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ヒックとドラゴン 聖地への冒険(吹替)

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映画 「ヒックとドラゴン 聖地への冒険」 令和元年12月20日公開 ★★★☆☆

(英語、 字幕翻訳:稲田嵯裕里   吹替翻訳:桜井裕子)
 

 

敵対していたドラゴンと人間は、

臆病者のバイキングの少年ヒックと傷を負ったドラゴンのトゥースの奮闘により共に生きる道を選ぶ。

彼らはバーク島で平和に過ごしていたが、ドラゴンが増え過ぎて島がパンク状態になる。

今は亡き父の後継者となり、若きリーダーに育ったヒックは島を出て

ドラゴンたちと新しい世界を探すことを決意する。                       (シネマ・トゥデイ)

 

バイキングの長、ストイックの死後、そのあとを継いだヒックは、

ドラゴンハンターたちからドラゴンを開放してバーク島に連れ帰っていました。

そこはドラゴンの楽園となりましたが、さすがに過密状態。

ある時ドラゴンの保護活動中に、一匹のナイトフューリーのメスを連れ帰りそびれました。

それはヒックの相棒のトゥースと同じ絶滅されたとされる貴重なナイトフューリー種で、

輝くような白い色をしていました。

 

ある時トゥースはバーク島の森でその白い仲間を発見、恋に落ちてしまいます。

実はドラゴンハンターのグリメルは、彼女(のちにライトフューリーと命名)をおとりにして

ドランゴンたちの王であるトゥースをおびき寄せ、ドラゴンの全滅を謀っていたのでした。

 

ヒックたちはバーク島を出て、亡き父が言っていた「ドラゴンたちの楽園」を探す旅が始まります。

                                   (あらすじ とりあえずここまで)

 

10年近く前に日本公開された第一作(→こちら)は劇場で観ていたので

ぎりぎり思い出すかな?と思いつつ鑑賞。

実は本作は3作目で、2作目は(ゴールデングローブ賞も獲ったのに)日本公開は無し、DVDスルーで

私は観てなかったのでした。

冒頭でざっと「これまでのあらすじ」をやってくれるんですが。

パパが亡くなってるのを初めて知り、そのあとのあらすじが頭に入ってきませんでした。

 

第一作で、ヒックのせいでトゥースが尾羽を失い、その結果ヒックなしでは飛べなくなり、

ヒックも片足を失って、ふたりはお互いなくてはならない関係になります。

飛ぶための道具とかペット以上の関係です。

今回恋をしたトゥースは、ヒックに内緒で単独行動しようとするんですね。

色気づいて親離れしようとする(人間の)子どもみたい。

前作でも、親目線でみてぐっとくるエピソードがいろいろあって、

いい年をした大人がみても良い作品です。

 

バイキングの仲間たち

・アスティ (ヒックのガールフレンド) 

・フィッシュ(ドラゴンオタク)

・タフ&ラフ(男女の双子でいたずら好き)

・スノット(筋肉自慢のうぬぼれや)

・ゲップ (亡き父の親友)

・ヴァルカ (ヒックの母)

 

彼らもそれぞれに「自分専用のドラゴン」を持っていて、なかなか強い絆です。

生きるために必要なものだからペットではないし、

それぞれにちゃんと名前もあって可愛がっているから、専用飛行艇というわけでもない。

それから、バイキングたちは普通の人間なんですが、

ドラゴンの羽を付ければ(上には飛べないけど)滑空はできるし、

ドラゴンの鎧をつければ、火の中も耐えられるから、ちょっとミュータント感あります。

 

実は去年観た後に、Netflixでアニメシリーズが全部見られることを知り、

それを見てから感想を書こうと思っていたのですが

けっこうシリーズの長さがあって、結局まだ見られていません。

(しかも、映画のストーリーをけっこう忘れてしまった)

ついでにいうと、原作もかなりの長編です。

 

 

本作では、このあとドラゴンハンター、グリメル率いる火を吐くドラゴンたちとの闘いがあり、

ピンチをヒックの義足が救い、グリメルに勝利するんですが、

「またいっしょに幸せに暮らしましたとさ」ではなくて、

世界の果てのドラゴンの聖地にはドラゴンだけを残し、

バイキングたちは別の道を歩む・・・

つまり、人間とドラゴンが決別するところで終わっています。

このほろ苦い結末とか、異種共存のはらむ問題とか、

子どもよりも大人の心に響く話かもしれませんね。

 

今回、日本語吹替で観たのですが、

おかしなタレントの吹替キャストもいないし、

グリメル役の松重豊さんは、風貌もそっくりでした。

 

 

吹替キャストに問題なければ、そのほうが「映像をしっかり楽しめる」はずなんですが、

効果音とセリフが重なって、むしろ私には聞き取りづらかったような・・・・

黒っぽい背景が多かったので、ここに白い文字で字幕をいれてもらったほうが

個人的にはありがたかったような気がしました。

 

 

 

ヒックとアスティ、トゥースとライトフューリーにも子どもたちが生まれ・・・・

このあと続編はちょっと難しいような気もしますが、どうなんでしょう?

 

 

 

ところで、ピクサーがディズニーの子会社となって以来、

ほぼアニメ業界はディズニー・ピクサーの寡占状態で、

それに対抗するのがドリームワークスと「ミニオンズ」のイルミネーションくらいです。 

本作はその「ドリームワークス」の代表作。

可愛さや優雅さを狙ったキャラ設定のディズニーとは違って、ドリームワークスのは

「シュレック」とか「ボス・ベイビー」とか「マダガスカル」とか、

ちょっとキモイ部分を残しているような気もします。

 

 

ナイトフューリーの2匹もちょいキモなんですけど、

こうして見ると翼の生えたネコみたいで、ネコ好きにはたまらないかも。

 

賞レースでは

ディズニーの「アナ雪2」、ピクサーの「トイストーリー4」

そして本作のどれかだと思われていましたが、

ゴールデングローブ賞では、ライカという初めて聞く会社の

「ミッシング・リンク」(日本公開未定)が受賞しました。

アカデミー賞の「長編アニメーション部門」はどうなるのか?

楽しみですね。


アナと雪の女王(吹替)

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映画「アナと雪の女王2」 令和元年11月22日公開 ★★★★☆

 

(英語 字幕翻訳 松浦美奈)(吹替翻訳 いずみつかさ ) (訳詞 高橋知伽江)

 

凍てついたアレンデール王国を救い、確固たる絆で結ばれたエルサとアナの姉妹は、幸せに暮らしていた。

ある日エルサは、自分にしか聞こえない不思議な歌声を耳にする。

その歌声に導かれるように姉妹は仲間の山男クリストフ、雪だるまのオラフと一緒に旅に出る。

                                                    (シネマ・トゥデイ)

 

子どもの頃のエルサとアナ。

寝る前にパパ(アグナル国王)から森の話をしてもらいます。

  森は4つの精霊、風・火・水・大地の精霊に守られていた。

  森にすむノーサンドルという先住民に友人のしるしとして

  前の国王(エルサたちのおじいさん)のルナード国王は大きなダムをつくってあげ、

  それをいわう式典に少年だったアグナルもついていったが、

  突然彼らが攻撃してきて、怒った精霊によって、森は深い霧で封鎖されてしまう。

  アグナルは不思議な声を聞き、助け出されて外に出られたが、

  取り残された人たちは今も森にとじこめられている。

  アグナルはアレンデールの国王となったが、

  森がまた目覚めたら、どんな危険があるかしれない・・・・・

 

そして、エルサが女王となった現代のシーン

アナやオラフ、クリストフたちとジェスチャーゲームを楽しんでいたエルサでしたが、

時折聞こえる囁き声が気になってしかたありません。

街は突然の嵐の襲来で災害が起こり、住民たちはみな高台に非難します。

トロールの長老によれば、

「魔法の森の精霊たちを起こしてしまったかも」

「彼らの怒りを鎮める必要がある」と。

 

「わたしを呼んでいるのはいい人だと感じる。私が行かなくては」とエルサ。

ひとりでは行かせられないと、アナ、オラフ、クリストフもスヴェンの馬車で同行しますが

森の霧のなかに5人とも閉じ込められてしまいます。

そこには風・火・水・大地の4つの像がありました。

 

 

オラフがゲインと名付けた風の精霊に攻撃されたり、

そのあとも赤ちゃんトカゲの形をした火の精霊から燃やされそうになりますが

エルサの魔法でなんとかおさめます。

 

「水は記憶をもつ」

そこで彼らは、アグナル少年がノーサンドルの子どもに助けられている水の像を目にします。

 

森のなかにはルナード国王のつくらせたダムがまだあり、

閉じ込められていたアレンドールの護衛官のマティアスたち、

またノーサンドルの民たちが生活していました。

彼らはアナが身に着けていた母の形見のショールをみて驚きました。

それは、ノーサンドルの由緒ある家に伝わるものだ、と。

そして、先ほどの像で、アグナルを助けている子どもも身に着けていました。

アグナル王を助けたのは、ノーサンドル出身の少女で、

それがエルサとアナの母親だったのです!

 

彼らはすべてを知っているアートハラン(北の果ての川)を目指して旅を続けますが

その途中で、父と母が遭難した船の残骸をみつけます。

そこで見つけた地図には母の文字で

「ダークシーを超えてアートハランをめざす」と書かれていました。

 

「母が(敵であるはずの)父を助けたご褒美にエルサに魔力をもたせた」

ということがわかり

「私は自然界と私たちの架け橋となるために生まれた」とエルサはいい、

みんなを追いやって自分一人で出かけます。

 

上着を脱いで髪を結んで海の上を走っていくエルサ。

馬の形をした水の精霊に襲われて冷たい海のなかに沈められますが

馬の背中に乗って調教することに成功します。

 

エルサにはダムの調印式の日に起こった出来事が少しずつわかってきます。

あれは「友情のあかし」ではなく、先住民ノーサンドルの力を弱めるためのものでした。

ルナード国王が武器をもたないノーサンドルのリーダーを攻撃している姿を見て

祖父の罪を確信し、それを遠い場所にいるアナのところにも伝えます。

 

そのころ、アナはオラフと深い穴の中に落ちていました。

出口の光をみつけたものの、オラフの体がどんどん溶けていきます。

「いまきっとエルサは元気じゃないんだよ」

「これから先は君ひとりでいってくれないかな?」

すっかり溶けて消えてしまったオラフ。

アナはオラフの鼻や手やボタンをカバンに収めると走り出します。

「正しいことをしなければアレンデールは救えない!」

大地の精霊であるアースジャイアントを起こして自分を追いかけさせ

ダムを壊して元の状態にもどそうと、アナは命がけで走るのです。   

 

決壊したダムの水はアレンデールの城を飲み込もうをしていましたが、

住民たちは高台に非難していて無事。

水も、すんでのところで、復活したエルサの魔法で止めることができました。

 

アナとエルサの再会。

「ゆきだるま作るのはどう?」

そして、オラフも復活し、

アレンデール国の女王はアナに、

エルサは魔法の森へ行き、5人目の精霊として

自然との懸け橋として生きることを決意します。

4つの精霊をつなぐ中心にいるのがエルサで、

母のショールにもこの模様が描かれていたのです。

                                                 (あらすじ おしまい)

 

11月公開から2か月たちましたが、まだ吹替版の回は親子連れでかなりの席が埋まっていました。

洋画は基本字幕版しか見ないのですが、アナ雪に関しては、もう吹替版の一択です。

一番の理由が高橋知伽江さんによる訳詞で(リップシンクロしている)歌を聴きたかったから。

もちろん主役ふたりの声優の歌と吹替も想像以上に完璧で感心しました。

もっと歌の上手い人はいるかもしれないけれど、

登場人物の歌う歌としてはこれ以上のものはあり得ないと思いますよ!

 

たとえば、エンドソングを歌ってる新人歌手の女性の歌は(私の好みではないけれど)

「声量があるからこっちがいい」という人もいるかもしれないでしょうが、

同じ歌詞を歌っているとは思えないくらい日本語が伝わらないんですよ。(高橋さんの歌詞なのに!)

もう「いい気になって歌ってる」のが見え見えで腹立たしいです。

最後に「うぉ~!」とかシャウトしてましたよね。まあ、エンドソングだからいいのかもしれないけど。

 

実は同じ時間帯で「キャッツ」の吹替版の上映があって、ちょっと迷ったのですが

エンドソングを歌ってる彼女がグリザベラ役だと後で知って、ほんとにこっちにしてよかった!

 

それにしても、このアナ雪2は、お子様にターゲットを絞ってキャラクターで売り上げる選択をせず、

もう、ミュージカルとしてより高みを目指していますよね!

ディズニーのくせに!(褒めてます)

前作が大ヒットしたのだから、おんなじように適当に作っといてもそこそこ売れるでしょうに、

あえて困難な道を選んでる感じ。

キャッチーなメロディラインで鼻歌で歌えるような、素人がカラオケで歌えそうな歌だと

前作ではけっこうあったように思うけど、

今回はお母さんの歌う子守り歌くらいかな?

あの不思議な囁き声が「ファ♯ ファ ファ♯ レ♯~」なので、高さは大したことないですが、

音程の上下が激しいので、「歌える体づくり」してないと無理ですよね。

(早速楽譜を探してみましたが、アナ雪のは「ピアノソロ」ばかりで、

ボーカル譜は来月にならないと発売しないみたいです)

 

前作は当然のようにアカデミー賞の最優秀長編アニメ賞を獲ったのに、

今回はなんと、ノミネートすらされませんでした。

それならせめて「歌曲賞」といいたいところですが、

これは「ロケットマン」があるからなぁ・・・・

「ロケットマン」もおおかたの予想を裏切って、これしかノミネートされなかったので、

ぜひとも獲ってほしいんですよね。

アナ雪2はアニー賞にも8部門ノミネートされているようなので、

むしろこっちのほうがふさわしいかもしれません。

 

ストーリーはなかなか大人向けで、「ヒックとドラゴン3」と同様、せつない幕切れなんですね。

ハッピーエンドでないのは全然いいんですが、

「精霊から特別な力を授かったんじゃなくて、精霊そのものだった」というのはどうなんだろう?

元ネタはアンデルセンの「雪の女王」で、それを改変したわけですが、

そこまで行ったらさすがに「改変」の域を超えてしまっています。

 

「実はエルサはアナの姉妹ではなく、どこからか連れてこられた」

とはひとこともいわず、あくまでもお母さんから生まれた人間の子どもの設定なのはいじらず

「精霊そのもの」といわれてもね。

 

それに4つの精霊は「地水火風」という熟語があるように、根本的な四大元素です。

5つにするなら「地水火風空」で「空」ならありえるんですけど、

エルサは「雪」とか「氷」くらいしか該当しないから、なんか格下感拭えないです。

 

「白雪姫」とか「人魚姫」とか「ラプンツェル」とか、民話に中途半端に改変して

子どもたちにでたらめを教えてきたディズニーアニメの罪を考えると、

本作は全然別物なので、まあ「自由にやってください」という感じなんですけどね。

 

民話オタクのおばさんは、グダグダ文句をいう楽しみがありますけど、

2.3歳の小さい子たちはちゃんと楽しめたんだろうか?

オラフやスヴェンの出てくるシーンくらいしか面白くなかったと思いますよ。

「あんまり小さい子は無理かも」とお断りを入れた上に、

4歳以下はお金をとったらダメだと思いますけど・・・

 

めちゃめちゃ長いエンドロールもダメ押しの嫌がらせとしか思えない。

いちおうおまけ映像はちょっとありましたけど、

「3歳以上有料」のお子様映画をうたっているなら、ちょっと考えてあげないと・・・・

 

歌があまりに良かったので、★4にしてしまいましたが、

私のまわりに座っていた小さい子たちはほぼ熟睡していたので、

頑張って無理して連れて行くのは、おすすめできません。

リチャード・ジュエルは変なやつ?

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「リチャード・ジュエル」が日本で公開されて2週間。

去年暮れに公開されたアメリカでは、

「女性記者の枕営業してるかのような表現は事実でない」という新聞社の反論から

ボイコット運動にまで広がっているそうですが、

それにくらべたら日本ではかなりの高評価のようですね。

それはいいんですけど、

日がたつにつれて、なんか納得いかないモヤモヤ感が高まってきています。

先日書いた記事を書き直そうかとも思ったのですが、

それも面倒なので、ここでつぶやかせて頂きます。

 

まず、一番気持ち悪く感じたことは、

映画をみてまず感じたことが、ほとんど全員「同じ」ということ。

最大公約数的にいうと

「杜撰な捜査で無実のリチャードを容疑者にしたFBIへの怒り」

「マスコミによる民意を先導する過剰報道への怒り」の2点に集約され、

そしてそれを、来年オリンピックを控える日本への警告ととらえたり

当時はまだなかったSNSでのフェイクニュースの恐ろしさや

正義感からのリツイートをしたつもりが加害者となりえることとか

この映画をみたほとんどの人がここから「教訓」を得ている印象です。

 

 

「無罪の彼がいかにして犯罪者にまつりあげられてしまったか?」

「どう戦って無実を勝ち得たか?」

私も観た直後は、たしかにこういう映画だと思ったんですが、

「イーストウッドってこういうことを伝えたくて映画を撮る人だっけ?」

という思いが日増しに高まっております。

 

そもそも「正しく公正に伝えること」を第一に考えるのなら、

実話に基づいたこの作品の中で、

FBIや女性記者やマスコミをここまで容赦なく悪人にするかな~?

それが明らかな「事実」ならともかく、ボイコット運動にまで発展するほどだから

「思い込み」といわれても仕方ないくらい。

 

イーストウッド監督の「事実に基づく」作品は、過去作でも

「事実を正確に届ける」という映画ではありません。

たとえば「15時17分、パリ行き」も、

事件に遭遇した主役の3人の青年役を本人たちがやっているくらいだから、

ノンフィクション感Maxなんですけど、

「タリス銃乱射事件」を客観的に描いているとは全くいえません。

 

この事件を映画化しようとしたら、一般的には・・・

① パリでイスラム過激派によるシャルリー・エブド襲撃事件があったばかりの状況で

なんであんな怪しい男を乗せてしまったのか? 危機管理はこれでいいのか?

② 本来乗客の命を守らなくてはいけない乗務員が自分の身を守るために

乗務員室に閉じこもりカギをかけてしまった。これはけしからん!

③ そのため、自分の身をなげうってテロ犯に立ち向かった乗客たち!

その勇気に感動!

