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サマーフィーリング

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映画 「サマーフィーリング」 令和元年7月5日公開 ★★★★★

(フランス語 ドイツ語 英語 字幕翻訳 横井和子)

 

 

夏のベルリン。

サシャは恋人のロレンスをベッドに残し、仕事場のアトリエへ向かう。

彼女は淡々と仕事をこなし、同僚と会話を交わしてアトリエを出た後に突然倒れ、そのまま亡くなってしまう。

ロレンスも、フランスから急きょやって来た彼女の両親や妹のゾエ(ジュディット・シュムラ)もぼうぜんとする。

                                                     (シネマ・トゥデイ)

 

「アマンダと僕」のミカエル・アース監督の過去作。

アマンダ・・・と同様、大切な人をなくした人たちの愛と再生を描くドラマなんですけど、

説明的なシーンをすべて排除した作品作りは個人的にツボでした。

 

ストーリー自体は3行で書けるくらいのシンプルなもの

 

ベルリンの夏 恋人のサシャを突然失ったロレンスははじめてフランス人の彼女の妹のゾエや家族と会い

翌年の夏 パリで再会、

翌々年の夏、ニューヨークに移り住んだロレンスをゾエが訪ねます。     (以上)

 

 

最初のベルリンのシーン

先にベッドから起きたサシャは簡単な朝食をとり、着替えて、職場に向かいます。

(↑ 起き抜けの彼女は無防備な裸同然なんですが、エロい感じはまったくなくて

ほんとに飾らない日常なんですね。

定点カメラでもないから、のぞき見してる感じもなくて、

最初の何分かでサシャとの距離がうんと縮まります。

となりで寝ていた恋人の体温とか髭のゴリゴリ感とか、そんなものまで伝わってくる感じ。)

 

彼女はアートセンターで染色の仕事をしているようで、手際よく仕事を終えると

笑顔で同僚に挨拶をして帰っていきます。

サシャの後ろ姿がだんだん小さくなっていったと思ったら、芝生の上でよろけて、倒れてしまいます。

 

病院でチューブにつながれたサシャの姿

フランスからやってきた彼女の家族は驚きショックをかくしきれません。

 

ベルリン5日後

ロレンスはサシャの妹のゾエとその夫のダビッドと食事をとります。

「ゆうべは母さんがとりみだしてごめんなさい」とゾエ。

 

友人のアヌークが最後まで残ってくれてロレンスを手伝ってくれます。

「ゾエがあまりにサシャに似ていて、まともに顔を見られない」とロレンス。

「手続きはすべてあちらの家族がやってくれて、僕はなんて役立たずなんだ」

 

ロレンスはサシャの私物をとりにアートセンターに向かいます。

サシャがすきだったレモンタルトを作ってくれた同僚が

「材料のレモンペーストがまだ残っているかも」と探してくれ

「やっぱり見当たらなかったわ」といって号泣します。

 

(若いサシャが、あんな人の大勢いるところで倒れて、助かるに決まっていると思っていたのが、

このあたりから、私たちもサシャの死を確信するようになります)

 

「ベルリンにある娘の荷物は君の好きに処分してかまわないし、

貯金もすべて君のものだから」

サシャの父親はそう言い残してパリに帰っていきます。

 

パリ1年後

アヌークのパーティにパリにやってきたロレンスはゾエと再会します。

「私のところに連絡ないから会いたくないのかも」と思っていたゾエでしたが

直後よりも精神的にまいっているロレンスは、パリ滞在を延期して

ゾエの働いているホテルにやってきます。

「ゾエ、助けてくれ、乗り越えられそうもない」

ゾエは夫のタビッドと別居していて、ふたりの距離は急速に縮まります。

息子の幼いニルスはロレンスをみて

「ママのおともだちなの?」と聞いてきます。

 

ニューヨーク その1年後

 

ロレンスは姉の住むニューヨークに住まいを移します。

ロレンスは作家志望なんですが、語学に堪能な彼は翻訳の仕事が忙しく

もう3年も小説を書いていませんでしたが、

ハンバーガー屋で働いている友人のトマスにも書くことを強く勧められ、

「地下鉄で公園へ」という、サシャが最後にいっていた「タイトル案」もずっと気になっていました。

 

ロレンスは、姉の誕生パーティで知り合ったイーダと親しくなります。

ゾエがニューヨークにやってきますが、ダビッドと離婚を決めた彼女は吹っ切れた様子で

これからテネシーに行く、と。

 

ウォールハンドボールに興じるふたり。

ゾエはテネシーで元カレの男性と数年ぶりに会おうと思ってる、と言って去り、

海辺でイーダと戯れるロレンス。

 

 

思い出しながら、ちょっと詳しく文字に書き起こしてみましたが、後悔しました。

最初の3行だけにしておけばよかったですね。

 

 

「アマンダと僕」との共通点はいくつもあって、

①説明的なシーンがまったくなく、葬儀とかのイベントも省略

②ストーリーに絡まないわき役の人とかペットとかいちいち名前がある

③仮面の隅っこで大事なことが起こってたりする

④音楽の使い方が秀逸

 

①は、遺体との対面とか葬儀とか埋葬とか全然でてこなかった「アマンダと僕」でも

テロで亡くなったことはちゃんとセリフで伝えていたけれど、

本作ではそれすら説明されないのにはびっくりしました。

にもかかわらず、登場人物が今何を感じ、どういう心境でいるかが、ちゃんと伝わってくるのです。

 

②サシャの上司がマルクとか、母親がアデルとか、ピーターとかハービーとか

一瞬出てくるだけの登場人物にも名前があり、

猫にもちゃんとアギーレという名前がついていました。

アマンダ・・・の相関図は比較的わかりやすかったですが、

本作では同じようなブロンドの女性が何人も出てきて、けっこう混乱しました。

アヌークとジューンのどちらかがロレンスのお姉さんかと思っていたら、

お姉さんは実はニナだったりとか。

 

ゾエは私でも知ってるスクリーン映えする女優さんで、間違いなくヒロイン扱いです。

夫と別居しているし、辛い境遇をなぐさめあううちに、ロレンスとくっつくはず!

と観てる人は確信するはずなんですが、さもあらず。

途中から登場した地味~でお話も上手じゃなくて、なんとなく冴えない印象の

イーダという女性にヒロインの座をとられてしまいます。

チラシのこの後ろ姿の女性も、記憶のなかのサシャだと思ってたら、なんとイーダだったんですよね。

 

 

③ 本作でも、「サシャが歩いている途中にいきなり倒れる」という

一番ショッキングなシーンは、画面の隅っこで音もなく映されていました。

こういうのもこの監督の特徴なんでしょうね。

 

④なにも知識がなくて語れないんですが、アマンダ…同様、

音楽のチョイスも、かかるタイミングも心に沁みました。

 

ところで、サシャはベルリンに住んではいましたが、家族は全員フランス人です。

ただ、それ以外の人の国籍はよくわかりません。

ロレンスは翻訳の仕事をしているくらいだから英語・ドイツ語・フランス語が堪能ですが、

どこの国の人なんでしょうね。(俳優さんは北欧の人のようですが)

 

「フランスなまりのドイツ語」とか「英語なまりのフランス語」とかが聞き分けられる人には

出身地を想像するのはごく簡単なことなんでしょうけど、

字幕頼りの私なんかには非常に情報量が少ないです。

 

にもかかわらず、なんでここまで心を捕まれるのか?

設定とか説明とか関係なく、登場人物に静かに穏やかに寄り添うことで

その繊細な感情が画面を通してこちらまで伝わってくるんですね。

受け止めなければならない「大事な人の死」はあるけれど、描かれるのはただただ日常。

 

他人の日常をこんなに丁寧に見せられたら退屈しそうなものですが、そんなことないのは、

ちょっと粗目の16ミリフィルムのなつかしさだったり、

さりげなく映し出されるベルリンとテレビ塔やNYのウィリアムバーク橋だったり

映像も魅力的。

でも一番は『グランド・ジャット島の日曜日の午後』の絵のような

(サシャの両親の住む)アヌシー湖畔の景色は最高に素敵でした。

 

 

渋谷のイメージフォーラム単館上映ですが、

「アマンダと僕」が気に入った方だったら、ぜひご覧ください。


ある女流作家の罪と罰

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映画「ある女優作家の罪と罰」 劇場公開なし   令和元年7月3日 DVDリリース ★★★★★

原作本「Can You Ever Forgive Me?」 リー・イスラエル  邦訳なし

 

かつてベストセラー作家だったリーは、今ではアルコールに溺れて仕事も続かず、

家賃も滞納するなど、すっかり落ちぶれていた。

どん底の生活から抜け出すため、大切にとっていた大女優キャサリン・ヘプバーンからの手紙を

古書店に売ったリーは、セレブからの手紙がコレクター相手に高値で売れることに味をしめ、

古いタイプライターを買って有名人の手紙の偽造をはじめる。

さまざまな有名人の手紙を偽造しては売り歩き、大金を手にするリーだったが、

あるコレクターがリーの作った手紙を偽者だと言い出したことから疑惑が広がり……。 (映画コム)

 

アカデミー賞に3部門ノミネートしたにもかかわらず、日本では劇場公開がないって、マジですか?

ともかくDVDで見られてよかったです。

 

「落ちぶれたベストセラー作家が、生活に困って、有名人の手紙を偽造して売ってたのがバレて捕まる」

なんてトホホな話(実話)が面白いか?って思いましたが、これがとっても面白かったです。

 

伝記作家として、かつてはベストセラーも出したことのあるリーでしたが、

今はおちぶれて、職場もクビになり、部屋代は滞納、唯一の話し相手はおいぼれ猫のジャージーだけ。

そのジャージーの治療費も払えずに、本を売りに行くも、なんの足しにもならず・・・

 

エージェントのマージョリーのホームパーティに行くも、だれからも相手にされず、

腹がたって、トイレットペーパーとか、他人の高そうなコートとかを持ち帰ってしまいます。

 

いよいよお金に困ったリーは、

昔取材したことのあるキャサリン・ヘップバーンからもらった手紙を売りに行くと、これが175ドルで売れます。

また、今伝記を書こうとして集めているファニーブライスの資料のなかから手紙を見つけて売りに行くと

「平凡な内容だから75ドル」と言われます。

 

そこで、平凡な手紙に、

「追伸  孫が生まれたけど、鼻が私にそっくり。お直し代を用意してあげなきゃね」

なんてことばを古いタイプライターで追加して持っていくと、なんと350ドルまで値があがり、

滞納していたあれこれがすべて支払いできちゃいました。

 

これに味をしめたリーは、もう亡くなった有名人の手紙を偽造して、売りに行くようになります。

何枚も偽造したドロシー・パーカーなんかは、専用のレターパッドを発注したり、だんだん本格的に。

タイプライターの機種とか紙やインクの劣化度とか、調べればバレそうなものですが、

リーは伝記作家だから、いかにも「その人が書きそうなこと」を熟知しているんですね。

 

最初にヘップバーンの手紙を買い取ってくれた、

本を心から愛していて、リーの著作も楽しみにしてくれている書店の女性と気が合って、

また、昔の知り合いのジャック・ホックとも意気投合して、

猫しか話し相手のいなかったリーの人生に光がさしてきます。

 

ジャックは職もなく昼間から飲んだくれているようなロクでもない男なんですが、

偏屈なリーの心を唯一癒してくれる存在。

彼はゲイで、どうやらホームレスなのを隠しているようなんですが、

リーは自分のアパートのソファーに寝ていいよ、といいます。

 

 

私は極狭や荷物にあふれた部屋は苦手ですが、本の山だけはOKなので

本や資料にあふれているリーの部屋は作家らしくて憧れるな~!と思ってみてたんですが、

どうやらこの部屋、めちゃくちゃ臭いらしい。

「ハエが多くて寝られない」と大家に前から文句を言っており、

滞納家賃を払ったから駆除業者を呼んでくれたんですが、

「まず部屋を掃除してから呼んでくれ」といって業者は帰ってしまいます。

 

