな髪型です。


ストーリーは、アフガニスタンの戦場で仲間を皆殺しにされた「ジョセフ・スミス軍曹」が
報復に同じ数の敵の兵士を殺します。
これはいくら戦場でも許されないことで、彼は軍法会議で裁かれることになっていたのですが
病院からこっそり逃げ出し、行方不明となります。
彼の罪が発覚したのは、ハミングバードと呼ばれる偵察機に監視されていたからで、
そのハチドリの羽音がずっとトラウマとなってジョセフを苦しめるのです。

彼はロンドン市内にホームレスとなって身を潜めていたのですが、
ぼろぼろの長髪はそのときの姿。
現地やくざのホームレス狩りから逃げる途中、たまたま裕福な留守宅に侵入し、
そこで身体を洗い、クロゼットから衣装を拝借。
クレジットカードも無断借用して、そこの住民になりすまします。
留守番電話のメッセージによれば「10月1日まで海外出張」ということで、
そのとき2月だったからなんと8か月も先ですよ!
立派な家に住みながらどれだけセキュリティ甘いんだ?!って思いますけど、
ともかくジョセフにとっては、脱ホームレスの足がかりができたわけです。

すっかりいつものきりっとしたステイサムの姿になって、
彼は逃走時にはぐれてしまった同じホームレス仲間の少女イザベルを探すのですが、
彼女の消息は不明。
情報を求めて今まで炊き出しでお世話になっていた「贖罪修道女会」の修道女クリスティーナのもとへいき、
そこで盗んだ金で500ポンドの寄付をしてしまいます。
「あなたの好きにつかいなさい」とシスターにいわれたクリスティーナは、
それを夢にみていたジェリンスカという名プリマの引退公演のプレミア席に使ってしまいます。

実はワルシャワでバレリーナを夢見る少女だったクリスティーナは
10歳の時からそこの教師に性的いたずらをされ続け、思い余って彼を刺してしまいす。
未成年だったので刑務所の代わりに修道院へ。
彼女もまたずっと自分を責め続けて生きてきた人物で、
バレエチケットを買ってしまったことで、また罪の意識にさいなまれることになります。

一方のジョセフは、他人になりすますことで更生の足がかりをつかめたか、
酒しか飲まなかったのを水に切り替え、健康的な生活へ。
中華レストランの厨房でバイトも始めます。
ある日めんどうな客を追い返したことでオーナーに気に入られ、
中国人経営者の運転手兼用心棒兼汚れ仕事の下請け、みたいな仕事で重宝されるように。
白人をこういう仕事に使うのは、中国人の世界ではステータスのようです。
裏社会に通じている女ボスにイザベルの行方を聞いたところ、
違法な売春宿に売られて、麻薬中毒にされたうえ、客から暴力を受けて殺されてしまったと。
そして彼はその客を突き止めて報復に向かうのです・・・・

汚れた体を洗って身なりを整え、酒を断って、自分の力で稼げるようになって・・・
金銭的なことは収支をつけることはできても、「大切な人を殺された怒り」は
「報復」でしか清算できないジョセフ。
結局殺人者として再び警察の無人監視システムに偵察されて、そこから逃れられないジョセフなのでした。

とにかく暗い話でして、画面もすごく暗い。
特に路上生活していたころは、髪もあんなだし、誰が誰かもよくわかりません。
イザベルもほとんど出てこないから、そこまで大事な人だったのかも不明。
もともとが英国軍の特殊部隊ですから、身体能力高いものの、
心の折れたジェイソン・ステイサムなんてあまり見たくなかったなぁ・・・

中国人の下働きをしながら、麻薬や人身売買の犯罪の片棒を担ぎつつ、
最後にその悪事をさらけ出したりするところは、ちょっとだけハリウッド的爽快感ありましたが、
いつもの「痛快アクション劇」を期待したらかなり物足りないです。
「中国マフィアに席巻されたロンドンの裏社会」は初めて知りましたが
それほどドキュメンタリータッチでもないし。

「セイフ」でもある事件で職を失った元NY市警の落ちぶれた格闘家という設定でしたが、
精神的に一本筋が通っているから共感しやすい。
ジョセフはケンカは強くても心が弱いからいつまでも過去を引きずっており、
かと思えばすぐに切れたり、報復に走ったり、ちょっと理解しづらいんですね。

あと、ジェイソンの過去作では、(かっこいい割に)あんまり女性にもてるほうではなく、
恋人がでてくる作品ではもうその女性ひとすじ・・・というひたむきさにググッときちゃうんですが、
本作ではホームレス仲間のイザベル、修道女のクリスティーナ、そして実の妻、と女性が3人もでてきて、
誰が一番ともいえず、ふらついてるジョセフの立ち位置がもどかしいです。
だいたい、妻子がいるのに罪から逃れるため失踪する男なんて許せないです。
しかも、全く忘れようとしてるわけでもなく、「自分が一番よく映った写真を子どもに残したい」なんて
見当はずれの愛情もまた意味不明です。