まあ、このへんを押し出してくるはずなんですが、

その辺は全くスルー。

たまたま同じ車両に乗車していて、通報のためにガラスを割って怪我をしたのが

フランス人俳優のジャン=ユーグ・アングラード。「シンク・オア・スイム」の

おちぶれた元ロック歌手、シモン役が彼でした。

 

 

事件を知ってる人だったら、彼も出るんじゃないかと期待してたかもね。

でも、当然スルーです。

 

もっと驚いたことに、犯人を取り押さえて大統領に勲章もらったのは4人で、

彼らのほかにもう一人いたんですよ。(この一番左側の英国ビジネスマンのおじさん)

 

 

映画の中の実写部分に映ってはいたけど、彼もまたスルーでした。

それから、3人と同年代の犯人のことも、原作本にはありましたが、映画では全くスルー。

 

そのかわりに、3人の子ども時代の問題行動とか、失敗や挫折や、観光旅行の顛末などを

「それ必要?」と思ってしまうくらい、ぐだぐだ描いています。

明らかに「伏線」とおもわれるものは多くはないのですが、存在し、

すべてが迷いなく犯人に向かっていった「あの瞬間」に集約されている!

  ↑

これだけをいいたくて、1本映画をとってしまったように思いました。

 

で、「リチャード・ジュエル」に戻りますが、

「マスゴミのインチキな報道はうのみにしないように」とか

「人を見かけで判断するのは止めましょう」

とか、そんな教訓を授けるために撮ったとは、とても思えないんだなあ。

 

実際の事件を元ネタにして「独自の視点でちゃちゃっと料理して」

コンスタントに映画をつくっているイーストウッドですから、

今回みたいに新聞社から反論されたりしちゃうわけで、

そんな彼が「事実を歪曲した報道はけしからん!」なんて

教訓たれるわけないですよ。

 

 

かなり最初の方で、ワトソンがリチャードに

「君は警官になれるとおもうけど、

(ほかのやつらみたいに権力をふりかざす)ゲス野郎にはなるなよ」

といってましたが、これがこの映画のキモだったような気がします。

「権力は人をモンスターにする」とかもいってたかも。

 

リチャードの

「人を守る仕事がしたい」

「大勢の人の命を救いたい」

という思いは純粋だとは思うのですが、

彼は「法執行官」という「権威」に非常にこだわりがあって、

「自分はそっち側の立場の人間だ」と常に思っているわけです。

実際は民間の警備員だから、そこまでの力はないと思われるのですが、

もし「力」をもっていたら、きっとそれを振りかざしてしまう危うさはあります。

 

ワトソンはリチャードのそんな危うさに最初から気づいていたように思います。

スニッカーズが好物だと知って差し入れしてくれたのも、

ワトソンのゴミ箱の中身をみていたからで、

普通の感覚だったら、ちょっと気持ち悪いですよ。

「人のごみを勝手に見るな」といいながらも、

リチャードと話をするうちに

単に人を喜ばせたい「いいやつなんだ」という確信があったから

変わり者の彼と親しくできたのかも。

 

リチャードは思い込みが強くて、空気も読めず、けっこうヤバいヤツだということは

ちゃんと映画の中でもわかるようになっていたし、

ワトソンもあれだけ仕事が来ないところをみると、そんなに器用に立ち回れる弁護士じゃなかったのかも。

そのふたりの出会いが奇跡だったんですよ。

 

ただ、不利な状況からワトソンの腕で「裁判をひっくり返した」って話ではありません。

どうもそう思っている人がけっこう多いみたいですが、リチャードは逮捕すらされてなくて

もちろん起訴もされてないから、被告人でもないです。

88日間、容疑者扱いされて、日常生活が脅かされたのは事実です。

ただ後日、マスコミ各社を訴えてそれなりの和解金を手にして、念願の警官にもなれて・・・・

リチャードの発見したバッグのなかに「たまたま」本物の爆弾が入っていたということが

彼の人生を翻弄し、一時はどん底まで沈められたものの

そこそこのプチハッピーエンドになれてよかったです。

でも、その後のリチャードは、

真犯人の逮捕から4年後の2007年に

糖尿病の合併症により、わずか44歳で亡くなった、というのが切ないです。

 

合掌

テリー・ギリアムのドン・キホーテ

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映画 「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」 令和2年1月24日公開 ★★★★★

(英語・スペイン語、 字幕翻訳 松浦美奈)

 

 

仕事の意欲を失ったCM監督のトビー(アダム・ドライヴァー)は、スペインの田舎で撮影をしていた際、

学生時代に自分が撮った映画『ドン・キホーテを殺した男』のDVDを持つ男と出会う。

舞台となった村を訪れたトビーは、

かつて主役に抜てきした靴職人の老人ハビエル(ジョナサン・プライス)と再会する。

自分を本物の騎士だと信じる老人は、トビーを従者のサンチョだと思い込み、

強引にトビーを連れて冒険の旅へと繰り出す。                  (シネマ・トゥデイ)

 

 

CM監督のトビー(アダム・ドライバー)は

スペインの田舎でドン・キホーテの登場するCMのロケをしてるんですが

撮影はなかなかうまくいかず。

「スペイン人キャストは難しいことができない」

「そもそもスペインロケは監督のアイディア。巨人はロンドンでCG処理してしまえば?」

とか、助手のルパートたちも勝手なことを言っています。

 

その夜、ジプシーの物売りから古いDVDをすすめられるんですが、それはなんと、10年前に

トビーが卒業制作でつくった初めてのモノクロ映画「ドン・キホーテを殺した男」でした。

懐かしい~!

そのDVDを会社のボスの女ジャッキーの部屋でみていると、ボスがかえってきて逃げ出します。

自分の部屋でDVDの続きをみていると、10年前の撮影のことが思い出されます。

キャストは現地調達で、靴職人のハビエルを主役にして、苦労しながらも生き生き撮影していたあの頃・・・

セリフがおぼつかなかったハビエルもだんだんサマになってきて、

バルの店主ラウルの娘で15歳のアンジェリカというミューズを見つけたりしたことなど・・・

 

その村がすぐそばだと知って、翌朝、たまらずにバイクを借りて訪れます。

石造りの家のならぶ坂道、鐘の音・・・

完璧だよ!ドン・キホーテは生きている!と興奮するのですが、

どうやら村人たちは10年前の映画の撮影を快く思っていないらしく、

サンチョ役は酒の飲みすぎで死に

アンジェリカは「トビーのせいで」マドリードに行って身を落としていると

父のラウルに責められます。

自分はドン・キホーテと信じているハビエルは、ぼろい小屋に監禁されており

門番みたいなばあさんにお金を払って再会できたのですが、

彼はトビーをみつけると「サンチョ・パンサ!」といって、いきなりハグしてきます。

するとさっきのばあさんがスタンガンみたいな電流の棒でハビエルを懲らしめにかかるのですが

組み合っているうちに火が燃え広がって、小屋は燃えてしまい、

トビーはバイクで逃げ出して撮影現場へ戻ります。

 

ところがバイクのナンバーからトビーが割れて、警察がやってきます。

そこへロシナンテに乗ったハビエルが現れ、警察車両からトビーを救い出し

トビーは自称ドン・キホーテの「忠実な業者(従者)サンチョパンサとして」

旅を続けることになります。           (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

いやぁ、めちゃくちゃ面白かったです。

もっと支離滅裂を想像していましたが、トビーが(時々妄想が混じりますが)

ほぼほぼ正気なので助かりました。

理解できたかどうかはわかりませんが、天才テリー・ギリアムの脳内が覗けたようで

それだけでも満足。

ほぼ全シーン「見どころ」だったし。

 

 

プロモーションがこんな感じだったので、こういうコラージュ的なビジュアルなのかと思ったら、

ちゃんと美しく壮大な美術で、でもこだわりがたくさん詰まっていて、楽しいったらないです。

(CGも少しはあるけど最小限)

 

本作は構想30年「呪われた企画」といわれるくらい数々の厄難にあって、ようやく完成した映画です。

実は少し前に「ロスト・イン・ラ・マンチャ」という映画を観たんですが(詳細はのちほど)

これはドン・キホーテ→ジャン・ロシュフォール、トビー→ジョニー・デップで撮影が始まったものの

病気とか天災とか保険関係とかありとあらゆる問題発生で撮影中止に追い込まれてしまった

その顛末を撮影した2002年のドキュメンタリー映画です。

テリー・ギリアムの背景に溶け込むのは、ビジュアル的にはジョニデ氏かもしれないけれど、

妄想ジジイに振り回されるトビーというキャラにはアダムのほうがより適役。

 

アダム・ドライヴァーはカイロ・レンみたいなクールな役もいいですが、

①窮地に陥ってあたふたしてるシーン

②やけくそになって歌いだすシーン

が私は大好物なので、今回①も②もあって、何が嬉しいって、これですよ!

(ちなみに、「マリッジストーリー」でも①②ともあります)

 

 

動画を貼りたかったのですが、うまくいかず。

やけくそになって、超笑顔でスージーの歌を歌い踊っております。

ドン・キホーテ役のジョナサン・プライスがまたいい声なんですよ。

シェイクスピアの舞台俳優ですから当然でしょうけど、

今年の主演男優賞ノミネートの旬のふたりが、目を輝かせておバカなことをやってくれるんですよ!

なんという眼福!

(悪いけど、ジョニーデップ版、打ち切りになって正解かも)

 

(あらすじの つづきです)

ハビエルとトビーの二人旅では、現実と妄想が入り混じった不思議な世界のオンパレード。

おなじみの風車のシーンは想定内ですが、

モロッコ人の村に行けば、昔の宗教裁判(異端者の迫害)と不法移民の摘発がごっちゃになったり

成長したアンジェリカを見つけたものの、彼女はエスコートガールをしていて

トビーの会社のスポンサー(多分)のゲスい富豪のウォッカ王に囲われの身なんですけど、

彼らにとってはあくまでも「思い姫」のドルシネア姫なのです。

 

ふたりはジャッキーにウォッカ王の城の仮装パーティに招待されますが、

そこの人たちはドン・キホーテの本をしっかり読んでいて、コスプレも完璧。

どうやら、ドン・キホーテだと思い込んでいるハビエルとトビーをからかおうと

大掛かりな芝居を仕込んでいるようです。(原作にも侯爵夫人の城で同じようなことがありました)

広間の中央には悪しきものを焼き尽くす巨大なタワーがしつらえており、

アンジェリカの身を案じたトビーは彼女を探し回り、

それを助けようとしたハビエルは、勢いあまって窓の外へと転落してしまいます。

 

瀕死のハビエルは、自分は正気だったと最後に告白します。

「わしの名は靴職人のハビエル、忘れられた老人」

面倒をかけたことを詫びた彼は、自分のサーベルをトビーに託して息絶えます。

 

アンジェラと一緒にハビエルの遺体を村に運ぶ途中、

トビーは巨人の襲撃を受けます。

 

 

ところが、トビーが巨人だと思っていたのは風車で、

かれはハビエルからドン・キホーテを継承してしまったのですね。

そしてアンジェリカをお伴にその後も旅を続けていくのです。       (あらすじ おしまい)

 

 

現実と妄想が入り混じるところでは

直後にネタバレがあるところ(美女とキスしてるつもりが羊とだった)

しばらくしてからネタバレがあるところ(スペインの黄金とおもっていたら、さびた鉄の破片だった)

最初から妄想とわかってるところ

(明らかに羊の群れなのに「賢者たちが白いローブをまとってる」とかいってる)

など、妄想だと明言しているところと、最後まであやふやにしてるところとが混在しているので

論理的な人には受け入れられないかもしれません。

でも(私みたいに)妄想癖のある人にとっては、ぜんぜんフツーで、むしろ親切すぎるくらい。

 

そういえば、20年くらい前に、徹夜で松阪から伊勢神宮まで歩くイベントに参加したとき、

頭が朦朧として、夜明け前の空から白い天女が降ってきたり、

伊勢神宮の参道の両端に白装束の人たちがずらっとうずくまっているのが見えたり、

車止めのコンクリートがフカフカの枕にみえたりしたな~なんてことを思い出しました。

 

こういうちょっとヤバめの経験のある人には間違いないですが、

(テリー・ギリアムはもちろん)ジョナサン・プライス、アダム・ドライヴァー好きにも絶対におススメ!

★5つつけましたけど、あとは自己責任で観に行ってください!

 

これから観たい映画(115)

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12月公開

▲「私のちいさなお葬式」 → 感想UP

▲「カツベン!」  → 感想UP

▲「ある女優の不在」  → 感想UP

〇 「スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け」

▲ 「だれもが愛しいチャンピオン」 → 感想UP

▲ 「男はつらいよ お帰り寅さん」 → 感想UP

 

1月公開

▲ 「パラサイト 半地下の家族」  → 感想UP

▲ 「マザーレス・ブルックリン」  → 感想UP

▲ 「フィッシャーマンズ・ソング」  → 感想UP

〇 「フォードvsフェラーリ」

〇 「ジョジョ・ラビット」 (TOHO新宿、TOHOシネマズシャンテ)

▲ 「リチャード・ジュエル」  → 感想UP

▲ 「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」 → 感想UP

〇 「母との約束,250通の手紙」  (シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー)

〇 「ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の秘密」 (ユナイテッドとしまえん)  

 

2月公開

〇 2/7  「グッドライアー 偽りのゲーム」 (新宿ピカデリー イオン板橋)              

〇 2/7  「プロジェクト・グーテンベルク 贋札王」 (TOEI丸の内)                         

◎ 2/7  「1917 命をかけた伝令」 

〇 2/14 「ふたりのJJリロイ」(シネマカリテ・恵比寿ガーデンシネマ)

◎ 2/21 「スキャンダル」

〇 2/28 「野性の呼び声」 (TOHO新宿・丸の内ピカデリー)     

〇 2/28 「黒い司法 0%からの奇跡」 (ユナイテッドとしまえん)

                                        

                                                     〇 観たい作品

                                                              ◎ 絶対に観たい作品

                                                              ▲ すでに鑑賞済

                                                              × 23区内で上映終了

 

 

2月10日のアカデミー賞発表まであとわずか。

今年はNetflix配信作が多かったこともあり、例年よりはるかにたくさんのノミネート作を

授賞式前に日本でもみられるようになりました。

「1917」もぎりぎり見られそうで、しかも公開館も多いから、今年は恵まれていますね。

フォードvsフェラーリ

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映画『フォードvsフェラーリ」 令和2年1月10日公開 ★★★★☆

(英語、字幕翻訳 林完治 /  字幕監修 堀江史朗 )

 

 

カーレース界でフェラーリが圧倒的な力を持っていた1966年、

エンジニアのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)はフォード・モーター社からル・マンでの勝利を命じられる。

敵を圧倒する新車開発に励む彼は、

型破りなイギリス人レーサー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)に目をつける。

時間も資金も限られた中、二人はフェラーリに勝利するため力を合わせて試練を乗り越えていく。

                                                       (シネマ・トゥデイ)

 

1959年のルマン24時間耐久レース。

キャロル・シェルビーは、スーツに火が燃え移りながらもレースを続け

米国人として初めて、ルマンを制します。

ただ彼の心臓はすでにボロボロでドクターストップ、

引退して「シェルビーアメリカ」を立ち上げます。

 

一方、小さな車の整備工場を経営するケン・マイルズは、

草レースでとてつもない走りをみせる凄腕ドライバー。

メカニックも腕は最高ですが、顧客とはいつも揉めて経営は上手くいきません。

「スポーツカーはもっときびきび走らないと」

「そんな運転では車が窒息してしまう」とか、ついつい口にしてしまって・・・・

ついには整備工場は国税庁に差し押さえを食らってしまいます。

 

そのころ米フォード社では、社長のフォード二世が

会社の立て直しのアイディアを募っていました。

リー・アイアコッカは、ベビーブームの若者たちにアピールするような

もっと速くてセクシーな車を作るべきと進言し、

ルマンで連勝しているフェラーリを買収しようということになります。

ただ、交渉の場面で、創業者のエンツォ・フェラーリはだんだん感情的になり

「フォードの役員は傲慢で無能」

「社長もしょせん二世で、初代には勝てない」

「ミシガンに戻って醜い車を作ってろ」

と暴言を吐いた上に、直後にフィアットとの合併が報じられます。

つまり、フォードとの交渉のテーブルについたのは、

フィアットに高く買わせるための策略だったのです。

 

リーがこれをそのまま社長に伝えると、頭にきたフォード二世は

「金に糸目はつけないから、最高のエンジニアとドライバーを集めろ!」

と、ルマンに参戦することを宣言し、

ここで白羽の矢がたったのが、キャロル・シェルビー。

「どうすればルマンに勝てるか」というリーに

「優秀なドライバーはお金では買えない」と答えながらも

彼の胸のなかには、メカニックとしてもドライバーとしてもとびきり優秀で

(ただ、非常に扱いづらい)ケン・マイルズの一択しかありませんでした。

 

ルマンまで90日。

そんな短期間でイチから作り上げることなど無理を承知で、マイルズを説得。

マスタングの新車発表会に息子のピーターも連れて参加するのですが、

スーツ組トップのレオ・ビーブはこの親子が新車に触れるのをあからさまに嫌悪し

一方で、自慢の新車を酷評するマイルズに、リーもシェルビーもひやひやします。

 

マイルズはGT40の改良に加わり、エンジンの軽量化にまで取り組んでいきます。

テストドライブをしていくうちに、ラップタイムはどんどん良くなって、スタッフの信頼も得ていきますが、

レオはそんなマイルズを疎み、

「彼はビートニク。うちのイメージには合わない」と切り捨てます。

「テレビの取材に不満をこと細かくしゃべるかも。宣伝を考えたら、彼は使えない」

そして、ルマンのドライバーから彼を外し、結果、フォードはフェラーリに惨敗します。

 

「フォード巨額の損失」の見出しが新聞に載り、

惨敗したことに立腹のフォード社長の前でシェルビーは

「あの赤いファイルがあなたのところにいくまでの間に、重役たちの余計な忖度が加わる」

「贅肉だらけの組織が問題だ」

「ただ、ルマンでは、直線ではGT40の方がフェラーリより明らかに速かった。」

「我々は明らかに精神的にフェラーリを追い詰めた」

すると社長は

「フェラーリを叩き潰せ」と、シェルビーを激励します。

 

マイルズたちはさらに改良をつづけて性能アップに励みますが、

シェルビーのところにリーから電話がかかってきます。

「レオ・ビーブがレーシング部門のトップになった。彼はマイルズをクビにするつもりだ」

シェルビーはマイルズを守るために大きな賭けをします。

 

翌日フォード社長がスーツ組を引き連れてシェルビーのチームを訪問した際、

邪魔するに決まってるレオをオフィスに閉じ込め、

フォード社長に

「900万ドルの走りを体験してみませんか?」と

社長を助手席に乗せて、高速走行を体験させます。

あまりの恐ろしさに社長は号泣。

「知らなかった、父さんに見せてやりたかった、乗せてやりたかった」

そこでシェルビーは、社長に直談判します。

「この車を作ったのはマイルズ。彼をディトナのレースのドライバーに加えたい」

「そこで優勝したらルマンを走らせ、負けたらシェルビーアメリカを譲ります」

さて、シェルビーとマイルズはレオやフォード社長をぎゃふんといわせられるのか???