ソファーの下はジャージーの糞だらけで、これじゃハエが湧いて当然なのに

それを部屋のせいにするという・・・・まあ、それがリーのやり方なんですね。

マージョリーにもさんざん

「見た目を良くしろ」

「愛想も良くしろ」といわれ、

そのときは「作家なんだから、地味で人嫌いでもいいじゃん!」と思ったんですが、

ハエがたかる程臭い女だったんですね、納得。(映画では臭いは伝わらないからね)

 

掃除の苦手なリーにかわってジャックが部屋をきれいにし、

手紙の偽造ビジネスの唯一の協力者にもなっていきます。

実はリーの偽造ビジネスもだんだんバレかけていて、

古物商のブラックリスト入りのリーが売りにいくのが難しくなってきていたのでした。

 

「それなら本物を売ればいい」

「僕は商品をすり替えるから、万引きしても絶対にバレない」と、ジャック。

そこで、リーのような作家しか閲覧できない貴重な資料の保存庫に入って、すり替え作業をして

それ(本物)をジャックが売りにいく、という手口で、さらに犯行を重ねていきます。

 

ある日、リーに言われてジャージーに薬入りのえさをやるジャックでしたが、

ジャージーが死んだのにも気づかずゲイ仲間とヤッていたジャックに激怒して

リーはジャックを追い出します。

 

そして彼らの偽造ビジネスは私文書偽造ですから、FBIの捜査対象にもなり、

最初につかまったジャックは司法取引でリーのことを密告し、

ついにはリーも逮捕されるのです。

 

実刑ではなく5年の執行猶予がつきますが、その間、仕事とボランティアと断酒会への出席以外は

自宅にいなければいけないという厳しいもの。

 

映画ではその後、バーでジャックと再会し、

「あなたとのことを自伝に残したい」と話すところで終わります。

ジャックはそのときエイズに感染しており、その後民間に支援団体の施設で

見守られて息を引き取った、エンドロールにありました。

 

リーは2008年に原作となった自伝「Can You Ever Forgive Me?」を著し、

2014年に亡くなりました。

 

 

↑ これが本物のリー・イスラエル

1939年生まれで、

「51歳の落ちぶれ作家」といってたから、1990年くらいの話なんですね。

 

 

もともとはジュリアン・ムーアがキャスティングされていたそうで、

メリッサ・マッカーシーは全く似ていないし、似せようともしてませんが、

この「地味なデブのおばさん」のほうが共感度は高いですよね。

メリッサは、過去作ではデブだけど軽快に動けるし、いつも幸せオーラが勝っていたのに

こんな役柄がこんなにしっくりくるなんて驚きです。

アカデミー賞、(グレン・クローズはともかく)オリビア・コールマンには勝ってたと思うけどな。残念。

 

リチャードEグラントもいい味をだしてました。

(最初クリストファー・ウォーケンだと思ったんですが、ジェフリーラッシュにも似てますね)

彼は徹底的に「嘘つき」なんだけど、これが、憎めないんだな~

 

「嘘つき」はそれだけじゃ犯罪にならないけれど、

偽造した手紙を本物と偽って売るのは、明らかに詐欺行為。

でも、そもそも小説だって演劇だって、「どれだけ上手に嘘をつけるか」ってことですよね?

手品とかイリュージョンに至っては完全に(合法的な)詐欺行為です。

 

リーのやったことは「文学的な偽造」といわれるそうですが、

こういう新たなジャンルを作って

「いかにも本人が書きそうなことを再現する」というジャンルをつくればよかったのかな?

「本物より本物らしい」というのは、映画でも小説でもほめことばですからね。

 

私は、(クオリティ低いし、自分で楽しむだけだから犯罪にはならないけれど)

いろんなものをパクッて本物っぽいものを作るのが大好きなので、けっこうわくわくしました。

本人も「作家人生のなかで(偽物をつくっているときが)一番自分の才能が開花した実感があった」

と言っていて、なんとも皮肉。

犯罪がバレたのち、

自分の偽造した手紙が、書店のウィンドウに高値をつけて鑑定書付きで飾られているのをみて

「あの世から本人の出した手紙」をまたまたでっちあげるところとか、まさに作家魂です。

 

本作はジャンルとしては「実話系クライム映画」というところでしょうか。

まあ、最後には捕まっちゃいますが、予想以上に楽しめた一方、

世の中には、(作中登場した、前金300万ドルの売れっ子作家とか)

創作活動への対価は、納得いかないものが多いですよね。

 

原作も邦訳がでないかな~?

COLD WAR あの歌、2つの心

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映画 「COLD WAR あの歌、2つの心 」 令和元年6月28日公開 ★★★★★

(ポーランド語 フランス語 ドイツ語 ロシア語  字幕翻訳 吉川美奈子)
 

 

ピアニストのヴィクトル(トマシュ・コット)と歌手を夢見るズーラ(ヨアンナ・クーリグ)は、

ポーランドの音楽舞踊学校で知り合う。

やがて二人は恋に落ちるが、ヴィクトルに政府の監視の目が向けられ、

彼はベルリンでの公演後パリに亡命する。

その後歌手になったズーラは、

公演で訪れたパリやユーゴスラビアでヴィクトルと再会を果たす。           (シネマ・トゥデイ)

 

第二次大戦後、1949年から1964年までの15年間のポーランドとパリを舞台に

一組の男女のメロドラマです。

今まで私の見たポーランド映画といえば、「迫害」とか「抵抗」のイメージが強くて、

「カティン森」しかり、「残像」しかり・・・

なので、男女の愛の物語といわれたら、

二人の間に立ちはだかる壁にさえぎられるも、愛を貫いた話なんだろうな・・・と。

でも本作はそうではなくて、このふたりは「腐れ縁」のような関係で、

彼らの肩越しに見える「歴史の流れ」がむしろ主役なのではないかと思わせる作品です。

 

時間軸はまったくぶれず時系列で、フラッシュバックもなく、

また女性の方は15年の間に10代から30代になったとおもわれるのですが、

ひとりの女優が通して演じています。(なので、理解しづらいことはないです)

 

ストーリーをざっと書きますが、説明的なセリフがほとんどなく、モノクロで情報量が極端に少なくて

半分は私の想像というか、解釈で、かなりいい加減なので、あしからず・・・・

 

 

①1949年  ポーランド

足踏みのバグパイプ?やバイオリンやみたこともない民族楽器を演奏し歌う姿を

採集して歩く一組の男女。

戦後、ポーランドの国民意識を高揚させるために固有の伝承音楽を集めているように思われます。

「これはレムコ語。ことばがちがう、残念だ」とか、(あとのほうのシーンですが)

「あの子は髪が黒すぎる、染めさせないと」というせりふがあり、

どうやら、「純血のポーランド独自のスラブ文化」というのにこだわっているようです。

 

②剥がれたマリア像の壁画が一瞬映り、トラックからぬかるみ道におりたつ少年少女たち。

「この領主の館で、君たちは先祖伝来の音楽を学び、教師の指導を受け、

競争をくぐりぬけ、選ばれたものが舞台にたつ」

どうやらここで、少年少女たちを指導して「国民歌謡舞踏団」のようなものをつくるようで、

①にでてきた男女、ヴィクトルと イレーナは、ここの指導者として再登場し、

労働党からのお目付け役としてカチマルクがそれを監視します。

 

ちゃんと音楽教育を受けてきた子たちじゃないので、楽譜も読めず、歌も自己流ですが、

そのなかにきらりと光る少女がおり、オーディションでは山の民謡を二重唱したのに加え、

彼女はそのあとひとりで、ソ連のミュージカル映画「心」で覚えたというアリアを歌います。

「彼女はエネルギーがあり、独創的」とヴィクトルは気に入った様子ですが、

「彼女は問題児よ。

カチマルクから聞いたんだけど、父親殺しで保護観察中らしいわよ」と、懐疑的なイレーナ。

(実際、性的虐待をしようとした父を刺した彼女は、殺人未遂で執行猶予中でした)

 

③1951年 ワルシャワの大劇場でのマズルカ舞踊団の最初の公演

ヴィクトルたちの指導の成果がしっかり上がって、歌唱も舞踊も2年前とは格段のクオリティの高さ。

とくに「2つの心と4つの瞳」(日本人にはオヨヨ♪~としか聞こえないので、以後そう書きます)の曲の美しさ!

素朴な民族音楽がステージパフォーマンスとして見事にショーアップされ、

男性のダンスはコサック舞踏のような体力勝負の力強さ。

女性たちの民族衣装にも惚れ惚れとします (モノクロなのが残念)

 

ヴィクトルにカチマルクが近づき

「民族芸能に懐疑的だったが、この舞台には感動した」と。

「もっと祖国をたたえ、農地改革、世界平和とかも題材にしていきたい、最高指導者の賛歌とか・・・」

「そうすれば、東ベルリン、プラハ、ブタペスト・・・モスクワにだって公演旅行ができる」

ヴィクトルは

「我々は純粋に民族芸能にこだわりたい」

というのですが、国内の情勢はそれを許さず

マズルカ舞踊団はだんだん「インターナショナル」とか「スターリン賛歌」とか、

大きな旗をはためかせながら、プロパガンダの歌ばかり歌わされる羽目に。

(この辺、北朝鮮の芸術団みたいです)

 

イレーナはこれに反発して、ここを去りますが、

不満を残しながらもヴィクトルはここに残ります。それはなぜか?

実は教え子のズーラ(オーディションで輝いてた子)に手をつけちゃったんですね。

彼女はそれまで「前髪の子」「心をうたった子」「父親殺しの子」とかいわれていて、

ズーラという名前がわかるのはもうちょっとあとなんですが、

ズーラはこのドラマのたったひとりのヒロインなので、ここからは名前で・・・

 

ヴィクトルとこっそり逢瀬を重ねながら

「世界の果てまでもいっしょよ」といいながら、

「ガチマルクが言い寄ってきて、あなたのことをとやかく聞かれる」

「だから害のないことをちょっとずつ密告しているの」

「私は執行猶予中の身だから、体制には反発できない」というズーラ。

そして、走って行って川に飛び込み、あおむけに浮かびながら、あの「2つの心(オヨヨ♪)」を歌います。

 

④ 1952年 東ベルリン

ベルリンに向かう列車のなかで、ヴィクトルはズーラに、フランスへの亡命を持ち掛けます。

「公演後、ロシア占領区の隅で待ってる」

ところが何時間待ってもズーラは現れず、ヴィクトルはひとりフランスへ向かいます。

 

⑤1954年 パリ

ナイトクラブ「レクリプス」で、バンドの一員としてジャズピアノを弾いているヴィクトル。

作詞家の恋人ジュリエットと平穏に暮らしているようです。

パリを訪れたズーラ(なぜ来ることができたかは不明)に

「あの時どうしてこなかった?」と聞くも

「私はまだ未熟で(亡命なんて)無理だと思った」と。

 

⑥1955年 ユーゴスラビア

マズルカ舞踊団の公演を見に来たヴィクトルをカチマレクが見つけて声をかけます。

「君が去ってしまい、非常に残念だ」

舞踊団の花形歌手となったズーラは、ステージから客席のヴィクトルを見つけますが

会いに行くことはしません。(カチマルクから止められていたか?それとも単に省略されただけか?)

 

⑦1957年 パリ

ヴィクトルが映画にあわせた劇伴の演奏を録音していると、突然ズーラがやってきます。

「パレルモ出身のイタリア人と結婚したの(だから自由に渡仏できる?)」

ヴィクトルはオヨヨ♪を自らジャズ風にアレンジした曲をぜひともズーラに歌ってほしいのですが

彼女はジュリエットの訳詞に不満のようす。

「『振り子時計が時を殺す』って意味がわからない・・・」

乗り気にならないままレコーディングとなりますが、これが、かなり上手い!