今回は「ちょっと変わった役柄に挑戦してみました」ってことでしょうか?
苦悩する彼の演技力に問題はないと思いますが、なんかパッとしない話でしたね。
「変わり種」というわりには、チラシはいつもの「スーツで銃を持ってる」絵なので、
どんな話だっけ?とあとでわからなくなりそうです。


8月公開の「バトルフロント」では、女の子を育てるシングルファザーだそうで、
これも楽しみ。
でもチラシではやっぱり銃をもっていて、こんな感じです。

超高速!参勤交代

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映画「超高速!参勤交代」 平成26年6月21日公開 ★★★☆☆
原作本「超高速!参勤交代」 土橋章宏 講談社 
★★★★☆

 
八代将軍・徳川吉宗の治世下、東北の小藩・湯長谷藩は幕府から突然、通常でも8日かかり、
さらに莫大(ばくだい)な費用を要する参勤交代をわずか5日で行うよう命じられる。
それは藩にある金山を狙う老中・松平信祝(陣内孝則)の謀略で、弱小貧乏藩には無茶苦茶な話だった。
藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)は困惑しつつも、知恵を絞って参勤交代を完遂させようと作戦を練る。
                                                      (シネマ・トゥデイ)

江戸時代、参勤交代にかかる費用が地方の藩の財政を圧迫した、だから徳川の政権が安泰だった・・・
というのは社会科で習いましたけど、
「5日で参勤交代せよと命じられた貧乏な藩が、智恵を使ってそれを実現する」
という、それだけのことをドラマにしてしまったのですね。

先に原作を読んだのですが、タイトルに「超高速!」とあるように、本文も「!」のついたセリフばかり。
表紙のイラストやソフトカバーからもごくごく軽いライトノベルを想像しますが、
ユーモア小説ながら時代感もあり、凄惨な描写、人間愛や家族愛、東電による放射能汚染をにおわしたり・・
なかなかてんこもりの原作でした。
作者は元エンジニアの理系の人なんですって。
実在する磐城湯長谷藩や藩主・内藤政醇についてもちゃんと調べた結果の執筆でしょうし、
とにかく文章が読みやすい・・・・ぜひほかの作品も読んで観たいです。

映画になって一番面白いのは、殿様や家来たちのキャラが立っていること。
個性的な俳優をそろえて、顔ぶれだけでも楽しめました。
領民たちの幸せが第一のお人好しで閉所恐怖症の殿様に佐々木蔵之介、
智恵をしぼりだしてなんとか苦境を切り開いていく西村雅彦、 武闘派の寺脇康文、冷静沈着な上地雄輔 
そのほかにも六角精児、柄本時生、戸隠流の謎の忍者に伊原剛志など・・・
たまたま「相棒」の警官がそろったり、「花子とアン」のおじいさんとお父さんがそろったり
「旬な俳優」を集めた結果なので、そうなるんでしょうね。

とにかく金も人手もなしに5日で江戸まで行くには、宿役人のいる高萩宿と取手宿には
現地調達で中間(ちゅうげん)たちを雇い入れ、50人規模の大名行列をしたて、
そのほかは山道を徒歩で駆け抜ける・・・・
実際、江戸時代の各大名も経費削減のために、町中では大名家の権威を示すためにゆっくり進み
それ以外は必要最小限の人数でさっさと進む、というのはあったようで、
だから「中間専門の口入屋」なんていうのも実在していたのでしょうね。

「5日で江戸」のムチャブリ以外にも、野宿中に夜盗に襲われたり
老中松平信祝が公儀隠密や御庭番衆を使って行く手を阻んだり、
苦労して苦労して・・・・はたして江戸にたどり着くのか?

これって、普通にロードムービーですね。
山や谷を駆けずり回ったり、吊り橋を渡ったり、川に流されて見る無残な姿になったり・・・
まるで「ホビット」や「ロード・オブ・ザリング」を観ているようでした。

もちろん画像処理では比べようもありませんが、
途中、こんな木の橋が出てきて、どうもCGには見えなかったので調べたら、
大井川にかかる蓬莱橋という実在の橋でした。
長さ約900メートル。ギネスにも認定された「世界一長い木製橋」だそうです。

 
 

松平信祝が、汚い言葉を吐く九官鳥を飼っていたり、腹心の忍びになにやら「悪いたくらみ」をささやくところなんかも、
べたな時代劇以上に、ディズニー映画の「悪い魔女」そのもの!
ほんとに陣内孝則演じるこの老中だけは史実をはるかに超越して
ものすごく悪いやつなんですよ
なのにラストは中途半端な許され方で、これだけは納得いきません。
原作では「生き恥かいたうえに蟄居を命じられる」
でしたが、グリム童話だったら、
目をくりぬかれたり、樽に入れられて火をつけられたりされて当然ですよ!