                                             (あらすじ とりあえずここまで)

 

車を運転するのが絶望的に下手な私にとって、

まるごとカーレース、みたいな映画はスルーしたいところですが、

6年前に見た「ラッシュ プライドと友情」は★5つでした。

マット・デイモンとクリスチャン・ベイルのW主演に惹かれてすごく期待していたのですが、

それぞれのかかえる問題や致命的な怪我とかドラマ部分の多かった「ラッシュ」に比べたら

本作はひたすら走ってばかりなので、走りの好きな人、メカに強い人向きだったかも。

 

いや、それ以前に、F1とルマンを同じように思っていた自分が情けないです。

自動車レースといっても、これらは、ほぼ別物。

私みたいな人のために簡単に説明すると(間違ってるかもしれませんが・・・)

F1はフォーミュラーカーの一番グレードの高いレースのシリーズで、

フォーミュラーカーというのは、車輪が横に突き出て運転席もめちゃ狭くて、

絶対に路上では走れないようないわゆるレーシングカーのこと。

 

これに対して、ルマンで使う車は、一応レーシングカーではあるけれど、

かっこいいスポーツカーのプロトタイプみたいな感じです。

 

F1のレースは1時間とか2時間とかですが、

ルマンはまるまる24時間を複数のドライバーが交代して走って車の耐久性を競い、

先にゴールした人の勝ち、ではなくて、24時間に13キロくらいのコースを何周するかで競われるのです。

(すいません、こんなことも知らないで観ていました。)

 

それから、観た人のほとんどが感じたと思うんですが、

この話は、全然「フォードvsフェラーリ」じゃないんですよね。

たしかにフェラーリはイタリア車で、ほんの20年くらいまえは戦争の敵国でしたし

フォードは爆撃機とかも作っていたから、

フェラーリに負けてたまるか!という気もちは強かったでしょう。

むこうのエースドライバーのバンティーニというのが、

なんか女性に持てそうな色気むんむんのいい男、というのもねぇ・・・・

レース場でのイタリア語は全く字幕がつかないので

何言ってるかわからないのですが、それにしてもイタリア語って喜怒哀楽の激しい言葉ですね。

なに言ってるかわからないけど、何思ってるかは伝わります。

 

でも、マイルズとシェルビーの一番の敵は、イタリアという国でもライバル会社でもなくて、

フォードの中の「抵抗勢力」なんですよね。

フォード二世は気まぐれだから、うまくあしらえばこっちの有利に引きずり込むことは可能ですが

どこまでもマイルズを嫌うレオ・ビーブみたいな権力者はどうしたらいいんだろ?

実際の彼はけっこう人格者だったといわれてますけど、

本作のなかでは、徹底的にクズに描かれています。

 

(あらすじの続き)

実際のレースを知っている人にはネタバレでもなんでもないですが、

知らない人は知らずに見た方がいいと思うので、この先はご遠慮ください。

 

ディトナ耐久レースの当日。

レオは記者たちに、「レース中のエンジンの回転数に至るまで全部自分が決める」

とか、ドライバーへの指示は全部自分がしている風なことを偉そうに言っています。

彼は当然ながら、明らかにフォードの別チームに肩入れしていたのですが、

マイルズが驚異的な出力を保って、見事優勝。

ルマンへの切符を得ます。

 

ルマン当日。

スタート直後に事故った車に当てられて、マイルズの車のドアが閉まらなくなるアクシデント発生。

修理のために時間をロスしますが、どんどんラップタイムを更新し、マイルズがトップに躍り出ます。

ライバルのフェラーリはすべて走行不可となり、なんとフォードが1~3位を独占することに。

 

ところが、ここでフォードの上層部から、おかしな指令が出ます。

フォードの3台が同時に並んでフィニッシュラインを超えたら絵的に映えるから

マイルズに「減速するように」というのです。

シェルビーは納得いかないものの、その指示をマイルズに伝え、

「自分の意思で走れ」というのですが、その後もマイルズが速度を落とすことはなく・・・・・

 

ところが、時間ギリギリになって、マイルズの気持ちが変化します。

後ろから並んで走っている2台のフォード車を待って、同時にゴールしたのです。

会場は大盛り上がり。

マイルズも、たぶん人生のなかではじめての「チームプレイ」の心地よさに浸っていると、

ここで驚くべき宣告が・・・・・

 

2位で走ってきたマクラーレン・エイモン組のほうがスタート位置が後ろだったということで

彼らが優勝、マイルズ・ハルム組は2位となってしまったのです。

 

怒りに震え、マイルズには申し訳なさでいっぱいになるシェルビー。

ただ、ライバル社の社長エンツォ・フェラーリがマイルズを称える姿が見え、

またマイルズ自身も、優勝をのがしたことよりも、GTの改良点のほうが気になるらしく、

さらなる努力を重ねるのですが、その新車のテストドライブ中にブレーキが利かなくなり

息子のピーターの見ている前で亡くなってしまいます。

 

半年後、ピーターを訪ねるシェルビー。

「父さんはおじさんの友だちだったね」

「君は自慢の息子だった」

そしてシェルビーは最初にマイルズから投げつけられたスパナを額にいれて飾っていたのですが

それをピーターに渡します。

「言葉はときに役に立たないが、道具は役に立つ」

「これは機械を組み立てたり直したりできる、君にやるよ」

 

エンドロールでは、

フォードはルマンを制した唯一のアメリカのメーカーで、翌年から69年まで連勝したこと

ケン・マイルズは、2001年にモータースポーツの殿堂入りをしたことが伝えられます。

                                           (以上 あらすじ おしまい)

 

いやぁ、3台並んでのゴールとか、漫画の中の世界みたいなことが現実にあったんですね。

きっと有名な話なんでしょうけど、ウソだろとおもって、帰ってwikiをチェックしてしまいました。

事実でした!

思わず引いてしまうようなダサいアイディアだと思うんですけど、

当時の反応はどうだったんでしょうね?

 

自動車レースに参加するのは、とてつもない経費がかかるから、

大衆車を作っているようなメーカーが参戦するのは賛否あると思うんですけど・・・・

歴代優勝チームの一覧を見ていたら、今はトヨタが2連勝してるんですね!(そんなことも知らなかった)

今のトヨタの社長の章男氏は、豊田家の直系でありながら、

テストドライブとかもやっちゃう凄腕ドライバーでもあります(これはCMでやってた!)

シェルビーの高速運転につきあって、怖くて号泣したフォード二世とは大違いですね。

 

wikiをあちこち見ていたら、「フェラーリ」の項にこんなことが書いてありました。

フォードが金に糸目をつけずにルマンに参戦するといったのは、

愛人にいいとこを見せたかったからなんだって!

こんな理由では、レースに命をかけるドライバーたちが気の毒です。

 

ここまでヘンリー・フォード2世がル・マンでフェラーリを破ることにこだわったのは、エンツォに買収交渉を袖にされたことだけではなく、1960年代前半当時不倫をしていた(その後1965年に結婚。1980年に離婚)イタリア人の上流階級の愛人、マリア・クリスティナ・ベットーレ・オースティン が、フォードではなく、フェラーリの大ファンであったことが影響していると言われている(実際にその姿が徳大寺有恒によってル・マンで目撃されており、イタリア人らしくフェラーリを応援するマリア・クリスティナに対し、ヘンリー・フォード2世が嫌な顔をするシーンが目撃されている)。また、フェラーリ売収にも、イタリア人のマリア・クリスティナと付き合い始めたことが影響したという話もある。

また、このように「愛人にいいところを見せよう」と、莫大な資金にものを言わせ勝利をもぎ取った話は、「金がすべて」のアメリカでは「美談」として通るが、ヨーロッパをはじめとする各国では「恥ずべきこと」と受け取られ、現在でもヨーロッパではフォードとアメリカの評価は決して高くない。実際に、2019年にこの騒動がアメリカで『フォードvsフェラーリ』として映画化されたが、ヨーロッパではその題名では受け入れられず、イタリアやイギリス、フランスなど主要なヨーロッパ諸国では『ル・マン66』と作品名が変わっている。

 

ヨーロッパでフォードが嫌われているのはわかりましたが、

本作自体はフォードを称えフェラーリをヒール役にする映画ではけっしてないので、

安心してヨーロッパの人にも見て欲しいです。

 

レースドライバーは、普段の生活では安全運転をするイメージをもっていたのですが、

シェルビーはけっこう一般道でも無謀な運転をしていたし、

(レーサーではないですが)マイルズの妻のモリーまでが、自分の意見を通すために

かなりの危険運転してたシーンがどうしても受け入れられず、

個人的には「大好きな映画」とはいえないんですが、

車好きの人にはぜひ音のいい映画館で観て欲しい作品だと思いました。

ロスト・イン・ラ・マンチャ

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映画「ロスト・イン・ラ・マンチャ」 平成15年5月10日公開 ★★★☆☆

(英語、 字幕翻訳 不明)

 

 

 

 

テリー・ギリアム監督が次回作「ドン・キホーテを殺した男」の準備に取り掛かったとき、

キース・フルトンとルイス・ペペはギリアム監督からメイキングの製作を依頼される。

やがて2000年秋、ヨーロッパ資本としてはかつてない規模の本作は

ついに主演のジョニー・デップをはじめヴァネッサ・パラディ、ジャン・ロシュフォールら出演者が顔を揃え

撮影を開始した。

ところが、撮影は上空を飛び交うNATOの戦闘機の騒音に邪魔されてしまう。

さらに、ロシュフォールの病気降板、豪雨によるセットの崩壊という事態が追い討ちを掛けるのだった…。

                                                        (allcinema ONLINE)

 

構想何十年、なんて映画はよくありますが、実際に俳優を集めて撮影が進みながらの中止は

本当に残念で悔しいこと。

先日観た「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」は9回の頓挫のうえにやっとこさ完成した

奇跡の作品だったんですね。

 

本作「ロスト・イン・・・」は、数々の頓挫のなかから、

「デップ・ロシュフォール版」の公開用のメイキングテープからつくったドキュメンタリーになります。

 

「幻の作られなった映画のドキュメンタリー」としては、以前渋谷のアップルリンクで鑑賞した

ホドロフスキーのDUNE」が最高でした。

どこまで本気かホラなのかわからない監督の物言いに、ホント、見る側でよかった!と思いましたもの。

ホドロフスキーにくらべたら、テリー・ギリアムはけっこう「まともで常識的」で、

見どころは、ちらちらと映るジョニー・デップの姿くらいかな?と思ったんですが、

「ドライヴァー・プライス版」の完成版といっしょに見たら、これがなんとも面白いのです!

 

「テリーは画面に多くを盛り込みすぎる」

「頭の中に限りないアイディアがつまっている」

スタッフたちは口を揃えてそう言います。

「ここで羊の群れを登場させよう」とか

「よし、ここで遠雷だ!」とか、急にいわれたって、ホント、困りますよね。

めんどうなことはセットでやりたいし、

CG使ってよかったら、ちゃっちゃっとできちゃいますが、それは絶対NGだし・・・・

ドン・キホーテ(完成版)の冒頭でも、CM監督のトビーが同じようなことをいっていて

「トビーはギリアムの分身なんだ!」と実感しました。

 

制作費が潤沢にあれば、かなりの無理もできるかもしれませんが、

ギリアムの作品はどちらかというとカルト系で、万人好みではなく、

しかも「バロン」で盛大にやらかしてしまった経緯があるので、どうしてもスポンサーは渋りがち。

それでも、それでもギリアムはドン・キホーテのように猪突猛進であきらめることを知らないのです!

 

ギャラもそう多くは払えないけど、こだわりの人選をしてしまうから、

たとえば、超多忙のジョニー・デップもほかの仕事のスケジュールの間をぬって出演してもらうわけで

スケジュール調整がすごく大変!

(画面からの印象では)デップは早くから現場入りしていてやる気満々。

ロシュフォールも英語をマスターして乗馬も特訓して撮影に備えていたのに、

むしろ一番条件をつけてきたのがヴァネッサ・パラディ側で、

彼女を出演させるのに一番苦労したみたいです。

それほどの女優か?!(失礼)って思いましたけどね。

多分彼女はミューズ的な存在だから、完成版のアンジェリカに近い役だったのでしょうが

15歳の役は無理だから、きっと設定も違うのでしょうね。

(アンジェリカは新人女優がやってましたが、なんとなくヴァネッサに似てたかも)

 

なんとかキャストが集まって撮影がはじまったものの、

ロケ地のすぐそばにはNATOの施設があって、演習がはじまると音声オフで撮影するしかなく・・・

またいきなり洪水がおきて機器が水をかぶったり、

天気が回復して撮影をはじめようとしたら、まわりの風景が一転して、

岩の色とかもぜんぜん違ってしまって繋がりません。

 

あと、資金難で、いろんな人にスポンサーになってもらっているので

見学者も多く、そういう人たちにも愛想よく対応しなくてはいけない・・・

この辺りのエピソードも、ドン・キホーテの本編になかに出てきてました(笑)

 

ただ、最大かつ決定的な要因は、「ロシュフォールの椎間板ヘルニア」でした。

彼の作品への意気込みはただならぬものがあり、痛みを我慢して撮影を敢行していたのですが

とても続行できる状態ではなく、彼の回復を待つことになりましたが、

保険会社がすべてを補填できるわけではなく、

ロシュフォール個人が負担することが起きるかも・・・

というのが、撮影中止の一番の理由だったようです。

撮影中の怪我による損害は補償するけど、元々の持病は本人の責任、ってことなんでしょうかね?

 

結局保険会社が1500万ドル出してくれたものの、脚本は取り上げられてしまい、

また撮影をしたかったら、これを買い戻せ!ってことなんですが、

ギリアムはその後も何度もチャレンジし続け、

ドン・キホーテ役には、ロバート・デュパル、ジョン・ハート、ジェラード・ドパルデューなどなど・・・

トビー役にもユアン・マクレガー、ジャック・オコンネル、ジョニー・デップ(再)などなど・・・

調べれば詳しい経緯はわかるのですが、あまりに膨大なので省略します。

 

とにかく、大変な思いをしてようやく完成した「ドライヴァー・プライス版」のドン・キホーテは

ホントにこれで良かったのだ!

今まで頓挫してむしろラッキー!

と、確信できるような完成度です。

 

エンドロールで、「ジャン・ロシュフォールとジョン・ハートに捧ぐ」

と、すでに故人となったふたりの追悼が流れましたが

30年という間にはこの映画にかかわったもっとたくさんの人が亡くなっているでしょうし、

30年前には、ジョナサン・プライスはまだ40歳くらいでおじいさん役は無理、

アダム・ドライヴァーなんて6歳でしたからね。

 

2本見ると、これで良かったのだ!と幸福な気持ちでいっぱいになります。

めずらしく、邦題もぴったり。

 原題は今までと同じく「The Man Who Killed Don Quixote (ドン・キホーテを殺した男)」なんですが、

「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」という邦題は、まさにそれしかないほどハマっていると思いました。

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

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映画 「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」 令和2年1月31日公開 ★★★★☆

(英語、 字幕翻訳 高内朝子)

 

 

85歳の誕生日を迎えた世界的ミステリー作家のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が、

その翌日に遺体で見つかる。

名探偵のブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、匿名の依頼を受けて刑事と一緒に屋敷に出向く。

ブランは殺人ではないかと考え、騒然とする家族を尻目に捜査を始める。         (シネマ・トゥデイ)

 

森の中の大きなお屋敷、

その主であるミステリーの大作家ハーランの85歳の誕生パーティに家族が集まった翌朝、

自室のソファーでのどを掻き切って死んでいる彼をメイドが発見します。

 

一週間後、当日の聞き取り調査に二人の警官と私立探偵のブノワ・ブランが屋敷を訪れます。

ハーランの部屋への階段はかなりきしむので、家族に気づかれずに出入りすることは難しく、

また、血液はまわりに完璧に飛んでいて、そばに誰もいなかったことは明白なのですが、

巨額の遺産相続がはじまるまでに、念のため、他殺でないことをはっきりさせようということで・・・・

 

また、探偵ブノワのところに、ハーランの死亡記事と札束が届けられ

「これは他殺だから調べて欲しい」という匿名の調査依頼があったために、

彼も警察に同行してきたのです。(彼は後ろで聞いててるだけですけど)

 

聞き取りを始めるうちに、

家族はほぼ全員ハーランの資産にぶら下がっており、誰もがめちゃ怪し~い!!

 

 

ハーランには3人の子供と3人の孫がおり、

〇長女  リンダ 不動産経営者

       リチャード  その夫  ★1

       ランサム (クリス・エヴァンス)孫① ★2

〇長男  ✖ニール 死亡

       ジョニ (トニ・コレット)その妻 ★3

       メグ   孫②

〇次男  ウォルト (マイケル・シャノン) ★4

       ドナ  その妻

       ジェイコブ 孫③

 

全員に殺人の動機がある・・・というほどではないけれど、

のついた人は、パーティ当日にハーランと揉めていて、特に怪しいです。

 

★1 リチャードはパーティ会場に少し早くきて、書斎でハーランとケンカしていて

    「それなら、私が彼女に伝える」ということばを、ケータリングのスタッフが聞いています。

    実はリチャードは浮気をしていて、ハーランはその証拠写真を持っており、

    これをリンダにばらされたら リチャードには大きな痛手です。

 

★2 その息子のランサムも、全然働かない問題児で、長いことハーランは援助してきたのですが

   「それはお前のためにならない。遺産はお前にはやらない」とパーティ当日にいわれ

   「後悔することになるぞ」とランサムが言い返しているのを

   従弟のジェイコブに聞かれています。

 

★3 ジョニは亡くなった長男の妻で、化粧品のブランドを立ち上げたり、派手な活動はしているものの

    経営はなりたっておらず、収入はハーラン頼み。

    メグの大学の高い学費もハーランが負担しています。

    パーティ当日、ハーランから

    「アランの事務所が不正に気付いた。君は年に10万ドル、ずっと金を二重取りしていたね」

    「君とメグにやる金はこの小切手が最後だ」と宣告されていたのです。

 

★4 ウォルトは、父のミステリーの版権をもつ会社を経営していて、

    関連グッズの版権や電子書籍などでもっと儲けようとしているのですが、

    父の承諾が得られず、決定権を自分に譲ってほしいとずっと要求しています。

    この日も、Netflixから映画化の金額提示があったことを父にいうのですが

   「お前の所有でもないものをずっとまかせてきてすまなかった」

   「ほかにやりたいこともあったろうに・・・もう出版社から手をひいて構わない」

   「いい子だ」

   ことばは優しいけれど、パーティ当日、ウォルトは父から社長を解任されてしまったのです。

 

このほかに100歳を超えたハーランの母のナナ・ワネッタも屋敷に住んでおり、

血縁以外では、第一発見者のメイドのフランと

最後までハーランと一緒にいた若い看護師のマルタも事情聴取されます

 

マルタは、「嘘をつくと吐く」という特異体質をもっていて、

ブノワは、これを利用しようと、いろいろ質問して

上記の★は事実で、すくなくとも4人からハーランは恨まれていた、ということがわかります。

                                         (あらすじ とりあえず ここまで)

 

 

 冒頭パートはどう考えてもアガサ・クリスティの世界。

金持ちのおじいちゃんが死んで、家族全員怪しいとか、「ねじれた家」そっくりですね。

 

 

                                   

 

                          ↑

                 (注意)これは「ねじれた家」のほうです。

 

「ねじれた家」の(実質主役の)グレン・クローズみたいに長女のリンダが立ってますけど、

実は彼女、あんまりストーリーにかかわってこないです。

すごい尊大な感じで立ってますけどね(笑)

 

「ネタバレ厳禁」なので、なかなか書くのが難しいというか、不可能なんですが、

一般的なミステリー映画と大きく違うことは、

この直後に「実際の事件の状況がすべて明らかになってしまう」ということです。

普通はいろいろまき散らした伏線をラストの名探偵の推理ですべて回収し

誰もが思っていたのとは違う「真実」が明らかにされる・・・・拍手!