舞踊団の歌姫時代とは全く違う曲調で、発声もちがうのに、見事に歌いこなしています。

それでも不機嫌なズーラは、大酒を飲んで「Rock Around The Clock」で踊り狂ったり・・・

温厚なヴィクトルもついには手をあげ、ズーラはポーランドに帰ってしまいます。

 

マズレク舞踊団に国際電話をしても、ズーラの消息はわからず。

それでも彼女を追ってポーランドに行く決意を固めるヴィクトル。

ただ、一度亡命した社会主義国に戻るというのがどういうことなのか・・・

「祖国を捨てた愛国心のない裏切り者」と判断されるだけです。

 

⑧ 1959年 ポーランド

ポーランドの古びた長距離列車にひとり乗るズーラ。

彼女が向かった先は、ヴィクトルが収監されている刑務所でした。

「違法に出入国した罪で懲役15年の罪だ」

丸刈りでやつれた体。 拷問されたのか、とてもピアノは弾けないような指になっていました。

「君に耐えられる普通の男を探せ」というヴィクトルに

「必ずここから助け出すから」というズーラ。

 

⑨ 1964年 ポーランド

「夏の歌フェスティバル」ではラテン音楽が鳴り響き、

その会場でヴィクトルとズーラは再会します。

ズーラは言葉通り、ヴィクトルの早期出所のためにいろいろ手をつくしたようです。

 

ズーラは2歳くらいの男の子の母親になっていました。

彼女の夫と思われる中年男がやってきて

「君がパリでつくったレコードは素晴らしかった。こんどはぜひポーランド語で頼む」

私は、彼は偽装結婚したイタリア人の夫だと最初思ったのですが、

15年の間にさらに髪が無くなったカチマレクにも見えるし、

あるいは、ヴィクトルを救い出すために別の有力者の妻になったのかもしれません。

(そんなことズーラにはたやすいことですから)

 

「私をここから連れ出して」

「そのために来た」

そして二人はバスにのり、なにもない十字路で降りると

そばには崩れかけた壁と剥がれかけたマリア像。

ふたりが最初に出会った、オーディション会場のそばの教会でした。

 

二人だけの結婚式を挙げ、蝋燭の下に並べた白い錠剤を

「体重にあわせて飲むのよ」

「永遠にいっしょよ」

手をつないですわるふたり・・・・

 

エンドロールにはバッハの「ゴルトベルク変奏曲(アリア)が静かに流れます。(以上 あらすじ終わり)

 

 

二人の男女の15年にわたる愛の軌跡で、大河ドラマに匹敵すると思うんですが

驚くべきはその上映時間。 わずか88分ですよ!

全編モノクロ映像で、ゆったり何も起こらないシーンもけっこうあって、情報量少な目に思えるのに

無駄なカットがひとつもない、というか、上映中はずっと集中していたし、それをさせる作品なんですよ。

ポーランド史に疎く、ポーランド→ショパン しか連想できない私でも、ひととおりはついていけた感じでした。

(そういえば、「幻想即興曲」をヴィクトルが見事に弾くシーンがありましたね)

 

いろいろ感動が大きすぎて言葉にならないんですが、

「映画好き」を自認する人だったら、どんな障害を乗り越えてでも、「映画館に行かなきゃだめなやつ」です。

 

パヴリコフスキ監督の過去作「イーダ」はいまだレンタルがなく、

もしかしたら、本作も同じことになるかもしれません。

シンク・オア・スイム  イチかバチか俺たちの夢

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映画 「シンク・オア・スイム  イチかバチか俺たちの夢」 令和元年7月12日公開 ★★★☆☆

(フランス語 字幕翻訳 加藤リツ子)

 

 

うつ病で仕事を辞め、引きこもりがちな生活をしているベルトラン(マチュー・アマルリック)は、

地元の公営プールで男子アーティスティックスイミングのメンバー募集を見かける。

いざチームに加入してみると、メンバーは家庭や仕事に不安を抱えるおじさんばかりだった。

逆境の中、彼らは世界選手権の金メダルを目指して猛特訓に励む。     (シネマ・トゥデイ)

 

 

 

ちらしには「おじさん図鑑」のなかむらるみさんのイラストでおじさんたちの紹介があって、

もうこれをみたら、見に行かないわけにはいかなくなっちゃいました~!

 

 

⇑ これは「グリーンブック」のトニーとドクターのなかむらるみさん的分析なんだけど、

ほんとにこのままでしたからね!

 

人生負け組のメタボのおじさんたちが、公営プールでシンクロナイズドスイミングをはじめ、

世界選手権に出るまでの話で、まあストーリーは思いっきりベタで、

このおじさんたちの個性的なキャラだけが見どころな感じでした。

正直、おもったほどは面白くなくて、最近★5つを連発してたけど、★3をつけさせていただきました。

この競技は、最近になって「アーティスティックスイミング」と呼び方が変わったけれど、

個人的にしっくりこないので、従来の「シンクロ」とさせていただきます。

 

①ベルトラン(マチュー・アマルリック)

うつ病で仕事をやめて2年の「ひきこもりニート」

大量の薬をシリアルに混ぜて食べ、一日中家のソファーでゲームをやってる生活ですが

病気だから仕方ないと、妻も子どもたちもあきらめています。

妻の姉夫婦がしょっちゅうやってきては、いろいろ文句をいって帰るのが、

夫婦のストレスの元になっています。

 

②ティエリー

公営プールのスタッフですが、機械に弱く、なんか頼りない。

38歳にしてハゲの非モテキャラで、童貞疑惑も。

いつもみんなにいじられてますが、とにかく優しいおじさんです。

 

③ロラン (ギョーム・カネ)

短気ですぐにキレる。

家庭でも吃音の息子や妻に怒ってばかりで、

プールでもすぐ怒って帰っちゃう、困ったおじさんです。

 

④シモン

ロックスターを目指しているものの、イベントの前座くらいの仕事しか来ず、

自主製作で17枚も出したCDも全く売れず。

高校生の娘とキャンピングカーで車上生活をして、

娘の学食の厨房で働いて生計をたてています。

いつまでも夢を捨てきれないおじさんです。

 

⑤マルキュス

プール販売会社の社長だけど、妻にも逃げられ会社も倒産寸前。

なのに全然現実に向き合えない、けっこうヤバいおじさんです。

 

⑥アバニッシュ

⑦バシル

このふたりは、ほとんどせりふもなく、全くストーリーに絡んできません。

アバニッシュは唯一の黒人で、泳げなくて浮き輪をつけてるから見た目は目立つんですけど。

編集でカットされちゃったのかな?

 

⑧ジョン

彼はロランの母の介護施設で働くスタッフで、「息を長く止められる」特技があることから

チームの「土台」をやるべく、あとから参加することになります。

まだ「おじさん」というには若すぎるかも。

 

彼らを指導するコーチは、元シンクロチャンピオンのデルフィーヌ。

デュエットのパートナーが事故にあって競技生活を続けられなくなって

(本当は彼女を支えなければいけないのに)酒にはまり、アル中に。

断酒会に通って懺悔する生活をしています。

 

そしてそのパートナーだった車いすのもうひとりのコーチがアマンダで、

「ほめて伸ばす」デルフィーヌとは真逆の、徹底的なスパルタ指導。

 

 

うつ病で引きこもりのベルトランは、ある日、公営プールで

「シンクロの男子メンバー募集 初心者歓迎」のポスターを見つけ、参加することに。

プールの管理スタッフでメンバーでもあるティエリーが案内してくれます。

「シンクロには優美さ、リズム感、健康意識が必要」といわれるも

メンバーは毛むくじゃらのでっぷりお腹の中年男ばかりで、

誰が見てもぶざまな彼らに

「自分のなかの女性らしい部分をさがして」

「バレリーナのように・・・人魚のように・・・」

と、コーチのデルフィーヌの声が飛びます。

 

それでもこの負け組のおじさんたちは、一緒にサウナで汗を流したり

ハッパを回し飲みしたり、ハグしあったり、けっこう仲が良くて、だれも練習を休みません。

 

ただひとりおこりんぼのロランだけは、

「へたくそども!」と(自分のことを棚に上げて)怒って帰っちゃうんですけど、

彼もちゃんと練習には来るんですよね。

 

そんなこんなでいつもどおりのグダグダの練習をつづけてるある日、

プールに突然デルフィーヌの恋人がやってきます。

彼はデルフィーヌが断酒会で

「私はシンクロの生徒たちと優しい恋人に救われている」といっていた恋人なんですが

「俺には妻子がある。

家にも来るな、電話もするな、

警察にも通報済みだからな!」

と叫んで帰って行ってしまいます。

 

ショックで立ち直れないデルフィーヌにかわって、元パートナーのアマンダがコーチとなりますが、

これがモラハラの暴言指導。

「何やってるブタめ!」

「このメタボ野郎!」

「努力の意味を教えてやる!」

水中で息を止める練習もさせるのですが、だれも息が続かず、最長でもわずか47秒。

これでは水中で支える土台役にはなれません。

 

たまたまロランの母の介護施設スタッフのジョンが

「加齢臭がすごくていつも息をとめて仕事をしてる」といっていたのを思い出して、彼を誘うと

なんと3分52秒も息を止められて、土台メンバーにリクルートするのです。

 

ティエリーが勝手にネットで「フランス代表チーム」というチーム名で登録をすると、

なんとノルウェーでの世界選手権にオファーが来て、

「6900万人のフランス代表として」シモンのキャンピングカーでみんなで向かいます。

さて試合の結果は???

 

 

なかむらさんのイラストを見た限りでは

「個性豊かな 負け組だけど共感度高いおじさんたち」で、

「おじさんあるある」みたいなのを想像したんですが、

コーチもふくめ、病んでたり、問題児だったりで、コメディモードながら、なかなかにシビアです。

フランスを代表する名俳優マチュー・アマルリックとギョーム・カネが出ていますが、

マチューはともかく、ギョーム・カネがこんな役だなんてびっくりですね。

 

いくら競技人口が少ないとしても、水球の前座レベルのおじさんたちが

予選もなしに世界選手権にいけるなんて、ずいぶん現実離れしているし、

いくらスパルタでしごかれたとしても、あのメタボ軍団があそこまで変わるとはね。

 

これはスウェーデンの実在するおじさんたちのシンクロチームがモデルになっているとか。

どうしても実話とは思えないんだけど・・・・

9月にこのイギリス版が公開されるそうで、いちおうこっちも観ておこうかな?

 

 

今日観た半券の提示で496(シンクロ)円で鑑賞できるときいて、

あわててゴミ箱から拾い出しました(笑)

公開中・公開予定の映画の原作本 (62)

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公開中 「DINER ダイナー」 ← (同名) 平山夢明  ポプラ社

 

 

公開中 「ホットギミック ガール・ミーツ・ボーイ」 ←(同名ノベライズ) 豊田美加 小学館文庫

 

 

10月4日公開予定 「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」 ← (同名) ヒキタクニオ

光文社文庫

 

 

11月公開予定 「影踏み」 ← (同名) 横山秀夫 祥伝社文庫

 

家へ帰ろう

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映画「家(うち)へ帰ろう」 平成30年12月22日公開  ★★★☆☆

(スペイン語 字幕翻訳 不明)
 

 

 

アルゼンチンのブエノスアイレスに暮らす88歳の仕立屋、アブラハムは、

70年以上会っていないポーランドの親友に、最後に仕立てたスーツを渡そうと思い立つ。

その親友は、ユダヤ人のアブラハムがホロコーストから逃れた際に助けてくれた命の恩人だった。

アブラハムは、マドリード、パリを経由して目的地に向かうが、道中さまざまな困難が襲う。(シネマ・トゥデイ)

 

「たくさんの孫に囲まれて幸せそうなおじいちゃん」に見えますが、

子どもたちに住んでいた家を売られ、明日は老人ホームの身となる、最後の記念写真です。

アブラハムは頑固で高圧的で、子どもたちからは疎まれていて、あまりいい関係とはいえません。

 

彼はホロコーストの生き残りのユダヤ人で、もともとポーランドに住んでいたのですが、

その時に助けてくれた親友との70年前の約束を思い出し、彼にスーツを届けるべく、

こっそり夜中に家を抜け出します。

飛行機でマドリードへ。

そこから列車を乗り継いで、マドリードに向かうのですが、道中はアクシデントの連続。

機内でとなりあわせた青年、マドリードのホテルの女主人、ずっと勘当していた末娘、

パリの人類学者のドイツ人女性、ワルシャワの看護婦・・・・

など、いろんな人に助けられながら、アブラハムは親友に再会できるでしょうか???

