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小さな恋のうた

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映画「小さな恋のうた」 令和元年5月24日公開 ★★★★☆

ノベライズ 「小さな恋のうた」 平田研也 講談社文庫

 

 

沖縄の小さな町に暮らす高校生の亮多(佐野勇斗)は、

航太郎(森永悠希)、舞(山田杏奈)、大輝(鈴木仁)でバンドを組んでいた。

オリジナル曲で人気の彼らに東京のレーベルが注目し、メジャーデビューが決まった矢先、

ある出来事でその機会を失う。

しかし、アメリカ軍の基地に住む1人の少女とデモテープの存在が、

亮多らが再び楽器を手にするきっかけになる。                   (シネマ・トゥデイ)

 

沖縄の高校の軽音楽部

リョウタとコータローとシンジとダイキは4人でバンドを組み

部室で大音量で自作の曲を演奏していると

校舎のあちこちから生徒たちが集まって大盛り上がり。

あまりの大音量に顧問から今回もお目玉をくらい、こんな調子では文化祭にも出せないとくぎを刺されます。

 

彼らは地元のライブハウスの根間にも目をかけられていて

彼の口利きで東京のレーベルを紹介して、プロの道も夢見ていたんですが、

その夜、自転車に乗る彼らは走ってきた車にひき逃げされます。

 

病院のベッドでリョウタが目をさますと、そこへシンジがやってきて話をするんですが、

事故のショックで記憶を失っているリョウタにはシンジのことも過去の記憶もすべて消えてしまっています。

シンジの努力でなんとか記憶を取り戻すリョウタ。

 

そこへ驚くべき真実が!

実はあの事故でシンジは即死してしまい、

その姿をみたショックで、リョウタは記憶を失ってしまっていたのです。

 

シンジを失った彼らにもうバンドを続けるのは無理と思われ、ダイキは別のバンドに行ってしまいます。

ところが、そこへ、シンジの妹のマイが兄の自作の曲のテープを持ってきて、

いっしょに演奏したいと言い出します。

今まではボーカルだけだったリョウタもベースの練習をして、

これにドラムのコータローも加えた3人で、バンドを結成します。

 

ここまでが前半部。

死んだはずのシンジがけっこう長いこと登場して、まさかのスピリチュアル仕様には驚きました。

普通の学園ものだったら、このあとリョウタとマイの間に淡い恋がめばえたり、

教師や親や部の仲間とかとの確執がありつつ、一人前のバンドになり

ついには東京でメジャーデビュー・・・なんていうのを予想してしまいますが、そこは沖縄。

後半では、沖縄固有の問題がいろいろ登場してきます。

 

一つは、ひき逃げした車はなかなか捕まらず、

目撃者の情報ではYナンバーの車だったといううわさが流れます。

Yナンバーというのは、駐留軍人や軍属の個人所有の自動車を示す表示で、

基地に逃げ込まれたら、もう日本の警察には手出しできないのです。

当然、これは基地反対の人たちの格好の材料になり、周辺ではデモやシュプレヒコールが。

 

被害者のシンジの親は基地内で仕事をしているので、

もう立場上働くことも難しくなって、生活にも支障をきたしているし、

もう一人の被害者リョウタの母も米兵相手のクラブを経営していて、

(基地への風当たりから)外出禁止の命令が出て、まったく客が入らない状況。

「こんなことは今までも何回もあった」と笑うリョウタの母ですが、

これが沖縄の現実なのかな、と思います。

 

もうひとつ、シンジには基地のフェンス越しに交際していたアメリカ人少女リサがいて、

彼女にシンジの作った曲をぜひ聞かせたくて、文化祭に誘うのですが、

基地をでるのは危険だからと、親からも警備からも止められ・・・・・

 

というような話になっていきます。

 

東映では、2017年の「キセキ あの日のソビト」と今年の「愛唄 約束のナクヒト」と

ボーカルグループGReeeeNの映画プロジェクトをやってきたので

本作もMONGOL800の楽曲を使っているので、その流れかと思ったのですが、

(いい意味で)別物でした。

 

予想以上にちゃんとした話で(失礼!)

私が一番信頼しているCOCOの満足度ランキングでも、上映中全作品のなかでまさかの1位でした。

後半「基地問題」が出てきたときには悪い予感がしたのですが

米軍基地を「沖縄のダニ扱い」するわけでもなく、基地内の人たちにも触れていて、

予想外にフェアだったんじゃないかと・・・

 

沖縄で事故が起きたり、ヘリからなんか落ちるたびに、外からやってきて座り込みとかしちゃう人たちは

沖縄の人たちに良かれと思ってるのか、ただ利用しているだけなのか?

多分両方なんでしょうけど、シンジやリョウタの親みたいに(基地反対の運動のせいで)

被害者なのにさらに困っているひとがいることも事実なんでしょうね。

 

もうひとつ「予想外」だったのは、演奏のクオリティについて。

特にマイ役の山田杏奈の歌がすばらしくて、思わず経歴を検索してしまいました。

普通にかわいくて芸能界入りした18歳の女の子のようで、

ミュージカル経験も楽器の経歴もないみたいなのに、すごい潜在能力を秘めた子ですね。

今まで映画のなかの歌を「うまい!」って思えたのは、高畑充希くらいだったもんなー

今後が楽しみです。

 

とにかく、タイトル画像↑の3人の関係がとても微笑ましくて、

恋愛モードなんかなくても、キュンキュンしてしまいますよ! おすすめです。


エリカ38

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映画「エリカ38」 令和元年6月7日公開 ★★★★☆

 

 

渡部聡子こと自称エリカ(浅田美代子)は、愛人・平澤育男(平岳大)の指示を受けて、

支援事業説明会という名目で人を集め、架空の投資話で金をだまし取っていた。

しかし、平澤の裏切りを知るや彼との連絡を絶ち、裕福な老人を丸め込んで豪邸を手に入れる。

エリカは老人ホームにいる母(樹木希林)を呼び寄せると、

自分で架空の支援事業説明会を開催して金をせしめる。         (シネマ・トゥデイ)

 

心待ちにしていた「エリカ38」、初日にTOHOシャンテで鑑賞。

上映館少ないし、初日なのに、3割くらいの入りで驚きました。そんなもの?

値上げしたばかりのTOHOシネマズですが、先月はシャンテだけで4回も行ったのでポイントがたまっていて

私は無料鑑賞できました(どーでもいい話ですみません)

 

もう一つショックだったのは、これが「樹木希林最後の遺作」と聞いていたのに

上映前に、ドイツ映画「ゴンドラの唄」の予告編が流れ、

これが「樹木希林の遺作」と紹介されたこと。 

え?!「エリカ38」が最後じゃなかったの??

 

「遺作」とは死後に公開されたものすべてだから、

「日日是好日」も「エリカ38」も「ゴンドラの唄」も全部遺作で問題ないんですけどね。

 

「日日是好日」 最後の主演(助演?)映画

「エリカ38」 最初で最後の企画作品

「ゴンドラの唄」 最初で最後の海外映画・・・・

というさらなる口上がつけられて、

樹木希林さんはどこまで映画業界に貢献させられてるんだろ??

 

本作のモデルは、誰もがご存じの『つなぎ融資の女王こと山辺節子』

逮捕されたときの肩を出したショートパンツにカチューシャ姿の若作りファッションに

「62歳」とテロップが出た時の衝撃は、まだ記憶に新しいです。

 

 

よくみたら結構なオバサン顔なんですけど、自称「エリカ38歳」で通したというから大したものです。

浅田美代子だとこの無理無理感がちょっと薄くなってますけど、

それでも着飾ってアゲアゲな時と、化粧を落として素顔のババアになってるときのギャップは

同年代としてリアルでしたよ~

 

 

本作はエリカこと渡部聡子の半生、というわけではなく、ドキュメンタリー形式で

橋本という記者がビデオをとりながら被害者たちにインタビューをし、

その間に再現シーンを挟んでいく、という形で進みます。

なので、時系列ではなく、時間軸も頻繁に動くし、

フラッシュバックのように、クズ父親に支配されている

子ども時代の聡子の家庭環境も挿入されます。

 

 

小さなバーのホステス時代。

客あしらいのうまい聡子は、年増なのに、若い同僚の愛のお客を横取りして、

高価なものを買ってもらって同伴出勤、は日常でした。

 

やがて彼女はマルチ商法のサプリメント販売に携わり、ほかのメンバーをとりしきる立場に。

ある日、レストランでの聡子の話術にほれ込み、その場でひとつ1万2000円のサプリを15個買ってくれた

伊藤信子という女社長と知り合います。

信子は、国境を越えてビジネスを展開している、若い平澤という大物ビジネスマンを紹介してくれます。

これからは発展途上国支援に生きたお金を使おうという彼の話に感銘をうけ、

自分の客にも紹介していくと、

彼らも全員、非現実的な平澤の話に惹かれ、異常なまでの強い自信に心がゆさぶられるのか、

瞬く間に億単位の支援金が集まり・・・・・

 

と、ここまではまだ聡子は平澤の道具でしかなく、むしろ被害者に近いのですが、

平澤と愛人関係になり、彼との間がこじれていくうちに、

集めた金で豪遊したり、ホスト遊びをしたり、私的流用をするようになります。

上の相関図にはないけれど、佐々木という老人からは豪邸を買ってもらい、

(同居していたみたいなので、ここだけは「後妻業」的手口?)

母を呼び寄せ同居します。

 

普通、詐欺師は自分の居場所をはっきりさせず、すぐに姿をくらませるように

連絡手段は偽名で購入した携帯だけ、ということが多いんですが

聡子は自宅で支援者たちをもてなし、逃げも隠れもしないことが信頼に結び付いたのかもしれませんが

それでも、配当金が払われない状態が続くと、支援者たちが自宅に押し掛けてきます。

 

鬼の形相で「金を返せ!」と迫る何十人もの支援者を

穏やかなほほえみでさらりとスルーする聡子の姿は、まるで

刃物を振りかざして襲ってくる悪党どもを

扇子片手にかわしていく時代劇の殺陣を見ているようでした。

(やってることは褒められたものじゃないですが・・・)

 

有り金も尽き、母に「一緒に死のうか?」

「あたしはいいわよ」と言い合うのが↑のタイトル画像です。

樹木希林は「万引き家族」のおばあちゃんを連想しますが、

ここは一応豪邸の片隅で、ネイルをした爪に大きな宝石の指輪、高そうな服を着て、

一文無しになったとはいえ、まだセレブっぽいんですね。

ちなみに、「あたしはいいわよ」というのは「一緒に死ぬのはOK 」という意味ではなく、

「あたしは死ぬのはごめんだ」という意味です。日本語は難しいですね。

 

聡子は外車を売り払い、母を老人ホームに預けて、タイへ向かいます。

そして予てから愛人関係だったポルシェという若い男と激しく愛し合い、

まさに聡子が求めていた幸せな生活を手に入れるのですが、

車で買い物に行った折、ガソリンスタンドで現地警察に拘束されるのです。

 

山辺節子逮捕時のブリブリの聖子ちゃんファッションが見られるのかと思ったら、

充分若作りですが、そこそこシックなスタイルでしたね

 

 

逮捕後、取材に訪れた橋本に、ポルシェは

「エリカに渡して」と手紙を預けます。

「君が恋しい」

「ずっと待っているから戻ってきて」

「永遠に君を愛してる」

「マイエンジェル・・・」

 

彼の存在が聡子にとって唯一の希望といえるんでしょうが、

ところが、ポルシェには恋人がいて、聡子が残した豪邸でいっしょに暮しています。

ポルシェは永遠の38歳のエリカが1958年生まれのことも知っていて、

「エリカからもらったお金がなくなったら、働かなきゃ」なんて言ってるのです。

ショックだ~!

 

相関図にはありませんが、橋本の取材対象の中でいちばん衝撃的だったのが

聡子の行きつけのホストクラブのホストのひとりで、彼は

聡子に買ってもらったという300万円の高級時計をしているのですが

「失敗した。マンションとかランボルギーニとか買ってもらうんだった」

と、しゃあしゃあと言い放つ姿には唖然としました。

 

被害者と加害者の分類はきちんとできるものではなく、

加害者のまわりにもそのお余りを頂戴するハイエナみたいなのがいたり、

被害者だったのがある日から加害者に転身したり、いろいろ複雑に絡み合ってるんですよね。

 

架空のもうけ話に騙されたり、色仕掛けに乗っかるのは

被害者側にも落ち度は絶対にあるから、そんなに同情はできないんですけど、

うまい話に乗っかって、気持ちが高揚して夢をみる瞬間ていうのは

実は、けっこう快感なんじゃないかと思いますよ。

 

(映画と関係ない話になりますが)

私は今までの人生のなかで、友達から怪しげなセミナーに連れていかれたり、

かなり強引な勧誘を受けたり、いろいろありましたけど、

変なものを買わされたり、サインさせられたりしたのは、一度もありません。(多分)

 

集団心理に身をゆだねて、みんなで盛り上がるのは楽しいけど、

それをひとりだけ冷ややかな目でみている自分を客観的に眺めているのも、

実はそれ以上に楽しいのでね。

 

ほんの2週間ほど前のことですが、ランチタイムのすぎたファミレスで本を読んでいると、

となりのテーブルで、明らかにネットワークビジネスの勧誘をしているのに遭遇しました。

 

もう本どころじゃなくなって、聞き耳をたてつつ、出てくる単語をスマホで検索していたら、

すぐに正体が割れました。

けっこう有名な古典的なマルチまがい商法でした。

ひとりの男性が友人と思われる二人の女性を勧誘してるんですが、とにかく話がうまい!

顔に塗るゲルで頻尿や生理痛や、ましてガンまで治るわけないと思うんですが、

女性たちはうなずきながら聞いています。

強引さは全くなくて、すべて「自分の意志で判断してる」というのを確認しつつ話を進めています。

そのうち、

「じゃあ、私はちょっと席を外しますんで、ふたりで話し合って」といって男性は席をたちました。

 

この瞬間、私のスマホの画面をふたりに見せたほうがいいのか・・・・?すごく悩みました。

ところが、どうやら、2人のうち、ひとりは勧誘側だったみたいで、

当然のように即、契約を決めてしまいました。

ガーン!