という感じですが、そうじゃないんですよ。

 

一応ネタバレを旨としているブログなので、

「実際の事件の状況」までは書くことにしますが、これから観ようとするかたは読まないでくださいね。

 

実はマルタには、ブノワたちに言えない秘密がありました。

(彼女はウソをいうと吐きますが、口にしなければ、秘密をもっていても吐くことはないので

まったくの正直者、というわけではないのです)

 

パラグアイ移民の彼女はハーランの私的看護婦として一緒にいることが多く、

献身的な仕事ぶりと、とにかくいい子なので、ハーラン家の人たちや歳の近いメグからも

「あなたは家族よ」といわれて信頼されていました。

 

パーティの後、いつもの注射を打つためにいっしょにハーランの部屋に上がるのですが、

もう深夜だというのに碁(五目並べ?)をやろうといわれ、強いマルタが勝ちそうになると

ハーランが碁盤をひっくり返してしまいます。

このどさくさのなかで、マルタはいつも打つ鎮痛剤100㎎と間違えて

マリファナをその量打ってしまいます(本来は3㎎)

キットのなかにあるはずの解毒剤も見つからず、

このままでは15分以内にハーランが死んでしまう!

パニックになって、救急車を呼ぼうとするマルタをハーランが止めます。

 

「もし君の罪になったら、お母さんは(不法移民なので)強制送還されてしまう」

「私がうまくやるから、すぐに今、下の家族に時間を伝えて帰りなさい」

「そして防犯カメラの映らない光る象の前に車をとめて、戻ってきなさい」

「犬たちは慣れてる君には吠えないから、外の梯子でこの部屋まで戻っておいで」

「私のガウンと帽子をつけて下におりて、私が生きていると家族に見せて、

またおなじルートで家に帰りなさい」

 

そして、マルタの目の前でハーランはのどを切って死んでしまいます。

母や妹を救いたいためにマルタはいわれたとおり行動し、

マルタの帰宅後に「ハーランは生きていた」という目撃情報を得て、

彼女は容疑者から外れるのです。

 

そして、いよいよ(前の週に書き直したという)ハーランの遺言状が

家族たちの前に弁護士アランから開示されました。

「屋敷、貯蓄、株式、著作の版権など、流動・固定にかかわらず、

遺産相続人からリンダ、ウォルト、ジョニを外す」

「遺産はすべて看護師のマルタ・カブレラに遺す」

 

これを聞いてみんな驚き、マルタを取り囲みます。

車を出すこともできず、そんな彼女に手をさしのべたのがランサムで、

「遺産を君に遺そうとする祖父の気持ちを尊重しよう」

「ほかの家族からオレが君を守り、オレは君からもらう」

マルタは自分のやったミスもランサムに告白し、

ブノワから怪しまれている梯子の部品や隠し窓からの泥の跡など

どうすればいいか・・・・

 

マルタの家の前にはたくさんのマスコミがおしかけ、

スロンビー家の人たちからも交渉の電話がかかり、

弁護士からの売り込みの手紙の山にまじって、脅迫状まで届きます。

 

どうやら誰かがマルタの注射ミスのことを知っているようで、

検視局の便せんに「お前のしたことを知っている」という脅迫状が届きます。

その後検視局が放火され、ハーランの血液サンプルも診断書も消失されてしまいます。

                                                       (あらすじ ここまで)

 

 

さすがにちょっとこれ以上は書けませんが・・・・・

中盤にかかる前に、ハーランの死の現場が描かれてしまう、という驚きの展開。

ちなみにこれ、マルタの勘違いとか、夢オチとかではありません。

 

最後の(書けないけど)急転直下のオチもいいですけど、

あちこちの小ネタや暗喩なんかも味わい深いです。

 

(ここからは、ネタバレにならないことを

だらだら書きますんで、興味なければスルーしてください)

 

アガサ・クリスティーのミステリーの映画化なんかだと、(ねじれた家もそうですが)

オリエント急行殺人事件」とか、オールスターキャストで、美術にめちゃお金をかける・・・

というのが相場ですけど、本作はそうでもないかも。

舞台も階段ギシギシいう古いお屋敷で、奇妙な人形やタイトルにもなってるナイフの壁飾りや

いかにも「ミステリー作家の家」って感じで、楽しさいっぱいです。

「80年前にパキスタン人から買った」といってたから、そんなに価値ある不動産でもないのかもね。

小物のなかで一番好きなのは、ハーランお気に入りのマグカップで

「わが家、わがルール、わがコーヒー」とかいてあるやつ。あれ、欲しいです!

 

と思ったら、アメリカでは販売されてるみたいですね。 やっぱりみんな欲しいんだ!

 

 

ナイフknifeの複数形はナイブズknivesというのは中学で習ったけど、

邦題につかわれても、 ちょっとピンとこないし、

この屋敷のなかにあるのはナイフの壁飾り(コレクション?)ばかりじゃないから、

副題でダメ押しするのも意味不明です!(いつもの邦題ダメダメのパターン)

 

脇役で個人的にツボだったのは、地味な役回りのふたりの警察官のひとりのワグナー巡査!

彼は誰よりもハーランのミステリをすべて読んでいる、ファンというよりオタクで、

過去作に展開が似てくると、

自分の仕事を忘れて一人で盛り上がってしまうんですよね。

記憶にございません!」の秘書官のノノムラもそうでしたが、

もう一度見ることがあったら、彼の表情ばかり追ってしまおう!

 

ミステリーのオチとは無関係に一番心に響いたのが、

「白人社会のヒスパニックに対する差別感」です。

自分たちは偉大なるハーランの血を継いでいるのだから、(婿とか嫁もいるけど)

特権を得て当然と思っているんですね。

マルタはいい子だから「家族だと思っていいのよ」と寛大なところを見せていたのですが、

いざ、彼女ひとりが相続人に指名されて立場が変わった途端、

今まで争っていた家族がスクラムを組んで彼女を追い落そうとするのです。

(日本だと多分「遺留分」とかあるので、ここまでの衝撃はないのかも?)

 

マイノリティが自分より下だったら寛容さをみせていられるけど、

ある日突然自分を見下ろす立場になっていたら、度を失ってしまうという

白人社会「あるある」ですね。

 

ところで本作の実質の主演は、マルタ役のアナ・デ・アルマス。

どこかで見たことあると思ったら、「ブレードランナー2049」のホログラム美女、ジョイでした!

 

 

雰囲気ちがう~!

今回は地味で貧しい、まじめヒスパニック移民役でしたからね。

 

ちなみに、劇場でもらった、4月公開の007の新作のチラシのなかにも、

ダニエル・クレイグとともに主要キャストで載っていました。

 

 

これだけ見ると、007新作の宣伝で起用されたようにも思えますけど、

むしろ「ナイブズ・アウト」のほうが評価高いかもしれないし、

南部なまりのちょっととぼけたこの探偵役は、今後のジェームズ・ボンドのキャラに生かされるかも?

 

それほど面白かったので、続きはぜひ劇場で!


ジュディ 虹の彼方に

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映画「ジュディ 虹の彼方に」 令和2年3月6日公開予定 ★★☆☆☆

(英語、 字幕翻訳 稲田嵯裕里)

 

 

ミュージカル映画のスターだったジュディ・ガーランド(レネー・ゼルウィガー)は、

遅刻や無断欠勤を重ねた結果、映画のオファーがなくなる。

借金が増え続け、巡業ショーで生計を立てる毎日を送っていた彼女は、

1968年、子供たちと幸せに暮らすためにイギリスのロンドン公演に全てを懸ける思いで挑む。

                                                      (シネマ・トゥデイ)

 

「君のその声は観客をオズに連れていく」

「みんなに夢を与えられるのは君だけ、他の美人にはできない」

「レジ係や平凡な母親になったら、もうその声は生かせない」

「君は別世界に住んでいる」

「耐えられないなら、あのゲートから出て、普通の世界に戻ったっていい」

14歳のジュディはメイヤー社長からそういわれ、撮影所に残る道を選びます。

 

何十年か後、ふたりの子どもを連れてショーに出演しているジュディ。

日払いのギャラ150ドルを受け取って、定宿と思われるホテルにたどりつくと

支払い滞納を理由に宿泊を断られます。

しかたなく、子どもたちとタクシーに乗って、別れた夫、シドの家に泊めてもらいます。

「子どもたちが学校を終えるまで親権が欲しい」

という元夫の申し出にジュディは納得できません。

(子どもたちはパパの家が良いけど、ママに気をつかってるみたい)

 

次のシーンでは、子どもを置いて、前の夫との娘ライザ(ミネリ)のホームパーティに出かけ

ミッキー・ディーンズという若い男性と意気投合します。

 

この後も子ども時代のジュディのシーンが何度も挿入されますが、

だいたい内容は同じなのでまとめてしまうと

①  太りやすいジュディはいつも社長からダイエット命令が出ていた。

   怖いおばさん(母親?)から厳しい食事制限を課され、

   やせるためにアンフェタミンを飲まされていた。

②  眠れない、ステップ覚えられない、他の子にイジワルされる・・・

  訴えても聞いてもらえず、ストレスたまる一方。

③ 16歳の誕生日の時も、おいしそうなケーキは(太るから)食べる真似だけ

  「ピザの好きな普通の女の子」で売り出しているのに、

  ピザは禁止で、スープだけ。

 

「夢を売るアイドル」だったジュディは、同じ年ごろの女の子には許される

あらゆることが禁止され、ストレスは最高潮に。

大人になっても薬物やアルコール依存症、不眠症、と身体はぼろぼろになっていき

遅刻や出演拒否、私生活の乱れなどで業界から追放されるようになってくるのですが・・・

 

それでも裁判で親権を得るには稼いで家を建てなくては、と、イギリスにわたり、

ロンドンの芸能界を牛耳るデルフォントには歓迎され、チケットの売れ行きも好調でしたが

ここでもたびたび遅刻したり、客を罵倒したり、問題を起こします。

夫となったミッキーも彼女のために奔走しますが、

彼女の問題行動のせいで、なかなか契約にこぎつけず。

ジュディのステージには、穴をあけたときの代役として常にロニー・ドネガンが待機していました。

最後には、ジュディが契約解除となり、彼の出番がやってきますが、

「私に歌わせて」とステージに上がり、最後の熱唱をして、

歌えなくなると、客席からの歌声が彼女を応援し、感動のフィナーレへ・・・・   (あらすじ おしまい)

 

 

アカデミー賞の主演女優賞の本命といわれる本作、

ぎりぎりのタイミングで試写会で鑑賞できました。

 

ジュディ・ガーランドは、往年のミュージカル女優の草分けで、

ライザ・ミネリの母親・・・でしたね。

1954年版の「スタア誕生」はビデオで見ました。

バーブラ・ストライサンドの前にエスターを演じた人です。

 

冒頭で、MGMのメイヤー社長がめちゃくちゃ歌を褒めていたので、

すばらしい歌声が聞けるものと、期待満々で観ていたのですが、

(バックに曲は流れてたかもしれないけど)

歌唱シーンは、まさかのゼロでした。

ひたすらケーキが食べたいけど我慢させられているところばっかり。

もう子ども時代の思い出がそれしかないのって、ホントに気の毒です。

アンフェタミンってやせ薬というより、覚せい剤ですよね。

こんなのを子どもに飲ませるのは完全に犯罪だと思いますけど・・・・

 

そうはいっても、ジュディはミュージカルスターとして一時代を築いた人のはずですが

絶頂期のシーンはまったくなく、

落ちぶれた晩年(といっても40代)「あの人は今」的な状況になってからの話です。

子どもの頃からの薬物依存が原因とはいえ、プロとしての仕事ができず

周りの人を裏切り続けるのはどうよ?って思いますが、

ひたすら、そういうのの繰り返しで、ちょっとうんざりです。

彼女は生涯5回も結婚離婚を繰り返していて、

実際はシドとミッキーの間にもうひとり結婚していたみたいですが、

男運が悪いわけでもなく、何度も懲りずに同じ過ちをくりかえす人みたい。

 

設定上は、

「私生活はめちゃくちゃでも、ひとたびステージに上がると観客をうならせる歌を歌う」

ということみたいですが、

正直いって下手だったし、少なくとも私の心には届きませんでした。 

初めて聞く歌が多かったですが、

「オーバー・ザ・レインボウ」とか、そんなにやさぐれた感じで歌われてもねえ・・・

カラオケの採点機だったら60点行かないんじゃないの?

 

レネーがはつらつと歌うところを期待していたのに、

最初から最後までボロボロで、ヨレヨレで、むしろ、なんか気の毒。

ジュディ・ガーランドって、身長151cmで、当時としてもかなり小柄な人だし

顔だちもレネーとは似ても似つきません。

 

                  ↑

アカデミー賞メイク・ヘアスタイリング賞にノミネートされたスタッフと

主演女優賞にノミネートされた女優ががんばって似せさせて、この程度です。

 

伝記映画で描かれる実在のミュージシャンには,実際、薬物中毒の人は多いから

チェット・ベイカーとかマイルス・デイヴィスとかチャーリー・パーカーとか、たくさんいますけど

女性が主人公なのはあまりないかも。

あってももっと共感度高めに作ると思うんですが、これでいいんだろうか?

ジュディ・ガーランドの絶頂期は60年以上前で知っている人はわずかでしょうに

表舞台から姿を消した以降のことだけを、さして盛り上がりもなくだらだら見せられてもねえ・・・

 

もともと本作の元ネタは「End of the Rainbow」という、ロンドンでロングランの舞台で、

日本でも上演されたようです。 → こちら

 

クスリと酒をやめられないジュディをフィアンセのミッキーと

ピアニストのアンソニー(映画にも黒人のピアニストが出てましたね)が支えるストーリーのようです。

舞台劇だから、もっとたくさん歌うシーンがあるのかな?

この人気舞台の映画化、ということなんでしょう。

 

そういえば、デルフォントという名前に聞き覚えあると思ったら、

たしか「僕たちのラストステージ」でアメリカで落ち目になったローレル&ハーディが

イギリス公演に再起をかけたときのロンドンの興行主がバーナード・デルフォントでした。

 

「リヴァプール、最後の恋」でも、女優グロリア・グレアムが晩年、

やっぱり再起をかけてランカスターで公演していました。

アメリカで落ち目になると、みんな「再起をかけて」イギリスに行くのかな?

ショービジネスの世界がアメリカほど進んでいないこともあるんでしょうが、

一時代を築いたエンターテナーに敬意を払う国民性、ということなのかな?

 

話がつまんないのはレネーのせいではないので、

今日は、ぜひ主演女優賞とってほしいですが、

作品としては、★ひとつに限りなく近い★★でした。 あくまでも私の好みですが・・・・

アカデミー賞2020 結果

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①「パラサイト」の大躍進

非英語圏の作品である「パラサイト」が作品賞をふくむメジャータイトルで4冠に輝いたのが

なんといっても、最大のニュース!

ポンジュノ監督自身も、「国際長編映画賞で出番は終わったと思ってた」といってたけれど

ここでキャストやスタッフをみんな立たせて、熱のあるスピーチをしていました。

前回まで「外国語映画賞」だったこの賞が「非英語」の映画に与えられる最高賞ですからね。

ところがその後、「監督賞」「作品賞」とたてつづけに受賞して、

さすがに話すことがなくなってしまったようで、スピーチの内容もジョークもほぼかぶってました(笑)

本人にとっても意外だったのがよくわかる、ほほえましさですね!

ちゃんと面白くていい映画を作ったら評価してもらえる、というのは、何より嬉しいです。

 

②Netflix惨敗

ローラ・ダーンが「マリッジ・ストーリー」で助演女優賞を獲っただけで、

Netfli作品、アニメもふくめ、あとは全滅でした。

「アイリッシュマン」がひとつもとれないなんてね。

 

③毎度のことですが、日本での報道が酷い

今年は日本映画がひとつもノミネートしなかったから、客観的な報道がされるのかと思ったら

「松たか子の着物」がトップニュースでした(笑)

日本人と言われるのが嫌で、国籍も名前も変えたヒロ・カズ氏がメイキャップ賞に輝いたのを

またこりもせずに「日本出身」とか「京都出身」とか言っていて、辟易とします(多分、本人も)

「パラサイト」についても、「アジア映画で初」と、日本と同じ「アジアだ」というのを強調していました。

ほんと、うんざりだ!