ただ、爽快感を押さえた分、「いわきの土でつくった大根の漬物の美味しさ」強調で
「頑張れ!東北」のメッセージにちょっと優しい気持ちにはなれましたが・・・

「武士の家計簿」のような「見栄を捨ててエコに走る」話って、今の時代に受けますから、
「智恵を使った安上がりな大名行列」の部分をもっと見たい気もしました。
ちゃんばらシーンも思った以上にあって「十三人の刺客」とかぶるんですが
もちろん迫力では大きく負けているし、
ロープアクションなんて昭和の映画だし、ふふん、と笑っちゃうレベル。

原作ではラストで藩主の妹の琴姫がすごく活躍するのですが、
女優さんも初めて見る人で、あまり出番なし。
かわりに深キョン演じる飯盛り女のお咲が
ストーリーにからまないのに意味なく長居してたのは、どうなんでしょ?
この辺も大人の事情なんでしょうか?
なんて余計なことが気になって・・・

「このミッション、インポッシブルです」
というこの映画のチラシ、裏も表も、ものすごく面白いんですよ。

 
 
邦画の予告編はネタバレの宝庫、といつも思っているんですが、
このチラシに至っては、ほとんどすべてを書き尽くしています。
(私のブログなんかよりよっぽど詳しい!)
でも、面白そうだから、行きたくなっちゃいますよね。

 まあ、実際の映画は「いらない要素」もそこそこありましたけど、
ここに書かれてあることはちゃんとありましたから
「騙された」という気にはなりません。
★★★レベルですけど、よかったらどうぞ・・・

ディス/コネクト

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映画「ディス/コネクト」 平成26年6月公開 ★★★★☆
 
リッチ(ジェイソン・ベイトマン)の息子はソーシャルネットワークを通じて攻撃され、
自殺しようとするも一命を取り留めたが意識不明の状態になってしまう。
弁護士として仕事に忙殺される彼は家族との関係もおざなりにしていたため、
息子の自殺の原因がまったくわからず困惑していた。
一方、元刑事の厳格な父親と二人暮らしをする加害者の少年は愛情に飢えており……。
                                   (シネマ・トゥデイ)

わが家にPCがやってきて15年。
今ではもうなくてはならないものになっています。
ただ私のPCの目的はほとんど「調べもの」なので、
それ以外は、せいぜいがこんなしょぼいブログを書いてるくらいですが、
コメントもペタもはずしてるし、「いいね」だってできません。
スマホでLINEもやっているけど、メンバーは家族だけ。
ツイッターもやっているけど、映画の感想しか書いていません。
プロフィールをいろいろ書き込まなくちゃいけないSNSなんて、死んでもやらないと思います。
こんなこと自慢することじゃありませんが、
「だれかとつながっていたい」という思いがほとんどないので、
楽しみも少ない分、いやな思いや危ない思いをしたこともありません。


本作はネット社会の功罪を描いたもので、
私みたいな人が見てもピンとこないところもありましたが、
失って初めて知る家族の絆とか素直に感情をぶつけることの大事さとか、
最近見たヒューマンドラマではかなり胸にささるものがありました。

少なくとも3つのストーリーが同時進行する群像劇なので、少々込み入っています。
「ラブアクチュアリー」のようなオールスターキャストのラブコメ群像劇だったらわかりやすいですが、
本作は画面は暗いし、あんまり有名な人も出てきません。
↑の画像をみて、すぐ名前の出る人いますか?
私はアレキサンダー・スカルスガルドとアンドレア・ライズブローだけ、なんとかぎりぎりわかりました。
どんな話かわからないまま、場面がどんどん切り替わり、しかも出てくる俳優もよくわからない・・・・・
最初のうちは集中してしっかりみてないといけませんね。

ストーリーを書き出してみると・・・
① 児童ポルノの取材の件

テレビレポーターのニーナは秘密の部屋と称するいかがわしいライブチャットを見つけ
客を装って潜入調査。
18歳のカイルに取材をとりつけ、匿名で放送された番組は大反響。
テレビ的には成功でしたが、売春組織の摘発をもくろむFBIの目に留まり協力を要請されます。
それは取材元との信頼関係を裏切ることになるし、
それ以前にカイルに対する個人的感情が芽生えていたニーナは、板挟みで悩むことになります。

② SNSを使ってのネットいじめ

友達のいないベンのフェイスブックに、ある日
「あなたの音楽イケてるわ」と、ジェシカと名乗る少女からメッセージが送られてきます、
これはクラスメートのジェイソンとフライという少年たちの成りすましだったのですが
それに気づかず、メッセージの応答が続き、
ついにはジェシカの送ったヌード写真に答えて、ベンも自分撮りした裸の画像を送信してしまいます。
ジェイソンたちはこれをネット上に晒し、クラスメート全員が知ることになり、
傷ついたベンは自室で首をつり・・・・