だけど、彼女たちだってスマホくらい持っているし、いろいろ調べたうえで決めたのなら、

他人が口をはさむことじゃないよな~

と思って、すごすご帰ってきたのですが・・・・・

 

この映画の最初の化粧品のネットワークビジネスのところで、

いきなりこの時のことがよみがえり、

あの時、自分にもなにかできたんじゃないかと反省しています。

 

話が脱線しましたが、それにしても、本作の浅田美代子が怪演はすさまじいです。

おっとりとした温和な笑顔や話し方、無邪気でかわいらしい表情、そして時たま見せる妖婦の顔

若見えのときも、年相応のときも、老婆のようなときも、ほとんどメイクに頼らずに、

表情だけで演じ分けられるもの、浅田美代子だけでしょう。

60代でこの現役感を出せるのは、同年代として、うらやましい、というか、まぶしいなあ・・・

 

「時間ですよ」のミヨちゃんはへたくそでしたが、中年以降、映画ではわき役として大活躍しており、

過去作はほとんど見ています。

「僕らのワンダフルデイズ」では同世代に共感度高い妻だったし、

「きな子 見習い警察犬の物語」では、ヒロインを突き放すクールな母でした。

樹木希林つながりの「あん」では、差別主義者の店のオーナーでしたね。

 

女優賞、本作で、きっといくつかは獲れそうな予感です。

轢き逃げ 最高の最悪な日

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映画 「轢き逃げ 最高の最悪な日」 令和元年5月10日公開 ★★★☆☆

 

とある地方都市。

大手ゼネコン勤務の宗方秀一(中山麻聖)は、副社長の娘・白河早苗(小林涼子)との結婚も控え、

公私共に順風満帆だった。

ある日、親友の森田輝(石田法嗣)を助手席に乗せて

結婚式の打ち合わせに向かおうと車を走らせていたところ1人の女性を轢き、

そのまま現場から走り去ってしまう。

刑事の柳公三郎(岸部一徳)と前田俊(毎熊克哉)は捜査を開始する。       (シネマ・トゥデイ)

 

副社長の娘との結婚を控えたシュウイチは、当日司会をしてくれるテルを乗せて

青いジープで裏道を急いでいるとき、喫茶店「スマイル」の店の前で女性をはねてしまいますが、

動かない女性を救助することもなく、車を走らせて、式の打ち合わせに向かってしまいます。

そして、その後のニュースで女性は死亡し、ひき逃げ事件として捜査が始まっていることを知ります。

 

その夜、シュウイチとテルの自宅ポストに、動物の目ばかりを切り抜いた脅迫状のようなものが・・・

ふたりとも眠れない夜を過ごしますが、結局「みんなが事故を忘れるまで嘘をつきとおそう」と、

式の前日は何もかも忘れて、独身最後の一日をふたりで楽しもうと、

海へ行ったり、遊園地へ行ったり・・・

 

一方、被害者の家では、一日中亡くなった娘の幼いころのビデオを見続ける父と

それをいたわるその妻のチズ子。

 

副社長の娘のサナエとシュウイチの結婚式は滞りなく終わり、ホテルで初夜を迎えます。

ただ、当然ながら防犯カメラ映像などから、青いジープの存在は警察に割れており、

この時すでにふたりは警察からマークされていたのです。

翌日夫婦で映画館を出たところで、刑事の柳と前田にシュウイチは同行を求められ、

その後、会社で仕事中にテルのところへも刑事がやってきます。

 

 

シュウイチの妻のサナエと会社の幹部たちが時山の家を訪れますが

「バカにするな!」と見舞いの品を投げ返す時山。

轢き逃げ事件の犯人が城島建設という一流会社のエリート社員だったことで、世間は騒然とし、

会社では副社長たちが引責辞任することに・・・・・


 

・・・という感じで、前半部分は

「美人で性格もやさしい副社長の娘との結婚式直前のエリートが起こした」という、

これ以上ないほどのベタなひき逃げ事件の話です。

 

予告編では、被害者の父である時山(水谷豊)がお蔵入りになりそうな難事件を

執念の独自捜査で犯人を突き止め、追い詰める・・・みたいな印象だったんですが、

「なにかぶつかったけど、急いでるからいいや」ではなく、

完全に「人を轢いた」ことを自覚したうえで逃げた、という加害者目線で始まるので、

ミステリー要素は皆無と思われました。

 

このあと、何も悪くない妻のサナエがひどい目にあわされたり、

母一人で育ててくれたシュウイチの母親がショックでどうにかなってしまったり、

会社の責任問題とか、世間の対応とか、

その辺のわかりきったことをグダグダやり始めたら、

もう途中で退席しようかとも思うほどでした。

 

ただ、前半部で、いくつか、心にひっかかるところはあったので、

それが後半でどう扱われるのか?

とりあえず、最後までみることにしました。

 

① 逃げるときに喫茶スマイルの看板にぶつけて、バンパーの上に傷ができていましたが、

車にほとんど損傷がなく、あんなことで人が轢き殺せるのか?

 

② シュウイチの上司のマサルは専務の息子で、日ごろからシュウイチを敵視していて、

隙あらば引きずりおろそうと思っているようで、もしかして、あの事故にもかかわってる?

 

③ ふたりのところに届いたキミの悪い脅迫状と、差出人不明の祝電。

あれを送った人物が警察に通報したとは考えられず、ふたりが逮捕された後、

脅迫状の主はどういう動きをみせるのか?

 

そして、後半

とくに、ここからはネタバレとなりますので、未見の方はご遠慮ください

 

刑事の柳(岸部一徳)から、事故現場に携帯電話がなかったことを聞いた時山は、

ノゾミの部屋を探しますが見つからず。

ただ、娘の日記から、その時間にだれかと会う約束をしていたことを知ります。

あの日は「スマイル」の定休日だったのに、なんであそこにいたのか?

そしてその相手を知りたくて、勤め先の美術館や、ダンスの仲間たち、「スマイル」の店を訪ねあるきます。

その結果、ノゾミは以前「スマイル」に白いジーンズの男と2回来店したこと、

また、事故の2週間前に、ダンス仲間と合コンをしていて、そこには(顔は判別できませんが)

たしかに白いジーンズの男が映っていました。

 

次の場面では、時山はベランダのガラスを割ってある住宅に侵入し、懐中電灯で室内を探していると

目の切り取られた動物の図鑑、白いジーンズ、そしてノゾミの携帯電話も発見します。

そこへ部屋の居住者が帰宅し、取っ組み合いとなり、ふたりとも窓から外に落ちて、警察もやってきます。

 

その部屋の居住者はテルでした。

既に釈放されていたテルは、再び逮捕され、柳と前田の取り調べを受けます。

学生時代からずっとシュウイチに劣等感を持っていたテルは、彼の困った顔が見たくて、

合コンで知り合ったノゾミを呼び出して、交通事故を仕組んだといいます。

 

「テルさんがわからない」

面会でつぶやくサナエにシュウイチは

「おれにはわかっていたことかもしれない」

「バチが当たったんだ。もうこれで終わりにしよう」

「はい」とうなずくサナエ。

 

時山チズ子が事故現場の献花を片付けていると、そこへ

サナエが花束をもってやってきます。

山の見えるカフェでお茶を飲むふたり。

「あなたは何も悪くないのよ」

「わたし、もっと責められるのかと思っていました」

「人を責めて楽になれるのなら、いくらだって責めるわ」

 

「はじめてシュウイチさんから手紙が来ました。読んでいただけますか?」

その手紙には・・・・

人の人生を奪い、みんなの人生をこわしたボクに選択肢はない

嫉妬の先にあるもの・・・・

それを糧に高みに上ることもできれば、嫉妬に取りつかれて地獄に落ちることもある

心のどこかでテルが自分に嫉妬していることを知りながら、

そばに置いて優越感に浸っていたのかもしれない

罪を償うというのは、罪を犯していない人の言い分で、

今の自分には罰を受けることしか残っていない

サナエさんを愛する資格もない

ただ、もう一度手紙を書いてもいいですか?

 

というようなことがつづられていました。

「わたし、シュウイチさんを待ちます」と、サナエはきっぱりといい、

手嶌葵の歌とともにエンドロールへ・・・・・

 

感想をひとことでいうなら、

「ベタベタな前半にムリムリの後半」

 

副社長vs専務の権力争いとか、逆玉婚とか、幸せなディナーでワインをこぼしたりとか、

ありきたりの脚本にうんざりしていたら、

後半一波乱ありそうで、期待したんですが、どう考えてもつじつまの合わないところが気になって・・・・・

という感じです。

 

水谷豊と岸部一徳が出ていて犯罪の真相が二転三転するとなると、

どうしたって「相棒」が頭に浮かんでしまうから、

ちゃんと腑に落ちる解説をしてくれることを期待してしまいますよね。

前回の監督作品は全然ジャンルがちがっていたから問題なかったけど、

被害者加害者の心理描写以前に、ちゃんと納得のいくなぞ解きをしてくれなくちゃね。

 

そもそも防犯カメラに車がうつってただけで逮捕するのもひどい話だし、

(多分「相棒」だったら、米沢さんがきちんと科学捜査をしてくれるはずです)

テルが轢き逃げするところまで計画に入ってたとも思えません。

時山がどうやってテルの自宅を突き止めたかの説明もなし。

「白いジーンズ」だけで個人を特定しちゃうのもすごいですね。

 

テルが心を許せる親友とみせかけて「実は嫉妬に狂ってた」というのはわかりますけど、

もうちょっと事情を聴きたいと思ってたら、

いきなりメガネを食べて血まみれになったりのよくわかんないサイコパス演技をはじめて

力業でごまかされた印象です。

 

「轢き逃げ犯のひとりが、実はノゾミの交際相手だった」

というのが、後半で判明する驚愕の事実!ってわけですが、

これって時山が気づく以前に、犯人逮捕された時点の報道で

いっしょに合コンに参加した友人とか、事件現場前の「スマイル」のマスターが気付くはずですよね?

大手ゼネコンの社員だというのはテルの唯一の自慢ポイントなわけだから、

合コンで名刺くらい渡してて同然のような気もするし・・・・

 

私が前半で感じた伏線的違和感も

③の脅迫状は解決しましたが、①と②は伏線ですらなかったです。

このほかにも、憲法38条一項の黙秘権もテーマかと思ったら、それっきりだし、

何度も登場した時山の勤務先の社長って必要だった?

(TAPでお世話になったHIDEBOHにせりふをしゃべらせたかっただけなのかな?)

 

最後のほうでは、まるで「真犯人はテルでした」みたいな印象ですけど、彼の罪はなに?

1度目の逮捕は「犯人隠避罪と救助義務違反」で、準抗告がみとめられてすぐ釈放されましたが、

2度目の逮捕は、時山を殺そうとしたから? 轢き逃げをセッティングしたから?

むしろ家宅侵入した時山のほうが罪が重いと思うし、

轢き逃げも、運転していたのはあくまでもシュウイチであって、

テルをどんな罪状で起訴できるのか、よくわかりません。

 

轢き逃げはやめましょう(これは当然)

罪のない加害者の関係者の苦悩

最愛の娘を失った被害者家族の悲しみ

憧れと嫉妬は紙一重で時として狂気になる

真摯に罪と向き合う犯罪加害者の贖罪

 

いろいろ伝えたいことはあるのでしょうが、

ありすぎて、それぞれが打ち消しあってしまった印象です。

 

シュウイチとテル、新妻のサナエの3人には有名どころの俳優を使わなかったけれど、

これは、ぴったりのキャスティングでした。(今後も期待しています)

そしてベテランの岸部一徳と檀ふみがすばらしくて、

もうこのふたりがいたから、この作品は成立したんだな、と思わせます。

ふたりのせりふは、なんのひっかかりもなく、すっと心に沁みてくるから不思議です。

 

水谷監督は60代のうちにもう1本映画を作りたいと言ってましたが、次回は

「相棒」とかぶる犯罪ものは避けたほうがいいかな、と思います。

次回も岸部一徳はきっと登場するのでしょうね。これは楽しみです。

パドマーワト 女神の誕生

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映画「パドマーワト 女神の誕生」 令和元年6月7日公開 ★★★☆☆

(ヒンディー語 字幕翻訳 福永詩乃 ) 

 

 

 

13世紀末。

シンガール王国の王女パドマーワティ(ディーピカー・パードゥコーン)は、

西インドの小国メーワール王国の王であるラタン・シン(シャヒド・カプール)と恋に落ち、ラタンの妃になる。

時期を同じくして北インドでは、叔父を暗殺した武将アラーウッディーン(ランヴィール・シン)が

イスラム教国のスルタン(王)の座に就く。                             (シネマ・トゥデイ)
 

冒頭、

「パドマーワトはフィクションで事実とは一致しません」

「ここで描かれる寡婦殉死について、けっしてオススメしているわけではありません」

「動物は虐待しておらず、全部CG処理してますからあしからず」・・・・

のような、ちょっとシツコイ感じの字幕が流れ、いよいよ本編です。

 

13世紀のアフガニスタンで、

デリーの玉座をねらっているジャラールッディーンのところへ

ダチョウを連れたいかつい男がやってきます。

娘のメヘルーがダチョウの羽を欲しがっていたことをきいて、なんと一頭まるまる持ってきたのです。

彼の名はアラーウッディーン。

ジャラールッディーンの甥にあたる人物ですが、以降「アラー」と省略させていただきます。

ダチョウは貢物としてはけっこうポイントたかそうですが、それにしても

「メヘルーをわが妻に」

なんて、図々しい言い草!

ところが、メヘルーもまんざらでもない様子で、二人は結婚することに。(早っ!)

 

「この世の宝はすべて自分のもの」というのが彼の信条のようで、

自分のものにしたら興味はもうほかにいっていて、

結婚式の当日に別の美女とヤッてるような、クズ男です。

 

場面かわって、シンガール国の美しい王女パドマーワトは、森で狩りをしているとき、

誤って人間に矢を命中させてしまいます。

彼は西インドの小国メーワール国のラタンシン王で、シンガールに真珠の買い付けにきていたのでした。

手当をするために城に招き、二人の間には愛が芽生えます。

 

「ともに来てくれないか、わが妃として」

そしてふたりはメーワール国の都チットールガルに帰還し、民に歓迎されます。

「真珠を求めてシンガールにいったら、それ以上の宝を得た」

「私も鹿を狩るつもりが、獅子を得た」

 

このふたりは美男美女のお似合いカップルで、いつも仲がいいんですが、

それをこっそりのぞき見している人物が・・・・!