 

以下、結果です。

 

作品賞

『フォードvsフェラーリ』
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(3月公開予定)
『マリッジ・ストーリー』 
『1917 命をかけた伝令』(2月14日公開予定)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 ✖
王冠1『パラサイト 半地下の家族』  ★


監督賞
マーティン・スコセッシ 『アイリッシュマン』
トッド・フィリップス 『ジョーカー』
サム・メンデス 『1917 命をかけた伝令』
クエンティン・タランティーノ 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
王冠1ポン・ジュノ 『パラサイト 半地下の家族』 ★


主演男優賞
アントニオ・バンデラス 『ペイン・アンド・グローリー(英題) / Pain And Glory』
レオナルド・ディカプリオ 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
アダム・ドライヴァー 『マリッジ・ストーリー』 ★
王冠1ホアキン・フェニックス 『ジョーカー』
ジョナサン・プライス 『2人のローマ教皇』 ★


主演女優賞
シンシア・エリヴォ 『ハリエット』(3月公開予定)
スカーレット・ヨハンソン 『マリッジ・ストーリー』
シアーシャ・ローナン 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
シャーリーズ・セロン 『スキャンダル』(2月21日公開予定)
王冠1レネー・ゼルウィガー 『ジュディ 虹の彼方に』(3月6日公開予定)


助演男優賞
トム・ハンクス 『ア・ビューティフル・デイ・イン・ザ・ネイバーフッド(原題) / A Beautiful Day in the Neighborhood』
アンソニー・ホプキンス 『2人のローマ教皇』
アル・パチーノ 『アイリッシュマン』
ジョー・ペシ 『アイリッシュマン』 ★
王冠1 ブラッド・ピット 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』


助演女優賞
キャシー・ベイツ 『リチャード・ジュエル』
王冠1ローラ・ダーン 『マリッジ・ストーリー』
スカーレット・ヨハンソン 『ジョジョ・ラビット』
フローレンス・ピュー 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
マーゴット・ロビー 『スキャンダル』


長編アニメ映画賞
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』
『失くした体』
『クロース』
『ミッシング・リンク(原題) / Missing Link』
王冠1『トイ・ストーリー4』


短編アニメ映画賞
『ドーター(英題) / Daughter』
王冠1『ヘア・ラブ(原題) / Hair Love』
『キットブル(原題) / Kitbull』
『メモラブル(原題) / Memorable』
『シスター(原題) / Sister』


脚本賞
ライアン・ジョンソン 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(1月31日公開予定)
ノア・バームバック 『マリッジ・ストーリー』 ★
サム・メンデス、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ 『1917 命をかけた伝令』
クエンティン・タランティーノ 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』  ✖
王冠1ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン 『パラサイト 半地下の家族』 ★


脚色賞
スティーヴン・ザイリアン 『アイリッシュマン』
王冠1タイカ・ワイティティ 『ジョジョ・ラビット』
トッド・フィリップス&スコット・シルバー 『ジョーカー』
グレタ・ガーウィグ 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
アンソニー・マクカーテン 『2人のローマ教皇』


撮影賞
ロドリゴ・プリエト 『アイリッシュマン』
ローレンス・シャー 『ジョーカー』
ジェアリン・ブラシュケ 『ザ・ライトハウス(原題) / The Lighthouse』
王冠1ロジャー・ディーキンス 『1917 命をかけた伝令』
ロバート・リチャードソン 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』


美術賞
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『1917 命をかけた伝令』
王冠1『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『パラサイト 半地下の家族』


音響編集賞
王冠1『フォードvsフェラーリ』
『ジョーカー』
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』


録音賞
『アド・アストラ』
『フォードvsフェラーリ』
『ジョーカー』
王冠1『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』


編集賞
王冠1マイケル・マカスカー&アンドリュー・バックランド 『フォードvsフェラーリ』
セルマ・スクーンメイカー 『アイリッシュマン』
トム・イーグルズ 『ジョジョ・ラビット』
ジェフ・グロス 『ジョーカー』
ヤン・ジンモ 『パラサイト 半地下の家族』


視覚効果賞
『アベンジャーズ/エンドゲーム』
『アイリッシュマン』
『ライオン・キング』
王冠1『1917 命をかけた伝令』
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』


歌曲賞
「君のため」 『トイ・ストーリー4』
王冠1「(アイム・ゴナ)ラヴ・ミー・アゲイン」 『ロケットマン』 ★
「I’m Standing With You」 『ブレイクスルー(原題) / Breakthrough』
「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」 『アナと雪の女王2』
「Stand Up」 『ハリエット』


作曲賞
王冠1ヒルドゥル・グーナドッティル 『ジョーカー』
アレクサンドル・デスプラ 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
ランディ・ニューマン 『マリッジ・ストーリー』
トーマス・ニューマン 『1917 命をかけた伝令』
ジョン・ウィリアムズ 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』


衣装デザイン賞
サンディ・パウエル&クリストファー・ピーターソン 『アイリッシュマン』
マイェス・C・ルベオ 『ジョジョ・ラビット』
マーク・ブリッジス 『ジョーカー』
王冠1ジャクリーン・デュラン 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
アリアンヌ・フィリップス 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』


メイク・ヘアスタイリング賞
王冠1『スキャンダル』
『ジョーカー』
『ジュディ 虹の彼方に』
『マレフィセント2』
『1917 命をかけた伝令』


国際長編映画賞
『コーパス・クリスティ(英題) / Corpus Christi』(ポーランド)
『ハニーランド(英題) / Honeyland』(北マケドニア)
『レ・ミゼラブル』(フランス)(2月28日公開予定)
『ペイン・アンド・グローリー(英題) / Pain And Glory』(スペイン)
王冠1『パラサイト 半地下の家族』(韓国) ★


短編実写映画賞
『兄弟愛』
『ネフタ・フットボール・クラブ(原題) / Nefta Football Club』
王冠1『向かいの窓』
『サリア(原題) / Saria』
『ア・シスター(英題) / A Sister』


長編ドキュメンタリー賞
王冠1『アメリカン・ファクトリー』
『ザ・ケイブ(原題) / The Cave』
『ブラジル -消えゆく民主主義-』
『娘は戦場で生まれた』 (2月公開予定)
『ハニーランド(英題) / Honeyland』


短編ドキュメンタリー賞
『イン・ジ・アブセンス(原題) / In the Absence』
王冠1『ラーニング・トゥ・スケートボード・イン・ア・ウォーゾーン(イフ・ユア・ア・ガール)(原題) / Learning to Skateboard in a Warzone (If You're a Girl)』
『眠りに生きる子供たち』
『セント・ルイス・スーパーマン(原題) / St. Louis Superman』
『ウォーク・ラン・チャチャ(原題) / Walk Run Cha-Cha』

アカデミー賞2020(つづき)

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今日は「アカデミー効果」なのか、シネコンはかなり混雑していました。

今週末から急遽、「パラサイト」の公開を決めた映画館も多いみたいですね。

今日、若草物語のチラシをもらってきて、(Netflixの「マリッジ・ストーリー」を除いて)

ひととおりチラシが集まったので、おさらいということで・・・・

 

まずは、2部門以上受賞した5作品。

今回の「勝ち組」といえるでしょうけど、「ジョーカー」と「ワンス・・・」は10ノミネートからの2部門だから

悔しさのほうが大きいのかな?

「1917」も3つは獲れたけど、比較的マイナーな部門でした。

 

 

 

4部門(←6部門ノミネート)     『パラサイト 半地下の家族』 (作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞)

3部門(←10部門ノミネート)     『1917 命をかけた伝令』(撮影賞・録音賞・視覚効果賞)

2部門(←10部門ノミネート)     『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(助演男優賞・美術賞)

2部門(←4部門ノミネート)      『フォードvsフェラーリ』 (音響効果賞・編集賞)

2部門(←10部門ノミネート)     『ジョーカー』 (主演男優賞・作曲賞)

 

 

 

 

1部門 (←2部門ノミネート)     『ジュディ 虹の彼方に」 (主演女優賞)

1部門 (←6部門ノミネート)     『ジョジョ・ラビット』   (脚色賞)

1部門 (←6部門ノミネート)     『ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語』 (衣装デザイン賞)

1部門 (←1部門ノミネート)     『ロケットマン』 (歌曲賞)

1部門 (←3部門ノミネート)     『スキャンダル』 (メイク・ヘアスタイリング賞)

 

 

今年のアカデミー賞は「パラサイト」の一人勝ちなのは明らかですが、

「韓国で初」とか「アジアで初」とかいう形容はちょっと違う気がして・・・・

 

そもそもアカデミー賞は、映画界の世界選手権なんかじゃなくて、

あくまでも「アメリカ映画の祭典」で、ロスアンゼルス地区での上映が条件だし、

制作した国以上に(明記はされていなくても)

「使用言語が英語である」ということが重要なのです。

そして、英語以外の言語でつくられた作品の最高峰は「国際長編映画賞」となります。

(去年までは文字通り「外国語映画賞」でしたが今年から呼び名がかわりました。

でも、内容はまったく変更なしだそうです。)

 

あまり昔のことはわからないので、ここ10年くらいでいうと、

2012年の「アーティスト」はフランス映画で作品賞をとって話題になりました。

でも、これはサイレント映画だったので、フランス語は使われず、

画面を切り替えて映る字幕は英語だったので、使用言語は「英語」ということになり

作品賞が獲れたのでしょう。

 

次の年は、カンヌを制したハネケ監督の「愛、アムール」が高評価だったのですが、

使用言語がフランス語(一部英語)だったため、外国語映画賞どまりで、作品賞はノミネートどまりでした。

 

これは去年の「ROMA ローマ」も同じです。

非常に評価が高くて、作品賞にノミネートはされたものの、

これもスペイン語によるメキシコ映画だったため、

外国語映画賞(ほかに監督賞・撮影賞)しか獲れませんでした。

 

ここまでくると、英語以外の映画がアカデミー賞で勝負にでられるのは、

国際長編映画賞(外国語映画賞)だけで、グランプリにあたる作品賞は絶対に無理、

作品賞ノミネートは、作品への敬意であって、受賞はありえない・・・・・

ポン・ジュノ監督はじめ、ほとんどの人がそういう認識だったと思います。

 

それを、今年の「パラサイト」は全く覆してしまったのです。

① 作品賞   →    英語圏映画のグランプリ

② 国際長編映画賞 → 非英語圏映画のグランプリ

 

これを両方とも獲るんなら、②は要らなくない?

アカデミー賞の常識を変えてしまうような映画なんですよね、「パラサイト」は。

 

アジア初!なんていう単純なものじゃないことを、ちゃんと報道してほしかったです。

 

 

今年のアカデミー賞には「女性監督がノミネートされなかった」とか

「黒人がノミネートされなかった」と抗議する人が多いけれど、

そういう「枠」をつくって必ずいれさせようとするのって、逆にフェアじゃない気がしますけど・・・・

 

世界中には非英語圏の作品のほうがはるかに多いのに

これに今まで一度もグランプリ(作品賞)を与えなかったほうに、より不公平感を感じていました。

それを楽々乗り越えてしまった「パラサイト」はやっぱりスゴイです!

 

 

ところで、今日は観そびれていた「ジョジョ・ラビット」(脚色賞受賞)を見にいきました。

親ナチのドイツ人の少年の話なんですが、彼もヒトラーも当然のように英語を話すんですよね。

まあアメリカ映画で、いつものことですけど、

文字を書くときはドイツ語で手紙も看板とかもドイツ語なのに、会話はすべて英語。   

違和感ないのかなぁ?

日本映画でこれをやるのは「のだめカンタービレ」くらいですね(笑)

感想はのちほど・・・・

ジョジョ・ラビット

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映画「ジョジョ・ラビット」令和2年1月17日公開 ★★★★☆

原作本 『Caging Skies』 クリスティン・ルーネンズ (邦訳なし)

(英語、 字幕翻訳 牧野琴子)

 

 

第2次世界大戦下のドイツ。10歳のジョジョは、青少年集団ヒトラーユーゲントに入団し、

架空の友人であるアドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)に助けられながら一人前の兵士を目指していた。

だがジョジョは訓練中にウサギを殺すことができず、“ジョジョ・ラビット”というあだ名を付けられる。

                                                       (シネマ・トゥデイ)

 

「われらの救世主、アドフル・ヒトラーに捧げます」

ナチスへの忠誠心でいっぱいの軍国少年、ジョジョは、

なぜか部屋にいるアドルフ(ジョジョの想像上の友人)に扇動されて、

今日も「ハイル・ヒトラー!」の練習を。

 

そして、モノクロの実写フィルムのなかに映る当時の大勢の少年少女は

無邪気な笑顔で、まるでロックスターに心酔するかのように、ヒトラーを称えます。

バックにはビートルズの「抱きしめたい」がかかっているのがなんともいえず・・・

 

次のシーン、

ジョジョは親友ヨーキーといっしょにヒトラー・ユーゲントを育成するキャンプに参加しています。

教官は、サムロックウェル演じるクレンツェンド大佐(キャプテンK)

戦地で片眼を失い戦力外といわれた彼は、「ガキの相手」をすることになったらしく、

ちょいちょい本音をはさんでくる彼の物言いのなかに、真実が見え隠れします。

「ドイツは今苦戦しているが、表向きは順調ということになってる」とかね。

 

「ここではドイツ軍の戦闘技術を2日間で学ぶ」

「銃剣や手りゅう弾の使い方、奇襲のかけ方、塹壕、カモフラージュなど・・・」

「女子は傷の手当や妊娠のしかたを学ぶ」

妊娠してたくさん子どもを産むことで国家に貢献するということなのでしょう。

「私は18人産んだわ」

と、ミス・ラーム(レベル・ウィルソン)は得意顔。

 

「ユダヤ人は頭に角がついてる」

「ユダヤ人は魚と交尾する」

とかのでたらめ情報も教え、

「ユダヤ人をみつけたら、ぶっ殺す」と唱和します。

そして、

「ヒトラーの軍隊には臆病者はいらない!」

「躊躇なく敵を殺せ!」

ところが、ウサギを殺すことを命じられたジョジョがどうしても殺せずに逃げ出したことから

彼はその後「ジョジョ・ラビット」といわれることになってしまいます。

 

落ち込んだジョジョのところにアドルフがやってきて

「狂人とか国を破滅させるとか、私も散々いわれた。気にするな」

「ウサギは弱虫じゃない、家族のために命がけで畑のニンジンを盗む」

「ウサギは勇敢で賢い、ウサギになってあいつらを出し抜け!」

 

そして次の手りゅう弾の訓練で、いきなり爆弾持って走り出したため

爆発して顔におおきなけがをしてしまいます。

「ああ、わたしのかわいい子ライオン」

母ロージーは、この事故で事務職になってしまったキャプテンKに文句をいいますが、

このあと、ジョジョは訓練には参加せず、

キャプテンKのもとでビラ配りをさせることになります。

 

ジョジョが家に帰ると、だれもいないはずの2階から物音が。

なんと亡くなった姉の部屋の物置に、しらない少女がかくれていたのです。

 

「私はオバケなんかじゃない。お母さんに招かれたから、客よ」

「私はユダヤ人。通報すれば、あんたもお母さんも死刑よ」

「あんたのナチ頭をちょんぎってやる」

ジョジョはあっさり唯一の武器であるナイフもとりあげられてしまいます。

 

ジョジョが寝た後、

母はユダヤ人少女、エルサに

「息子が姉さんのオバケを観たといってる。彼はナチ教徒だから知れたら大変よ」

というと

「私たちはオバケ、人生なんかない」とエルサ。

「ナチを勝たせたらダメよ、あなたは生き延びて!」

 

ジョジョはエルサが(オバケではなく)ユダヤ人だということはわかっていて

アドルフに相談します。

「ユダヤ人をかくまったものは協力者も、念のためにまわりの関係ない者も殺される」

「八方ふさがりから逃れるには、条件をだせばいい」

「ユダヤ人の秘密を話させて本を書け」

 

ということで、母には内緒でエルサからユダヤ人についての講義をしてもらうことに。

それをまとめて絵本をつくるつもりだったのですが、

今まで劣等人種といわれてきたユダヤ人がそうではないことを知り、

大人っぽく魅力的なエルサにとんどん惹かれていきます。

彼女は亡き姉インゲの友人でもあったのですが、ネイサンという恋人がいることを知ると

ネイサンになりすましてラブレターを書いたりもしました。

 

ジョジョの新しい仕事は「メタルマン」

各戸をまわって鍋やフライパンなどの金属回収をしているのですが、

母が「ドイツを解放せよ」というチラシを置いているのを見かけます。

ドイツの戦況は悪化して、ついに11歳のヨーキーまでもが兵士となり、

軍服も間に合わず、紙製の軍服で駆り出されることになります。

 

ある日突然、母の留守中に秘密警察が家宅捜査に訪れます。

2階のエルサが見つかったら一大事!

なんとエルサはインゲの服を着て、姉になりすまして現れます。

そこへキャプテンKもやってきて、エルサから(インゲの)身分証を受け取って

「誕生日は?」と聞きます。

「5月1日」と答えるエルサ。

「写真を新しくしとけよ」といって、家宅捜査の一行は帰っていきますが、

身分証にあったインゲの誕生日は5月7日。

キャプテンKは見逃してくれたのです。

 

街へでると、広場で絞首刑にされた人たちのなかに、見慣れた靴が・・・

母ロージーが殺されていたのでした。

 

街は戦火に包まれ、他国に占領され、ナチスは片っ端から捉えられていきます。

キャプテンKは、ジョジョの制服を脱がせ、「このユダヤ人め!」と思い切り蹴って

それを咎められて銃殺されてしまいます。

 

集団ヒステリーのような戦争はおわり、

一瞬にして善悪の判断基準は変わってしまいました。

それでもエルサを失いたくなくて

「ドイツが勝った」とうそをつくのですが、このうそも、

(ネイサンは去年結核で死んでいたのがわかり)ジョジョの偽手紙も、

全部エルサにはバレていたのでした。

ふたりは家の外に出て、静かに踊り始めます。

 

「すべてを経験せよ、美も恐怖も」

「生き続けよ、絶望がすべてではない」   (リルケのことば)          (あらすじ おしまい)

 

 

ジャンルは「コメディ」なので、気楽に見に行ってしまったのですが、

なかなかにブラック度の高いヘビーな内容でした。

ヒトラーとコメディは相性が良い?みたいで、たくさんの作品がありますけど、

ワイティティ監督の演じるアドルフは、一番似てないヒトラーだったかも。

ジョジョ少年の空想上のヒトラーなので、別に似させる必要はないんですけど。。。。

 

本作はアカデミー賞脚色賞を受けたので、原作があるんですけど、

原作にはアドルフは出てこないんですって!

「ナチスに傾倒した軍国少年の母親が実は隠れレジスタントで、

屋根裏部屋にドイツ人少女をかくまってる」という話なんでしょうね。

邦訳ないので読んでいませんが、たぶんコメディ要素はほぼないような気がします。

 

ホロコーストを扱った悲惨な映画以上にショッキングだったのは、

無垢な子どもたちにユダヤ人は悪魔だと吹き込み、批判する心の芽を摘んでしまうのです。

「間違ったことを国をあげて教える」ことの恐ろしさ。

ここまでではないにしろ、中国や韓国で行われている「反日教育」だって、これに近いですけど・・・

 

第二次世界大戦中は、日本はドイツとの同盟国だったので、全くの他人事でもないです。

ここからちょっと関係ない話をしますけど、

ヒトラーユーゲントは、日本にも来ていて、

私の母は高輪台小学校の1年生だったときに、

「学校代表でヒトラーに花束を渡した」とずっと言い張っていて

「万歳ヒトラーユーゲント」の歌もよく歌ってくれていました。

あとで「ヒトラーじゃなくてヒトラー・ユーゲント」の間違いだったとわかったんですが、

これはとても名誉なことだったようです。

松阪に住んでいた時にも近所のおばあさんが同じようなことを言ってましたが、

彼らは伊勢神宮にも参拝していたので、十分あり得る話です。

 

ヒトラーユーゲントのなかでも、来日メンバーは、一番優秀な神7みたいな青年たちだから

礼儀正しくて見た目もかっこいいいんですよ!

「ヒトラーユーゲントが来日して超歓迎された」という史実は、少なくとも歴史の授業では習いませんでした。

ナチスとかかわりがあったと思われたくないからなのか??