って話です。

 

 

「手紙は憶えている」と似ている気もしたのですが、

アブラハムの目的ははっきりしていて、最後までぶれることはありません。

足が不自由ながら、頭はしっかりしていて、仕立て屋さんらしく、スーツの着こなしがなかなか素敵です。

(荷物がすくないわりに、何回もお着換えしているので、むしろ不自然なくらいです)

 

アブラハムの腕には囚人番号が刻まれ、戦争中のできごとは、ながらくトラウマとなっていて

ポーランドとかドイツとか口にすることもずっと避けてきました。

ポーランドへの旅の最中にも、目の前で家族が殺されたり、

傷だらけで帰ってきた我が家には使用人家族が住んでいて追い出されたり

辛い記憶がたびたびフラッシュバックします。

 

パリから陸路で「ドイツを通らずに」ポーランドに行きたいと言い張るアブラハムに

イーディッシュ語やスペイン語で助けようとしてくれる女性がドイツ人だと知り、

だんだん凝り固まったドイツ人への偏見や

彼の頑なな心がとけていくのはいい話ですよね。

 

「ユダヤ人はお金に細かい」というのは私の偏見かもしれませんが、

料金を値切ったり、交渉をしたりするシーンがたびたび出てきます。

冒頭で、「孫に囲まれた写真を老人ホームでみんなに自慢するから写真を撮れ」というアブラハムに

どうしてもいやだと拒否する孫のひとり。

「iPhoneが欲しいから1000ドルくれ」という孫と値段交渉をするアブラハム。

結局800ドルやることになり、「もうちょっと粘れば1000ドルもらえたのに、バカな奴だ」というと

「iPhoneは本当は600ドルだから、200ドルもうかった」という孫娘に

「騙したな。でもそこが大好きだ」と抱きしめるシーンがすごく印象的でした。

マドリードでも、部屋代を値切るためにへんな嘘をついたり、

娘に借金するときの金額の交渉とか、「守銭奴エピソード」が多いわりに

マドリードのホテルで有り金の15000ドルを盗まれたとき、あっさりあきらめてしまったのが、

ちょっとよくわからなくて、このあと進展があるはずと思っていたら、それっきりだったのが意外でした。

 

 

これはボロボロになって帰ってきたアブラハムをただひとり助けてくれた

ポーランド人の元使用人の家の息子。

多分兄弟のように育ったんでしょうね。

回想シーンの悲惨さは極力抑え、頑固爺さんの珍道中をコメディタッチに書いていますが、

どうなんだろう?

「コメディタッチのヒューマンドラマ」としては

「ライフ・イズ・ビューティフル」の域にまでは達してない印象でした。

シネスイッチ銀座

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ここ何年かでこの老舗映画館の発券システムが急速に変わってきているので、

まずそのお知らせから・・・・

なんと

ネット予約でチケット買えるようになりました!!

・・・・って、別に当たり前のことに思えますが。

ここの映画館を昔から知っている人にとっては、びっくり!なことです。

 

ここはずーっと長いこと「入れ替えなしの 自由席 立ち見あり」を貫いていて、

ネット予約なんて夢物語で、座席指定の要望をずっとはねつけてた劇場だったんですよね。

 

他劇場では、(リニューアル前の武蔵野館のように)

指定券がなくても、発券時に番号つきの整理券を配って、番号順の入場だったので、

ずっとは並ぶ必要なかったですが、ここはひたすら並びます。

空いているときだったら問題ないですが、ヒット作でレディースデイだったりしたら、かなり悲惨です。

 

自分のブログを探してみたら、2010年4月の「オーケストラ」では

 

(・・・なんて嫌味な書き方をしてしまうのは、)
シネスイッチがあまりに満員で、さんざんな想いをしたからだと思います。
サービスデーでもないのに、窮屈なところで20分も並ばされて、
それでも酷い席しかすわれなくて、首は痛いし、
でも席があるだけマシで、おそらく立ち見の人も多かったかも・・・

 

とありました。

 

まず外に並んでチケットを買って、今度は廊下に4列縦隊でぎっちり並ばされて、

前の上映回が終わっても、入れ替えじゃないから、席があんまり空かないんですよ。

なので、見づらい席しかなくて、でも、私よりずっと後ろにいた人たちは「立ち見」必至で、

よく暴動が起こらないものだ・・・・と思ったのを思い出しました。

900円のレディスデイならともかく、1800円払ってこの仕打ちだったので、さらに怒りがましたのかも。

 

 

2011年3月のあの東日本大震災の瞬間も、私はここでショパンの映画をみてたんですが、

そのときもまだ自由席でしたね。

私は誰よりも早く外に逃げたんですが、ほとんどの人は次のすごい揺れまでほとんど逃げなかった・・・

と前に書きましたが、その日は金曜日のレディスデイでかなり混んでおり、

今にして思うと、「逃げ足が遅れたのは、もしかして自由席だったから?」と思ってしまいました。

 

 

 

その後、たぶん2014年くらいに座席指定ができるようになりましたが、2つの窓口では処理しきれず

ノートパソコンの臨時窓口をつくったりしても、「チョコレートドーナツ」なんかは、

行列がいくつもの店舗を横切って、大通りの方まできていました。

 

 

この「お立ち見」の札の枚数がヒットの目安になっているようですが

「お立見続出!ありがとうございます」じゃなくて、

「ごめんなさい」だと思うんですけどね。

 

全席指定席になってもこの傾向は続き、

全席売り切っても、「立ち見」で売っちゃうのが、なんとも理解できないんですが、

(昔廊下にぎっちり並ばせたりしたのもふくめ)消防法とか、大丈夫なんだろうか??

 

大多数の人が「指定席制 歓迎!」と思いきや、列に並んでいると

「なんか難しくなって(窓口で)いろいろ聞かれてめんどくさい」とか話しているのをよく聞くので

「昔のやり方を変えない」というのも、ある意味顧客サービスのひとつなのかもしれません。

 

 

今年1月からは、テアトル系でもないのに、

TCGメンバーズカードのサービス対象劇場となりました。

つまり、1000円払って会員になると、月木は1000円(9月からは1100円)で見られるので、

金曜日のレディスデイへの集中が収まるかもしれませんね。

 

ここはレディースデイ発祥の劇場といわれていて、その意地からか、

金曜日の女性料金は、他より料金が安いです。

ほかが1000円のときに900円。 1100円に値上げしたときも、950円。

今、他劇場はどんどん1200円にしているので、1000円になる日も近そうですが、

ここはぜひとも、三桁にこだわってほしいものですけどね。

 

そして、今回の「ネット予約はじめました」ですが、

まだ浸透してないようで、窓口にはけっこうな行列ができていました。

当日の朝でもネットで席を選び放題なので、

これから行かれる方は、ぜひぜひネット予約することをお勧めします。

 

ところで、「ル・シネマ」「TOEI渋谷」のような「ネット予約後発組」はみんなそうなんですが、

原則、窓口やロビーでの発券がないのです。

スマホにメールで送られたQRコードをかざして入場するペーパーレス方式。

家でPCからネット予約してスマホをもっていない人たちはどうするんでしょうね?

おそらく窓口に並んで、予約番号からQRコードをプリントしてもらうんでしょうかね。

ネットでのレビューは高評価でしょうけど、高齢者の受け取り方は人それぞれではないかと・・・・

私自身も、ネット予約できるようになったのは本当にありがたいけど、

「スマホだけが頼り」という最近の傾向はちょっと受け入れ難いのが正直なところです。

 

 

 

シネスイッチ銀座の前身である「銀座文化劇場」がオープンしたのは1955年。

長らくハリウッド映画の名画座だったのですが、

1987年にその一つをシネスイッチ銀座として、洋画と邦画の新作をスイッチしながら上映したそうです。

そして「モーリス」や「ニュー・シネマ・パラダイス」なんかが大ヒットしました。

そして10年後、シネスイッチ1・2の今の形になり、すべて洋画(たまに邦画)の新作を独自のチョイスで

上映しています。

 

ここのユーザーレビューを見ていると、「名画座」時代の印象が強いのか

「古い映画」「B級映画」「マイナーな映画」「マニアックな映画」のように書く人がいるのですが、

かならずしもそうではありません。

傾向でいうとシニア向けの「ほっこり路線」」とル・シネマで扱うような「おしゃれ系」が多いですが、

他では扱わないようなアジアや中近東の映画とか、アート系の尖ったのもやるし、

なにが出るかはお任せの、闇鍋みたいだけどそんなに外れはない・・・

「セレクトショップ」みたいな映画館ですね。

 

 

個人的には、ほかの劇場のも含め、チラシの数が多いのがありがたいです。

 

ドリンクの氷の音とかフレーバーポップコーンの臭いとかマジ迷惑なのに、

シネコンではそれがOKで、ペットボトルを持ち込んでも怒られたりするじゃないですか!

その点ここは、そういうの全然ないし、自動販売機もあるから、堂々とお茶のペットボトルを置けます。

酷いマナーの人も見かけないし、居心地はいいですよね。

 

銀座から映画館がどんどん消えるなか、最後に残ったミニシアターなので

これからも頑張ってほしいです。

北の果ての小さな村で

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映画「北の果ての小さな村で」 令和元年7月27日公開 ★★★★☆

(デンマーク語 グリーンランド語 字幕翻訳 伊勢田京子)

 

 

 

グリーンランドにある人口わずか80人のチニツキラーク村に、

デンマークから新人教師のアンダースがやって来る。

ところがアンダースは言語や習慣の違いで授業を進められず、村では考え方の相違によって孤立し、

過酷な自然に苦しめられる。

ある日、狩猟で学校を休んだ生徒の家を訪ねたアンダースは、

生徒の祖父母から生きるための知恵や哲学を教えられる。             (シネマ・トゥデイ)

 

 

シネスイッチ銀座で初日の初回に鑑賞。

世界最大の島、グリーンランドは、メルカトル図法だと、大陸みたいに大きく描かれるけれど、

地球儀で実際の大きさを見ても、やっぱり大きい。

で、北極圏だから寒い。

 

ここに教師として赴任してきたアンダース・ヴィディーゴは白熊みたいな風貌の29歳の青年。

赴任前の面接のシーンで

「家庭もしがらみもない今のうちにいろいろ挑戦をしてみたい」といい、

面接官から

「首都ヌークならここと同じような快適な生活ができる」といわれても

あえて80人しか住んでいない極寒のニツキラーク村をえらんだ骨のある青年なのでした。

 

「彼らは土地のことばをしゃべるけれど、あなたの仕事はデンマーク語を教えること」

「だからあなたが土地のことばを学んだりしないで」

「彼らがデンマーク語がしゃべれるようになることは、彼らのためになることなんだから」

「今までの経験でも、それで全く問題なかった」

 

彼の家は大きな農場で、

「旅にでて視野を広げいろんな体験をしたい」という息子に、不満げな父親。

「グリーンランドの住人はのんだくればかりだぞ」

 

氷山のすきまをぬって、鏡のような水面をボートが行き、やがて、マッチ箱のような家々が見えてきます。

ここに住んでいる人たちはイヌイット(正確にいうとカラーリット)でモンゴロイド系なので

ヨーロッパ人よりは、モンゴル人とか日本人によく似ています。

 

 

デンマーク語が堪能な村の青年ジュリアスが説明をしてくれるのですが、これが予想外にシビアで・・・・

①家に水道はないから、水は自分で運ぶしかない

②シャワーや洗濯はサービスハウスでできる

③家にはトイレの設備もなくて、週3で汲み取り屋がバケツの回収にくる

 

小学校での授業がはじまりますが、

子どもたちはぜんぜん集中せず、おしゃべりばかり。

それもグリーンランド語でしゃべるから、何をいっているかもアンダースはわかりません。

 

学校の用務員みたいなおばさんに愚痴をいうのですが、

彼女もデンマーク語をしゃべらず、話はまったくかみあいません。

「ここはデンマークじゃない」

「あなたは私たちのことをみくだしてるでしょ!」

彼女のことばもアンダーズにつたわったかも不明です。

 

子どもたちの大半が両親と離れて暮らしているのが不思議でその理由をたずねると

「実の親とわかれて、祖父母と養子縁組しているのはここでは珍しくない」

「実の親がアル中とかで、強制的に離されるケースもある」

「雇用がなくて仕事にありつけないからね」

 

学校を無断欠席している8歳のアサーの健康状態を心配して、家庭訪問をするアンダース。

ジュリアスの通訳つきで、彼の祖母に理由をきくと

「アサーは元気よ、じいさんと犬ぞりで猟にでかけてるから休んでるの」

とあっさりこたえる祖母におどろいて

「犬ぞりは楽しいけど、ちゃんと勉強しないと、中学に言って困るから」とアンダース。

「デンマーク流をおしつけないで!