 

それは僧のバラモン・シンで、怒ったラタンシン王は「牢に繋げ」といいますが

「国を汚すものはとどめおくことはできない。追放を」という妃の言葉を聞いて

バラモンは国外に追放されます。

 

 

このころ、アラーは、モンゴル遠征で手柄をあげ、スルタンとなっていた叔父に褒められるのですが、

「この石が輝くのはスルタンの冠だけだ」と、美しい宝石を取り上げられ、

代わりにカーフールという有能な奴隷を与えられます。

 

カーフールはアラーに忠誠を誓い、大臣ふたりを瞬殺、スルタンまで殺してしまいます。

「石を奪われたから玉座を奪ってやった」

と、自分がスルタンの座につき、アラーが怖くて、周りも従わざるを得ません。

 

そこへ故国を追われたバラモンシンがやってきて

「メーワール国のパドマーワト王妃の美しさはこの上なき宝」とアラーに吹き込むと

顔もみたことないのに、アラーは彼女を妻にしたくてたまらなくなります。

 

まずは小国メーワールに属国になれと求めますが、当然ラタンシンは拒否。

アラーは大軍勢を率いて都のチットールを包囲しますが、守りが固くて攻め入ることができず、

2か月もの間、クシュティ(力くらべ)や騎馬戦などのイベントで兵士の士気を保ちつつ

陣のなかでひらすら待っていました。

「天下の王が女のために戦とは!」

カーフールさえあきれるほど、パドマーワトへの異常な執着をもつアラー。

 

やがて、メーワール側から陣に火が放たれ、天幕も兵糧物資も灰になり、

兵士たちの士気も落ちて、デリーに帰りたいといい始めます。

メーワールのほうも、包囲されていて食料も底をついていました。

そこへ、アラーから和平の申し込みが。

「兵を残して一人でくるなら」とラタンシンはそれを受け入れます。

アラーを殺す絶好の機会でしたが、誇り高いラタンシンは、そういう卑怯なことはせず、

単身でやってきたアラーを丁重にもてなすのでした。

 

アラーとしては、王との交渉なんてどうでもよくて、

ただ絶世の美女のパドマーワトの顔が見たくてやってきたのに、

ラタンシンはそれだけはかたくなに拒否するばかり。

 

そこで、今度はお返しにこちらがもてなす、と、ラタンシンに自分の野営テントにくるように誘います。

誇り高いラタンシンは側近たちの反対をおして、ひとりだけでアラーを訪れ、

即、拘束されて、デリーまで連れ去られてしまいます。

そして、書簡を送り、王を返してほしかったら、パドマーワトにデリーまで来るようにといいます。

 

パドマーワトは2つの条件をだします。

①800人の侍女を同伴させたいこと

②裏切り者のラタンシンの首をはねること

 

アラーは要求をのみますが、ここでも当然約束をやぶって、

やってきたパドマーワトもラタンシンもふたりとも拘束してしまうのです。

ところが王妃のメヘルーが秘密の地下道に招き入れ、

侍女に扮装した兵士たちが戦っている間に、なんとか逃げることができました。

 

パドマーワトに逃げられたのを知ったアラーは激怒して、再びチットールにむけて大軍を攻め込ませます。

ラタンシンは、城を出て、アラーと王同士の一騎打ちを申し込み、

タイマン勝負が始まりますが、カーフールの放った矢がラタンシンを打ち抜き、死んでしまいます。

これはアラーにとっても本意ではありませんでしたが、

ともかくパドマーワトを手に入れたくて城に潜入します。

 

そのころ、城の中では盛大に火が炊かれ、「ジョウハル」が行われていました。

それはヒンズー教に伝わる「尊厳殉死」で、戦いに敗れ、侵略者たちにレイプされないために

女性たちが自ら火を放ち、集団焼身自殺する行為です。

結局パドマーワトは、アラーに尊厳を冒されることなく、自らの死を選んだのでした・・・・

 

と、ジョウハルを美化した結末は、当然賛否あったでしょうし、それ以上に

「誇り高いラジプート族の王」とか称えても、一国の王としてはアウトだよね?と思ってしまいます。

約束をやぶる卑怯な奴だとわかっていても高潔を貫くのは

自分が痛い目にあうだけじゃなくて、側近や兵士たちを巻き添えにするんですからね。

 

「バーフバリ」を見た時も、「民はたまったもんじゃないな」と何度も思ったのですが

これに比べたら、まだましだったな、と思います。

美人の顔がみたいだけで何人殺せば気が済むんだろうね?

(バラモンシンだけは、殺されて 「ざまあみろ!」と思いましたけど)

 

 

パドマーワトを演じている女優さんは絶世の美女だそうですが、

巨大な鼻ビアスが重そうで、顔の印象がよくわかりません、

遠目に見ると、眉毛がつながってるみたいに見えるし、むしろ、メヘルーのほうがかわいかったな。

 

ラタンシンも、「華奢なおしゃれ番長」みたいで、絶対にケンカ弱そうだし、

性格最悪でも、見た目はアラーのほうが好みです(って、誰にも聞かれてませんが・・・)

 

 

インド映画最大級の製作費だそうで、衣装の豪華さは目を見張るものがあり、

特に踊りの場面がめちゃくちゃ多いです。

(ボリウッド映画特有のノリノリのダンスではなく、わりと古典的な舞です)

「グーマルの舞」とか「デイワーリーの祭」とか「ホーリー祭」とか、

いったん踊りがはじまると、けっこう長いことガッツリ見せられるので、

「見どころ」なんでしょうけど、個人的にはちょっとうんざり。

 

 

 

だいたい、のんきに踊ってるような状況じゃないんですよね。

持久戦で兵士の士気がおちないように、とやってたクシュティや騎馬戦も

余興の域を超えて、命をかけてやってる感じで、おいおい・・・と思ったけれど、

メーワール側も、兵糧攻めで備蓄がやばい状態なのを民に気づかせないように

盛大に祭りをやって、踊ろう!って、それは正しい選択なんでしょうかね??

食料が底をついて危機的状況なのに、ホーリー祭では、みんなで「おめでとう」といいあって、

王と王妃もサフランの赤い粉を塗りあって、けっこう楽しそうにやってましたね。

 

冒頭で「史実ではない」といいながら、アラー(アラーウッディーン・ハルジー)は実際の人物だし

イスラムの国のサルタンだったら、ヒール役にしてかまわない、という認識だったら、問題あるかもね。

殉死も今の感覚では「潔い」とはけっして思えないし、

その辺のころを冒頭で全部断り書きを入れたために、

本編が始まるまえに、結末が割れてしまってる、というのが、何とも言えないです。

 

「インド史上最高の製作費」をうたっていたら、「CGなしのすべて実写かな?」と期待しますが

それも、最初に動物虐待してないことをいうために「CG使ってます」と言っちゃってますからね。

 

それにしても、164分の長編、

映画館で見終えると、それなりの達成感があり

DVD鑑賞よりは絶対に良かったな、とは思います。

公開中・公開予定の映画の原作本 (60)

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公開中 「ガラスの城の約束」 ← (同名) ジャネット・ウォールズ 河出書房新社

 

 

 

7月5日公開予定 「ゴールデン・リバー」 ← 「シスターズ・ブラザーズ」 パトリック・デヴィット 創元推理文庫

 

 

 

8月2日公開予定 「風をつかまえた少年」 ← (同名) ウィリアム・カムクワンバ、 ブライアン・ミーラー 文芸春秋社

 

 

公開中 「空母いぶき」 ← (同名ノベライズ) 大石直紀 原作かわぐちかいじ 小学館文庫

 

 

「空母いぶき」のノベライズは、発売したらすぐ買うつもりだったんですが、

amazonのサイトでまさかの★ひとつが5人連続つづいていました。

偏った意見をもつ一部のひとたちの冷やかし評価、というわけでもなく、

原作コミックファンの人たちが満を持して購入して、まじめに読んでこの評価。

内容だけでなく、ノベライズの技量までコテンパンにやられてました。ショック!

 

 

ほとんど同じ価格で皆さんの絶賛するコミックスペシャルパック3冊セットも販売されていて

こっちにしようかどうしようかと迷ったうえ、やっぱりノベライズ、というか、字でかいてある方を購入しました。

ストーリーの詳細もほぼ忘れているので、これを読んだらブログアップしようと思います。

ガラスの城の約束

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映画「ガラスの城の約束」 令和元年6月14日公開 ★★★★★

原作本 「ガラスの城の子どもたち」 ジャネット・ウォールズ 河出書房新社

(英語 字幕翻訳 稲田嵯裕里)

 

 

 

ニューヨーク・マガジンの人気コラムニスト、ジャネット(ブリー・ラーソン)はある日

ホームレス同然の父レックス(ウディ・ハレルソン)と再会する。

両親は彼女が幼いころ、定職につかず夢を追い求めて気の向くままに生活していて、

仕事がうまくいかない父は酒に溺れ、家で暴れた。

成長したジャネットは大学進学を機にニューヨークへ旅立ち、両親と関わらないようにしようと考えていた。

                                                        (シネマ・トゥデイ)

 

人気コラムニストのジャネットは、ハンサムな金融アナリストのフィアンセたちと会食中。

「ご出身は?」と聞かれた彼女は

「ヴァージニアの森で育ちました」

「母は画家で父は石炭を効率よく燃やす技術を開発したエンジニア」と答えます。

 

帰り道、彼女の乗ったタクシーの窓をたたく薄汚れたホームレスの男、

それがジャネットの父レックスで、そばにはゴミ漁りをする母ローズマリーの姿もありました。

 

今はニューヨークでハイソな生活をおくるジャネットですが、

実は彼女はホームレスの両親のもとで悲惨な子ども時代をおくっていたのでした。

 

父のレックスは定職につかず、その日暮らしの生活で、妻のローズマリーと

4人の子どもたち、(上からローリー、ジャネット、ブライアン、モーリーン)と暮らしていました。

「汚染された世界に住む金持ちよりも、きれいな星をながめられる生活のほうが幸せ」

といわれるともっともらしく聞こえますが、とにかく食べるものにも事欠く赤貧の生活。

 

ある日、母にいわれて料理をしていた8歳のジャネットの服に火が燃え移り、

大やけどをした彼女は、病院に運ばれ、皮膚移植の手術を受けます。

「ちゃんとご飯が食べられて入院は楽しい」とジャネットはゴキゲン。

お見舞いにきた弟は頭が血まみれで、すぐ治療を受けるようにいっても

「石頭だから大丈夫、床が血まみれになって、そっちのほうが大損害だ」

「家にふたりも病院患者はいらない」

と平気な家族に医者たちはドン引きです。

 

退院が近づいても、治療費の払えない彼らは、当然のように「作戦」を実行することに、

まず弟のブライアンが痛い痛いと大騒ぎして看護婦たちの注意をひきつけ、

その間にジャネットを迎えに行きます。

「ずらかるぞ!」

子どもたちもはじめてではないようで、手慣れたもので、

まんまと入院費を踏み倒して逃げおおせることができました。

 

「病院でちゃんと学校に行くようにいわれた」とジャネットがいうと

「経験から学べ、それ以外は嘘っぱちだ」と父。

「この傷がおまえを強くする」

「皮膚を呼吸させろ」と、清潔にまかれた包帯も取り去ってしまいます。

 

家をもたない彼らは、空き家を不法占拠して生活し、

つかまりそうになると借金を踏み倒して夜逃げ・・・

というのを繰り返していたのですが、それも限界となり、

レックスの生まれ故郷のバージニア州ウェルチで暮らすことになります。

ここにはレックスの両親とスタンリーおじさんが住んでいるのですが、

祖母のアーマは父に輪をかけた独善的な人間で、子供たちは「魔女」と呼びます。

 

父の夢は「どこからでも星のみられるガラスの家をつくること」ですが、

常にアル中状態なので、仕事も長続きせず、結局ボロ家から抜け出せません。

母の絵が売れるわけでもなく、ただ毎日、家事もせずに書き続けています。

 

子どもたちも幼いころは、わけもわからず楽し気にすごしていて、

むしろ母の方が、子どもたちのためにはこの父親は有害だと

子どもたちを連れて家を出ていこうとしたりもするんですが、

結局、夫に依存しているから、なかなかその決断ができないんですね。

 

ある日、両親がケンカして父が母を窓から落そうとしているのを

子どもたちが見つけて、全力で止めにかかるんですが、

当の両親はキャッキャッいって、いちゃついているのを見て、全員ドン引き。

このあたりから、自分たちの親はイカレてる、なんとかしよう、と

子どもたちで話し合うようになるのです。

 

賢いジャネットは「チビヤギ」といわれて一番父に気に入られていて

説得できるのは自分しかいない、と覚悟を決め、

「パパはお酒を飲むのを忘れられる?」

「お金を食費にまわしてほしいの」

「パパは誰よりも強いからやめられるでしょ?」

といって、酒断ちをさせたりもしますが、結局は元に戻ってしまい、

ついには、アルバイトで必死にためた子どもたちの貯金まで盗まれ

すべて父の酒代に消えてしまいます。

ガラスの城を立てるためにみんなで掘った穴も、ごみの集積所になってしまいました。

 

そんなひどい親に育てられても、子どもたちはそれぞれに自立してちゃんとした社会人になるのですが、

そのうち、父がもうすぐ死ぬと知らせがはいります。

ジャネットもさんざん迷った挙句、大事な会食を中座して、父のもとに向かいます。

 

「私はパパ似でよかった」

「ガラスの城は建たなかったけど夢をみられた」

「俺の人生は後悔だらけだが、お前は強くて賢くて美しい」

 

父を送ったあと、4人の子どもたちは、

「お金がなかったからクリスマスプレゼントは星だったよね」

「ローリーはペテルギウスで、ブライアンはリゲルだった」

「おもちゃはこわれるが、星は永遠だといわれた」

なんて話をしながら

「パパとの生活は退屈しなかったわ」

 

そしてエンドロールに 実在するこの一家の写真が映し出されます。

本編中には、年代がまったく出てこなかったのですが、

レックスは1934年生まれで、1994年に60歳で亡くなった、とありました。

 

たびたび時間軸が動くので、あらすじを書きづらいのですが、だいたいこんな話です。

(観るまえに原作をよんでしまったので、本編になかったことを書いてしまったかも?ですが)

 

 

今は有名人となった俳優やタレントが実は子どものころは貧しくて、

雑草食べてたとか、公園で寝てたとかの「貧乏ネタ」を最近よく耳にします。

ジャネットの家族は、それをはるかに超越していているんですが、

それでも家族の深い絆で「これもアリかな?」と思わせてしまうのは

去年の「万引き家族」に近いかも。

 

物質社会や学校教育を否定して、自然のなかに生きることや経験を重視するのは

「はじまりの旅」のようで、最初のほうでは、

レックス(ウディ・ハレルソン)がヴィゴ・モーテンセンに見えたのですが

レックスは都合のいい時に「オレ流」を押し付け、口先だけなんですよね。

30歳くらいから60歳までをウディが一人で演じ、時間軸もたびたび変わるので、

子どもたちが幼いころはそれが気にならなかったのか、

(最初はまともだったけど)次第にそうなったのか??

 

ジャネット役も

①子役A ②子役B ③すっぴんのブリー・ラーソン(少女時代)④フルメイクのブリー・ラーソン(大人)

と、3人が演じるのですが、

④からいろんな時代にフラッシュバックするので、ちょっと混乱します。

 

ラストで父が1934年生まれということから、子どもたちの年齢とかだいたい推測できましたが、

実は、私も同じような時期に子ども時代を送ったので

今みたいに他人の視線を気にしつつの子育てではなく、「その家のルール」が横行していたりとか、

家の中での父親の立ち位置とか、理解できる部分はありました。

 

ただ、レックスのやり方を認めるわけではなく、

夫に依存して行動が起こせないローズマリーも含めて、時代を考慮してもやっぱり

これはDVだし、ネグレクトですよね。

 

成功者した娘のところに暴力的なホームレスの親がやってくるなんて、

松本清張ミステリーだったら殺人事件に発展しそうですが、

ジャネットはちゃんと婚約者にも両親のことを話していて、

「恥じていない」時点で、尊敬ですよ。


 

エンドクレジットでは

「傷ついても愛し方をさぐるすべての家族におくる」

とありました。

個人的には、私も独善的で強引な父親を嫌っていたのに、

自分の中にもしっかりその性格は引き継がれていて、父の亡くなった今、嫌いだけど愛おしくもあります。

アルマ→レックス→ジャネットと伝わる性格も、宿命的なもので、

これとどう向き合い、どう受け入れていくか・・・・

こういうのって、多かれ少なかれ、だれにもあるものじゃないかな?