映画の冒頭の熱狂する若者たちのモノクロ映像を観ていて、このことを思い出してしまいました。

 

映画の方は、画面上はコミカルなんだけど、ほぼ「笑えない」内容でした。

ぽっちゃり系のミス・ラームとヨーキーがいてくれて、なんとか救われました。

「ぽっちゃり」は人の心を和ませますね~

 

サム・ロックウェルとスカーレット・ヨハンソンはまさに適役。

「リチャード・ジュエル」では男らしさが前面に出ていましたが、

ロックウェルにはこんなダメ男は鉄板だし、だからこそ、優しさが心に沁みます。

 

スカヨハのほうは、「マリッジ・ストーリー」といい、最近はセクシーコスプレ女優からすっかり演技派ですね。

母性愛だけでなく、自分の信念があり、おしゃれで魅力的。

父親に扮して3人で踊るところとか、涙がでそうになりました。

 

実は、私はこれをみて、けっこう辛かったんですが、その理由をここに書けないのがまた辛い。

それでも「観るべき映画」だと思うし、おススメはしてしまう作品です。矛盾してますが・・・・

1917 命をかけた伝令

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映画 「1917 命をかけた伝令」 令和2年2月14日公開 ★★★★☆

(英語、 字幕翻訳 松浦美奈)

 

 

第1次世界大戦が始まってから、およそ3年が経過した1917年4月のフランス。

ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙(たいじ)する中、

イギリス軍兵士のスコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)に、

ドイツ軍を追撃しているマッケンジー大佐の部隊に作戦の中止を知らせる命令が下される。

部隊の行く先には要塞化されたドイツ軍の陣地と大規模な砲兵隊が待ち構えていた。 (シネマ・トゥデイ)

 

草原のなかでうたた寝をしていたブレイクは軍曹に起こされます。

「ブレイク、お前に任務だ。誰かひとり選べ」

ブレイクは傍らに寝ていたスコフィールドを指名して、ふたりは軍曹につづいて歩く姿を

カメラはずっと前から撮っていきます。

途中から後ろ姿になり、前を歩く軍曹が振り返ると・・・・

フィッシャーマンズソングのダニー(ダニエル・メイズ)でした!(軍曹の写真は残念ながら見つからず)

 

 

 

ふたりはエリンモア将軍のところへ連れていかれます。

コリン・ファースに似てると思ったら、本人でした。

 

「ドイツ軍が何か企んでいる。

退却と見せかけて、D連隊(デヴォンシャー連隊)を要塞で待ちかまえていることがわかった。

このままでは1600人のD連隊は全滅してしまう。」

「明朝の出撃命令を取り消したいが、電話線をドイツ軍に切られて通信手段がない。」

「ブレイク、君は地図に強いようだな。

君の兄ジョセフはD連隊で存命だ。兄上の命を守るためにも、この指令を

指揮官のマッケンジー大佐に届けて欲しい」

「連隊までの経路はスティーヴン少尉に聞け」

 

兄の命を救いたいブレイクはどんどん歩き始め、スコがそれに続きます。

「昼間はかがめ」「毒ガス注意」などと書かれた塹壕のなかをどんどん歩く二人を追うカメラ。

戦死したスティーヴン少尉にかわって指揮をとっているレスリー中尉に出会います。

(アンドリュー・スコットだ!)

 

 

経路といっても、最短ルートは「悪臭にそって進め」とか

「馬の死体が目印だ」「鉄条網のすきまをくぐれ」とかのざっくりしたもの。

 

「年上から先に行く」

とスコが先に塹壕をでて、死体がごろごろ横たわるノーマンズランドへ。

本来なら最も危険なこの地域を命からがら横切っていき、

ドイツ軍の前線に到着すると、そこはいわれたとおり、退却したばかりでした。

地下の塹壕を注意深く進むふたりでしたが、残された缶詰?に手を伸ばした瞬間

大きな爆発が起こり、スコは生き埋めになってしまいます。

なんとかブレイクが掘り出して命拾いします。

 

塹壕の先の村はすでに破壊され、チェリーの木は残らず切り倒され、何頭かの牛が残っているだけ。

しぼりたてのミルクをみつけて水筒につめるスコ。

頭上ではドイツ軍との空中戦がはじまり、撃墜された敵機がふたりのほうへ飛んできます。

炎上するまえにパイロットを救い出し、手当てをしようとするブレイクでしたが

いきなりパイロットに胸を刺されてしまいます。

「ぼくは死ぬのか?」

「母さんに手紙を書いて欲しい。ぼくは恐れなかったと・・・ みんなを愛していると・・・」

「わかった。エクーストの街を抜け、森へ行き、部隊に命令をとどけて、君の兄さんを探す」

ブレイクはスコに見守られて息を引き取ります。

 

そこへ別ルートでやってきたイギリス人の部隊がやってきます。

率いるのはスミス大尉。  (マーク・ストロングだ!)

 

「悲しみをひきずるな」

「私と一緒に来い。エクーストの近くまで車に乗せてやる」

ところが、途中橋が破壊されていて遠回りしなければならなくなったので

スコは車を降りてひとりで行くことにします。

 

途中銃撃されながらも、街を抜けようとするスコ。

日は暮れて、照明弾や火災に照らされた街は幻想的に映ります。

街にはまだドイツ兵が残っており、身をひそめながら進んでいくと、

地下にフランス人女性が女の子の赤ん坊をつれて潜んでいました。

赤ちゃんは女性の子どもではなく、乳もあげられずに困っていました。

スコはたまたま持っていた水筒のミルクを差し出し、

もっていた食料もすべてここに置いて、先を急ぎます。

 

そのあとも狙撃を逃れながら川の急流に流され、滝つぼに落ちると

川の流れは穏やかになったものの、まわりはパンパンにふくれあがった溺死体の山。

そこをかいくぐって、やっと陸にあがると、どこからともなく

「ヨルダン川の流れ」の美しい歌が聞こえてきます。

 

スコが感情がこみ上げて泣いていると、びしょ濡れの彼を心配して兵士が声をかけてきます。

「デヴォンシャー部隊をさがさないと!」

「それは俺たちだ」

 

マッケンジー大佐は前線の司令棟にいると聞いて、塹壕の兵士の群れをかきわけ、

まったくの無防備で地雷原を全速力で駆け抜け(予告編でながれていたシーン)

ついにマッケンジー大佐にたどりつきます。 (あ!ベネディクト・カンバーバッチだ!)

 

 

「撤退はドイツ軍の罠です。将軍から伝令書を預かってきています」

「もう遅い」といいながらも、手紙を読むと顔色がかわり

「攻撃停止、負傷兵の手当てを」という命令を下します。

「この戦争がおわるのは最後のひとりになったときだ」

「さっさと行け!上等兵」

 

引き下がるスコに、入り口にいたヘプバーン少尉が

「よくやった!」と声をかけてくれます。

「ブレイク中尉は第一波で出たが、生存しているなら、負傷者選別所にいる」

 

ジョセフはそこにいました。

「トムはどこだ?」と聞く兄に、彼の遺品を渡します。

「彼は僕の命の恩人です」

「食堂テントでなにか食べろ、最後に弟といてくれて感謝する、ウィル」

 

ひとりになったスコは、ポケットからだした家族の写真を眺めます。

裏には「無事に戻って」と書いてありました。              (あらすじ おしまい)

 

ゴールデングローブ賞ではドラマ部門の作品賞と監督賞

アカデミー賞でも直前になって本命といわれたものの、作品賞は逃しました。

それでも撮影賞、録音賞、視覚効果賞の三冠に輝きました。

 

本作のいちばんの「売り」はワンカットでの撮影。

翌朝までの設定だから、2時間の上映時間に収まるはずはなく、

ワンカットでないことは明らかですが、それでも超超長回しです。

 

戦場のリアルさを描いたことでは「ダンケルク」と比較されますが、

あちらは1日の出来事を3つの視点から、しかも時間軸をずらして描き

それを1本の作品に落とし込むことをしていたので、当然、カット割りは頻繁でした。

 

それも意図がわかるまでは難解におもえたのですが、

ワンカットというのも、もう観始めたら、観客も退路をたってみなければならず

なかなかにしんどいです。

最初の方のノーマンズランドの死体ゴロゴロのシーンは本当に怖くて、

これが2時間続くのか~!と絶望し、観に来たことを心から後悔しました。

否応なしに3人目の伝令にされてしまった気分です。

 

目をそらしたところで、音楽がまた恐怖感をあおるから、

私のようなビビリにはキツい作品ですので、ちょっと気を付けた方がいいかも。

外国ではR指定つけているところもあるようですが、

日本では幼児でもみられてしまうんですよね。大丈夫か?

 

ストーリーとしては非常に単純で、将軍から直々の命令で

突撃中止の伝令書を危険地域を突破して前線の司令官に届ける、

時間にまにあわなかったら兄も含め、1600人もの兵士が無駄死にする。

さあ、間に合うか?!って話なので、

ネタバレ考慮せずに最後まで書いてしまいました。

 

伝令ふたりのキャラクターですが、最初のうちは

ブレイクのほうが(地図にも強いし)優秀な伝令で、

スコはやる気ないボンクラ兵士だったのが、

途中でブレイクが死んじゃうので、急に使命感が沸き上がって頑張る!

みたいな流れかと思っていたら、どうもそうでもないことに気づきました。

 

兄を助けるために1秒も無駄できないと急ぐブレイクに対して

スコは「なんで僕を使命なんかするんだよ」とか

「6時間で14,5㎞なんて無理無理」なんていっていたから

こいつは足ひっぱりそうだな、なんて思っていたんですけどね。

アラン・マッケイは、過去作では、だいたい天然なボンクラの赤毛の若者役が相場だったので

印象操作されてしまったかも。

 

同じ上等兵でも、スコのほうが年上で、

しかも過去に功績を残してメダルをもらったことがあるといっていました。

冷静に考えると、気持ちが先走りするブレイクより彼のほうが冷静なのかも。

ドイツ兵を介護しようとして撃たれて死んでしまったブレイクは優しいけど

実際の戦争では通用しないのかも。

 

この二人、ファーストネームではなく「ブレイク」「スコ(フィールド)」と苗字で呼び合うように

お互いのことは良く知らないようですね。

ブレイクは実家が果樹園でチェリーの品種に詳しかったり、

「家族大好き」「郷里大好き」みたいですが(普通はそうでしょうけど)

スコは、帰りたくない事情があるようで、家族のことは話したがりません。

せっかくもらったメダルもお酒とあっさり交換してしまったようで、

ブレイクから「かえって家族にみせたら喜んでもらえるのに」といわれていましたが

スコには帰るところがないのか?いやな思いでがあるのか?

最後に眺めていた女性の写真は一瞬しか映らなかったのですが

母親なのか?恋人なのか?

謎深いです。

 

エンドロールで

「この話を語ってくれた アルフレット H メンデスに捧げる」

という献辞が流れます。

彼はメンデス監督の祖父ということです。

写真の女性はきっと監督の身近な人物で、あえて正体をあかさなかったのかもね。

 

ところで、命令を伝えるのにほかに方法はないの?って

今の私たちは思ってしまいますが、100年以上前の第一次世界大戦のころは無線がなかったから

こんなだったのですね。

塹壕を延々と掘って備える戦法も、この時代ならでは、です。

 

まだ観られていないのですが、ピーター・ジャクソン監督の映画「彼らは生きていた」。

 

これは資料として保存していた記録画像を最新技術を駆使してカラーで修復したドキュメンタリー映画。

ちょうどこの時代のイギリス軍のリアルな本物の映像なので

R15指定がついてますけど、覚悟をきめて見に行くべき!とは思っています。

スキャンダル

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映画 「スキャンダル」 令和年2月21日公開 ★★★☆☆

(英語、 字幕翻訳 松浦美奈)

 

 

 

大手テレビ局FOXニュースの元人気キャスター、グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、

CEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクハラで提訴する。

メディアが騒然とする中、局の看板番組を背負うキャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、

今の地位をつかむまでの軌跡を振り返って動揺していた。

一方、メインキャスターの座を狙うケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)は、ロジャーと対面する機会を得る。

                                                    (シネマ・トゥデイ)

 

FOXニュースの女性キャスター、メーガンが(観客に向かって)自ら会社の説明をしてくれます。

ここの放送内容は、2階のロジャー(エイルズ会長)に仕切られており、

気に入らないことがあれば、すぐに1階の調整室にダメ出しが入る。

地下1階はかび臭い編集局、 17~18階はアンカーとプロデューサーが入り

そして8階のルパート・マードック。

彼こそが歴代共和党大統領を支え、この会社を立ち上げだ人物で最高権力者。

このビルには、アメリカの保守派陣営が集結している・・・・・

 

時は2016年、共和党の大統領候補にドナルド・トランプが名乗りを上げたころ。

彼の過激な発言、なかでも女性蔑視発言に

「女性の外見を非難するのは大統領にふさわしいでしょうか?」といったメーガンに対して

トランプは激怒し、Twitterなどで個人攻撃をはじめます。

メーガンは打ち合わせの最中に差し入れてもらったコーヒーを飲んで激しい嘔吐に襲われ、

5時間後に生本番があるというのに、倒れてしまいます。

大統領候補がここまでやる?と恐ろしくなってしまうメーガン。

 

そもそもFOXニュースは共和党支持者の御用達の放送局で、クリントンやオバマを攻撃していたのですが、

トランプなんかが絶対に候補に選ばれるはずない!と、当初は問題にもしていませんでした。

ところが日増しに彼の支持者が増えるにしたがって、世間からもメーガンへの批判が高まり、

彼女は連日、中傷を受けるようになり、自宅までがさらされますが、

ロジャーに警護の相談をしてもとりあってくれません。

 

 

ベテランのニュースキャスター、グレッチェンは、2年前にロジャーから性的関係を強要され

それを拒否したばかりに、左遷され、いつかセクハラで告発しようと心に決めていましたが、

ある日素顔で生放送を終えると、(ロジャーからではないですが)

「中年女の汚いテカリ顔は誰もみたくない」と、激しく叱責されます。

 

グレッチェンが左遷された(視聴率のよくない)番組で働いていたケイラは

メインキャスターを目指す、野心家の女性。

ロジャーの秘書にとりいって彼の部屋で会うと、

「立ち上がってぐるっと回れ」

「スカートをあげて脚を見せろ」と要求されます。

視覚メディアだから当然だとばかりに・・・・

「ありがとう、見事な体だ」

「君を抜擢して最前線まで連れていけるが、見返りが必要だ」

「わかるな?私への忠誠心を示せ」

と、暗にセックスを要求されてしまいます。

 

ケイラは同僚のジェスに相談しようとしますが

「私を巻き込まないで!ここは異常な世界なんだから」と言われます。

 

 

左から メーガン(シャーリーズ・セロン)、グレッチェン(ニコール・キッドマン)、ケイラ(マーゴット・ロビー)

これはたまたま3人でエレベーターに乗り合わせたシーンです。

グレッチェンとケイラは二階でいっしょに下りるのですが、

グレッチェンはここでクビを宣告され、

ケイラはロビーに呼び出されてセクハラの罠に嵌っていきます。

 

 

 

2016年7月6日

グレッチェンがロジャーをセクハラで訴えたニュースが世界を驚かせます。

過去にも同じ訴訟を起こした人はいましたが、女性が勝訴することは不可能でした。

ただ他の女性も追随してくれて彼の「常習性」を証明できれば勝てるかも?と思っていたのですが、

ロジャーはすぐに反撃。

他の女性たちもみな口をつぐんでいます。

ただ、FOXに入る前の若いころ、ロジャーにセクハラされたという年配の女性が6名名乗りをあげました。

社内には「チーム・ロジャー」のTシャツを配って忠誠心を示す女性のいる一方、

ロジャーだけでなく、ビル・オライリーなどほかの幹部からのセクハラもふくめ、

少しずつ告白する女性たちがあらわれてきます。

 

「いつも一言多い」メーガンが、この件に関して沈黙を貫いているのは

まわりからも不自然に映っていたのですが

実は彼女もかつてロジャーからの性的要求に屈していたことがありました。

決断して事務所にいくと、彼女は「証人番号W」といわれ、

自分の前に22人の女性が証言したことに気づきます。

 

メーガンまでが証言したことでロジャーの怒りは最高潮になりますが、

この後、彼は、弁護士から絶望的なことを聞かされます。

グレッチェンは、彼との会話をすべて録音しており、裁判で勝つのは絶望的。

マードックはロジャーを解任し、自分が当座の間、会長職につくことを宣言します。

彼のスピーチの間に、ケイラはそっと席を立ち、IDカードを捨てて、会社を出ていきます。

                                                (あらすじ おしまい)

 

 

ほんの2,3年前にニューヨークで実際に起きた大手テレビ局のセクハラ訴訟が映画化されました。

ロジャー・エイルズはこの直後に病死しますが、メーガンもグレッチェンももちろん存命。

ケイラという人物は実在しませんが、

セクハラ被害にあった若い複数の女性キャスターがモデルになっているようです。

 

去年、#MeToo  なんていうことばが流行したときには、

そもそも人に追随することは嫌いなたちなので、非常に不愉快だったんですけど、

本作では その発端部分の状況を見せてもらった、という感じ。

 

日本には昔から「枕営業」という言葉があって、

レイプとかセクハラとは別物の、「取引」として認識されていました。

なので、個人的には「性的要求に応じて今の地位を得た」女性が

あとになって「セクハラされた~!」と騒ぐのは違うんじゃない?と思いますけど・・・・

 

グレッチェンの訴えは「性的要求に応じなかったら左遷された」ということで

これはまたちょっと違いますけどね。

ただ、今の「セクハラの概念」はやたらと広範囲になってしまって、

今の男性は大変だな、と、むしろ同情してしまいます。

 

エンドロールによると

グレッチェンは、2000万ドルの和解金と謝罪を勝ち得たけれど、秘密保持条項にサインさせられ、

他の女性たちにも総額6500万ドルが支払われ、

一方のロジャー・エイルズには5000万ドルの退職金が支払われたということです。

 

20億円以上の大金を手にしたものの、ロジャーへの退職金のほうが多いじゃん!

ということなんでしょうか?

彼女はロジャーを相手取って裁判したのだから、払うのはロジャーだと思ったら、20世紀FOXが払ったとか。

このへんがよく分かりませんが、

『me  too』といったその他大勢の女性たちに総額70億円、というのもちょっと納得いかないな。

 

それ以上に、和解金と引き換えに秘密保持条項にサインしたなら、この映画への取材も受けられず

結局この映画は想像だけで作られたの??

長いこと社内のセクハラが無視されつづけてきたわりに、

いったん大ごとになると億単位のお金が動く、というのも、ちょっと理解できません。

 

ロジャー退任の知らせに、女性たちはボディコンワンピースを脱いでパンツスタイルになり

ケイラの同僚のジェスもデスクにレズビアンのパートナーとの写真を飾りますが、

マードックが会長を兼任すると聞いて、また写真を隠します。

結局 ロジャーがいなくなっただけで、会社が変わることはない!