必要なことはぜんぶじいさんが教える。アサーが立派な猟師になれるように」

 

ほとほとアンダースは困ってしまいます。

「授業中ふざけてばかりの子どもたちにもお手上げだけど、

保護者のほうがもっとたちが悪くて、約束は無視するし、勝手に休ませるし、

村中のひとから自分は歓迎されていないみたいに感じる・・・・」

そして、家の暖房が壊れたのに、

「部品がないから当分治らない」というジュリアスにもキレて、ケンカになってしまいます。

「君の責任で直せ!僕は政府から派遣されてきたんだぞ」

「君はここに何を期待してきたんだ?」とジュリアス。

 

「よりによってこんなクソ寒い田舎にきてやったのに・・・」

というアンダースの心のなかを見透かされてしまったようです。

 

 

アサーの家では、たくさんの子犬が産まれ、

「お前の犬だ」と、祖父は目もあかない子犬をアサーに抱かせます。

そして、皮ひもを噛んで柔らかくしながら形を整え、いっしょにハーネスをつくるのです。

 

次のシーンは、十字架に先導されて棺がそりで運ばれていくところ。

亡くなったのは、アサーの祖父でした。

 

アンダースは面接官にいわれたことを無視して、グリーンランド語を学ぶことにしました。

そして、授業も、カリキュラムをおもいっきり無視して、現役猟師のトビアスを講師に迎えて

猟師になるための授業をやったところ、子どもたちは目を輝かせていろいろ質問をぶつけてきます。

 

祖父を亡くしたアサーを心配するも、祖母はこの新米教師になかなか心を開いてくれません。

そこで彼は、ジュリアスとトビアス、それにアサーをつれて

犬ぞりで狩りの旅へと出かけることにするのです。             (以上あらすじ)

 

 

エンドロールで、

「アンダースはデンマークにはもどらず、今も村で教師を続けている」とテロップが出て、

ここで、アンダース役の青年が、なんとアンダース本人であることがわかります。

あとでサイトをみたら、どうも全員が本人役らしくて、

要するに「セルフ再現ドラマ」みたいな感じなんですけど、

死んでお葬式をあげたはずのアサーの祖父が生前の姿をできるはずないし・・・・

と思ったら、脚本家がいるから、この辺はフィクションなんでしょう。

生きてる人を殺しちゃうのって、ちょっとどうかと思いますけど(笑)

 

アンダースとアサーは本人っぽいな、と思いながら見てたんですが、

ジュリアスと祖母の二人はめちゃくちゃ演技が上手なので、絶対に俳優さんだとおもったんだけどな。

 

本作は映画作品としては「小品」で、完成度の高い作品とはいいがたいんですけど、

そこから伝わる迫力が半端ないんですね。

おそらく、脚本家が意図して書いたのは

「あなたはデンマーク語を教えればいい、それが彼らのためなんだから」

という面接官と

「必要なことは全部じいさんが教えるから学校は必要ない」

というアサーの祖母のせりふ。

 

この極寒の辺境の地に住む彼らが貧しさから脱却するために必要なのは教育。

まずはデンマーク語を学び言葉の壁を取り払うことで、雇用が生まれる・・・・

という先進国目線で「良かれと思って」アンダースは来てるのに、

思いっきりアウエイの洗礼を受けてしまいます。

 

それでも腹をたてて帰国せずに、現地語を学び、彼らの懐にはいりこんで

ここで生きていく決心をした彼の気持ちに沿うように

私たち観客の思いもだんだん変わっていくのです。

 

犬ぞりも、動物愛護団体なんかに「虐待」といわれて非難されてるので、

最初、ちいさな犬たちに鞭を当ててそりをひかせるなんて「かわいそう」としか思えなかったんですが

「ともに生きるためにそれぞれの役割を果たしている」ということが伝わって

ごくごく自然なことのように思えるようになってきました。

(最後の旅のシーンで、上り坂では人間もおりていっしょにそりを押すところがあったりして、納得です。)

 

何十㌔もありそうなあざらしを解体するのは日常風景で、

野菜がないから、生肉を食べることでビタミン不足を回避してる・・・というのも前に聞いたことがありました。

この解体作業も、最初は「グロい」としか思えなかったのが、

だんだん慣れてくるから不思議・・・・

 

一番忘れられないのは、アサーのおばあさんが昔話を話して聞かせるシーンで、

タイトルは忘れたけれど、

「少年は勇気をふりしぼって老婆の首をちょんぎりました。めでたし、めでたし・・・」

みたいな話を8歳のアサーにしちゃうんですよ。

日本だって、ヨーロッパだって、けっこう残酷な昔話のラストは多かったけど、

「教育上問題だ」と全部骨抜きにされちゃってるのは、いかがなものか?とずっと思ってた私でさえ

ちょっとひいてしまうような、残酷さMaxのおばあちゃんのお話でした。

 

それから猟師のトビアスが子どものとき、両親と5か月旅をしたとき

吹雪にあって8日間、食料はあざらしの古い革の鞭だけで生き延びた」

というのもショッキングでした。

 

 

映像も、そんなに特殊なカメラを使っているわけでもなさそうなんですけど、

すごい説得力です。

晴れた日の空の抜け感がすごい。(映画館なのに)まぶしくて目があけられなくなるくらいです。

カタバチック風が嵐になり、急遽作った氷のドームのなかで一夜を明かすところとかもリアルで、

けっして「冒険家」でもなんでもない彼らの、ふつうに生きる術なのです。

 

オーロラも、観光地でみるようなはるか彼方にうっすら光って喜ぶレベルじゃなくて

頭上まで広がるからむしろ怖いくらい。

ホエールウォッチングも、人気の観光イベントですけど、

いつ沈んでもおかしくないようなカヤックのすぐそばをクジラたちが潮をふいて泳いでいくから

これもちょっと命の危険を感じてしまいました。

 

実は、前の日に私が予約していた夏休みの旅行の催行中止メールをもらってしまい、

それにかわるプランを検索していたところで、

「絶景」とか「世界遺産」とかにチェックをいれてあれこれ考えていたのです。

「お手軽に安全に美しいものを見たい」という自分の浅はかさが露呈してしまって、

本当に心から恥ずかしいと思いました。

 

ただ、グリーンランド観光というのもあって、デンマークやアイスランドからは飛行機も飛んでいます。

ちょっと変わり者の金持ちの観光客がお金を落としていくのはグリーンランドにも好都合なんでしょうが、

そこそこいいホテルにとまって、オーロラにきゃーきゃーいって、

帰ったら、自慢げにブログを更新するんだろうな?なんて思っちゃったりして・・・・

 

アンダースももともと旅好きの青年で、都会育ちのひよっこではないし、

キャンプも慣れていて、なかなかサバイバル能力もありそうなのに、それでも挫折してしまうくらい

現地に溶け込むのはたいへんなこと。

グリーンランドに限らないけれど、

どこかに行ったら、そこに住む人の気持ちを分かってあげられる人になりたいと強く思いました。

 

ところで、私は

「グリーンランドはデンマークの一部」と思っていたんですが、帰って調べたら、それは昔の話。

1979年に自治政府ができて、独立を目指しているとか。

たしかにデンマークとは地理的にも遠いし、文化も違うけれど、

そうなったら、アンダースの立場はどうなっちゃうんでしょう?

 

いや、それより心配なのは、グリーンランドの豊富な地下資源を狙って中国が触手を伸ばしており、

すでに新空港プロジェクトを受注したニュースを知って、

そっちのほうがずっと心配になりました。

ほかのアジアの国の二の舞にならないように、

がんばれ!グリーンランド!


ホットギミック ガールミーツボーイ

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映画 「ホットギミック ガールミーツボーイ」 令和元年6月28日公開 ★★★☆☆

原作コミック「ホットギミック」相原美貴 別コミ 小学館

 

 

高校生の成田初(堀未央奈)は、優しい兄の凌(間宮祥太朗)、元気な妹の茜、

そして両親と一緒に生活していた。

ある日、彼女は同じマンションに住んでいる幼なじみの橘亮輝(清水尋也)に弱みを握られてしまう。

彼からの命令に振り回される中、

数年前に引っ越したもう一人の幼なじみで人気モデルの小田切梓(板垣瑞生)が戻ってくる。

やがて初と梓は恋人同士になる。                                 (シネマ・トゥデイ)

 

見た目も成績もぱっとしない平凡な女子高生が、人気モデルとなった幼馴染みに接近され

ドSのがり勉君に拘束され、おとなしいクラスメートからも熱い視線を送られ、

実は血のつながってない兄からも猛烈ラブコールをもらっちゃう・・・・・

という、いきなりモテキ到来!みたいな流れで、少女コミックにありがちな話です。

 

冒頭は、早熟な中学生の妹に頼まれて妊娠検査薬を買いにいったハツミは

そのことをクラスメートで同じマンションに住んでいるリョウキに知られてしまうところから。

妹のだともいえずモジモジしていると

「みんなにしられたくなかったら、オレの奴隷になれ」といわれ、

いわれるままにカバンを持ったり、キスまで強要されても、いいなりのハツミ。

 

ハツミの初恋の相手は幼馴染みのアズサで、

彼はファッション雑誌の表紙を飾るほどの人気モデルになっていましたが、

急に戻ってきて同じクラスになります。

女子たちがキャーキャーいうなか、アズサはハツミにぐいぐい迫ってきて、

同僚モデルたちにも自分のカノジョだから、と紹介し、ハツミはうれしくてたまりません。

いつも甘い言葉を耳元でささやくアズミにメロメロになってしまい、

睡眠薬入りの酒を飲まされて意識を失いかけます。

たまたまその店は兄のシノグのバイト先だったため、兄に救われて帰宅できましたが、

そのあと、アズミからの電話に出て、いわれるままにセルフヌードを送信してしまいます。

 

アズミはその動画をシノグに転送してきます。

アズミのマネージャーのリナが間にはいって、拡散されることはなかったものの、

ハツミは大きなショックを受けます。

 

アズミは自分の母がハツミの父と浮気をしていると思い込んでいて、

その復讐のためにハツミを傷つけたのだといいますが、

シノグの調査で、それは勘違いだったことがわかります。

 

一方、今まで暴言しか吐かなかったリョウキが

「奴隷から彼女見習いにしてやる」

「お前はバカだけど、宇宙一見込みのあるバカだ」とか、

だんだん優しく、というか、前よりはずっとマシに接するようになって

ハツミの気持ちはリョウキに傾いていきます。

 

兄のシノグが養子だということをハツミは知らなかったのですが、

兄は血のつながらない兄妹だということを知ったうえで、ハツミを妹以上の思いで見ていたことを知り、

エレベーターの故障で閉じ込められたときに告白され

家をでて一人暮らしをはじめたシノグは、いっしょに暮らそうともちかけます。

 

アズミの母の浮気相手が自分の父親だと知ったリョウキは、かなり弱っており

それを慰めるハツミ。

「一緒にいるとこの世界が自分のものになったような気がする」

「私はずっとバカのままでいたい・・・」

                                                  (以上あらすじ)

 

 

好きなクラスメートに胸をときめかせたり、心ないうわさに胸を痛めたり・・・

学園もののドラマはその程度と思っていたら、

本作では、具体的なセックス描写はないものの、かなり性に踏み込んでいて、

まだ高校生なのに、結婚して子供をつくることくらいまで視野に入っているのには驚きました。

親の不倫でできた子とか、不妊治療とか、セルフポルノとか、子どもが欲しいとか、

現役アイドルがヒロインをつとめるような内容じゃないんですよね。

 

12巻もあるコミックを2時間にまとめているので、

全然タイプの違う3人と全員、けっこう簡単にキスしちゃうヒロインは

ずいぶんと尻軽女というか、「ストライクゾーンが広すぎ!」と思ってしまうんですが、

ほんとはもっと時間経過があるんでしょうかね?