③チャットを通じてのネット詐欺

デレクとシンディの夫婦は最愛の息子を亡くし、不妊治療で次の子を望むも、うまくいかず、
仕事にかかりきりの夫に失望したシンディは、同じく妻をなくした男とのチャットに癒される毎日。
ある日、銀行残高がゼロになっているのに気づき、警察に届けるも進展なし。
ネット犯罪専門の探偵をやとうと、妻のチャットを通じて口座やパスワードが盗まれたとのこと。
突き止めてもらったチャット相手の自宅に銃をもって押し入るふたり・・・・

②のエピソードの中で、
被害者のベンの家庭は裕福な弁護士の中流家庭ながら、親子関係が希薄。
加害者のジェイソンの家は元警官の父が離婚後一人で育て、過干渉の父にうんざりしているジェイソン。
とふたつの同年代の家庭が対比して描かれます。
ベンの父が①のテレビ局の顧問弁護士で、
ジェイソンの父が③に登場するネット専門の探偵、ということで、3つのエピソードはかすかにつながっています。

①については、マスコミ関係の人とか、エロサイトにハマっている人以外は
あんまり切実に思えないんじゃないかな?とは思いましたが、
こういうところで働かされている未成年は、世間的には「虐待されている」
のでしょうが、本人たちはのほほんと楽しげにやっているのが逆に恐ろしいです。
こういうことで金を稼ぐことを何とも思わない子どもたちの「その後」が思いやられます。

②はフェイスブックやミクシーをやってるスマホ世代の少年少女にぜひとも観て欲しいと思いました。
特定の人をディスったりもですが、写真を気軽に送信するのは(別に裸でなくても)
非常に危険なことを知ってほしいなとおもうし、
口にするのもはばかるようなことでもコメントや書き込みでは気楽にできてしまうのも怖いなぁ。

親の立場からいうと、この二人の父親たちは息子たちとの接し方を特別まちがっているわけではなく、
特にジェイソンの父はシングルファザーで必死に子育てしてきたのに、「父がうっとうしくて悪質ないたずらにはしった」
といわれてもねえ・・・
職業柄家に特殊な機械があることが息子たちの犯罪を助長させたというのも皮肉です。
息子たちの行為が人を自殺においやったことを知ったジェイソンの父は、激しく叱りながらも
なんとかipadのデータを削除しようとするところとか、間違っているけれど、親としてはやりかねないことです。
一方PCの扱いは素人のベンの父も、息子の交際していたジェシカの正体を突き止め、
法律の専門家ながら未成年に暴力をふるってしまう・・・・・
法で裁いて罰するべきなのに、思わず手がでてしまうのもまた「親心」で、間違ているけれど気持ちはわかります。

③の夫婦は妻のチャット相手に情報を盗まれ全財産を失うのですが、
実はその相手も遠隔操作で犯人ではないことが発覚。
もうすこしわかるのが遅かったら、傷害罪で逮捕されるところでした。
②のベンの父もですが、被害にあった人は家族のPCをみることで本心を初めて知る・・・
人はリアルの世界で言えないことをネット上でなら知らない人に吐きだすことがことが出来るのですね。
寂しい思いをさせていた息子や妻の気持ちをはじめて知った彼らが、
これからはもっといい関係を作っていくことができるかもしれない、
というのが最後に残った唯一の最大の救いでした。

結局は児童ポルノの首謀者たちも、遠隔操作でネット詐欺をはたらいていた者も、ネットいじめの犯人も
この地点ではつかまることはなく、逃げ延びてしまうのですが、
実際もそんなものなんでしょうか?

そもそも地味なつくりの映画なので、日本で大ヒットするとも思えず、上映館も少なくなってしまいましたが、
ネットの楽しさにハマりかけた若い人なんかにはぜひ見て欲しい作品です。
国や自治体でネット犯罪撲滅の啓発ビデオとかパンフレットとか作っているけれど、
クソつまんないです。こんなのに税金使わないでほしい。
そんなものより、これを学校で子どもたちに見せればいいのに・・・

300帝国の進撃

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映画「300(スリーハンドレッド)帝国の進撃」 平成26年6月20日公開★★★☆☆
 100万もの兵を率いてギリシャ侵攻を図るペルシャ帝国を相手に、
300人の精鋭と共に戦いを繰り広げた果てに命を落としたスパルタのレオニダス王。
彼の遺志を継ぐようにしてアテナイのテミストクレス将軍(サリヴァン・ステイプルトン)は、
パン屋、陶工、詩人といった一般市民から成るギリシャ連合軍を率いてペルシャ帝国に立ち向かっていく。
ペルシャ帝国の海軍指揮官アルテミシア(エヴァ・グリーン)らと拮抗する中、
ついに大海原を舞台にした最終決戦を迎えることに。   (シネマ・トゥデイ)

「寡兵よく大軍を破る」
わずかな兵力で大軍を撃破した桶狭間や小牧長久手の戦いとか三国志の赤壁の戦い・・・
ドラマ的にカタルシスを得られて日本人はみ~んな大好きですが、
前作の300はまさに300人の強靭なスパルタ歩兵でペルシャの大軍に挑んだんですよね。
結局は負けちゃいましたが・・・・