ということなんでしょうね。

 

全体的に「どっちもどっち」って感じで、同情も共感もできず、

あえて言えば、上記のジェスかなぁ。

彼女は民主党支持者なのに、ここしか受からなくて共和党の太鼓持ちみたいなFOXに入社したものの

ここから他のテレビ局に移るのは難しく、

さらにGLBTに理解のない会社のなかで、レズビアンなんですよね。

これが知れたら会社にいられなくなることを恐れています。

彼女の苦悩のほうがむしろ深刻なような気がします。

 

それにしても、こんな最近の話を実名だして映画にしちゃうアメリカってすごいですね。

しかも初の映像化というわけでもなく、すでに昨年テレビドラマ化もされています。

ラッセル・クロウがロジャー役でゴールデングローブ賞(テレビ部門)を獲った「ザ・ラウデスト・ボイス

(4月にwowowでオンエアされるようです)

こういうネタは、アメリカ人の大好物ということなのかな?

 

それ以上に、誰よりもセクハラ全開の発言をして大統領になっちゃった人がいる、

というか、そんな人物を大統領にしちゃう国があるのって、どうなんだろう?

 

「メーガンは目から血が出そうだった。きっと他のところからも出血してたんだろう」

なんていう誰がみてもアウトな文言を大統領候補がツイートして、

そのあと大統領になっちゃうんですよ!

 

日本なんて「意味のない質問だ」といっただけで、謝罪に追い込まれるのにね(笑)

そういえば、

「魚は頭から腐る」ということわざが字幕に登場してました。(英語では何というだろう?)

ちなみに「鯛」ではありません、念のため。

 

しゃべるのがプロの人たちの会話劇なので、登場人物はみんな頭の回転も速く、弁舌もさわやかで、

知的な部分もありつつ、主題はこの上なく低レベル。

 

本作はアカデミー賞主演、助演女優賞とメイク・ヘアスタイリング賞にノミネートし、

メイク・ヘアスタイリング賞だけ、受賞しました。

これはとっても妥当ですね。 見どころは、ほぼカズ・ヒロの手掛けた特殊メイクだけでしたから。

 

これが本物のメーガン

これがシャーリーズ・セロン

本物のロジャー・エイルズ

これがジョン・リスゴー

 

 

メーガンはほぼ出ずっぱりで、しかも感情をあらわにしたり、表情がアップになるのも多かったのに

とても自然に見えました。この技術はすばらしいです!

 

 

主役のこの3人、経験も年齢もぜんぜん違うのに、

みんなブロンドで、同じような体にぴったりした原色のドレス。

女性キャスターの脚ばかりカメラが狙うのもロジャーの指示かもしれないけれど、

それで視聴率とってるということは、女性の「お色気」を視聴者が望んでいるということで

もうこれは人事を変えたり、誰かひとりを裁いてすむことじゃないですよね。

 

若い女性の露出度で番組を選んだり、過激なことをいう人物に投票する人が多数を占める国である限り

もう救いようはない、ってことです。

(という感想も、民主党推しのリベラル派の多い映画業界の誘導にまんまと乗ってるみたいで、

なんか、嫌な感じ)

母との約束、250通の手紙

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映画 「母との約束、250通の手紙」 令和2年1月31日公開 ★★★☆☆

原作本 「夜明けの約束」 ロマン・ガリ 共和国

 

 

ユダヤ系ポーランド人移民である母のニーナと2人で暮らしてきたロマンは、ニーナから

フランス軍に入って勲章を授与された後に大使になり、作家としても活躍することを期待され続ける。

重圧に苦しみながらも、ロマンは母の願いをかなえようと奮闘する。

やがて軍に入った彼は母からの電話や手紙を支えにパイロットとして活躍し、

さらに作家デビューも果たす。

だがニーナの手紙には、その成功を喜ぶ様子はなかった。                 (シネマ・トゥデイ)

 

 

骸骨の扮装で盛り上がるメキシコの「死者の日」
そのお祭りの列をくぐって、一人の女性がホテルの部屋にたどりつき、激しくノックします。
部屋のなかには書きかけの原稿が散らかり、一人の男がぐったりしています。
男の名はロマン、女はその妻のレスリー。

ロマンはこんなところでは死ねないからメキシコシティーまで行くと言い張り、
タクシーで350km離れたメキシコシティーの病院に向かいます。
ロマンが書いていたのは「夜明けの約束」。亡き母との思い出をつづっていたのでした。

(ここから回顧シーンがはじまり、たびたび現代に戻りますが、それは省略します)

ロシアからポーランドにやってきた、ユダヤ人のニナとロマンのカッツェ親子。
母は婦人帽子の訪問販売で稼ぎますが、誰かの密告で警察に部屋を捜索されます。
テーブルの下でおびえる幼いロマン。
「密告した卑怯者は誰?うちの息子はフランス大使になって作家になって将軍になる大物だ」
と大声で叫ぶ母に嘲笑する群衆。ロマンは恥ずかしくてたまりません。

その後母は、パリの人気デザイナー、ポール・ポワレに扮した偽物の役者を連れてきて
ポワレの代理店を装って、金持ちマダム相手に高級婦人服の店をオープンし、そこそこ成功します。


モジューヒンの映画の好きな母は、ロマンに彼のようなヒーローで女性を泣かせる女になって欲しいと思い
男が戦うのは ①女 ②名誉 ③フランス のためにだけだと教え込みます。
ロマンは好きになったバレンティーナという女の子に「私を好きならやりなさい」といわれ
殻付きの生きたザリガニ(?)とか靴とかを食べた結果、病気になり、
バレンティーナの兄にも脅され、母のことも「ユダヤの売春婦」といわれます。

「今度母さんが侮辱されたら、体の骨が全部折れるまで戦え」と言われたロマンは、
この教えをこの後も守っていきます。

最初は上手くいっていた商売でしたが、

母がユダヤ人だと足元を見られたか、金持ちマダムたちが金を払わなくなって資金繰りに困り
結局は破産し、店をたたむことに。

それでもめげずに、母の憧れの地、フランス、ニース駅に親子で降り立ちます。

ロマンも初めてみる地中海に魅せられます。

なんとか持ち出した銀食器を高く売って当座の生活費に充てようとする母。

「貴族だった母の遺品です」「革命を生きぬいた本物よ」とか言ってもプロの目はごまかせず

「お気持ちはわかりますが・・・・粗悪品です」とぴしゃり。

ところが店主から

「あなたはロシア貴族の末裔ということで・・・・・私と手を組みませんか?」

と、思いがけない提案が。

ちゃっかり前金も受け取って、その後、ホテル内の高級品販売や、不動産業にも乗り出し、

そこそこの実業家として成功するのです。

 

ロマンもまたいい暮らしができるようになり、母はマリエットという世話係もつけてくれます。

「マダムは坊ちゃんのこと、いつも王子さまみたいに言ってますね」

ロマンはこの色っぽいフランス女にぞっこんになってしまいますが、

いっしょにベッドにいるところを母に見つかると、

「このメス猫!」といって、即追い出されてしまいます。

「ぼくのすることにいちいち口出しするな!」 

さすがのロマンも、母への反抗心が芽生えてきます。

 

この後、母はホテルの経営もはじめ、サランバというポーランド人画家の客が1年も滞在するのですが、

彼は母を気に入っていて、結婚も考えているよう。

このころ母の病気(糖尿病)を知り、彼なら母を守ってあげられそうだし、

母が結婚すれば、自分への干渉も少なくなると思ったロマンは

母にしきりに結婚をすすめるのですが、全く聞く耳持たず、結局サランバは去ってしまいます。

 

(ここからロマン役がピエール・ニネになります)

1934年9月、ロマンはパリの大学に入ります。

ニースからの列車で知り合ったスウェーデン人のブリジットと懇ろになりますが、

彼女に恋人がいることを知って撃沈。

やけになったロマンは、いろんな女とヤリまくるようになります。

母の家からは出られたものの、年がら年じゅう母から電話がかかり、

ここでもクラスメートたちから、マザコンだとからかわれます。

 

病気の母が死ぬ前に小説家にならなくては・・・・

授業をさぼって、ひたすら小説に没頭する日々。

ようやく新聞にロマンの小説が掲載されると、母は大喜び。

ただ、その後全く掲載されなくなると、

「どうしたの?」と母からは電話がガンガンかかってくるから、

「ペンネームで書いてる」とか

「文学的すぎてレベルを落とさないと乗せてもらえない」とかいってごまかします。

 

1938年8月になると、突然母は小説のことをいわなくなり

「ベルリンに行ってヒトラーを暗殺しなさい!」

「お前の腕なら一発で仕留められる」

「もし失敗しても必ずフランスが救ってくれる」

と、自信満々に背中を押されて、ロマンもその気になりますが、

直後に

「英雄になる計画は中止して」といわれて、

切符まで買ったのに、ベルリン行きはなくなりました。

 

次の「指令」は、士官して地位を得ること。

ロマンは空軍に入り、まずは少尉の階級章を目指しますが、300人中ひとりだけ不合格。

軍曹や伍長にすらなれませんでした。これでは母に合わせる顔がありません。

(理由は、彼がユダヤ人であることと、フランスに帰化して日が浅いこと、のようですが)

こういう理由では母は納得しないので

「校長の奥さんといい仲になって密告されたから」というと、

「え、その人は美人なのね」と母は目を輝かせ、

「300人中一人だけ不合格」という特別な感じにも、大喜びでした。

 

 

その後も母は何度も駐屯地を訪れ、上官に賄賂を持ってきたり、

みんなの見てる前でロマンとハグしたり、女王様のようにふるまったり・・・・

もうロマンは周囲からの嘲笑にも慣れっこになってしまい、

「君のお母さんはバカみたいに君の自慢ばっかり」と

母を侮辱した兵士を、母の教え通りにぶん殴ります。

そして、母の喜びそうなことをしようと、イギリスにわたって自由軍に合流することにし、

「白い嘘」という小説も、従軍しながら書き始めます。

アフリカにわたって蚊にたかられて発砲して投獄されたり、腸チフスになったり、

行き倒れの黒人の老婆を助けたり、空中戦で戦果をあげたり、いろいろなことがありますが、

ロマンの意識のなかには常に母がいました。

 

そしてついに「白い嘘」がイギリスで英語版が出版され、評価されるようになります。

軍人としても十字勲章を得て、母はさぞ喜んでくれるだろうと、張り切って手紙を書きます。

母からもたくさんの手紙が届きますが、なぜか、小説の出版のことには全く触れず。どうしちゃったのか??

                                         (あらすじ とりあえずここまで)

 

2017年制作のフランス映画。

3年遅れの公開で、プロモーションもほとんどなかったから、すぐに打ち切りと思ったら

公開から2か月ちかくたつのに、まだやっていて間に合いました。

 

母ニナの一人息子ロマンへの思いは、それはもう大変なもので、

「母の愛は海より深い」なんてもんじゃありません。

異様なくらいの過干渉に加え、子どもの将来を勝手に決めつけるのは虐待レベルだし、

「うちの息子は大作家になる」とか「フランス大使になる」とか言いふらすのも

息子からしたら、かなりキツイですよね。

今だったら教育評論家たちに袋叩きにされそうな「毒親」です。

 

母にちょっとは逆らうものの、結局はいいなりになってしまい、

病気をかくしてまで自分に注いでくれる愛に応えようとするのですね。

「あの日、ぼくは誓った

母の途方もない夢を叶えると」

 

そしてそれを現実にしてしまって、すごいね!!って話です。

めちゃくちゃ単調。

一応私も娘ふたりを育てた「母」ですけど、この気持ちはまったく理解できず。

原作はあくまでもロマンの視点なので気にならなかったのですが、

母の心の内は描かれない、というか、こちらには伝わらないから、

映像にして客観的にみると、母の異常性ばかりが気になりました。

女手ひとつで、ロマンの学費やもろもろの費用を稼ぎ出す強い女性でもあったわけですが

商売は「詐欺まがい」というか、まあ、バリバリの詐欺ですけど・・・

 

私は「母」ではあるけれど、「母ひとり子ひとり」の濃密な関係とは無縁だったからわからないんですけど、

息子は母に反発しながらも結局は同一化していくというか、「一卵性親子」なんですね。

 

客観的にみたら、けっして良い関係とは言えないと思うんですが、

結果的にロマンにはいい結果をもたらします。

母からのしつこい電話に呼び出されたことで命拾いしたこともあったし、

子どものときにいやいややらされた「習い事」が ちょいちょい彼の命を救ったりもしました。

そして、

①大作家になる

②軍人として功績を残し、勲章をもらう

そして、映画の中にはでてきませんでしたが、この後

③(何か国語も使いこなして)フランス大使として世界で活躍する

という母の望みをかなえ、レスリーと離婚後結婚したのが ジーン・セバーグ。

④絶世の美女と激しく愛し合う

というのも母の望みでした。

⑤(セバーグを主演に)映画監督を務めた

というのも、女優だった母が聞いたら喜んだことでしょうね。

 

 

映画では、現代シーンはメキシコでこの作品の原作を執筆中に倒れ、妻レスリーに介抱されて

病院へいくところなんですが、

ロマンは最後には自殺するから、最晩年のころと勘違いしがちですが、

これはジーン・セバーグの前の妻の時の話なんですよね。

しかも、強烈な頭痛の原因は、

ロマンが自分の耳にパンとワカモーレを突っ込んだため、というバカみたいな理由。

なんでメキシコ?

なんでワカモーレつっこんだの? これはわかりません。

 

それから、副題にもなっている250通の手紙について。

これはさっきのあらすじの続きを書かなければなりません。(ネタバレです)

 

あれだけ息子が成功をおさめるのにこだわっていた母が

それを実現したのにそれをスルーするのはなぜ?

不思議におもいながら、母の住んでいたホテルにいくと、そこには見ず知らずの夫婦が住んでおり

病院にも母の姿はなく・・・・・

ようやく主治医を問い詰めると、なんと、母は3年も前に亡くなっていたのでした。

つまり、死期をさとった母が数日の間に250通の手紙を書き、

すこしずつ送るよう、スイスの友人に頼んでいたのでした。

死んでなお、あの世から息子が生き延びられるように声援を送っていた母。

なんと深い母の愛・・・・・っていうことなんでしょうか?

 

うーん、このちょっとミステリアスなオチがこの映画の売りみたいになってるのですが、

これはかなり貧弱で、ほぼ予想通りでした。

ユダヤ系ポーランド移民の母がなぜそこまでフランスに固執するのか、とか、そっちのほうが

私には謎めいていたけれど、それは結局分からずじまいでした。

現地の人が見れば、映画の中にちゃんと語られているのかもしれないけれど、

日本人にはわからないな。

 

前半→ めりはりなく同じようなシーンの繰り返しで退屈

ラスト→ 拍子抜けするほどあっさりな結末

・・・という感じで、思ったほど自分好みの作品ではありませんでしたが

ロマン・ガリ(カッツェ)という作家を知ることができたのは収穫でした。

シャルロット・ゲンズブールやピエール・ニネは好演していたので、

彼らのファンの人にはオススメです。


公開中・公開予定の映画の原作本 (70)

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公開中 「ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏」 ←「サラ、神に背いた少年」 JTリロイ ア-ティストハウス

 

 

 

3月6日公開予定 「仮面病棟」← (同名) 知念実希人 実業之日本社文庫

 

 

 

3月6日公開予定 「Fukushima50」 ← (同名ノベライズ)

←「原発事故に立ち向かった吉田昌郎と福島フィフティ」 門田隆将 PHP

 

 

「Fukushima50」の原作本「死の淵を見た男」はすでに読みましたが、

これをこどもたちにもわかるように書き直したのが「吉田昌郎と福島フィフティ」↑

児童書だとあなどることなかれ!

単に感動させるだけの「美談」ではなく、人はぎりぎりの場面に立たされた時

どういう行動をとれるのか、どんな力を発揮できるのか?

9年前のことなので、中学生くらいの子だったら記憶があることでしょう。

あのとき、福島のあの「現場」では、何が起こっていたのか?

おそらくどの本よりも正確に事実が書かれた本だと思うので、

ぜひ多くの子どもたち、いや、大人にも読んでほしいと思います。

 

 

この本の著者、門田隆将氏は、優れたノンフィクション作家、ジャーナリストで

実はこの本を読んだ時からTwitterをフォローしているのですが、

政権にも批判はするけれど、それ以上に捏造記事や偏向報道に厳しいので

毎日ぼんやりテレビをみてる私には目の覚める思いです。  

   https://twitter.com/KadotaRyusho

 

新型コロナウイルスの件でも、何を信じたらよいのか迷ってしまいますが、

とりあえず、私は氏のツイートを一番信頼しています。

ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏

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映画 「ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏」 令和2年2月公開 ★★★☆☆

関連本 「サラ、神に背いた少年」 JTリロイ 角川書店

(英語、 字幕翻訳 石田泰子)

 

 

2001年、実家を出てサンフランシスコに住む兄ジェフ(ジム・スタージェス)の近くに移った

サヴァンナ(クリステン・スチュワート)は、

ジェフのパートナーでバンド仲間でもあるローラ(ローラ・ダーン)と出会う。

実は、女装の男娼(しょう)だった過去を描いたベストセラー小説の作者として注目を浴びていた美少年

J・T・リロイは、ローラが作りだした架空の人物だった。                            (シネマ・トゥデイ)

 

実家を出て都会にでてきたサヴァンナ。

兄からつきあってる彼女、ローラを紹介してもらいますが、

けっこう歳のいったクセ強めのおばさんで、まずびっくり!

ローラは兄のジェフとはバンド仲間で、テレフォンセックスで稼いでいるらしい。

ただ、サヴァンナのことはすごく歓迎してくれて、褒め上手。

ちょっといい気分になっていると、

会った当日に、とんでもない秘密を明かされます。

 

「サラ、神に背いた少年」というベストセラー小説は、JTリロイという少年が

母から女装の男娼を強いられていたという過酷な過去をつづった自伝なんですけど、

それを書いたのが、なんとローラだというのです!

 

(別に40歳のおばさんが書いたっていいようなもんですが)

謎の美少年の処女作、ていうのがウケてしまったようで、

「リロイは顔出しNGだけど、電話インタビューには答える」ということで、

ローラが電話では(少年のような話し方で)リロイになりすましていました。

ローラはまたスピーディという彼のマネージャー役も兼ねていて、

人前にはスピーディ役で登場していたけれど、さすがにそろそろリロイ本人を登場させないと・・・・

と思ってたところに(ちょっとボーイッシュな)サヴァンナと出会って

「リロイ役をお願い!」ということになるわけです。

わずか50ドルのギャラで替え玉をやることになってしまったサヴァンナでしたが・・・・

 

話の続きは、チラシにのってた 辛酸なめ子さんの4コマ漫画でどうぞ!