 

いや、尻軽というのは言い過ぎで、

ハツミは嫌と言えない優しい性格で、ついつい男の言いなりになってしまう・・・

そんな女の子です。

ここでは大ごとにはならなかったけれど、お酒を飲まされてレイプされたって、

セルフポルノを拡散されたって、ぜんぜんおかしくないケース。

母親の立場でいわせていただくなら、長女がハツミみたいな子で

二女がアカネみたいな早熟な中学生だったら、ちょっと生きた心地しないですよ。

 

私は昔から、人のペースにあわせるのが苦手というか、嫌いだったので、

だから友達いなかったんですが、言いなりになることはないから、

おかげさまでこんな危うい経験は一度もありませーん。

そういえば、ハツミも同性の友だちがひとりもいなかったけど、そういう設定だったのかな?

 

冒頭から細かすぎるカット割りとか、毛穴までみえそうなドアップの画面とか

ちょっと落ち着かなかったんですが、慣れてくると、気にならなくなりました。

「エリーゼのために」「パッヘルベルのカノン」「G線上のアリア」「悲愴」なんかがバックに流れるんですが

画面の切り替えと音の入れ方のタイミングでこちらの思考をコントロールされているような気にもなりました。

ストーリーはけっこうグダグダでも

音と視覚のテンポで、なんか、いい映画を見たような錯覚がするんですけど・・・・

 

それから、映画版の方は湾岸エリアが舞台になっていて、

建設途中の選手村とか、タワーマンションとかが背景に広がります。

この辺りは建設ラッシュで、あちこちのビルの上には大きなクレーンが林立しています。

私は「途中までできてるスカイツリーの写真」とか、建設途中のものに萌えてしまうので、

この貴重なシーンを映画の画面に残してくれてるのがとてもうれしかったです。

それに、高校生のこの時期はまさに「建設途中のビル」みたいなもんですからね。

 

彼らの住んでいるマンションは東雲だから、有楽町線沿線かと思ったら、でてくる車両はゆりかもめでした。

なので、全く土地勘なくて残念ですが、駅は新豊洲か市場前とかでしょうか。

シノグの通っている一橋大学のほかには、

渋谷のスクランブル交差点が何度も出てきましたが、

高校生の行動範囲としてはずいぶんと広いような気が・・・

 

ヒロイン役の乃木坂46の子は初めて知りましたが、

男性陣はけっこう実績のあるメンバーをそろえていて期待していました。

妹役の桜田ひよりちゃんは、若手で一番実力のある子だと個人的に思っていますし。

全体的にセリフを畳みかける感じで、あとからいっぱい編集しているので、

上手いのか下手なのか全然わからないのが、いいんだか悪いんだか・・・・

 

リョウキの清水尋也、アズサの板垣瑞生、ともに5年前の「ソロモンの偽証」メンバーです。

このころからオーラがありましたものね。

 

 

 

(映画とは無関係ですが)下は7年前の「悪の教典」の生徒一覧です。

この中からも一線で活躍中の俳優さんが何人かいますね。

何年もたってから、こういうのを見て、いろいろ思いめぐらせるのも映画の楽しみです。

 

これから観たい映画(109)

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6月公開

× 「誰もがそれを知っている」  

▲ 「エリカ38」 → 感想UP

▲ 「パドマーワト 女神の誕生」 → 感想UP

▲ 「ガラスの城の約束」 → 感想UP

▲ 「アマンダと僕」 → 感想UP

▲ 「COLD WAR, あの歌、2つの心」 → 感想UP

▲ 「凪待ち」 → 感想UP

〇「ニューヨーク 最高の訳あり物件」 (シネスイッチ)

 

 

7月公開

〇  「ゴールデンリバー」 (TOHOシネマズシャンテ)

〇  「ワイルド・ライフ」 (恵比寿ガーデンシネマ)

〇  「Girl/ガール」 (ル・シネマ、武蔵野館)

▲ 「サマー・フィーリング」  → 感想UP

▲ 「シンク・オア・スイム」 → 感想UP

▲  「存在のない子供たち」  これから書きます

〇  「ブレス あの波の向こうへ」 (シネマカリテ)

 

8月公開

〇8/9 「シークレット・スーパースター」 (シネリーブル)

◎8/10 「カーマイン・ストリートギター」  (シネマカリテ)

〇8/16 「命みじかし恋せよ乙女」 (TOHOシネマズシャンテ)

〇8/16 「ホットサマーナイト」 (シネリーブル、恵比寿ガーデンシネマ、新宿ピカデリー)

〇816 「永遠に僕のもの」 (ヒューマントラスト有楽町・武蔵野館)

◎8/23 「ロケットマン」

〇8/24 「ジョアン・ジルベルトを探して」 (恵比寿ガーデンシネマ、カリテ)

〇8/30 「引っ越し大名!」

◎8/30 「トールキン 旅のはじまり」 (シネリーブル・TOHO日比谷)

〇8/30  「ガーンジー島の読書会」 (TOHOシネマズシャンテ)

 

                                           〇 観たい作品

                                                    ◎ 絶対に観たい作品

                                                    ▲ すでに鑑賞済

                                                    × 23区内で上映終了

 

 

夏休みも後半に入ると、ようやくシネコンもアニメやアメコミ作品ばかりでなくなるので、

観たい作品もたくさん書けるようになりました。

(チラシのない分は入手でき次第追加します)

 

カーマイン・・・とジョアン・ジルベルトは、ギターに詳しい夫を誘って、観たいと思っています。

湾生回家

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映画 「湾生回家」 平成28年11月12日公開  ★★★☆☆

 

 

敗戦後、台湾から日本に引き揚げてきたとき3歳だった72歳の清水一也さんは、

当時の記憶はほとんどないものの湾生たちの存在が薄れていくのを不安に感じている。

88歳の冨永勝さんは、古い友人を捜しに幾度も台湾に足を運んだが、

やっと見つけたときにはすでに友人は他界していた。

78歳の松本洽盛さんは、当時住んでいた家を捜しに何度も台湾に行き… (シネマ・トゥデイ)

 

酒井充子監督の台湾三部作もそうでしたが、日本全国で公開されるも上映館はごくごく限られ

(都内だと、酒井さんのはポレポレ、本作は岩波ホール)DVDになってもレンタル禁止で

なかなか観たくてもみられない状況なんですけど、なんとか今になって見られました。

 

酒井さんの三部作は 

台湾人生」 (平成21年)

台湾アイデンティティ」 (平成25年)

台湾万歳」(平成29年)

 

この三部作に登場するのは、台湾の日本統治下(1895~1945年)に日本語教育を受けた台湾人の人たち。

植民地時代を古き良き時代と懐かしく思い出してくれる「日本語世代」のお年寄りたちです。

 

対して、本作は、その時代に台湾で生まれ、終戦で強制的に日本に帰国させられた日本人が

戦後70年以上たって、故郷の台湾を懐かしむ・・・・というようなドキュメンタリー映画です。

 

ほとんどが日本語なんですけど、どちらかというと、台湾の人をターゲットにしている感じで、

本国ではロングランの大ヒットをしたそうです。

 

湾生というのは、戦前の台湾で生まれ育った20万人ほどの日本人を指す言葉です。

彼らは日本が戦争に負けたことで、中華民国政府の方針で

ほとんどの財産を捨てて日本に強制送還させられました。

 

 

◇清水一也さん (昭和18年生まれ)

引き揚げ時はわずか3歳だったので、記憶はないけれど、

自分のルーツである花蓮を定期的に訪れています。

 

◇富永勝さん (昭和2年生まれ)

花蓮では台湾人やタイヤル族の子どもたちといっしょに遊んだことが懐かしく

何度も訪台するも、訃報を聞かされてショックを受けることばかり。

 

◇家倉多恵子さん (昭和5年生まれ)

台北生まれでその後花蓮へ。

女学校時代に終戦を迎え、日本で暮らしている間は自分が「異邦人」としか思えず、

花蓮へのルーツをたどる旅で心の平和を得ることができたといいます。

 

◇松本洽盛さん (昭和12年生まれ)

家倉さんと同様、自分の生まれ育った花蓮でロングステイを続け、永住も考えているといいます。

 

◇竹中信子さん (昭和5年生まれ)

台北生まれ、その後、蘇澳へ。

今も旧友たちとの交流があり、執筆活動もしています。

 

 

そして、この5人のほかに、湾生でありながら、台湾に残った片山清子さん。

彼女の人生は、自分の意志とは無関係に家族や時代に翻弄された人生で、

今は寝たきりとなって、それを振り返る術もないのですが、

夫や娘、日本語を勉強中の孫娘の努力で、この映画の中で、解き明かされていきます。

ここのパートはNHKの「ファミリーヒストリー」みたいです。

 

 

「湾生回家」 (Wansei Back Home)

ここでの「家(home)」というのは、見ず知らずの故郷である日本、ということでしょうか。

これはなんともやるせない言葉で、

そのまま四字熟語にしたいくらいの普遍的な単語に見えます。

 

一番年長だった富永さんでさえ、当時は未成年だったから、

他の人たちは、当時何もわからないまま、無理やり台湾から引き離されて帰国させられたわけです。

たいていの人たちは「台湾人や漢人やタイヤル族の子どもたちと分け隔てなく遊んだ」という記憶なのに

後になって、「日本人は特権階級だった」と聞かされ、ショックを受けたりしてるんですね。

ただ、インフラ整備や教育環境の整備などで、台湾の人たちは日本人に感謝をしているというのも

紛れもない事実で、その辺は、あの国やあの国でも同じことをしてきたはずなのに

全然受け取り方が違うのは、どこが違うんだろう?

行きつくところ国民性なのかな? 

本当に連日の反日運動の報道には胸が痛くなるというか、胸糞が悪くなるというか、

そういう時に台湾の話を聞くと、かなり癒されますね。

 

唱歌「ふるさと」に出てくるような故郷を持っている日本人は、ほとんどいないと思いますが、

(作中、この歌が何度となく流れますが)

湾生の人たちは紛れもなくこの歌詞のような思い出を懐かしんでいて、むしろ羨ましくさえあります。

 

ただ、正直なところ、映画としてはちょっとビミョーな感じでした。

 

① 「台湾と日本」といってるわりに、花蓮に一極集中しているのが

ドキュメンタリーとしては、なんか手抜き感が拭えない。

 

② 途中、なんどか回想部分がアニメになるんですが、これがただイメージを表現しただけで、情報皆無で、

ほんとに要らないです。

頑張って昔の映像を探してほしかった。

 

③ 5人の人たちのエピソードが順番に紹介され、最後になって、この方たちが

「日本では体調最悪だったけど、台湾にきたら治った」

「もう死ぬまでこっちで暮らしたい

とか、台湾礼賛してる部分だけを抜き出して編集するのは

台湾の人は気持ちいいかもしれないけど、映画としてはどうよ?