 

 

主演のブリーラーソンは、今やアベンジャーズ女優になっちゃってますが、

彼女が注目されたのは介護施設で働く女性を演じた「ショート・ターム」

それから監禁状態のなかで子供を産んで育てる母親を演じた「ルーム」でオスカー女優になりました。

ところが「フリーファイアー」でアクションやったあたりから、なんか、そっち系の人になっちゃってますが、

やっぱり本作みたいなヒロイン役が彼女にぴったりだと思うのは、私だけではないと思います。

(ただ、これ、2017年の作品なので、アクションを封印して戻ったわけじゃないんですけどね)

 

ウディ・ハレルソンはまさに適役。

ナオミ・ワッツは美人過ぎて、ホームレス女には見えなかったんですが、

 

 

実はジャネットの両親はかなりの美男美女のカップル。

これは原作本のただ1枚の写真ですが、エンドロールには

もっとたくさんの画像が紹介されて、そこそこ幸せそうに生きてる

今の母親のインタビューもあったりで、なんかいい話にまとまってましたけど

これってどうなんだろう?

 

兄弟が集まって

「チーターを触らされた時は焦った」とか

「ハンガーとゴムバンドで歯列矯正器を手作りしたよね」とか

思い出話に花を咲かせるのはいいけれど、

彼の経験した子ども時代は、ぜったい次の世代に継承してはいけないと思います。

 

父は社会の規範やルールに捉われず「自分らしく生きる幸せ」を教えてくれた・・・

というのは、あくまでもひとつの面であって、レックスのやり方はけっして許されることではありません。

映画の感想は人それぞれでいいとは思いますが、

彼に共感して「いい話」「感動作」とか・・・・そういうのはダメです。

 

「ガラスの城 The Glass Castle」は原作の原題にもなっており

父の「いつでも星をながめていたい」という思い付きだけで、

よしんばガラスの城が完成したとしても、そんな家で幸せにはなれそうもありません。

「ガラスの城」ということばにはそれ以上の深い意味がありそうですが、

もう一度、じっくり考えてみよう・・・

アマンダと僕

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映画「アマンダと僕」 令和元年6月22日公開 ★★★★★

(フランス語 字幕翻訳 高部義之)

 

 

ダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)は、レナ(ステイシー・マーティン)という恋人ができ、

穏やかな毎日を過ごしていた。

ある日、姉が事件に巻き込まれ、亡くなってしまう。

ダヴィッドは残された7歳のめい、アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)の世話をすることになる。

悲しみの中、困惑するダヴィッドと母の死を受け入れられないアマンダの共同生活が始まる。

                                                       (シネマ・トゥデイ)

 

24歳のダヴィッドは、短期居住用のアパートの管理人をしながら、不定期で街路樹の枝打ちをしたりの

きままなひとり暮らしをしているんですが、

近所に住むシングルマザーのサンドリーヌに頼まれて

姪の7歳のアマンダの学校の送り迎えを頼まれたりするも

ある日、仕事が長引いて、アマンダの迎えに遅れてしまう・・・というのが冒頭のシーン。

 

「私の携帯に学校から何度も電話があったわ。アマンダを待たせるってどういうつもり?」

と、サンドりーヌは怒っていますが、

そばにいて何かと手伝ってくれる弟に感謝しているし、アマンダもダヴィッドになついていて、

ダヴィッドのほうも、英語教師として働いて娘を育てている姉を尊敬している、

とってもいい関係の姉弟なんですね。

 

 

彼らの母親はずいぶん前に家を出て、以来、父の手で育てられたのですが

その父も3年前に他界しました。

母はアリソンというイギリス人で、たまに手紙がきたりしますが、大人になって会ったことはありません。

姉と違って、どうしても母のことが許せないダヴィッド。

 

テニス好きの彼のために3枚買ってくれたウィンブルドンのチケットも

「もしかして母に会おうとしている?」と思うと、ちょっと気が重いですが、

ただ、最近アパートに住むことになったピアノ教師のレナと交際がはじまって、幸せな日をおくっていました。

 

そんなある日、4人のイスラム系テロリストが公園で銃を乱射し、

偶然そこに居合わせたサンドリーヌがその犠牲になってしまい、レナも大けがを負います。

 

「ママはもう帰らない」

姉を失った悲しみ以上に、残されたアマンダを誰が育てるか?

「親族を集めて後見人を決める必要があります」といわれるも

候補とされるのは

① アマンダとあったこともないロンドン在住の母のアリソン(アマンダの祖母)

② パリに住む父の妹のモード(アマンダの大叔母)

③ ダヴィッド (アマンダの叔父)    

くらいしかいません。

 

アリソンはいくら何でも無理なので、とりあえずは

ダヴィッドとモードで協力しながら学校の送り迎えをすることにしますが、

念のため、養護施設に見学にもいってきます。

「うちの方針は、不屈の精神と知的好奇心をやしなうこと」と胸を張る施設長でしたが

そこにいる子どもたちは両親のいない子だけでなく、

親が親権をはく奪された子もいること。

帰宅できる子とできない子がいるので外出は年に2回しか許されない

というようなことを聞いて、アマンダのことが、急に不憫になってしまいます。

 

叔母のモードは子ども好きの優しい人で、

アマンダは、飼っているウサギと遊ぶのも楽しみにしていましたが、

「(おとなの都合で)あっちこっちに行かされるのはイヤ」

「私はこれから誰と住むの?」とアマンダ。

 

ダヴィッドが預かるときは姉の家に泊まることになるのですが、

彼が洗面にあったサンドリーヌの歯ブラシを捨ててしまうと

すぐにそれに気づいたアマンダは

「ママの歯ブラシをどうしたの?人の家のことを勝手にやらないで!」と大声をあげます。

 

退院したレナもまだ右手は使えず、ピアノも弾けず、

静かな環境に戻りたいと、ダヴィッドを置いて故郷に帰ってしまいます。

レナの去った部屋を整理して、次のロシア人の居住者を案内して、

あまりの淋しさに嗚咽してしまうダヴィッド。

 

別の日、ダヴィッドは、テロの被害者家族として、取材を受けます。

「お姉さまの人となりを聞かせてほしい」といわれ

「イギリス人の母がロンドンにいて、来週末、姉は娘を連れて訪れる予定だった」と答えると

「娘さんがいるとは聞いていなかった、ぜひお子さんの話を聞かせてください」

「子どもは物語のひとつです」

という記者にどうしようもなく腹がたったデヴィッドは、席をたってしまいます。

 

そしてレナの実家を訪れ、4回目のデートを。

「僕はアマンダの強さに救われている」

「今決めたんだ、僕は後見人になる。アマンダを養女にする」

と宣言するのです。

 

「わたしがおじさんの歳になったら?」

「僕は40歳、ずっといっしょにいるよ」

「そんなにずっと一緒で耐えられそう?」

「それは今にわかる」

 

二人はロンドンでアリソンと会い、ウィンブルドンへ向かいます。

サーブ権をもった選手がラブ・フォーティまで追い込まれ、ブレイク寸前。

するとアマンダが急に涙を流して

「プレスリーは建物を出た! もうおしまいよ、のぞみはない!」

「いや、たかがまだ3ポイントだ」

その選手は持ち直して、デュースまでこぎつけます。

「ほらね、望みはなくしたらダメだ」

アマンダに笑顔がもどったところでエンドロール。

 

 

独身の青年が急に身内の子どもを引き取る羽目になる、っていう話は

ある意味映画の定番で、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」とか「ギフテッド」とか・・・

で、親の死を受け入れなければいけない子どもの健気さにやられ、

自分のプラーベートをの折り合いをどうつけていくか戸惑いつつ、父性にめざめていく青年に

涙腺崩壊・・・・という流れを予想してみていたんですが、

すべて予想はいい方へ裏切られました。

 

フランス映画って、(ビジュアルがきれいだから許せるけど)ちょっと感性が違うよね?

っていうのが多い印象を個人的に持っていたのですが

この作品は、ひとつひとつのせりふや仕草が心のひだに沁みるようで、とても共感度高いです。

「テロ事件に巻き込まれる」というショッキングな出来事で運命の歯車が回ってしまうのですが、

それ以外は、まったく自然な日常生活なんですね。(なので、あらすじが書きづらい・・・)

 

一番驚いたのは、「変わり果てた母サンドリーヌの遺体との対面」とか

「友人に囲まれた葬儀のシーン」とか、そういう避けて通れないと思われるイベント的なものが

すべて省かれていること。

 

それから、登場人物がちゃんと名前入りで登場すること。

一度だけちらっと映ったシッターの名前がエマニュエル

事件に巻き込まれた友人がアクセル、その恋人がラジャ、

ダヴィッドの元カノと思われる女性がリディア、

声だけで登場するサンドリーヌの交際相手のロシア人がイヴァン、

レコード店にいる大型インコがジャン・マルコで

モードの家でかってる白ウサギがキャラメル・・・・

ストーリーにそれほどかかわらなくても、ちゃんと名前をあると、これだけの人たちが

ちゃんとみんなアマンダやダヴィッドを見守っているというのが伝わってきます。

 

母の死がメインなのに、葬儀のシーンがない、

というのは、画期的ですよね。

こういう場所でのあいさつとかふるまいとか、絶対本心が現れないから不要だと思うんですけど、

ふつうは絶対に省略せずに

親が亡くなる→遺体に対面して泣く→棺に取りすがって泣く

と、私の嫌いな「観客泣かせて満足」みたいな映画になって、

私なんかはうんざりしてしまうわけです。

 

サンドリーヌの死を知らないリディアが、「お姉さんは元気?」と聞いてきて

ダヴィッドは言葉を濁してしまうのですが、別れた後、思い直して彼女を追いかけます。

そして、ふたりがなにか会話をして嘆いて抱き合う・・・というのを画面の奥に小さく映す・・・

というのも、いい演出だな、と思いました。

 

テロの犯人グループがイスラム系ということで、

関係ないムスリムの人たちがつらい思いをするのは予想できますが、

わざとらしいエピソードをいれることもしていません。

公園で、ヒジャブを被った人ともめているシーンがちらっと映るくらいです。

ただ、被害者のアクセルの恋人のラジャはムスリムかもしれないし、

冒頭で出てきた(4人と言って10人くらいでやってきて、ベッドは4つで全然OKといってた)

旅行者家族はもしかしたら、ムスリムかも??

 

ウィンブルドンのチケットは3枚あって、2人で行くことになったから、席がひとつ空くわけです。

ここに「サンドリーヌの遺影を飾る」みたいなシーンがでてきたらイヤだな、と思っていたら、

アマンダは隣の席に自分のカバンを置いて、笑顔でダヴィッドと目をあわせる、

というシーンになっていました。

「ここはママの席ね」と言っていたような気がして、これも好きな演出ですよ!

 

 

だいたい映画にでてくるアパルトマンはモデルルームみたいにきれいか、

逆に、(母親が亡くなったのを強調するあまり)ゴミ屋敷みたいにするかのどちらかです。

ダヴィッドは便利屋みたいな仕事をしているから、そこそこ家事はできる設定なんでしょうが

適度に生活感あって、ここまで自然なのはむしろ珍しいのでは?

着てるものも全然おしゃれじゃないし、ダサいくらいで、

ダヴィッドはイケメンじゃないし、アマンダも小太りで、美少女というわけじゃありません。

でもそこが愛おしくてたまらなくなってしまいます。

 

レナ(ステイシー・マーティン)だけがちょっと不自然なくらい美人で、

あのベッドシーンいるか?って気もしますが、そもそも彼女は(失礼な言い方ですが)

脱ぎ専女優のイメージだから、控えめ過ぎくらいかも。

日本人の感覚だと、こんなときにするか?と思ってしまいますが、

フランス人だったら、こっちのほうがありきたりの日常なんでしょう。

 

もうひとつ、日本人の感覚でNGだったのは、あの自転車の走りかた。

車道の真ん中を車と一緒に走ってますからね。

(というか、両脇にびっしり駐車してるから、そうせざるを得ない)

自転車で走行中に携帯で話しちゃうし、どこにでも乗り捨てちゃうし、それはレッドカードだと思いますよ。

ダヴィッドもサンドリーヌも車を持たず、かなりの距離を自転車移動するみたいで

おなじ「チャリ族」としてはうれしいし、

一緒にパリの街を疾走しているような臨場感にあふれているのですが

マナーに関してだけ、ちょっと気になってしまいました。

 

「プレスリーは建物を出た」というのは、

「出待ち」をしているプレスリーのファンたちを退散させるために

「プレスリーはもう建物を出て帰ってしまった」といったことが転化して

「もう待っても望みはない」「あきらめなさい」という意味になったということを

サンドリーヌが生前アマンダに話していた、という伏線が最初のほうにありました。

 

レナが「田舎のネズミ」の逸話をするシーンがあったんですが、

そっちは、意味がよくわからずに終わってしまいました。今度調べてみます。

 

上映後にミカエル・アース監督と主演のヴァンサン・ラコストの舞台挨拶がありました。

なんと写真撮影OKだったので、スマホで撮ったピンボケ写真を・・・・

 

 

フランス人でラコステ(ラコスト)といったら、あのワニのマークのルネ・ラコステを連想してしまい、

「ダヴィッドは昔強いテニス選手だった」という話がでたときに

「もしかして、最後はテニスをやるのかな?」

「彼はラコステの血統でテニス採用なのかな?」とか思ったんですが、それは早とちり。

彼はもともとコメディ映画に出る人で、

こういう感情がほとばしるような役は初めての体験、と話していました。

 

演技がはじめてとは思えない子役のイゾールもふくめ、キャスティングが素晴らしいですよね。

それまであんまり物事をシリアスに考えてこなかった青年を自然に軽く演じられるのは

既存の有名俳優では難しかったと思います。

 

舞台袖に引っ込まずに、通路を通って退出されたので、

ちゃっかり握手もしてもらって、初日プレゼントもいただいて、

至れり尽くせりの初日鑑賞となりました。

 

だからというわけではありませんが、この映画大好きです。

とってつけたようなわざとらしさがここまで排除された作品は珍しいのではないかと・・・

去年の東京映画祭でグランプリと脚本賞を獲ったのも当然ですよね。

ミカエル・アース監督のほかの作品もチェックしてみたいです。

ハーツ・ビート・ラウド

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映画 「ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた」 令和元年6月7日公開 ★★★☆☆

(英語 字幕翻訳 神田直美)

 

 

ミュージシャンだったフランク(ニック・オファーマン)は、ブルックリンでレコードショップを営みながら、

シングルファーザーとして娘のサム(カーシー・クレモンズ)を育ててきた。

この夏でフランクは店をたたみ、サムはロサンゼルスの医大に進学する。

あるとき、二人がデジタル音楽配信サービス「Spotify」にアップロードした曲が話題になる。(シネマ・トゥデイ)

 

フランクの経営する「レッドフックレコード」というLPレコードのお店はなかなか売り上げが伸びません。

このご時世、レジでタバコを吸ってることに客から文句いわれても、全然タバコの火を消そうともしません。

怒った客は、今まさに買おうとしていたレコードをスマホでネット購入し

「ネットの方が安かったぞ、ざまーみろ」とか言って出て行ってしまいました。

 

今の売り上げでは店を維持していくことも難しく、

この店の客でもある大家のレズリーがやってきたとき、

もう次の契約更新はせずに、店をたたむことを話します。

17年間この店で一人娘のサムを育ててきたけれど、もう潮時だ、と。

 

そのサムは、なかなかの優等生で、秋から通うメディカルスクールのために勉強漬けの毎日。

親子でバントを組むのが夢だったフランクにはそれが不満で

なにかとサムをつかまえては、

「(勉強なんてしなくていいから)ジャムセッションしようよ!」と誘います。(なんか、逆!)