 

 

JTリロイは、実は中年のおばさんで、ビジュアル担当の子も、全然無関係な女性だった・・・・

というのは、かなり世間を騒がせた「事件」だったので、

そのうちバレるのは明白だし、予定通りバレるのを淡々と見ておりました。

 

印税や映画化の権利とかでかなりのお金が動きそうだし、

秘密を守るには、ちゃんとした弁護士とか代理人とかも巻き込むのが必須と思われますが、

ローラの舌先三寸と、サヴァンナの不思議ちゃんキャラで 騙しおおせてるところが

納得いかないまでもスゴイです。

 

1999年  「サラ、神に背いた少年」「サラ、いつわりの祈り」を出版

2004年  映画になる

2005年  リロイが実在せず、サヴァンナは替え玉だったのがバレる

2008年  サヴァンナが告白本「Girl Boy Girl: How I Became JT LeRoy」を出版

 

サヴァンナの告白本が映画の原作にあたるんでしょうけど、邦訳はないから、とりあえず

「サラ、神に背いた少年」を読みました。

 

 

この時点では、リロイは少年の設定だったんですが、邦訳が出た2000年には、

まだサヴァンナとは知り合ってなかったので、

本の見返しに載ってるこの写真はまた別の人なんでしょうか??

(知り合いの少年に金を払って写真を撮ったらしいです)

 

クリステン・スチュワートはちょっと中性的な雰囲気あるし、まあ問題なかったですけど、

ローラ・ダーンがよくしゃべる中年女キャラと、ぼそぼそしゃべる19歳の少年を演じ分けるのは

かなり難しかったと思います。

サヴァンナに「私の話し方をよく研究して」といってましたが、

むしろ、ローラがサヴァンナに寄せていった感じで

(女優も役名もローラなので、わかりやすくて助かりました)

ローラ・ダーンの芸達者ぶりにも驚きました。

2018年の映画なので対象外でしょうけど、

アカデミー賞獲った「マリッジストーリー」より、こっちのほうが

はるかに役作り難しかったのでは?

 

                               ↑  

                   バレる直前に公開された著作の映画化

 

                               ↑ 

           (バレた後) 2017年に日本公開されたドキュメンタリー映画

           何度も予告編をみていたので、一応事件の顛末は知っていました。

 

そもそもフィクションは「いかに上手に嘘をついて読者を煙に巻くか?」という虚構の世界だし

作者を明かさずに出版するのも、戦略的には珍しいことではありません。

自分とは違う別の人格になって語りたい!というローラの思いもよくわかるし、

才能があれば、ぜひ私もやってみたいくらいです。

 

この騒動に関しては、騙された方がバカなんだし、実害も少なく、

印税の処理とかを適切にやっていれば問題ないんじゃないの?

と思っていたら、やはり彼らは罪には問われなかったようです。

ローラは才能あるし、その後も自身の名前で、著作を出しているようです。

 

ところで、本作の原作本はサヴァンナの告白本。

「脚本・政策総指揮」のところに サヴァンナ・クヌープの名前を見つけました。

転んでもただでは起きない人たちだなぁ!

これから観たい映画(116)

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1月公開

▲ 「パラサイト 半地下の家族」  → 感想UP

▲ 「マザーレス・ブルックリン」  → 感想UP

▲ 「フィッシャーマンズ・ソング」  → 感想UP

▲ 「フォードvsフェラーリ」  → 感想UP

▲ 「ジョジョ・ラビット」   → 感想UP

▲ 「リチャード・ジュエル」  → 感想UP

▲ 「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」 → 感想UP

▲ 「母との約束,250通の手紙」  → 感想UP

▲ 「ナイブズ・アウト/ 名探偵と刃の秘密」  

 

2月公開

〇  「グッドライアー 偽りのゲーム」 (新宿ピカデリー イオン板橋)              

▲ 「プロジェクト・グーテンベルク 贋札王」 → これから書きます

▲ 「1917 命をかけた伝令」 → 感想UP

▲ 「ふたりのJ・T・リロイ」  → 感想UP

▲ 「スキャンダル」  → 感想UP

〇 「野性の呼び声」 (TOHO新宿・丸の内ピカデリー)     

〇 「黒い司法 0%からの奇跡」 (ユナイテッドとしまえん)

 

3月公開

〇  3/6 「Fukushima50」 

▲  3/6 「ジュディ 虹の彼方に」  → 感想UP

〇  3/6   「シェイクスピアの庭」 (ル・シネマ)

〇  3/13 「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」 (新宿ピカデリー・恵比寿ガーデンシネマ)

〇 3/20 「ハーレクインの華麗なる覚醒」

◎ 3/27 「ストリー・オブ・マイ・ライフ 私の若草物語」 (イオン板橋)

◎ 3/27 「ハリエット」(TOHOシネマズシャンテ、ホワイト・シネクイント)

                                        

                                                     〇 観たい作品

                                                              ◎ 絶対に観たい作品

                                                              ▲ すでに鑑賞済

                                                              × 23区内で上映終了

 

 

巷は新型コロナウイルスで戒厳令状態のなか、映画館に行くか?って話ですが、

いちおう書き出してみました。

 

映画館の中は閉鎖空間で指定席だと席も移れず、けっして良い環境とはいえないですが、

映画館が休業に追い込まれるところまでは来ていないみたいです。

ただ、ほとんどのところで購入済みのチケットの払い戻しには応じており、つまりこれは

「体調悪くなったけどチケット買っちゃったから無駄にしたくなくて映画館に行く」

という人の流入を防ぐ目的のようです。

 

普通は3~7日前くらいからできるネット予約にも制限をかけて、

当日とか前日にならないと予約できなくしているところもいくつかありました。

 

私が良く行く映画館をチェックしていたら、

なんと「ル・シネマ」が3月10日まで上映中止になってるのに気づきました。

文化村にはオーチャードホールとかシアターコクーンとかあって、そっちとの兼ね合いなんでしょうけど、

たしかにル・シネマの座席は狭くてフラットで、密集してるから、

このご時世ではちょっと遠慮したい感じではあります。

 

6日公開の「シェイクスピアの庭」はル・シネマの単館上映なので、10日までは観られず、

そのあとも・・・ちょっとやめておこうかな?

 

実は、一番気になってるのは27日公開の「ハリエット」なんですが、まだチラシが手に入っていません。

 

ホントだったら「ジュディ 虹の彼方に」も◎のはずだったので載せておきますが、

これはとんだ食わせものでした(あくまでも個人の感想ですが)

テレビでもスポットCMがかかっていますが、

レネーが(ジュディというより)十朱幸代にしか見えません(笑)

あと、歌ってるシーンでは一瞬、越路吹雪にみえるところもありました。

若い人たちには伝わらない話で、すみません<(_ _)>

圧倒的な歌声というよりは、ドラッグでぼろぼろのかつての大歌手が

最後の力をふりしぼって歌う・・・

というほうが正しいので、あんまり予告編で期待しないほうがいいと思います。

 

【追記】

映画館の新型コロナウイルス対応について、シネマ・カフェのサイトに一覧が載っていました。

これによると

3月10日まで休館(上映中止)

   ・ル・シネマ

3月12日まで休館

   ・kino cinema立川髙島屋S.C.館

3月13日まで休館

   ・国立映画アーカイブ

   ・早稲田松竹

   ・岩波ホール

   ・神保町シネマ

のようです。

今後も更新があると思うので、気になる方はこちらをチェックしてみてくださいね

                    ↓

    https://www.cinemacafe.net/article/2020/02/28/66040.html#movie15

日本アカデミー賞発表

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例年にも増して盛り上がらなかったのは、新型コロナウイルスによる無観客だったのもあるけど、

内容がかつてないほど最低でしたねゲッソリ

すでにノミネートされた作品が上がった時点で、お寒い結果だったし、納得もいかなかったんですが、

それでも本家のアカデミー賞と違ってほとんど観ているから、希望どおりにはならなくても、

予想はほぼ的中していました。(去年は多分全部当たった)

今年は、下にあげた主要賞については、ひとつも当たりませんでしたチーン

 

作品賞は、「真実」(フランス語版) が日本アカデミー賞の対象から外れるのであれば、

「ひとよ」「楽園」「蜜蜂と遠雷」「空母いぶき」あたりから選ばれると思ったんですけど、

ノミネートすらされないのもありましたからね。

 

結果から言うと「新聞記者」の一人勝ちになってしまいました。

私はこれDVDで観たけど感想も書いてないんですが、

おぞましい「印象操作」の映画だとしか思えなくて、

これが日本映画の頂点だとしたら、日本映画に未来はあるんでしょうか。

そういえば、今年になって、映画館では、邦画は1本もみていません。(全部でもまだ20本ちょっとですけど)

 

王冠1が最優秀賞受賞、 

は (自分の趣味ではなく) 常識的に考えてこれだろうな、と思ったものです。

              全部 はずれた!!ポーン

(「ジョーカー」はあるかな?とちょっとは思ったけど、一つ選ぶとしたら

去年オスカー獲った「グリーンブック」の勝ちだと思ったんですけど・・・)

 

■優秀作品賞
『キングダム』
王冠1 『新聞記者』
『翔んで埼玉』(東映)
『閉鎖病棟-それぞれの朝-』(東映)
『蜜蜂と遠雷』 

■優秀監督賞
佐藤信介『キングダム』
周防正行『カツベン!』(東映)
王冠1 武内英樹『翔んで埼玉』(東映)
平山秀幸『閉鎖病棟-それぞれの朝-』(東映)
藤井道人『新聞記者』

■優秀主演男優賞
笑福亭鶴瓶『閉鎖病棟-それぞれの朝-』(東映)
菅田将暉『アルキメデスの大戦』
中井貴一『記憶にございません!』 
王冠1 松坂桃李『新聞記者』
GACKT『翔んで埼玉』(東映)

■優秀主演女優賞
王冠1 シム・ウンギョン『新聞記者』
二階堂ふみ『翔んで埼玉』(東映)
松岡茉優『蜜蜂と遠雷』  
宮沢りえ『人間失格 太宰治と3人の女たち』
吉永小百合『最高の人生の見つけ方』

■優秀助演男優賞
綾野剛『閉鎖病棟-それぞれの朝-』(東映)
伊勢谷友介『翔んで埼玉』(東映)
柄本佑『アルキメデスの大戦』
岡村隆史『決算!忠臣蔵』
佐々木蔵之介『空母いぶき』 
王冠1 吉沢亮『キングダム』

■優秀助演女優賞
天海祐希『最高の人生の見つけ方』
小松菜奈『閉鎖病棟-それぞれの朝-』(東映) 
高畑充希『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
王冠1 長澤まさみ『キングダム』
二階堂ふみ『人間失格 太宰治と3人の女たち』

■優秀脚本賞
片島章三『カツベン!』(東映)
詩森ろば/高石明彦/藤井道人『新聞記者』
王冠1 徳永友一『翔んで埼玉』(東映)
平山秀幸『閉鎖病棟-それぞれの朝-』(東映) 
三谷幸喜『記憶にございません!』

■優秀外国作品賞
『イエスタデイ』
『グリーンブック』 
王冠1 『ジョーカー』
『運び屋』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

プロジェクト・グーテンベルク 贋札王

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映画 「プロジェクト・グーテンベルク 贋札王」 令和2年2月7日公開 ★★★☆☆

(広東語・北京語、 字幕翻訳 鈴木真理子)

 

 

1990年代のカナダ。

画家のレイは、大成して恋人との安定した生活を送ることを夢見るが、

なかなか才能を認めてもらえなかった。

生活が苦しくなる中、レイは食べるために絵画の偽造に手を出す。

やがて画家と名乗る人物に評価され、彼が率いる偽札組織のメンバーとしてスカウトされる。

最新の偽札発見テクノロジーでも見破られないレイの偽札は徐々に市場に広がっていく。(シネマ・トゥデイ)

 

タイの独房にいた男が切手を偽造してどこかへ手紙をだします。

その後、香港に移送されると、高名な女性画家ユン・マンが保釈の手続きにやってきます。

男の名はレイ。

偽造の達人である彼は贋札団の一員でした。

この犯罪グループは、贋札づくりのみならず、強盗、放火、殺人、人質事件など

数多くの犯罪を重ねてきたのですが、「画家」と呼ばれるボスは行方不明。

女性取調官のホー警部補は、唯一の生き残りであるレイに

「画家の正体と行方を告白することと引き換えに保釈を認める」と言いますが

「話せば危険な目にあう」とレイはおびえています。

 

(ここから回想シーン)

1990年代のカナダ。

貧しい画家のレイは恋人のユンと同棲中。

ユンのほうは富豪のロク氏に才能を認められ、個展をひらくまでになりますが、

レイの絵は先人の真似だけだと、全く評価されません。

そんな中、レイの模写の才能に目をつけた男が近づいてきます。

「君の絵にオリジナリティはないが、50年代の4大巨匠の筆遣いがすべて含まれる」

「画家」のコードネームで呼ばれる彼は、レイに仕事を依頼します。

 

その仕事とは、贋札作りで、本物と寸分たがわぬ原稿をつくること。

「心をこめれば偽物は本物に勝る」という画家は、3代続いて贋札をつくっているが

ただ一回も逮捕されたことがないといいます。

画家の父の代から仕事をしているベテラン原版技師のヤンをはじめ、

管理担当、輸送担当、警備担当など、各分野のプロが揃っており、

出回ったばかりの新しい100ドル札の研究にとりかかっていました。

 

 

透かしやマイクロプリントの最先端のテクノロジーも彼らにかかればすぐに解析され、

凹版印刷機、無酸紙、特殊インクなどの材料調達には強盗もいとうことはなく、

完璧な100ドル紙幣の製造に成功した彼らは、世界中の闇の組織に売り込みに行きます。

メキシコ、キューバ、ハバナ、インド、アイルランド、ラオス・・・

 

タイ、ミャンマー、ラオスの3国が接するゴールデン・トライアングル地帯では

この地のマフィアのボスである「将軍」とよばれるヘグに会いにいきます。

一般的には1対20の交換率を1対10という高レートでの商談を成立させますが

実はヘグは画家の父の仇で、彼を殺すのが目的だったようです。

銃撃戦が始まり、みるみる火は広がります。

レイは監禁されていたシウチンという女性を助けて、命からがら逃げだし、

彼女は顔のやけどの手術をしたのち、偽造メンバーに加わります。

 

このころ、香港警察のホー警部補のところへ、カナダ警察からリー捜査官が出向してきますが、

彼は、特殊インクを輸送するトラックを襲撃した事件を追っていました。

リーは香港でこの偽造グループを突き止め、潜入捜査を始めます。

 

「自分たちでは絶対に贋札を使わない」というのがグループの鉄の掟でしたが、

ヤンは自分の骨董店の仕入れに贋札をつかったことが画家にバレ、即、家族もろとも粛清されます。

 

レイも殴られて気を失い、意識が戻ったのはホテルの一室。

潜入捜査をするリー捜査官との交渉中、またも銃撃戦が起こり、リーを含めたくさんの死者がでます。

また隣の部屋には、元恋人のユン・マンと夫のロクが目隠しされて監禁されており、

「お前の手で殺せ」と画家に命じられますが、どうしてもできず。

その後レイは逮捕され、刑務所にいれられるのです。     (最初のシーンに戻る) 

 

レイの供述を聞いたホー警部補は、最後に画家の似顔絵を描くように言います。

模写才能のあるレイの描いた絵は写真のように正確で、レイの一時保釈が認められます。

                                       (あらすじ とりあえず ここまで)

 

 

冒頭、オープンロールでは、なにやら赤いインクで花のような図案をペン書きする映像が流れます。

イメージビデオのように眺めていたのですが、その直後、

書いていたものの正体がわかります。

それはタイの切手で、この細かい作業を、彼は独房のなかで完璧にこなしていたのでした。すごい!

この職人技で、すっかりテンションが上がってしまいました。

 

前半は、偽造団のクオリティ高い仕事ぶりが

「プロジェクトX」とか「プロフェッショナル仕事の流儀」みたいだったんですが、

素材の調達は職人技だけではいかんともし難く、次第に

強盗とか銃撃戦とかにシフトチェンジしていき・・・・

 

結局、香港ノワール映画だったのか!

画家役のチョウ・ユンファは、ひと昔前の香港映画の大スターだそうで、

二丁拳銃とか、このちょっと昔ながらのガンファイトがマニアにはたまらないようです。

 

 

けっこう派手なドンパチがあって、最後、画家の正体がわかって終わりかと思ったら、

なんと、今までの話が全部なくなってしまうような、どんでん返しとなって、ビックリでした。

 

以下はネタバレになります。

 

レイを釈放して、ホーが喫煙室でタバコを吸おうとすると

死んだはずのリーの亡霊が火を貸してくれます。

実は画家に殺されたリー捜査官とホー警部補は恋人同士だったのでした。

その直後、ホー警部補は、似顔絵にそっくりの男を目撃し、包囲網をしき、確保しますが、

なんと彼は事件とは全く無関係の警備員。

レイを空港から警察まで移送した車の運転をしていた男でした。

 

画家が警備員に成りすましていたと思いきや、

レイの話の方のほうがすべて嘘で、そもそも画家なんていなかったのです!

 

次に、ネタバラシというか、「真実はこうだった」というのが示されるのですが、

ここからは「画家」の顔がすべてレイの顔にすりかわっており、

つまり、贋札作りの主犯も、襲撃も、強盗も、爆破も、すべてがレイの仕業でした。

ヤンやリーを殺したのもレイだったのです。

彼は救い出したシウチンを火傷の治療と偽ってユン・マンの顔に整形しており、

保釈請求を出していたのは、この偽ユン・マンでした。

 

まんまと警察から脱出できたふたりはフィリピンに逃亡しようとしますが、

途中で警察に包囲されます。

実は偽ユン・マンがホーに密告していました。

「船はまだ、港を出ていない。これが最善の結末よ」

偽ユン・マンは自らスイッチを入れて、クルーザーは大爆発、

ふたりとも死亡します。

 

本物のユン・マンはまだ存命でひっそり絵を書いていました。

ホー警部補が彼女を訪れ、レイが逮捕されたことを伝えますが

彼女は無反応。

「この人は、昔、近所に住んでいた人よ」

レイとは恋人でも同棲もしておらず、ただの顔見知りで、

一方的にリーが思いを募らせていただけだったのです。        (以上 あらすじ おしまい)

 

想像以上に嘘ばっかりで、一番最初の「貧しい画家のカップル」の設定すら覆ってしまいました。

普通、最後に予想外の展開・・・という作品だと、前半に散らばった伏線とか違和感が

するすると回収される心地よさがあるんですけど

本作で感じた違和感は「整形手術」くらいで、けっこう力業ですね。

チョウ・ユンファが全編通して演じた人物が「実はそんな人いなかった」というのですから・・・

 

 

「(代替品はなぐさめになる) 偽物も場合によっては本物を上回る」

的なせりふが何度もでてきて、それがテーマなんでしょうけど、

完璧に完成した贋札には本物以上の技術や手間がかかり、危険もともなうわけで、

100ドル札は5~10ドルで取引されるものの、ある意味それ以上の価値があるかもしれませんね。

 

もう一回、ラストが分かった上でみたら、何か発見があるかもしれないけれど、

うーん、そこまでして観るほどではないかな。

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