本作はその続編。
「あの300のDNAを継ぐ男たちの復讐戦」とチラシにあったので、
あのレオニダスの活躍したテルモピュライの戦いの次の世代くらいの話だとおもっていました。
「アルテミシオンの戦い」というアテネVSペルシャの海戦が今回の舞台なんですが、
これ聴いたことなかったんですが、実在の戦いで、年代はテルモピュライとおなじBC480年。
つまり後日談なんかではなくて、ほぼ同時期で、「300続編」というよりはスピンオフって感じですね。

テルモピュライからさかのぼること10年、
マラトンの戦いで敵の大将ダレイオス一世を殺したとするアテネのテミストクレス。
彼が今回の主役で、アルテミシア海戦、サラミス海戦の最高司令官となります。
もちろん実在の人物ですけど、レオニダスだったジェラルド・バトラーに比べたらサリバン・ステイプルトンて誰?
好戦的で勇猛果敢なのか、冷静な策士なのか、人物像もはっきりしません。
レオニダス率いる300人のスパルタ兵が「灼熱の門」でクセルクセスと闘っていた頃、
エーゲ海ではアテネやスパルタ以外のギリシャのポリスの連合軍が海戦をはじめようとしてるのですが、
こちらもスパルタほどでないにせよ、ペルシャ艦隊のほうが遥かに大軍です。
テミストクレスは奇襲攻撃を命じ、これが吉とでてアテネ軍は初戦を制すのですが、
指揮官がよかったというより、相手がバカすぎ、という感じで、たいして爽快感なし。

ペルシャ軍の総司令官が本作の実質的主役、アルテミシアでして、
この美しくて残虐なヒロインをエヴァ・グリーンが演じます。
彼女はテミストクレスを自分の船に招き入れ、中立海域でトップ会談、と思いきや、
いきなり服を脱いで挑発、そしてテミストクレスも受けてたっちゃうんですね。
まさかの激しいセックスバトル。
アルテミシアは前の戦いでポカをした副官を殺しちゃったから、
敵国の彼を拉致して副官にしたかったんでしょうが、テミストクレスは断ってその場を去ります。
当然殺されてもしかたないんですが、そうはしなかったのは、もしかして、ちょっと好きになっちゃったから?

ところでアルテミシアは、映画の中では、ダレイオスの娘でクセルクセスの姉?

みたいな感じで登場するのですが、
実はギリシャ出身で、幼いころ目の前で家族を殺され、自分も乱暴され、悲惨な少女時代でした。
のちにペルシャに拾われ、心からギリシャを憎んでいるという設定。
後で調べたら、アルテミシアというハリカルナッソスの女王は実在して、
クセルクセス王に従ってペルシャ戦争に参戦した、とあります。
彼女がモデルなのはたしかでしょうが、中途半端に近いので、歴史に詳しい人は逆に混乱することでしょう。

とにかくエヴァ・グリーンの怪演が一番の見どころです。
今まで、学者とかエージェントとか、細身のスーツできちんとした印象だったエヴァ・グリーン。
美しく残虐な女ヴィラン。生首もってる姿が決まっています。
悲しい過去の描写もあるから、女性にとっても共感度高いです。
あの予想外の巨大なバストは男性向きかもしれませんが・・・・


 
 クセルクセスは、途中で神格化して、地味な左から右側の金ぴかver.に変身して、
見た目ものすごく派手ですが、あんまり存在感なし。

前作の一騎当千のスパルタの精鋭たちにくらべると、アテネ軍も素人軍団で
みんなきれいに腹筋割れていますが、ちょっと見劣りするかも。
それにしても、なんで剣で戦うのに、心臓周辺、なにも防御しないんでしょうかね?

今回3Dで観たのですが、こちらに飛んでくるのは水しぶきや血液ばかり。
スローモーション多用の戦闘シーンもちょっと飽きてしまったかも・・・


2014年上半期(1~6月)マイベスト・ワースト

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今日で2014(平成26)年も半分を過ぎました。
半年のあいだに映画館で観た作品はのべ82本。ほかにレンタルDVDが40本ほど。
すでに忘れかけてるのもあるくらいですが、
とりあえず新作映画の中から★5つつけたものから書き出してみることにします。

上半期ベスト10

(洋画)

鑑定士と顔のない依頼人

マッキー

ビフォア・ミッドナイト

ラッシュ プライドと友情

あなたを抱きしめる日まで

8月の家族たち

チョコレートドーナツ

ある過去の行方

(邦画)

小さいおうち

WOOD JOB! 神去なあなあ日常

上半期ワースト

いつも邦画ばかりになってしまうので、あえて洋画から・・・

ブラインド・フィア

ダイアナ

美しい絵の崩壊

「ダイアナ」は去年公開なので新作ではないのですが、今年もやってたし、
あんまりにも安易な企画なので入れてしまいました。
作る方も作る方だけど、ほかの映画を差し置いて日本でメジャー公開しなくてもね・・・