実はフランクと、亡くなったサムの母は元々ミュージシャンで、

サムは特に音楽はやってなかったですが、ちゃんと才能は受け継がれていたんですね。

 

自作の詩を書き溜めていたサムは、父の熱意に押されて渋々曲作りに参加。

家には楽器やレコーディングの環境がそろっているんですね。

ふたりであっという間に「Hearts Beat Loud」という結構いい曲ができて

喜んだフランクはそれを「Spotify」というネット配信サービスに登録してしまいます。

 

そうしたら、さっそくそれがラジオでかかって大喜びのフランク。

無断で登録したことには怒るサムでしたが、書き溜めていたポエムを出してきて

あと2曲が完成します。

 

マーキュリーラウンジへの出演依頼とか、メジャーデビューの話とかツアーの誘いとか

夢のような展開があって、すっかり有頂天のフランクは

「大学行くの1年延ばせない?」

「私はドクターになるの!」という相変わらずの会話。

 

実はフランクは浮かれてる場合じゃなくて、サムの学費は6万2000ドル、

奨学金をもらっても1万2000ドルは用意しなくてはいけないのに、

今回のレコーディングでサンプラーやレスポールをカード購入してしまって

全くの金欠状態。

大家のレズリーは、家賃は据え置くから、店を明るくして模様替えして再出発したら?

なんなら私が共同経営者になりましょうか?

とか、とっても親切。

ついつい酔っ払った勢いでふたりは一線をこえてしまいます。

 

一方のサムは美術館で知り合ったローズと気が合って、同性愛カップルに。

これもフランクは気に入りません。

 

ともかく店を閉めることを決めたフランク。

全品3ドルの店じまい価格にちらほら客もやってきますが、

そこで、サムと最初で最後のライブをやることにします。

(沈みゆくタイタニックのデッキで最後の最後まで演奏しつづけた楽団を思いつつ・・・)

 

レパートリーは3曲しかないんですが、曲が進むにつれ、だんだん人が集まって、最後は大拍手・・・!

 

一度は食料品店で働いてたフランクでしたが、知人の音楽バーのようなところで働き、

サムもブルックリンの実家を離れて UCLAでドクターを目指しつつも、趣

味で音楽活動もやっているようで、めでたしめでたし・・・・

 

という、ノンストレスのハッピーエンドになっていますが、

なんというか、うっすーい内容です。

 

 

これ、シネマカリテで「ガラスの城の約束」のとなりのシアターでやっているのですが、

(右隅のほうにガラス・・・の展示が映りこんでいます)

あまりの差に愕然としてしまいます。

 

ガラス・・・の父親もひどかったけど、こういう子どもっぽい父親も勘弁してほしいですね。

上映時間、1時間半ちょっとあるんですが、ほんとにうっすーい内容です。(ほかに表現が見当たらない)

サムはひらすらしっかり者で父親はひらすら子どもっぽく、ただそれだけ。

 

最後6人しかいなかった客がだんだん増えて、最後は拍手喝采というのはベタでしたが

親子でアイディアを出し合い、音を重ねていってだんだん曲の形になっていくシーンは

わくわく感にあふれていて、ここは見どころでした。

ふたりとも歌も上手だし・・・・

 

私は音楽系の映画を見るときは(なんらかの情報を引き出そうと思って)

夫を誘うことが多いのですが、「主役の女の子はLGBHみたい」といったら、断られてしまいました。

わたしなんかより、実際に曲を作ったり演奏したりする夫が見た方が楽しめたかな?

と思ったんですが、LGBH要素の予告編で、客をひとり失ってしまいましたよ。

 

実際はべつにレズビアンの濃厚なシーンもなかったし、それで差別されたりもなかったし、

あんまりうっすーい内容なので(くどい!) ちょっとおまけに付け足してみました、的な扱いでしたよ。

なので、映画的にはあんまりおすすめはできないです。

 

たまたま前日、DVDで観た「マダムのおかしな晩餐会」のなかで、

トニ・コレットがすごく嫌味な成り上がりセレブをやっていたのですが、

ここで彼女が演じるレスリーは、ほんとにどこまでも優しい大家さんだったので、

いいお口直しになったかも・・・・ということで★ひとつ追加してみました。


きみと、波にのれたら

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映画「きみと、波にのれたら」 令和元年6月21日公開 ★★☆☆☆

 

大学入学と同時に引っ越してきた向水ひな子は、サーフィンが大好きで

波乗りは得意だが、将来が不安だった。

ある日ひな子は、火事騒ぎで消防士の雛罌粟港(ひなげしみなと)と出会い、

波乗り初心者の彼とサーフィンを楽しむうちに、互いに特別な感情を抱くようになる。 (シネマ・トゥデイ)

 

邦画のアニメは、基本ほとんど見ないのですが、

「サマーウォーズ」「君の名は。」は、たまたまブームになる前に観ていて、

そのときは話題に参加できたから、けっこう気分がよかったです。

本作も、

① コミック原作でもシリーズものでもない

② アニメーションの動きがきれい

③ 予告編を見た感じでは、不思議な理解不能なストーリー

 

この辺から「ひょっとして掘り出し物映画では?」と、いち早く鑑賞したのですが、

(見どころはちょいちょいあるものの)ちょっと私にはダメでした。

 

ただ、全く情報なく鑑賞したわたしには、いちいち驚いてしまうストーリー展開で、

おもしろいかはともかく、当初想像していたベタなラブコメ、っていう感じではなかったです。

                                   (以下、あらすじです)

 

実家を出て一人暮らしを始めたばかりのヒナコは、かなりのドジな娘なんだけど、

サーフィンの腕だけは誰にも負けません。

その姿を海べりの消防署の屋上から眺めているミナトと後輩のワサビ。

優秀な消防士のミナトと違って、ワサビは何をやらせても落ちこぼれ。

自転車で通りかかったヒナコに放水の水を浴びせてしまって、言葉を交わし、

逆にヒナコの実家の名前入りタオルを貸してもらったりしてます。

 

ある日、違法な打ち上げ花火のとばっちりで、ヒナコの住むビルが火災になり、

オタオタしていてただひとり逃げ遅れてしまうヒナコ。

屋上に取り残されたヒナコを高所作業車のゴンドラに乗って救助したのは・・・・

(ワサビではなくて)ミナトのほうでした。

で、このふたり、すぐに交際がはじまり、ヒナコが波のりを教えたり

ミナトが料理の腕を発揮したり、千葉のポートタワーでデートしたりするんですが、

クリスマスイルミネーションとか、ハートのカギとかメッセージカードとか、

どうやらここは千葉の恋人の皆さんの「聖地」といわれるそうで、

いろんなタイアップ情報が流れます。

 

 

ある日、ミナトがひとりでサーフィンをしているとき、そばで人が溺れ、

すぐ救助にむかったミナトは命を落としてしまいます。

 

落ち込むヒナコでしたが、ふと思い出の曲を口ずさむと、

なんと、水のなかに、ミナトの姿が現れ、ヒナコに語り掛けるのです。

「ヒナコのこと、ずっと助けるって約束したろ?」

 

水のなかで着衣泳してるミナトはクリオネみたいにかわいいですが、

驚くのは、水なら、海でも水たまりでもコップの水でも便器にたまった水でも、なんでも現れるのです。

なのでヒナコは常に水の入ったポットを携帯し、それでは小さくて物足りないので

スナメリの大きなビニール人形みたいなのに水を満たして、それを連れ歩くようになります。

 

 

これだと、等身大のミナトが現れてデートしてる感じになるんでしょうけど、

満々に水をいれたら、200kg以上になると思いますけどね。

 

ミナトの姿はヒナコにしか見えず、この奇行を心配するワサビや、ミナトの妹のヨウコ。

ヨウコは、兄の大好きだったカフェで働きはじめ、ゆくゆくはカフェを開きたいと考え、

「ミナトが消防士になったのは、昔溺れた自分を助けた人がいたから、人助けしたかった」

そして「その助けた人というのは、幼いヒナコだった」ということを知ったヒナコは、

人を助けるライフセイバーを目指すことにします。

 

(ここでおしまいと思ったら、まだまだ話は続きます)

ヨウコは店の客たちが違法な花火をしようとしているのを偶然聞き、

ヒナコといっしょに彼らを追いかけ、廃墟のビルのなかに潜入します。

すぐ通報すればいいものを、「証拠を押さえる」と監視しているうちに 火災が起こり、

犯人グループは逃げて、ケガをしたヨウコとヒナコだけが火の中にとりのこされてしまいます。

消防がかけつけたときにはすでに火の海。

ところが、ヒナコが例の歌をうたいはじめると、お約束通りミナトが現れ、

大量の水が消火しながらビルの屋上まで到達し、

サーフボードにヨウコをのせたヒナコは波にのって、地上に降り立つのでした・・・・・

 

以来、ミナトはもう現れなくなりましたが、次のクリスマスの日、

ポートタワーのイルミネーションには

「ヒナコ、これからのクリスマスはずっといっしょに過ごそう」

というミナトからのメッセージが流れます。

1年前にふたりで行ったとき、ミナトはこれを予約してくれていたんですね  (おしまい)

 

多少悪意をはらんだ書き方ではありますが、こんな話で、

「なんじゃこりゃ!」と心のなかで5,6回は叫んだと思います。

 

死んだ人間の姿が恋人だけに見える、とかの多少のファンタジー要素は予想していましたが、

便器の水にまででてこなくてもいいのにね。

 

それから、生前、あの「思い出の歌」をふたりで笑いながら歌うのが不自然このうえなくて、

どうしようもなくイラつきました。(これはあくまでも個人的嗜好によるものですが)

今回、主要キャストは4人とも声優でなく俳優や歌手でしたけど、

せりふの部分はけっこう上手だったと思います。

でも、あの歌がねぇ・・・・・

歌あっての歌手の登用、ということだったかもしれないけど、

曲をチョイスした時点でかなり厳しかったのでは??

 

それ以外にも、ちょっと納得いかなかったことを思い出す範囲で・・・

 

ヒナコの実家が造園業、という設定はどう関係していたのかな?

もともと千葉に住んでたけど引っ越した、といってたけど

「引っ越し先で造園業」っておかしくない?

 

ヒナコは、幼いとき自分が助けた少年がミナトだと知らなかった、というのはわかるけど、

新聞にも載ったニュースなのに、家族がすぐ気づかないなんて、納得いきません。

よくある名前ならともかく、雛罌粟港(ヒナゲシ ミナト)なんて、絶対に忘れられない名前ですよ。

 

ちなみに、私は最近外来種の長実雛罌粟(ナガミヒナゲシ)の話題があったからなんとか読めたけど、

書くのはもちろん、読むだけでもけっこうな難易度ですよね、

なんでこんな難しい漢字にしたのか?

 

ハートのメッセージカードに、ひなこが「ひなげし」とひらがなで書いたとき(↑の画像)

「練習しといた方がいいよ、自分の名前になるかもしれないんだから」とミナトがつぶやいた・・・

そのセリフのためと思われますが、ここまでレアでなくてもいいのにね。

ワサビなんていうペットみたいなへんてこな名前も、絶対なにかの伏線になっていましたが、

特になにもなし。

ミナトの妹はヨウコ(洋子)なんていう昭和の名前のだし、ネーミングセンスが理解できません。

 

千葉ポートタワーとのタイアップ感がすごくて、

しかも中身がたいしたことなくて、むしろ

「千葉ってホントに何にもないんだな~」と思ってしまった。

デートシーンだけでやめておけばいいのに、

オーラスのクライマックスにまた登場させるなんて、

よっぽどのスポンサーなのか?

なんか、逆効果のような気がしますけどね。

 

二次災害を起こさないのが鉄則の消防士が、無謀な人命救助をしたり

その妹が、違法な花火を目撃しながら通報が遅れたり、

ストーリーのためとはいえ、あんまりよろしくないのでは・・・・

 

この作品の評価ポイントは、ストーリーよりも火や水の造形やアニメーション技術と思われ、

(私にはよくわからないのでスルーしてしまいまいますが)

そういえば、最近見た「プロメア」も火と水の戦いのアニメでした。

たまたま消防士が活躍するアニメーションが続きましたが、

たしかに実写映画で描かれる消防士のドラマとは大違い。

アニメーションだからこそ可能な作品ですね。

東映株主総会2019

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東映丸の内で開催された東映㈱の第96期定時株主総会にいってきました。

去年、初めて行ったときはひたすら楽しくて、ブログに書いたら、

バカみたいな記事なのにけっこうアクセスしてくださる方が多くて驚きました →こちら

 

今年は2回目なので、あんまり驚くこともなく、

頂いたお土産もメモの表紙の色が違うくらいでしたが、ありがたくいただいてきました。

 

 

 

東映の事業内容には、大きく分けて4つの部門があります。(去年も書いたかもしれないですが)

 

(1) 映像営業部門  売上高 前年度比8.4%⇑

(2) 催事営業部門             6.5%⇓

(3) 不動産事業部門            0.4%⇑

(4) ホテル営業部門            0.5% ⇑

 

そして一番大きな比率を占める(1)の映像営業部門はさらに5つに分けられます

     ① 映画興行業

      ② ビデオ営業

      ③ テレビ営業

      ④ コンテンツ事業

      ⑤ 国際営業

 

私が興味があるのは①の映画興行だけなんですけど、

今期は「翔んで埼玉」と「ドラゴンボール超ブロリー」の大ヒットで、けっこう潤った感じで

ほかの足をひっぱらなくて、よかった、よかった!