 

④ 片山清子さんのパートは、ほかの5人とは事情が違うし、本人がしゃべれないから取材もできず、

これは混ぜこぜにしないほうがすっきりするような・・・

 

清子さんは日本人の片山千歳という母親が育てきれずに、

今の夫とゆくゆくは結婚することで親戚に養女にもらわれてきたので、

終戦後も(母は日本に帰国したけれど)台湾に残って結婚し、生きてきたのです。

瞼の母である千歳さんのことを調べたいと家族はずっと思ってきたけれどかなわず。

本作の取材ディレクターたちの後押しで、

今回やっと生前の彼女を知る人やお墓を見つけることができました。

 

日本も台湾も戸籍がしっかりしているから、手続きをとれば、かなり昔の戸籍でも入手することができ、

「その人が確実に生きた証」を紙媒体で手にできることは素晴らしいですよね。

 

日本統治時代を自分の言葉で語れる世代は、今や90代以上になってしまい、

これからこういう映画を撮ることはますます困難になりつつあります。

 

その時代をしらない世代が偏った考えを次の世代につないでいくような、

愚かしいことがこれ以上起こらないことを心から望んでいます。

グランドシネマサンシャイン池袋

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7月19日に都内最大規模の12スクリーン、2500席のシネコン

「グランドシネマサンシャイン」がサンシャイン通りの旧シネマサンシャインの後継館として(?)誕生しました。

(当初は存続するような話だったんですけどね)

 

家から近いから非常に関心はあったものの、夏休み中のオープンで、

どこのシネコンでも扱っているめちゃくちゃかわり映えしないラインナップ

(天気の子・ダイナー・トイストーリー4・ペット2・アルキメデスの大戦・トーキョーグールSなど)でした。

次世代IMAXシアターとか4DXとかドルビーアトモスとか

そういうのに興味ある人だったらとびつくんでしょうけど、

私はさっぱり、でした。

 

今日、たまたま池袋保健所にいく予定があったので、ちょっと(外観だけ)見に行きました。

 

 

ここは2014年まで、ボウリング場やバッティングセンターなどの入っていた「スポルト」だったんですが、

ずいぶん長いこと工事をしていた印象。

 

最初はこんな感じで聞いてましたから・・・・けっこう時間かかりましたね。

 

映画館はこの建物の4階から15階までを占めるのですが、

ロビーまで上がるのに、そこそこ長いエスカレーターを3回乗りつぎ、

そこで発券して、またシアターまでちんたらエスカレーターを乗っていく方式で

けっこう時間かかりますよね。

 

あと、公式サイトには、

JR山手線等「池袋駅」徒歩4分

と書いてありましたが、これは信じたらだめです。

改札を出て、地上に出て、信号待ちして、人ごみのなかを歩いていったら

迷わなくても10分以上かかるし、そのあともエスカレーターを何本も乗りつぎして行くわけで

最低でも20分はみた方がいいと思います。

 

今日はロビーまでだったので、ちゃんと映画を観てまた感想を書きます。

とはいえ、私の見るような映画は今月だと「ロケットマン」くらい。

これは近所でもやってるので、いつになったら観られるか、ちょっとわかりませんが・・・・

 

 

 

ところで、池袋のもうひとつの巨大シネコン、TOHOシネマズ池袋の入る「ハレザ池袋」の

一番高層のオフィス棟も、いよいよ完成が見えてきました。

中池袋公園側からみるとこんな感じ。

あの迷路みたいな巣窟みたいなボロっちい建物だった豊島区役所がこんなに変身して

なんか、感慨無量です。

 

 

 

 

TOHOシネマズ池袋は、ここの2~6 階に 10 スクリーン、約 1700 席というから、

グランドシネマサンシャインよりはひとまわり小さめですが、

一番高くても6階というのがいいですね。

TOHOシネマズ新宿が3階~6階だから、そんな感じになってくれれば

ゆったりしてますね、

 

多分ラインナップは(グランドシネマサンシャインと)同じようなもんでしょうけど、

TOHOシネマのポイントマイレージが共通に使えることを考えたら

(サンシャインは都内では平和島だけ)

私はこっちで見るかな?

 

それにしても、駅からビミョーに離れたところに、シネコンを2つも作って、

共倒れにならないのか、そっちのほうが心配です。

新文芸坐やシネリーブルあたりは、観客層が違うから大丈夫でしょうけど、

HUMAXとかは、東宝系のシネコンむけ作品が多いから、けっこうキツそうですよね。

同じ系列だったシネパトスみたいな(文芸座とかぶらないような)名画座になってくれたら

個人的にはうれしいです。

 

新宿でも日比谷でも、心配になるほどシネコンが乱立しても、ちゃんとお客が入ってるようなので

池袋もそうなるんでしょうかね?

これからを見守りたいとおもいます。

ブレス あの波の向こうへ

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映画「ブレス あの波の向こうへ」 令和元年7月27日公開 ★★★★☆

原作本 「ブレス:呼吸」 ティム・ウィントン 現代企画室

(英語 字幕翻訳 小路真由子)

 

 

 

オーストラリア西南部の街で暮らす内向的な少年のパイクレット(サムソン・コールター)は、

友人のルーニー(ベン・スペンス)に引っ張られるようにして楽しい日々を過ごしていた。

ある日彼らは、サンドー(サイモン・ベイカー)という謎めいた男と出会い、

サーフィンの手ほどきを受けたのがきっかけで

彼とその妻イーヴァ(エリザベス・デビッキ)の家を訪ねるようになる。

やがてルーニーは、サンドーの指導で危険な波に挑む。                  (シネマ・トゥデイ)

 

ビーチボーイズの音楽にのったノリノリのサーフィン映画なんかを期待していったら、退屈するかも。

オーストラリアを代表する文学作品の映画化で、サーフィンを通してある少年の成長を描きます。

「ひと夏の経験」というより、人生をトータルに考えられる作品で、

むしろ中高年向け(原作者は1960年生まれ)でしょう。

「とても無意味で美しい」ということばが胸にささりました。    (詳細はのちほど)

 

 

喜望峰の風にのせて

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映画「喜望峰の風にのせて」 平成31年1月11日公開 ★★★☆☆

(英語 字幕翻訳 稲田嵯裕里)

 

 

 

1968年のイギリス。

ヨットでの単独無寄港世界一周を競うゴールデン・グローブ・レースが行われ、

経験豊富なセーラーたちに交じってビジネスマンのドナルド・クローハースト(コリン・ファース)も参戦する。

レース用のヨットを所有していないドナルドの挑戦に、スポンサーが名乗りを上げ、

ドナルドはスタートするが、海上では自然の猛威と孤独に苦しめられる。  (シネマ・トゥデイ)

 

1967年5月

プリマス港からヨットで単独世界一周を成し遂げた

サ・フランシス・チチェスターの祝勝会のパーティー会場。

ドナルド・クローハーストは、船に乗せて位置確認のできるナビゲーターを売るセールスマンで

会場に来ている人たちに(息子たちも巻き込んで)自社の製品の売り込みをかけますが、

なかなか売れなくてすごすご引き返します。

 

翌年、ヨットによる単独「無寄港」世界一周を競うゴールデン・グローブ・レースが開催され、

経営難の航海計器会社をなんとかするため、5000ポンドの優勝賞金目当てに

素人のドナルドも参戦することにします。

勇気あるアマチュアの果敢な挑戦にスポンサーも現れ、出航を目指します。

 

妻と子供たちは純粋に応援してくれますが、自前のヨットすらもっていないドナルド。

思ったようには資金は集まらず、それ以前にヨットマンとしてのレベルや経験値不足が心配ですが、

周りの期待の大きさに引き返すこともできずに、見切り発車してしまうんですね。

 

「何の実績もないビジネスマンが今まで誰も成しえなかった偉業に挑戦する」

なんともすごい野心にメディアは食いつきます。

数々の困難と闘いながら、見事世界一周を達成し、美しい妻や子どもたちと抱き合って・・・・

みたいなラストを想像してしまいますが、

本作はそんなサクセスストーリーではありません。

 

ドナルド・クローハーストは実際の人物で、けっこう有名な話らしいのですが

これは知らないで見た方がいいでしょうね。(私も知りませんでした)

 

海洋冒険ものとしては「コンティキ」とかが頭に浮かびますし、

海で遭難して、結果的に一人で長期間漂流する話も、いろいろ映画でみたことがあります。

(「白鯨との闘い」「ライフ・オブ・パイ」とかいろいろ・・・)

 

でも本作は嵐や飢えを戦う「サバイバル」ではなく、ゲームみたいなものなので、

ヤバい!と思ったら棄権すればいい話なんですね。

 

ドナルドは出航してすぐに、とうていゴールは望めないことを実感し、

勢いで出発してしまったことを深く悔やみます。

ただ自分を心から信じて応援してくれる息子たちや、

出資してくれたスポンサーの圧を考えたら、とても棄権なんてできず、

嘘の航海記録をでっちあげることを決意します。

喜望峰までも到達できない状態で、ブラジル沖をふらふらしながら時間をつぶして

ビリでゴールすれば記録は調べられないし、とりあえずなんとかなるだろうと・・・・

 

ところが、ほかの出場者たちは次々に棄権して戦列を離れてしまい、

消去法で、順調に航海を継続している「はず」の素人セイラーの存在が注目されます。

無事にゴールしたのはロビン・ノックス・ジョンストン一人だけ。

ただ、出発は別々なので、ドナルドの送っていた捏造した記録のほうが速さでは上回っており、

連日家族のもとに取材が押しかけます。

 

もはや、ドナルドは帰還することも、棄権することもできなくなってしまい、

自殺することで結末を迎える・・・・・そういう救いどころのない結末でした。

 

 

ゲームでズルするひとはどこにもいるものですが、

ここでの「航海記録の捏造」は絶対にやってはいけないこと。

もっと早くにバレてくれればここまで引っ張らなかったのに、

当時はGPSとか、まだなかったんでしょうかね?

ドナルドは一度密輸を疑われてどこかの警察に連れていかれて

完璧に岸に上がってるんですが、それもバレないのがよくわからない。

 

そもそもドナルドは人をだますような詐欺師体質ではないし、

家族やスポンサーの期待に応えようとするまじめな男なんですね。

本当に気持ちがよくわかるし、

だから、どんなに苦しかったかと思うと、やりきれないです。

誰も相談する相手もなく、海の上でひとりきりで思い詰めていたら、精神を病んでしまうはずです。

 

彼は(捏造じゃなくて本当の心情をつづった)日記もつけていて、

これも海に投げ捨ててしまえばいいものを、船に残したから、記録捏造の証拠となり、

一方で、彼が何を考え何におびえ何に苦しんでいたかも、すべて残されたわけです。

 

英雄の帰りを待つはずの家族は一転「嘘つきの負け犬の家族」となってしまいました。

今までさんざん持ち上げていたマスコミは大挙してドナルドの妻を取り囲みます。

「夫は自ら命を絶ったかもしれないけど、背中を押したのはあなたたちよ」と言い放つ妻。

 

その後の家族のたどる道を考えると胸が痛みますが、

ただひとりゴールしたジョンストンが賞金を遺族に差し出したことを聞いて、少しはほっとしました。

 

この話自体は一般的な話じゃないですが、

これに近いことは日常よく起こるような気がします。

 

「よく考えたら嘘だとわかりそうなことを見破れずに、周囲が盛り上がって

本人が嘘を撤回することもできない状態に追い詰めてしまう」

それに近いこと(具体的には書かないけれど)私にも経験あります。

 

そもそもはドナルドが身の程知らずの挑戦をしたこと、

そして記録を捏造したのは一線をこえてしまっているけれど、

命まで失わなければならないほどの重罪だったのだろうか?と悩みます。

 

「そもそもは最初に嘘をついたのが悪い」

ということばを、聞いたことあると思ったら、あの吉本闇営業問題でしたね。

(ここから、激しく脱線します)

 

反社会的組織のイベントに出演している写真が週刊誌に抜かれ、

ただ「ギャラはもらっていない」といった本人のことばを信じて、吉本興業はスルーしたものの、

あとから「実はもらっていた」といわれ、契約を解除した、という、アレです。

 

「吉本が責められてるけど、そもそもは最初に嘘ついたのが悪い」とみんな口をそろえますけど、

進行台本もあるちゃんとしたイベントで、チャリティでもないのに、大物芸人がお金もらってなかったら

(よっぽどの親密な関係なわけで)そっちのほうが問題だと、素人の私でも思うのに

吉本興業がこんな嘘を見抜けないわけがないじゃないですか!