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これから観たい映画(50)

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5月公開
 ☓「とらわれて夏」 
▲「ブルージャスミン」 感想UP
▲「WOOD JOB神去なあなあ日常」 感想UP

▲「ぼくたちの家族」 感想UP
▲「オー!ファザー」 感想UP
〇「X-MEN ヒューチャー&パスト」

▲「美しい絵の崩壊」 感想UP
▲「万能鑑定士Q」 感想UP
〇「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」(TOHOシャンテ)


6月公開
▲「グランド・ブダペスト・ホテル」 感想UP
▲「ハミングバード」 感想UP
〇「春を背負って」
▲『超高速!参勤交代」 感想UP
〇「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」(TOHOシャンテ)
◎「人生はマラソンだ!」 (シネスイッチ銀座)
◎「私の息子」 (ル・シネマ)
〇「パークランド ケネディ暗殺真実の4か月」(ユナイテッドとしまえん)
◎「her世界でひとつの彼女」 (ヒューマントラスト有楽町)

7月公開
7/5   〇「マニフィセント」」
7/11 ◎「ダイバージェント」
7/11  ◎「ジゴロ・イン・ニューヨーク」 (TOHOシャンテ)
7/12  〇「リアリティのダンス」 (ヒューマントラスト有楽町)
7/18  〇「複製された男」 (TOHOシャンテ)
7/19  〇「なまいきチョルベンと水夫さん」(武蔵野館)
7/19  〇「思い出のマーニー」
7/25  〇「GODZILLAゴジラ」
7/26  〇「幕末高校生」


                ◎はぜひみたいもの、

                〇はできればみたいもの。

                ×は上映終了してしまったもの
               ▲はすでに観たものです
      

                   (ミニシアター系の作品には近場の上映をメモしています)

最近、TOHOシネマズシャンテの上映作品がイマイチだったり、どうしても行けなかったりで
もう半年以上ご無沙汰してることがわかりました。
でも、これからのシャンテのラインナップは最強!
今月は何度か通うことになりそうです。
シャンテの客層は若干高めで、
シネコンでは絶対にやることのないような英語圏以外のヒューマンドラマやアート系映画など。
ミニシアターのくせにスクリーン3つあるのも強みですね。
一応東宝傘下に入っているので、「テルマエ・ロマエ」みたいな邦画もやったりしますが、今回は「円卓」
これ、芦田真菜ちゃん主演だし、シネコンでやるべきなのに、
なぜか東京ではバルト9とシャンテだけなんですよね。不思議~

毎年7月のシネコンはキッズ対象の夏休み映画に席巻されるんですが、
今年はけっこう楽しみな作品が多くて嬉しいです。

俳優探偵ジャン(フランス映画祭)

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映画「俳優探偵ジャン」 日本公開未定 ★★★★☆

 
40歳のジャン・ルノーは売れない俳優。
セザールの新人賞を受賞したのもいまは過去、面倒な性格が災いして仕事は激減していた。
ある日、就職センターで相談員から珍しい仕事を提案される。
予審判事が事件現場を再現し、検証するための死体の役だ。
犠牲者を心から演じようと細かい再現を要求するジャンは、若い判事ノエミと衝突しながらも、
シャモニーの南、高級スキーリゾート地ムジェーブでオフシーズンに起きた連続殺人事件の矛盾に気付き、
真相に迫ってゆく…。                                                                          (作品情報より)

フランス映画祭3日目。
本作は主催者のユニフランスの会長でもあるジャン・ポール・サロメ監督作品で、上映後にティーチインもありました。
昨日この監督の過去作品「ルパン」をもう一度見てみたのですが、
「300帝国の進撃」の悪女役の記憶も新しいエヴァ・グリーンが登場!
ルパンを支える清楚でいじらしいクラリス役ですよ。信じられる?
逆にクリスティン・スコット・トーマスはここでは稀代の魔女でして、「オンリー・ゴッド」でも驚きましたが
女優さんの演技力にはほとほと感心しますね~

さて、本作は観光地での殺人事件の謎を解くもので「リゾートコメディ」というジャンルらしい。
まさに山村美沙とか西村京太郎原作の2時間ドラマっぽいですが、
登場人物少ない割に脇役に「裏の顔」があったりで、かなり混乱させられます。
人が死んでるわりには軽いつくりではあるんですが、これは映画館で集中してじっくり見なくては・・・

まず、プロの俳優が「現場検証の死体役」という設定が面白いです。
主人公のジャンはセザール賞も受けた「演技派」の俳優ですが、
プライド高くてこだわりが強すぎて、監督を差し置いて演技に注文だしたりして、
撮影がなかなか前に進まず、現場は大迷惑。
「このばかったれ!二度と使わない」
・・・てなもんで、だんだん仕事も来なくなってしまいます。