去年の邦画のなかで「万引き家族」の次くらいに評価の高かった「孤狼の血」は、

興行的にはたいしたことなかったみたいで、なんか、がっかりです。

私は個人的に一番聞きたかったのは、「麻雀放浪記2020」のピエール瀧問題だったんですが

これは来期に入ってしまうみたいですね。

 

レジュメに作品一覧があったので、自分の見たものに〇をつけてみました。

 

 

孤狼の血    ★★★★

終わった人   ★★

食べる女     ★★★

走れ!T校バスケット部  ★★★

ドラゴンボール超ブロリー  評価せず

愛唄 約束のナクヒト   ★

翔んで埼玉  ★★

パンク侍、斬られて候  ★★★★

 

あと、この表をみて初めて、「L♡DKひとつ屋根の下」を株主優待で観たことを思い出しました。

これ、けっこうおもしろかったんですよね。

まだなんとなく憶えているので、近いうちにブログ更新するつもりです。

 

 

質疑応答のなかで質問が集中したのが、東京ドームシティでのヒーローショーでのセクハラ問題。

戦隊もののヒーローショーに出演していた女性が、度重なるセクハラをTwitterで告発して炎上しました。

こういうのを扱うのは(2)の催事営業部門で、昨年比6.5%ダウンなのに、

こんな問題で、さらに落ち込んでは大変ですよね!

 

株主優待に関する質問で、

「自社作品だと1枚、他社作品だと2枚で無料鑑賞できるが、

観たい映画が少ないため、いつも1枚余らせてしまう。

他社作品を1枚で割引鑑賞できないか?」というのがありました。

たしかに、同じ時期に観たい東映作品が2本上映されることは稀なことで、

私もいつも券を余らせていましたが、去年くらいから、

「見たくなくても無理やり見る」という方針に切り替えたため、ブロリーまで観てしまいました!

でもさすがに毎回これはキツイです。

 

↑の一覧には映画作品が19本ありますが、

このうち、アニメと子供向けが 8本

ジュニア向けのラブストーリーが  4本で、

それを引くと、残りは7本しかありません。

 

スプラッターOKだったら、「パンク侍」とか「孤狼の血」はおすすめですが、

普通の高齢者が安心してみられるのって、19本のうち、「終わった人」くらいなんですよね。

 

今日お土産でもらった2枚のチケットも、期間内には子ども向けの作品しかないので

有効活用できるのは、小さい孫のいる人くらいかな?

うちの孫もあと1年くらいしたら、いっしょにプリキュアが見られるかも・・・?

早く大きくなってほしいものです。

とりあえず今は、28日公開の「それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫」を

いっしょに見に行くのを楽しみにしています。

L・DK ひとつ屋根の下

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映画「L・DK ひとつ屋根の下」 平成31年3月21日公開 ★★★☆☆

コミック 「L・DK」 渡辺あゆ 別冊フレンズ

高校3年生の西森葵(上白石萌音)は、ある事情から学校で一番のイケメン久我山柊聖(杉野遥亮)と

一緒に住むことになり、反発しつつも彼のことを好きになっていく。

そして周囲には内緒で付き合うことになり、甘い同居生活が始まる。

ところが、突然アメリカからやってきた柊聖のいとこの玲苑(横浜流星)に、同居の秘密を知られてしまう。

そして彼らの住むところに玲苑も同居することになり、波乱だらけの三人の生活が始まる。(シネマ・トゥデイ)

 

 

昨日も書いたんですけど、いつも無駄にしていた株主優待のチケットを今年は極力減らそうと

けっこう無理をして見に行ったもののひとつ。

「壁ドン」とか「顎クイ」とか、オバサンには無縁の胸キュン青春映画ですよ。

 

 

親の転勤についていかず、アオイは十番館アパートメントの一室で一人暮らしをしているのですが

隣の部屋に住む学校一のイケメンのシュウセイがボヤ騒ぎをおこしてしまい、同居するはめになります。

ふたりは一線を越えることなく、助け合って共同生活をしている設定なんですが

そのうちにだんだんお互いに惹かれていきます。

このことを知っているのは、アオイの親友のモエとその彼氏のリョウスケ、

それにシュウセイの兄のカメラマンのソウジュだけで、学校では秘密にしていました。

 

ある日シュウセイの従妹のレオンが転校してきますが、見た目はかっこよくても性格は最悪。

そんな彼に二人が同居していることを偶然知られてしまいます。

「シュウセイがこんな70点女を好きになるはずがない」

「それならお前も一緒に住んでみろ」

ということで、3人の同居生活がはじまります。

 

・・・・なんていう、つっこみどころ満載の話なんですが、

かくいう私も、昔は「おくさまは18歳」なんていう、教師と生徒が結婚して同居してるという、

ありえへん話を喜んでみていたくらいだから、まあまあこういうのはラブコメの定番なんでしょう。

 

とにかく、アオイ役の上白石萌音の可愛さがたまりません。家事の手際もいいし・・・

シュウセイ役の杉野遥亮とのシーンは年齢問わずキュンキュンしてしまいますよ~!

横浜流星は今旬の人気俳優なんですってね?

私は映画しか見ないので、東映の「キセキ」や「愛唄」なんかのおとなし気な役しか知らないんですが、

チャラ男系のほうがあってますね。

先日テレビを観ていて、極真空手の有段者で、ジュニアで世界一になったこともある

格闘技系の細マッチョだということを知りました。

今度はちがうジャンルのドラマも観てみたいです。

 

後半になってからも、アメリカ留学でひと悶着あったり、落雷で足止めされてしまったり、

まともな大人が書いたとは思えないしょーもない話がつづきますが、

現実味あふれる学園ドラマより、こういうふわふわした話のほうがリラックスして楽しめるのも事実。

主演の3人が魅力的なので、オバサンでも気分のいい時間を過ごせました。

 

本作は、5年前の「L・DK」の続編だったようですが、同居に至るまでのシーンも入っているから

これだけ見てもちゃんと話は分かります。

前作はアオイが剛力彩芽、シュウセイが山﨑賢人で、レオンとの三角関係シークエンスは続編だけです。

前作の動画もみてみたけど、うーん、こっちはちょっとダメですね。

 

なので、前作が不満だった人も、きっと続編の本作の方は気に入りそうなので、

よかったら見てみてください。

公開中・公開予定の映画の原作本 (61)

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公開中  「凪待ち」 ← (同名ノベライズ) 加藤正人 キノブックス

 

 

公開中 「今日も嫌がらせ弁当」 ← (同名) ttkk(Kaori)  三才ブックス

 

 

公開中 「新聞記者」 ← (同名) 望月衣塑子 角川新書

 

 

3作とも 昨日6月28日公開の映画で、どれも「原作小説ではない」ということが共通しています。

「凪待ち」は脚本家の書いたセルフノベライズ

「今日も嫌がらせ弁当」は、元ネタのアメブロの書籍化

「新聞記者」は菅さんの会見でいつもしつこく食い下がる東京新聞のおなじみの女性記者の本で

設定は違うけれど、映画の元ネタとなっているようです。

 

「凪待ち」の作者の加藤正人氏は、代表作「ふしぎな岬の物語」とあって、ガーン!!と思ったんですが

この原作者は森沢明夫『虹の岬の喫茶店』だから、残念な感じはしょうがないですね。

「凪待ち」は全くのオリジナル脚本で、この本は脚本家自身の手によるセルフノベライズです。

東日本大震災の要素も(多くの映画のとってつけたような扱いではなく)極々自然でした。

主人公を演じるのが香取慎吾ときいてイメージわかないですが、

彼も40代になって、これを機会に大人の俳優になってほしいです。

凪待ち

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映画 「凪待ち」 令和元年6月28日公開 ★★★★☆

ノベライズ 「凪待ち」 加藤正人  キノブックス  ★★★★☆


 

木野本郁男(香取慎吾)はギャンブルをやめ、恋人の亜弓(西田尚美)と亜弓の娘の美波(恒松祐里)と共に

亜弓の故郷である宮城県の石巻に移住し、印刷会社で働き始める。

ある日、亜弓とけんかした美波が家に帰らず、亜弓はパニックになる。

亜弓を落ち着かせようとした郁男は亜弓に激しく非難され、彼女を突き放してしまう。

その夜、亜弓が殺される。                                 (シネマ・トゥデイ)

 

 

ロードバイクを走らせ、イクオの、向かった先は、川崎競輪。

「やっぱ、ここが落ち着くわ」

競輪場で出会った同僚の渡辺に宮城に引っ越すことを伝えると

「宮城に競輪場ないじゃない?」

「もう今日が最後のレースだから。もう競輪は卒業します」

「(印刷所の職場で)俺の味方してくれたのイクちゃんだけだから・・・・」

そして高そうなロードバイクを渡辺にやり、お返しにカップ酒を渡す渡辺。

「大穴当てて絶対に会いに行くから・・・」

 

イクオが同居しているのは、放射能汚染で故郷の石巻から川崎に疎開していたアユミと娘のミナミで、

籍は入っていないものの、親子のような生活をしていました。

石巻では、アユミの母は津波に流され、父カツミがひとりで漁師をつづけていましたが、

高齢のうえにステージ4のガン宣告。

ミナミが放射能虐めで不登校になっていたこともあり、3人は石巻の実家に戻る決心をします。

ミナミは転校して高校に通い、アユミは自分の美容室を立ち上げ、

イクオも凸版印刷の資格を生かして働き、ギャンブル依存からも足を洗うつもりでいました。

 

7年ぶりに帰った石巻の実家では

父のカツミはなかなかイクオの存在を認めてくれませんでしたが、

近所に住む小野寺がなにかと世話をやいてくれ、石巻での再出発は順調にスタートします。

 

近所にはアユミの別れた亭主リュウジも住んでおり、アユミやイクオを見つけて、しつこく絡んできますが、

再婚相手は臨月で、これはこれでうまくいっているようです。

離婚の原因はリュウジの家庭内暴力。

つらい思いをしたミナミは、(口やかましい母のアユミよりも)若くて話のわかるイクオになついていて、

「早く結婚すればいいのに・・・」といつもいっていますが、

アユミは、ギャンブルにのめりこんで家の金をくすねたりするイクオがまだ完全には信用できず、

イクオ本人も、まだまだ自分は甲斐性のないろくでなしだから、プロポーズなんかできないと思いながらも

今の生活をズルズル続けているのです。

 

イクオは心をいれかえて酒も飲まずギャンブルもやらずにまじめに印刷所で働き始めますが、

同僚が競輪の話をしているのを聞いて、アドバイスしてあげるとそれが見事に的中。

石巻には競輪場はないものの、(明らかに暴力団が胴元の)ノミ屋で賭けには参加できることを知り、

だんだんのめりこんでいってしまいます。

 

ミナミも学校に通い始め、幼馴染みのショウタに再会して、表情も明るくなります。

ショウタの吸っていたタバコを取り上げ、部屋に置いてあったのを

ある日部屋を掃除していたアユミにみつかったことから親子げんかになり、

ミナミは家を飛び出して夜の街へいってしまいます。

 

夜遅くまで帰らないミナミを心配してアユミとイクオは繁華街を探し回りますが、

「時間を忘れるくらい友達と楽しんでるんだよ」

「引きこもっていたのが友だちできてよかったじゃないか」

というイクオに

「あなたが甘やかすからミナミがつけあがる」

「どうせあなたは父親じゃないから」

というアユミ。

ふたりは車のなかでけんかをはじめ、

「ガミガミうるさいから反抗するんだ」

「そんなにいうなら一人で探せ!」

と、アユミを車から降ろしてしまいます。

 

とはいっても、そのあともイクオは探し続け、やっとミナミを発見しますが、

アユミの携帯に出たのは警察官。

なんとイクオと別れた後、何者かに首を絞められ、殺されてしまったのです!

 

ここまでが前半。

かなりテンポよくサクサク進み、白石監督お得意のノワール映画というより、

(殺人がなければ)普通の家族映画ですね。

 

ここからの後編は予告編からは予想も難しく、ネタバレとなります。

 

犯人がつかまることもなく、アユミの葬儀がはじまります。

近所の人に交じって、強面の一団がやってきて、「軍司」と書いた香典袋を置いていきます。

 

「カツミさん、あの体でミナミちゃんを育てることになるんだね」

籍を入れていないイクオは親族席には座れず、居場所がなくなっていきますが、

職場では同僚の競輪仲間がギャンブルにのめり込むあまり、

会社の金を使い込んだ上にそれをイクオのせいにしたりしたことから

社長には目をつけられるし、

アユミ殺しの容疑者として警察の取り調べを受けたりもします。

 

このころから、心機一転、再出発したはずのイクオが壊れ始めます。

印刷所で暴れまわり、備品を壊しまくった上に、

アユミのへそくりや、小野寺に調達してもらった金、同僚から脅し取った金・・・

すべてを競輪につぎ込んでいきます。

そのうち、ヤクザの穀田からの「タネ銭まわしてやろうか?」に乗って、借金を重ね、

200万円になったところで、穀田から厳しく清算をせまられるようになります。

 

文章にしてしまうとあっという間ですが、

イクオがどんどんダメになっていく様は、映像では、もう嫌になるほどしつこく繰り返され、

何度も立ち直るチャンスらしきものがありながら、それにこたえられないイクオに

もう私たちも何度となく愛想をつかしてしまいます。

 

もちろんイクオ本人もそれは重々自覚しており

「俺はクソだ、大馬鹿モンだ!」を繰り替えずも、

結局飲んだくれて、アユミの残した美容室でグダグダしている毎日。

周りの人たちも助けては裏切られ・・・の連続でしたが、

最後に手を差し伸べたのは、アユミの父のカツミでした。

二日酔いのイクオを早朝の海に誘います。

 

「どうだ、海はいいべ!」

「津波で全部だめになったけれど、そのおかげで新しい海になったんだ」

「女房と一緒になる前は、ケンカばっかりしていて前科者だった」

「さんざん結婚を反対されたけれど、それでやっとまともな人間になれた」

「あいつといっしょになってなければ、飲んだくれてるか殺されてるかだ」

 

そして・・・・・

「船を売った。この金で身辺をきれいにしろ」

 

渡された札束の入った紙袋をヤクザのところにもっていくと

(けっこう良心的なヤクザのようで)50万円ほどのお釣りをわたされます。

 

ところが、この最後に残った金も

イクオはすべて次のレースに賭けてしまうのです。

 

そして、ようやくこのレースで勝つのですが、店のヤクザは手提げ金庫を持って逃げ、

イクオの勝ち馬券(といってもただのメモですが)を飲み込んでしまいます。

「こうやって飲み込むからノミ屋っていうんだ」

 