妻にも逃げられた上に、生活費にも困った彼は「俳優専門のハローワーク」に出かけ
そこでこの不思議な仕事にありつくわけです。

リゾート地ムシェーブの有力者のポーシャテル三兄弟の弟ふたりと親戚の少女が殺され
兄も大けがをして車いす生活になった殺傷事件。
犯人はすでに逮捕され、ジャンが被害者役で事件を再現することになります。

現場を指揮する女性の予審判事は監督の役回り。
そうすると、ジャンとしては納得のいかない演出にはどうしても一言言いたくなってしまう。
すんなり終わるはずの現場検証も彼のおかげでめんどくさいものになりますが、
そもそもジャンが俳優として感じる違和感は、すなわち犯行の矛盾点なわけで、
女性判事ノエミも次第に彼のいうことに耳を貸すようになります。
つまり、リアルな演技を目指すジャンのプロ根性が、警察も見落とす小さな矛盾に気づく、というわけ。
面白いですね。

過去の刑事ドラマでいろんな役をやっていたから、なんとなく捜査のノウハウもわかっているし・・・
プロの俳優を現場検証に使うのって、日本もやったらいいのにね。

被害者の兄弟は実はかなりたくさんの人に恨まれており、
殺人の動機のある人もたくさんいたことがわかってきて、事件は一転迷宮入りに。

ただ彼は本物の名探偵ではないから、鮮やかな名推理のすっきり感は薄いですが、
「あの人は今」的な食い詰めた俳優の哀しさを笑い飛ばすシーンがあちこちに。
「ジャン・ルノー」というジャン・レノの偽物っぽい名前も情けないし
ドラマからは姿を消しても、ドラッグストアには便秘薬のパネルが残ってたりして・・・

ところで、フランスには「就職センター俳優部」のようなアーティスト限定の職安はほんとうにあるそうで、
実際に現場検証の被害者役をやった俳優の記事がリベラシオン紙にあったのを監督が読んで
それをヒントに脚本をかいたそうですよ。
死体となったり、本物の殺人者と対峙したり、辛い仕事ですが、本物の役者がそこに放り込まれたら
彼らはどんな反応をするのか?
主演のフランソワ・ダミアンはベルギーのコメディアンで、彼もまたアドリブ入れたり
なかなか脚本通りに動いてくれない人のようです。
それでもヒロインのジェラルディン・ナカシュも含め、監督経験者の俳優が多くて
最後はオリジナルの脚本通りになったし、やりやすかったと言っていました。

今回のフランス映画祭上映作品の中では、
オープニング作品の「グレート・デイズ 夢に挑んだ父と子」は8月公開
「イヴ・サンローラン」は9月公開、
「友よ、さらばといおう」は8月公開
「バツイチは恋のはじまり」は9月公開、
そしてリバイバル作品の「暗くなるまでこの恋を」は10月公開です。

本作の公開予定はないですが、面白いので、せめてDVDにはしてほしいです。

円卓 こっこ、ひと夏のイマジン

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映画 「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」 平成26年6月21日公開★★★★☆
原作本「円卓」西加奈子 文春文庫 ★★★★☆

 
大阪の団地で祖父母と両親、そして三つ子の姉たちと暮らす小学3年生の渦原琴子、
通称こっこ(芦田愛菜)は、大家族の温かな愛情に包まれながらいつも不満だらけで、
孤独に憧れていた。
家と学校という限定された世界の中でいろいろなことに悩み、考えるこっこは、
祖父・石太(平幹二朗)が教えてくれたイマジンという言葉を胸に少しずつ成長していく.
                                              (シネマ・トゥデイ)

日本が世界に誇る小さな大女優、芦田愛菜ちゃんの初主演作。
もうこれだけで観る価値MAXなのに、関東圏ではなんとも地味なプロモーション。
わずか2館での上映ですよ!

原作は西加奈子さんの中編小説で、私は「現代版ちびまる子ちゃん」のつもりで
子ども時代の「あるあるネタ」にくすくす大受けしながらサクサク読んだんですが、
すぐには受け止めきれない衝撃的なできごとに遭遇するこっこ・・・
ぽっさんや石太のことばを理解しようと考え込むこっこ・・・
ふっとテンポを落として思いに浸ることも出来る演出で、映像化のおかげで、より楽しめました。

こっこの家は祖父祖母、三つ子の姉もふくめた三世代の賑やかな家庭。
狭い公団住宅の一室で、けっして裕福ではないのだけれど、
母のつくる色とりどりの大皿料理が並んだ、赤い大きな円卓を囲む夕飯に
みんなから愛されている末っ子のこっこ・・・・
どう考えても幸福の極みなんですけど、
本人にとっては、この平凡さが我慢ならないのです。
ものもらいで眼帯をしてきたり、不整脈で気を失ったクラスメートがうらやましくてたまらない。
こっこにとってそれは「かわいそう」なのではなく、「かっこいい」のです。

「ばくりゅうしゅ」「ふせいみゃく」「ざいにちよんせい」「ぼーとびーぷる」「ししゅんき」・・・
気になる言葉はじゃぽにか(ジャポニカ学習帳)になんでもメモします。
じゃぽにかの最初のページには
「こどく」
これこそこっこの憧れる最高にクールな単語なのです!