なにをやってもうまくいかないイクオは、そして引き留めるカツミやミナミをふりきって、

石巻をでる覚悟をしますが、

駅であの元同僚の渡辺が逮捕されたニュースを偶然目にします。

リストラの逆恨みで金属バットをふりまわしてけがを負わせたというのです。

(実は犯行直後にイクオは彼から、

大穴を当てたかのような明るい声の電話をもらっていたんですね)

 

これを見てイクオは駅から引き返し、ノミ屋に向かいます。

「オレの金を返せ」と店で暴れまわり、店中を壊した結果、ヤクザに拉致されてしまいます。

 

「こいつをもらい受けに来た」

ヤクザ事務所に単身乗り込んだのはカツミ。

すると親分は

「この人には昔世話になった、ほどいてやれ」

「こんなやつのためになんでそこまで」といわれ、

「こいつはおれのセガレだ」

 

そして、翌日、穀田が家を訪れ、イクオに支払うはずの金を返しにやってきます。

その金でイクオは船(第二美波丸)を買い戻し、そのカギをカツミに渡します。

 

生前イクオと結婚するつもりでいたアユミは婚姻届けを残していました、

その空欄にイクオが署名し、三人で沖に漕ぎ出し、婚姻届けを海に沈めます・・・・・

 

 

あ、アユミを殺した犯人のことを書きそびれましたが、

誰よりも彼を助けてくれていた意外な人物でした。

(でも手口とか動機とかあまり説明なく、ミステリーを期待すると裏切られます)

 

あと、長いものを振り回して人にケガさせたりガラスや機器をぶち壊すシーン、

封筒からこっそり金を抜き取るシーンが何度もあるのは本当に不愉快だし、

あまりにリアルな「ゲ〇」のシーンとか、白石作品に耐性のない人にはつらいかも

ただ、暴力描写が容赦なかった過去の作品に比べたら流血も少なく、

R指定も逃れているんですよね。

PG12なので、小学生でも親と一緒に観られます。

けっしておススメはしないけど・・・・

 

すでに長文になっているので、感想は箇条書きで。

 

① 殺人事件がぜんぜんメインじゃない

登場人物の相関図の真ん中にいたアユミの死が、残された人たちにもたらしたこと・・・ということでは

「アマンダと僕」に近いかもしれません。

チラシに書いてある「誰が殺したのか?」というコピーは殺人自体を指しているわけじゃないんですね。

 

②ヤクザや競輪が「絶対悪」になっていない

こういう反社会的組織やギャンブルはだいたい「ヒール役」になること多いんですが、

最初の競輪場のシーンとか本当にスポーツとしての競輪の美しさを映し出していて、うっとりします。

ヤクザも、まあヤバい人たちには変わりありませんが、

カツミに恩を返したり、ちゃんとお釣り返したり、だましたお金を返しにきたり、

ちゃんと仁義はとおしてるんですよね。

 

③キャストのアンサンブルが素晴らしい

いわゆる「白石組」といわれるキャスト、今回は少なめで、リリー・フランキーと音尾琢真くらい。

「ただの頑固な老漁師」として登場したと思ったらどんどん主役になっていくカツミ役は

普通だったら柄本明クラスの重鎮をつかいそうなところですが、

吉澤健という(顔は知ってるけど名前の思い出せないクラスの)ベテラン俳優の起用がいいですよね。

せりふのひとつひとつが心に沁みました。

スターオーラを捨て去った香取慎吾も良かったです。

「大柄で、根はやさしいけどキレるとこわくて、でもどこか魅力的」というのは、

白石組でピエール瀧の抜けた穴を埋められるかも??

 

個人的に非常にうれしかったのは、

ショウタ役に「怒り」で驚異的な名演をみせてくれた佐久本宝

印刷所の同僚役に「恋人たち」の演技が忘れられない黒田大輔

と、ずーっと何年も気になっていた俳優をキャスティングしてくれていたことです。

 

④ エンドロール・・・

今まで白石作品のエンドロールは俳優名をチェックするだけだったんですが、

ここでは、震災後、すっかり生まれ変わったように見える海の中に

まだ自転車とかが沈んでいるのが映し出されて、しんみりとしてしまいました。

「再生」とか「再出発」とか、言葉でいうのは簡単でも、実際には難しいのだ、と。

 

「パナマのサンブラス諸島」とか「天使の梯子」とか、「氷の塊」とか

メタファー的に使われたと思われる映像がつぎつぎに思い出されて、

過去作のイメージとはずいぶん違っていた気もします。

 

 

 

 

ノベライズは普通、映画をそのまま小説におこすことが多いんですが

これは脚本家のセルフノベライズ。

ストーリーとしては、映画よりもすんなり共感できる構成になっていました。

(原案はたぶんこっちのような気がします)

読み比べると、なんとなく、監督の伝えたいところが透けてみえるような・・・・

2019年上半期(1~6月)マイベスト・ワースト

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早いもので今年ももう半分が過ぎました。

映画館では60本くらいしか観てないんですが、★5が6本もあったから、

満足度はとても高いです。

今回は順位をつけてみましたが、  クオリティの高さと個人的趣味がコミコミなので

あんまり参考にはならないと思います。

 

ベスト10      (  )は公開日ではなく、ブログ更新日です

 

1位  「グリーンブック」(3月6日)

2位  「アマンダと僕」 (6月22日)

3位  「ふたりの女王」 (3月16日)

4位  「天才天作家の妻」 (2月2日)

5位  「ガラスの城の約束」(6月17日)

6位  「バイス」      (4月5日)

7位  「コレット」      (5月24日)

8位  「女王陛下のお気に入り」(3月24日)

9位  「ジュリアン」     (2月16日)

10位 「エリカ38」      (6月8日)

 

 

 

 

ワースト3

 

今回は(しょーもないB級映画ではなくて)

世間の評価は高くて、クオリティもまずまずだけど、

個人的に私は大っ嫌い!というのをピックアップしてみました。

なので半年でこのくらいの数なんですが、

こういうのにあたっちゃうのがストレスの元なんですよね~

 

メリーポピンズ リターンズ」 (2月5日)

愛唄 約束のナクヒト」 (1月30日)

フォルトゥナの瞳」     (5月16日)

これから観たい映画(108)

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5月公開

× 「RGB最強の85歳」 

▲ 「ホワイトクロウ」 → 感想UP

× 「ガルヴェストン」 

▲ 「コレット」 → 感想UP

〇 「僕たちは希望という名の列車に乗った」(ル・シネマ、HT有楽町)

▲ 「空母いぶき」  (これから書きます)

▲ 「ベン・イズ・バック」 → 感想UP

× 「パリの家族たち」 

 

 

6月公開

〇 「誰もがそれを知っている」  (ル・シネマ、HT有楽町)

▲ 「エリカ38」 → 感想UP

▲ 「パドマーワト 女神の誕生」 → 感想UP

▲ 「ガラスの城の約束」 → 感想UP

▲ 「アマンダと僕」 → 感想UP

◎ 「COLD WAR, あの歌、2つの心」 (HT有楽町)

▲ 「凪待ち」 → 感想UP

〇「ニューヨーク 最高の訳あり物件」 (シネスイッチ)

 

 

7月公開

〇 7/5 「ゴールデンリバー」 (TOHOシネマズシャンテ)

〇 7/5 「ワイルド・ライフ」 (恵比寿ガーデンシネマ)

〇 7/5 「Girl/ガール」 (ル・シネマ、武蔵野館)

◎ 7/6 「サマー・フィーリング」  (イメージフォーラム)

〇 7/12 「シンク・オア・スイム」(新宿ピカデリー、ヒューマントラスト渋谷)

〇 7/20 「存在のない子供たち」 (シネスイッチ銀座、 武蔵野館)

〇 7/27 「ブレス あの波の向こうへ」 (シネマカリテ)

 

                                           〇 観たい作品

                                                    ◎ 絶対に観たい作品

                                                    ▲ すでに鑑賞済

                                                    × 23区内で上映終了

 

 

「アマンダと僕」のミカエル・アース監督の過去作をチェックしたら

劇場公開されたものも日本語版のDVDになったものもなく、

ようやく2014年制作の「サマー・フィーリング」が7月から公開されることを知りました。

でも東京でも「シアター・イメージフォーラム」の単館上映です。

 

当日早めに行ってチケット買って、前の道路で待つのはいやだな~と思っていたら、

ここもネット予約できるようになったんですね。

 

なので、◎をつけて、忘れずに見に行きたいと思います。

 

ところで、最近ブログ更新の回数が激減しているのは、

加齢による記憶力と根気の低減、が一番の理由ですが、

ほとんど毎日書いていた11年前に比べ、頼まれもしないのに長文になっていることもあると思います。

「簡潔にまとめる能力」も落ちているんでしょうね。

 

というわけで、これからは、

①Twitterにあげられるくらいの短い感想を、見た直後に書いてアップする

②後日、ネタバレのあらすじ込みの今までのような感想を追加する

 

という感じで行きたいと思っております。

①の状態で放置されるものも多いと思いますが、その辺はご容赦を・・・・


泣くな赤鬼

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映画「泣くな赤鬼」 令和元年6月14日公開 ★★★★☆

原作「泣くな赤鬼」 (短編集「せんせい」所蔵) 重松清

 

 

 

城南工業野球部の監督を務め、鬼のように厳しい指導と陽に焼けた赤い顔から赤鬼先生の異名を持つ

小渕隆(堤真一)は、甲子園出場目前まで部を導くが、惜しくもかなわなかった。

それから10年、小渕は50代になり野球への情熱も衰えていた。

ある日病院を訪れた彼は、教え子だった斎藤智之(柳楽優弥)と再会する。

そこで、野球のセンスに恵まれながらも高校を中退した彼が結婚し家庭を築いている一方、

末期ガンで余命半年だと知る。                            (シネマ・トゥデイ)

 

(小渕先生が赤鬼にはみえなかったけど)野球シーンは非常にリアル。

闘病シーンはかなりの手抜き。

いわゆるお涙ちょうだいの余命ものではなく、自分の高校時代を顧みつつ、じーんと涙する

大人むけの作品です。

私はゴルゴや赤鬼よりむしろ、ライバルの和田君に共感してしまったかも。

 

                                                    (詳細はのちほど)

 

 

 

 

 

今日も嫌がらせ弁当

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映画「今日も嫌がらせ弁当」 令和元年6月28日公開 ★★☆☆☆

原作本「 今日も嫌がらせ弁当」 ttkk(kaori) 三才ブックス

 
八丈島で暮らすシングルマザーの持丸かおり(篠原涼子)の次女、双葉(芳根京子)は、
高校生になると生意気な態度をとったり、母親を無視したりするようになる。
かおりはそんな娘に対抗して、彼女の嫌がる「キャラ弁」を作る。
やがてその弁当は、母を煙たがる娘へのメッセージになっていく。(シネマ・トゥデイ)
 
このアメブロの人気ブログで、ランキングやトピックにもあがってたから、前から知ってました。
クオリティの高さと毎日つづける根気には脱帽!
ただ、よけいな尾ひれをつけて映画化する意味が全くわかりません。   (詳細はのちほど)
 

 

スパイダーマン ファー・フロム・ホーム

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映画 「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」 令和元年6月28日公開 ★★★★☆

(英語 字幕翻訳 林完治)

 

高校生のピーター・パーカー(トム・ホランド)は夏休みを迎え、

親友のネッド(ジェイコブ・バタロン)やMJ(ゼンデイヤ)たちとヨーロッパへ旅行に行く。

ところが、ピーターの前にS.H.I.E.L.D.の長官ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が現れ、

彼にある任務を与える。                              (シネマ・トゥデイ)

 

最近のMCUにはついていけないけど、とりあえずスタンドアローン作品なので、

気楽に見に行ってしまったら・・・・やっぱりけっこうアベンジャーズをひきずっていました。

もう彼はボランティアの「ご近所パトロール隊」じゃなくて、アベンジャーズのリーダー候補なんですね。

世界を救うヒーローの責任感と、好きな女の子とよろしくやりたいボンクラ高校生のはざまで悩む

等身大の高校生男子の姿がありました。

 

 

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の相関図は、もはやたいへんなことになっていて

私はすでにギブアップ状態で、(一応「インフィニティ・ウォー」までは全作観てはいますが)

正確にブログを書く自信もなく、最新作「エンドゲーム」は観ていません。

 

スパイダーマンはトム・ホランドの3代目になってからはMCUのレギュラーメンバーになっていますが、

アントマンなんかと、「お笑い担当」というか、癒しの存在だったし、

トム・スターク亡きあとは、もうアベンジャーズあんまり関係ないのかな?と思っていたんですが、

最初の方で、ピーターの通う高校の校内放送で、アベンジャーズの追悼番組が放送され、

アイアンマンやブラックウィドウたちの姿が映し出されます。

 

「インフィニティ・ウォー」のサノスの指パッチン(デシメーション)で人口の半分が塵となって消えてしまい

ここの生徒の半分も消滅したものの、5年ぶりに「エンドゲーム」で復活したから、

「バッチン組」は歳をとらずに16歳のまま高校に戻ってきた・・・というようなアナウンスがありましたが、

これは初心者向けのありがたい説明ですね。

(ちなみにピーターも親友のネッドもMJも、空白の5年のあるパッチン組です)

 

この高校では、ヨーロッパへの研修旅行があり、ピーターはそこでMJにプレゼントを渡して告白しようと、

頭の中はそれでいっぱい。

 

スパイダーマンとしての握手会の最中にニック・フューリーから何度も着信があるも、

へんなことを頼まれたくなくて、完全無視を決め込みます。

旅行にスパイダーマンのスーツもあえてもっていかなかったのに、

メイおばさんから、旧式のスーツをしっかりカバンに入れられていました。

(握手会の司会もおばさんだし、ピーターがスパイダーマンだともう気づいているようですね)

 

行きの機内で、ピーターはなんとかMJの隣の席に座りたくて策を練りますが

逆に先生の間に挟まれ、MJは恋敵のブラッドの隣へ。

オタク少年ネッドはたまたま隣り合ったベティと意気投合して、いい雰囲気になります。

 

ヴェネチアに着いた一行は観光をはじめますが、突如水のなかから巨大な化け物が。

ピーターはスーツをホテルに置いてきてしまったため、ウェブシューターで身を守るのがやっと。

そこへ、頭が水晶玉みたいな謎の人物が飛んできて、激しく応戦、やっつけてしまいます。

「ミステリオが大活躍!」とネットニュースに載りますが、

ミステリオとはイタリア語で「謎の男」という意味だそうです。

 

その夜ピーターはニック・フューリーに見つかって秘密基地に連れていかれますが

そこにはミステリオこと、クエンティン・ベック(ジェイク・ギレンホール)もいて、

「エレメンタルズ」というあの巨人たちの説明をしてくれます。

パラレルワールドの地球からやってきたベックは、ニックたちと協力してエレメンタルズ退治をしているとか。

エレメンタルズは4体あって、すでに「風」「地」「水」をやっつけたので、残りは「火」のみ。

これはチェコのプラハに近く出没するのでピーターも参加してくれと言われますが、

せっかく旅行を台無しにしたくなくてきっぱり断ると、あっさりホテルまで送ってくれます。

 

ところが翌日、「旅行のホテルがアップグレードして、行先はプラハになった」と先生からの説明が。

なんと長距離バスの運転手はニックの手下のディミトリでした。

(ヴェネチアからプラハまでバスで行けることにむしろビックリ!)

 

道中、ニックから渡されたトニーの遺品を開封すると、そこに入っていたのは

「次のスタークに贈る」とメモのついた渋い高級メガネでした。

もちろんただのメガネのはずもなく、イーディスという人工知能が搭載されて、

データベースにアクセスしたり、PCをハッキングしたり、軍事ドローンとも連携しているようです。

 

アルプスでのトイレ休憩のとき、女性エージェントに呼ばれ、

新しい黒いステルススーツを試着するように言われます。

ピーターがズボンを脱ぎかけた時、偶然ブラッドがドアをあけて、女性の前でズボンを脱いでる姿を

写メに撮られてしまいます。

これをMJに観られたら大変!

バスに戻ったピーターは、ブラッドのスマホの中のこの画像を消すように、イーディスに命令しますが、

ここで誤作動が起き、ブラッドを殺すべく、軍事ドローンが起動してしまうのです。

あせったピーターはなんとか頑張って、同級生を殺さずに、プラハ到着。

 

戦いの巻き添えにならないよう、同級生たちはアップグレードした豪華なホールで

オペラを4時間鑑賞することになりますが、MJもネッドもベティも、ホールをこっそり抜け出し、夜の街へ・・・・

 

予定通り出現した火のエレメンタルは、(金属に触れると強力になるらしく)ネッドとベティがデートしていた

観覧車に近づき危機一髪となりますが、なんとかベックと協力してエレメンタルを倒します。

このときピーターがつけていたスーツはいつもの赤と青のではなく、

アルプスで受け取った黒いスーツだったので、(スパイダーマンではなく)「ナイトモンキー」と呼ばれます。

 


二人の活躍は新聞にも大きく載り、フューリーは新生のヒーローチームを結成しようとしますが、

旅行中にエッフェル塔の上でMJに告白することのほうが大事な自分には務まらないと、

ベックにすべてを任せ、ニックの形見の眼鏡もベックのほうがふさわしいと・・・・

(たしかにジェイク・ギレンホールのほうがはるかに似合いすね)

ずっと謙虚に固辞していたベックは、メガネを受け取って一人になると、急に態度を変えます。

                                  (前半 あらすじ おわり)

 

これだけ世界が危機なのに、アベンジャーズの生き残りたちは全然登場しないので

エンドゲーム後の設定ではあるものの、私のような相関図を把握してない人でも

スタンドアローン作品として、問題なく楽しめました。

字幕も林完治さんで、テンポよく頭に入ってくるのですが、

いくら高校生でも、そこまでMJに告るのが大事?と思って、ちょっとイラっとしてしまいました。

今回も親友ネッドのことばで、ずいぶんいら立ちが収まったかも。

 

ここまでの戦いぶりは、なんかアナクロで、アベンジャーズというよりは

アンパンマンを見てるような気になりました。(これ、褒めてます)

 

 

ミステリオみたいな、こんな感じのアンパンマンのキャラって、いなかったっけ?(思い出せないけど)

そして、前半最後にメガネを手に入れて悪いお顔をするところでは

「だまされたな、アンパンマン! ハヒフヘホ~!」という

バイキンマンの声が聞こえてきそうでした(笑)

 

以下は後編。

ネタバレ度がさらに高くなりますので、観てない方はご遠慮ください

 

 

やっぱりベックはヴィランでした。

しかも彼がパラレルワールドから来たの言うのも嘘、多元宇宙の話も嘘。

エレメンタルズは存在せず、あの戦いは映写機を搭載したたくさんのドローンから投影していたのです。

つまり、ベック自身も特殊能力をもたない一般人で、ホログラフィック技術者だったんですね。

もともとはスターク社で働いていたんですが、彼の優秀な技術を認めてくれないトニーを恨んで退社し、

同じような不満分子を集めて、今回の騒動を仕組んだようです。

優秀なドローン技術者とか電磁パルスの専門家とか、いろいろいて、ピーターだけなく

ニックもだますなんて、すごいチームですね。

 

プラハの街で、ドローンの一機が搭載していた映写機を落下させ、それを偶然MJが拾ったことから

ピーターもこのことに気づき、メガネを渡したことを心から悔やみますが、後の祭り。

 

そして次の決戦地ロンドンへと・・・・

ベックは自分の秘密に気付いているピーターの友人たちも殺しにかかってきます。

彼らを守るのはトニーの元運転手のハッピーで、心優しいこのキャラクターには癒されますね。

ジョン・ファヴローは名監督なのに、なんでこんなにキュートなんでしょ!

(メイおばさんのことが好きみたいなので、もしかしたらこの後進展あるかも??)

 

軍事用ドローンも手中にしたベックたちに

ピーターがたった一人で立ち向かうのはかなり無理だと思うんですが、

大事なところでピーターの先天的第六感(ムズムズ)が力を出して、なんかベックに勝ってしまいます。

(この辺、ネタバレ回避ではなくて、ほんとによくわからなかったのです(-_-;))

 

そして、(ネッドはなぜかベティと別れてしまうけれど)

ピーターはめでたく告白に成功し、キスまでしてめでたし、めでたし・・・・

 

ここで本編は終わりますが、当然エンドロール後のおまけ映像を期待して、

誰も席をたちません。

 

(おまけ映像 その1)

ふたりがNYで空中デートを楽しんでいると、突然ビルの巨大スクリーンに緊急ニュースが流れます。

死ぬ間際のベックの姿の隠し撮り映像が流され

① ロンドンを攻撃したのは、アイアンマンの後釜を狙うスパイダーマンの自作自演だというフェイクニュース

② スパイダーマンの正体は高校生のピーター・パーカーだという

                                 真実だけど、ストーリー的にバラしたらダメな秘密事項

 

という、なかなかにショッキングなものでした。

 

このあと、さらに長い長いエンドロールが流れ、3割くらいの人が席をたったあと、

(おまけ映像 その2)が・・・

 

ニック・フューリーとマリア・ヒルは、本編のなかでも、ホログラムの偽物が登場しましたが、

本物とされるニックとマリアが実はフェイスシフトのできるこんな人だったということ、

 

 

彼らは本物のニックから「ピーターに形見のメガネを渡す」というお使いをたのまれていたんでしょうね。

だから、危機になってもほかのヒーローも呼べないし、ベックの正体を見抜けなかったんですね。

納得!

 

 

アベンジャーズの過去作は(エンドゲームを除いて)全部見てるんですが、

難しすぎてブログを書けていません。

スパイダーマンは、ブログをはじめた「アメイジング・スパイダーマン」以降は書いていたので

今回は長い感想を書いてみましたが、要領を得なくて、すみません。

 

アメイジングスパイダーマン」   (2012年8月6日公開)

アメイジングスパイダーマン2」  (2014年4月26日公開)

スパイダーマン・ホームカミング」 (2017年8月11日公開)

長いお別れ

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映画「長いお別れ」令和元年5月31日公開 ★★★☆☆

原作本 「長いお別れ」 中島京子 文春文庫

 

 

 

2007年、

父・昇平(山崎努)の70歳の誕生日で久々に帰省した長女の麻里(竹内結子)と

次女の芙美(蒼井優)は、厳格な父が認知症になったことを知る。

2009年、

芙美はワゴン車でランチ販売をしていたが、売り上げは伸びなかった。

麻里は夏休みを利用し、息子の崇と一緒に実家へ戻ってくる。

昇平の認知症は進行していて、「帰る」と言って家を出る頻度が高くなっていた。   (シネマ・トゥデイ)

 

嫁姑関係のでてこない「娘ふたり」というのがステレオタイプの家族ドラマにならなくて良いです。

誰も好き好んで認知症なんかにならないのだけれど、

高齢化社会では高い割合で出現するこの病気、どうにかつきあっていくためのヒントを

いろいろ教えてくれるドラマでした。                         (詳細はのちほど)

ザ・レセプショニスト

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映画「ザ・レセプショニスト」 令和元年10月25日公開予定 ★★★★☆

( 英語 北京語 字幕翻訳 西川顕 )

 

 

ロンドンの不法風俗マッサージパーラーでは、客とアジア系の女性たちが家族のような関係を見せる。

しかし金とセックスと暴力が全ての世界で、移民の女性たちはいつも危険と隣り合わせの生活を送っていた。

ティナ(テレサ・デイリー)は、大学を卒業したが職に就くことができず、

マッサージパーラーの受付で働くことになる。                     (シネマ・トゥデイ)

 

台湾出身のシア・ユアン、通称ティナは、大学を卒業し、

ロンドンでハンサムなイギリス青年フランクと同棲している知的な美人なんですが、

不況と移民のハンディで求職活動に苦戦しています。

フランクも建築士助手の仕事をリストラされ、失業補償もしてもらえず、家賃も払えない状況。

仕事が見つかるまで、しかたなく、ティナは、怪しげなマッサージ店の受付で働くことになります。

 

ごくごく普通の住宅街の中。

扉を開けるとオリエンタルなインテリアのその店はありました。

太っちょママのリリーに姉貴分のササに妹みたいなメイ

全員中国語を話し、ちょっと家庭的な雰囲気にもみえます。

「手でやって、いっしょにシャワーを浴びるだけで充分稼げる」といわれても絶対に無理なティナは

ここで電話応対とそうじ、食事つくりなどの雑用をやることに。

「マッサージ」という名目ながら、やってることはえげつなく、

SM、スカトロ、赤ちゃんプレイ、あらゆる変態プレイもOKの無許可の売春宿なのです。

 

若くて人懐っこいマレーシア出身のメイは一番の売れっ子で、

美人だけど年増のササには客がつかず、でもシングルマザーのササは子どもを養うお金が必要、

自分に客をまわせ!とティナに迫ります。

リリーはピンハネした金で若いツバメに貢いでいて、面倒なことはティナに押し付け、

約束の給料も滞りがち。

 

ある日、マッサージの仕事をやりたいとアンナという田舎娘がやってきます。

ここのは性感マッサージだといわれても、家族のためにお金が必要だから何でもやると

覚悟を決めているのです。

 

客からどんなにひどいことをされても耐えるだけの女たち

プレイのあとの部屋にそうじに入ると、

血や排せつ物やいろんなものが飛び散り、ひどいことになっており

そのなかにはくしゃくしゃの紙幣も散らかっていて、

ティナは次第にそれをポケットにいれてしまうのが習慣になってしまいます。

 

ティナは仕事を抜け出して本屋の面接にいくも、そこの店主に

今の仕事がバレてしまいます。

「あそこで働きたいだろ?」と強引に関係をせまる店主から必死に逃げるティナ。

恋人のフランクにも風俗店で働いているのがバレて

「うそつきの売女とは暮らせない」と部屋を追い出されてしまいます。

 

 

「あなたもここに住んだらいい」と3人はティナを迎え入れ、リリーはごちそうをふるまってくれます。

その夜、ここを男たちが襲撃し、部屋を荒らされ、金を強奪されますが

違法営業なので警察を呼ぶこともできず、されるままの彼女たち。

 

実家に帰るといって姿をけしたアンナは、ぼろぼろの姿で空港に現れ、

そこで飛び降り自殺をしてしまいます。

これがきっかけとなって違法売春宿のことが明るみに出て

これをはじめて知った大家の女性は

「ここで子どもたちを育てようと思っていたのに・・・」と激怒し

近所の住民は

「そこの乞食女たち、さっさと国に帰れ!」と怒鳴り・・・

 

そのころ、台湾を大きな台風が襲ったというニュースが流れ

復興の手伝いをするティナの姿が・・・・

 

あらすじはこんな感じ。

 

本作はドキュメンタリーではなく、あくまでフィクション。

ただ、

「ロンドンで風俗嬢をしていたルー監督の友人が、ヒースロー空港で自殺をした」

というのは事実だそうです。

(エンドロールに「アンナの思い出に捧ぐ」とありました)

ルー監督自身もロンドンに住む移民の女性なので、

冒頭のリクルートシーンはどてもリアルでした。

 

「申し分ない履歴だけれど、週に6通は応募しないと」といわれ

「とりあえずインターンとして経験を積むのが実績になる」といわれるも

実際は、インターンという名の無給労働をさせられ、放り出されるので

正規の職にありつく前に蓄えが底をついてしまうのです。

 

「移民は差別されている」というのを訴える社会派の作品を想定していたのですが

イギリス人のフランクでさえ失業中なので、社会全体が大変な不況ということでしょうか。

なのに、この店にやってくるおっさんたちは、変態プレイにたくさんのお金を出せる、というのも不条理です。

 

密室のなかで女たちは心も体も傷つけられるのに、けっして被害者にはならない。

だって、お金をもらって、それを仕事にしているのですから。

警察も呼べず病院にも行けず、耐えるのみ。

そのうえ他人からは蔑まれ、摘発されれば犯罪者です。

 

ティナは不法移民ではないし、学歴もあり、英語も完璧で、

いくら何でも他に仕事あるでしょ?!と思ってしまいますが、

アンナのような女性はもうほかに選ぶ道はないんだろうな。

正直、「自分は風俗なんてありえない」と思ってるティナとは覚悟が違いますよね。

 

世の中には「わいわい楽しく変態行為をして喜ぶ映画」って、きっとたくさんあるんでしょうが、

本作は、それを「強要される側」から見ているので、まったく楽しさはないです。

ただただ不愉快な気持ちになります。

でも、合意による変態プレイは犯罪行為にはならないんでしょうね。

 

作中、移民を「土の上にでてきたミミズ」にたとえて、

「土から出て太陽を浴びたら、ミミズは死んでしまいます」といっていたけれど、

なんとか死なずに済む方法を見つけられたらなあ・・・

 

思っていたのより「無関心な観客を啓蒙するような社会派の作品」ではなかったけれど、

なにかずっしりといろんなものを受け取ってしまった感じです。

 

前に観た「君を想って海をゆく」とか「ル・アーヴルの靴磨き」とかに出てくる移民たちは 

フランスを通過点に、みんなロンドンを目指していたので、

大変な思いをしてなんとかドーヴァーを越えられれば、移民天国が待っているのかと信じていたのに

今はこんなにひどい状況とは!

私たちは「それなら日本に来ればいいのに」といえる状況なのか?

いや、いえるようにならなくてはいけないんでしょうね。

 

今回は配給会社のガチンコフィルムさんのご招待で、

10月公開予定の作品をいち早く見せていただくことができました。

本作は去年の熱海国際映画祭でグランプリを獲っており、

イオンシネマ富士宮ではすでに先行上映をすませ、

イオンシネマ板橋などで、10月25日から公開されるようです。

シネコンで上映されることで、多くの人の目に触れてほしいものです。

 

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