こっこには公団の隣に住む「ぼっさん」という親友がいまして、
彼は吃音に悩む内気で冷静で物知りの少年です。
ぽっさんがどもるのをこっこはマネしたりするんですが、
ぽっさんは怒ったりしません。
それはこっこが馬鹿にしてからかってるんじゃなくて
吃音がかっこいいと思ってるってことを、ぽっさんはちゃんとわかってるからです。

でも、クラスメートがイヤだと思っていることを(いくらこっこがかっこいいと思っていても)
それをマネするのは、傷つけることになるからアカンことやで!というぽっさん。
じゃあ、いやだと思ってるかはどうしたらわかるの?というこっこに
「それは想像するしかない。イマジンや」
「死ぬかも知れないと思った時の怖さとか、ポートピープルや在日の人の思いや
経験してないことはイマジンするしかない。
相手がどう思うかは年取った方がわかることもあるのや」
と、祖父の石太もいいます。
その頃こっこは、お母さんに赤ちゃんが出来たことを素直に喜べず、
家族のあいだがイヤ~な雰囲気になってしまっていたのですが、
人の気持ちをイマジンしてみること、
自分の口に出した言葉には責任持たなくてはいけない、と
心からおもうようになります。

その頃、こっこの前の席のミキナルミという女の子が
「死ね」と書いた紙切れを机の中にたくさん貯めているのに気づきます。
学校へもあまりこなくなったナルミの気持ちを一生懸命イマジンするこっことぽっさん。
そして、名案を思い付きます。
うさぎ・・・こいカルピス・・・おもしろいかたちの野菜・・・たこやき・・・
めっちゃつめたい水・・・ぶつぞう・・・てんぐ・・・あいこがつづく時間・・・

学校の中庭に散らばるたくさんの言葉のかずかず・・・
暖かく、ほのぼのとユーモラスな単語の泉は、
生きてることの楽しさをちゃんと伝えられたのですね。
この大団円、とても自然に受け取れました。

「ちびまる子ちゃん」「サザエさん」などの番組は、子供向けアニメでありながら、
元子どもだった私たちを子ども時代に戻してくれますが、
それは「のんびりしてた昭和のノスタルジー」のオブラートにくるまれてるからでしょうが、
「円卓」はまさに平成の今の時代が舞台です。
原作には「戦後65年」と書いてあったし、
映画ではさらに「戦後68年」、つまり、平成25年の設定なんですよ。
で、おばあちゃんはたしか65歳だったから、戦後生まれです。
戦争を知らないおばあちゃん。
まさに現代の設定なのに、こんなに童心に戻れるのはなぜ?

「うっさい!ぼけ!」
「この平社員が!」
先生や親にも乱暴な言葉づかいながら、みんなに愛される天真爛漫のこっこ。
すごくしっかりしているのに、なぜか寿老人をサンタクロースのように憧れてるぽっさん。
最後まで名前すら明かされなかったぽっさんの「5つ上の兄さん」。
徹底的に職人肌の中学の手芸部の玉坂部長。
自分のことをワシといい、苦労がぜんぜん顔に出ないベトナム難民のごっくん。
どうしようもなく阿呆なうえに、顔もそれほどでもないといわれても、ひたすら人懐っこい理子の彼氏。

登場人物がいちいち魅力的で、ここまでキャラを極めたら、スピンオフドラマでも書けそうなくらいです。
それでも、もったいないけど、副題に「ひと夏のイマジン」とあるように
渦原琴子、小学校三年生のひと夏をきりとったことで、このドラマはひときわ輝くんだと思います。
私たちもこうやって少しずつ大人になってきたのでしょうが、
はたして、きちんとイマジンできる大人に成長したのかな?

芦田愛菜ちゃんは、小学校3年生の等身大の女の子の役。
しかも大阪弁はネイティブだし、まさに適役!ではあるんですが、
逆に自然すぎて、愛菜ちゃんの演技力が必要だったんだろうか?
別に他の子役の子でもできたんじゃなかな?とも思ってしまいました。
ただ、シリアスな役だけじゃなくて、コメディの才能もタダものじゃいことも良くわかりました。

おそらく愛菜ちゃんが天才と言われるのは、
私たち大人が長年かけて身につけてきたイマジンの力をはるかに上回る量を
生まれつき持っていたからにほかならないです。
それも、じっくり考えなくても瞬時にイマジンできてしまうのでしょう。
そう思うと、この映画はとても面白かったけれど、初主演にしては、
愛菜ちゃんのスキルを出し切った作品とは到底思えません。

「パシフィック・リム」のあの短い出演シーンでも存在感を示した愛菜ちゃん。
もう日本の安っぽいテレビドラマなんて無視して、
日本を代表する女優として世界に羽ばたいて欲しいです。

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