 

たとえば、古物商は偽物つかまされても被害者になれないですよね。

プロは「嘘を見抜く」ことが求められているのです。

 

ほんとは嘘っぽいと思いながらも、吉本はその確認を怠たって責任逃れし、

メディアは情報を垂れ流し

「最初についた嘘が悪い」とどこまでも追い込まれていくのは、正直納得いかないです。

 

このヨットレースもですが、不確実な情報を(おかしいなと思いつつ)垂れ流しして盛り上がり、

あとで嘘だとわかって、「夢を与えられたと思ったら、とんだ嘘つきだった」と突き落とすのは

今も昔もマスコミのやり口ですね。

 

嘘だとわかっても「やさしい心で受け流す」のではなく

「最初にきっちり訂正させる」のが真のやさしさで、

「人の嘘や間違った情報は、小さいうちに摘み取ることが絶対に大事」だと・・・

なんか映画からそれてしまいましたが、

これからの私の人生はそれでいこうと思いました。

ワイルドライフ

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映画「ワイルドライフ」令和元年7月5日公開 ★★★★★

(英語 字幕翻訳 牧野琴子)

 

 

1960年代。

ジェリー(ジェイク・ギレンホール)一家は、カナダとの国境近くにあるモンタナ州の田舎町へとやってくる。

14歳の息子ジョー(エド・オクセンボールド)は、ジェリーがゴルフ場で働き、

主婦の母ジャネット(キャリー・マリガン)が家事をこなす姿を見て、

新たな生活が軌道に乗り始めたことを実感する。

ところが、ジェリーが仕事をクビになって家族を養うために山火事を食い止める仕事に就き、

ジャネットとジョーも働くが、生活は安定しなかった。                    (シネマ・トゥデイ)

 

1960年 モンタナ州

家の前でラグビーの練習をする親子。

彼らは最近アイダホ州から引っ越してきたブリンソン一家で、

夫のジェリーはゴルフ場で働き、妻のジャネットは専業主婦、

一人息子のジョーはちょっとおとなしそうな14歳。

元教師のジャネットが勉強をみてやったり、教育にも熱心そうな平凡な家庭だったんですが・・・

 

ことの発端は、ジェリーがなにかのトラブルで、突然ゴルフ場をクビになってしまったこと。

たまたまその時父の職場に来ていたジョーも大きなショックを受けますが、

ジェリー本人のプライドもズタズタです。

ジェリーが客と親密になりすぎたのを良く思わない上役がいたようで、

別に彼が無能だといわれたわけでもないようですが、

2週間働いて、わずか80ドルの給料というのは失礼だし、経済的にも暗雲がたちこめてしまいます。

 

「元気出して!あなたなら引く手あまたよ」

ジャネットが元気づけますが、すっかり酒を手放せなくなってしまったジェリー。

そこへゴルフクラブからの電話をジャネットが受けます。

「誤解があった、戻ってきてくれ、ですって!」

「明日から復帰よ」

喜びにわくジャネットとはうらはらに、

「あんな連中まっぴらだ。戻る気はない」とジェリー。

 

仕事探しはするものの、プライドがじゃまするのか、気に入る仕事がなかなか見つからず、

日々の生活にも困る前になんとかしようと、ジャネットが恐る恐る提案をしてきます。

「私がパートにでようかしら」

「街にもなれるし、友だちもできるし・・・」

 

ジャネットは街にでて職探しするのですが、断られても食い下がり、

なんとか「YMCAのプールの指導員」の職をみつけてきます。

 

ジョーもアメフトの部活をやめて、

放課後に「ハック写真店」でアシスタントのバイトをして家計を手伝うことに。

 

ジョーが家に帰ると、両親が大げんかをしています。

例年を上回る大規模な森林火災がすぐそばまで迫っており、

それがこの地の一番の心配事となっているのですが、

ジェリーは志願して消防団に入ったといい、

これこそが男の仕事だ!と張り切っているのですが、

ジャネットは、「時給1ドルで命まで投げ出すの?」と大反対しているのです。

 

消火作業の仕事は何か月も家を空けることになるのですが、

ジョーは反対を押し切って出て行ってしまい、母にかわってジョーが父を見送ります。

「心の声が『何かしろ!』といっているんだ」

「雪がふるまでには帰る」

ふたりはハグしてキスして別れを告げます。

 

父のいない母子家庭。

「こんな寂しいところに置き去りだなんて、引っ越すんじゃなかった・・・」

ジャネットは愚痴をいいながらも、せっせと仕事にでかけ、

服に気を使い、美しくなっていく母を、ジョーはじっとみています。

 

「水泳教室やめて、もっと稼ぎのいい仕事にするわ」

「この家は広すぎるから、小さい家に引っ越すかも」

 

そしてある日、家にかえると、見知らぬ中年男が家にいて、母と親し気にしています。

「ミラーさんは水泳教室の生徒さんなの」

「自動車販売会社をやっていて、ここでやとってもらうかも」

 

母が落ち込んでいるよりは楽し気にしてほしいけれど、

ちかごろでは家事もおろそかになり、化粧も濃く、タバコも吸い、

父にかわってジョーがトイレ修理をしたりしても、全然気づいてもくれません。

 

ある日、ジャネットはジョーを誘って、父たちのいる山の方へと車を走らせます。

消防団のキャンプ周辺は煙がたちこめ、山を見上げると、時折赤い炎がたちのぼり、火の粉がふってきます。

そして、ゴーッという恐ろし気な音。

「この炎が彼を駆り立てるのね。こんなの魅了されるなんて、私には理解できない」

 

そしてまたある日、学校から帰ると

「きょうはミラーさんの家でディナーに誘われている」といわれ、いっしょに車に乗せられます。

ウォーレン・ミラーは、妻と別れていて、人当たりのいい中年紳士ですが、

母との関係が、ジョーは気になってしかたありません。

 

自分を連れてくるくらいだから何もないと思いたいけれど、

ミラーよりもむしろ母の方が色目を使い、誘惑しているようで、

それまでかかっていたモーツアルトのピアノソナタや声楽曲を

「シケた音楽ね」とダンス曲に変えて、チャチャチャを踊りだす母。

酔っ払った母はハゲの中年オヤジと抱き合い、キスを交わし

その後も夜中に家にやってきて関係をもっていることも気づいてしまいます。

 

そして初雪が降った日、約束通り父のジェリーが帰ってきます。

「山火事はほぼ消えた」

「森林局の仕事が決まった。ロッキー山脈の東だ。ジョーの部屋もあるぞ」

するとジャネットは

「私からも知らせが。自分用のアパートを借りたの」

「ミラーと暮らすのか?」

「川のそばに住みたかっただけど」・・・・

 

ジャネットと話しても埒が明かないと思ったジェリーは、息子のジョーへの尋問がはじまります。

「奴の家に行ったのか?」

「うちにも来たのか?」

「何の用で来たのか?」

ジョーは言葉を選んでなるべくあたりさわりなく答えるのですが、

深い関係になっていると悟ったジェリーは、車にガソリンを積んでミラーの家へ。

ジョーの見ている前で、ガソリンを撒き火をつけます。

 

怖くなったジョーは走って逃げだし、さまよったあげく、カスケード郡の警察署へ。

ところが、ジェリーは逮捕はされていませんでした。

 

家に帰ると、冷静になった父と母がおり、

「ミラーと話し合って、告訴はされないことになった」

「ぼくら家族はどうなるの?」

「うちはどうなるの?」

 

そして何年か後・・・・

ジョーは父ジェリーとくらしており、ジェリーはセールスの仕事をしているようです。

そこへ、ポートランドに一人暮らししている母ジャネットがやってきます。

ジョーはハック写真館でのバイトを続けており、

「ちょっと昇進して撮影ができるようになった」と。

そして、写真館に父と母をつれていきます。

「家族の写真を撮りたい」

 

 

そしてチラシにも使われていたこのシーンとなり、

このあと真ん中の席にジョーが座ってシャッターを切ったところでTHE END   (以上あらすじ)

 

 

どこにでもいるような家族の崩壊を14歳の少年視点で描いたドラマなんですけど、

まずは、ストーリーからいうと、ありがちなドラマだと、

①プライドの高い父が失業 → ②酒浸り  → ③ 母や息子が働いて家計を助ける

→④ 父、ますます拗ねて粗大ごみ状態 → ④ 母が仕事にのめりこみ、帰りが遅くなる

→⑤  母の男関係を巡ってケンカが絶えない → ⑥ 息子も学業がおろそかになり、家に寄り付かなくなる

 

本作では③までは同じですが、けっこう予想外の展開です。

父は、「家族を養うためにお金を稼ぐ」ことより

「人間として何をやるべきかを考える」ことの方が重要だと思っていて、まあ、父親としては青二才ですよね。

母は「夫を支える」ことから解き放たれた瞬間、すべてが「自分優先」になってしまい、

やっぱり子どもっぽいですよね。

ジャネットは34歳といっていたから、20歳のときにジョーを産んだ計算で、結婚が早い分、

「青春を取り戻したい」という気持ちがあったのかもしれないけれど、

今から60年も前はみんなこんな年齢だったのかも。

 

そして、ジョーは一人息子で、空気の読めるいい子だから、常に仲の悪い親の仲介をさせられて、

いつも修羅場に立ち会わせられています。

せめて兄弟がいれば、文句いいながらも協力しあえるのに、一人だからだれにも相談もできません。

親友もいないし(ガールフレンドがいるけど、女の子には相談なんて無理です)

力になってくれる大人もいないし、たったひとりで受け止めるしかないジョー・・・・

 

写真館の店主は、ほとんどせりふもないんですが、たぶんジョーの理解者のようにはみえました。

最初に行ったときに

「人はよきことを記録するために写真を撮る」

「(私たちの仕事は)その手伝いだ」

と言っていたのが印象的で、ジョーも、人の幸せの瞬間を写真の中に落とし込むことに喜びを感じ、

一生懸命バイトに精をだし、それが、ラストのシーンにつながったんでしょうね。

 

それにしても、自分の母親が父親以外の男(しかもジジイ)といちゃついてるのを、見させられるのって

14歳の少年にとって、これ以上のショックなことがあるでしょうか。

多分母親は安定した収入の仕事につくために、金持ちのオヤジに近づいているだけ・・・・

と思っていたのが、仕事先(と思われる)ところにいっても母の姿はなく、

夜中に起きたら、全裸のオヤジと母を目撃しちゃったり、ああ、もう狂いそうなんですけど、

ジョーは最後まで自分を抑制しとおすのです。

学校やめて、ピアスやタトゥして、不良とつきあって、

タバコやドラッグやったっていいケースですよ、ほんとに!

 

教師や牧師や近所の人やだれか大人に

「このことばに救われました」的なことがあってもよさそうなのに、

一生懸命見てたけど、まともな大人は写真館のおじさんくらいでしたよね。

 

映像でも、実際に山火事と闘うジェリーたちの活躍、とか、全然なくて、

映画的にこれでいいのか?とちょっと思ったりもしましたが、

もしあったら、ほかのシーンの印象が薄くなっちゃうから、これでよかったのでしょう。

 

山火事はすべてを焼き尽くすけれど、それで終わりではなく、

時間はかかるけれど、時が来れば、また芽吹きよみがえるのです。

このブリンソン家も、家族写真を撮ったくらいでは「再生」とは言えないけれど、

久しぶりに3人が揃った写真は「よきことの記録」であり、再生への一歩となることでしょう。

 

 

 

ところで、ジョーを演じたエド・オクセンボールドを見たとき、

「ポール・ダノにそっくり!」と思ったんですが、

本作の監督が、そのポール・ダノでした。

メイキングの画像ですが、サイズ感が違うだけで、ほんとにそっくり!

 

初めての監督作品でこんなのを撮っちゃうなんて、すごい人ですね!

 

冒頭で

「1960年はまさに波乱の年です」とラジオが言ってたんですが、

1960年のモンタナ州、といったら、アメリカ人には共通のイメージがあるのかな?

「ダートマス大卒」がどのくらいのレベルなのか?

「アリゾナ」「ポートランド」といった地名から浮かぶイメージもあるはずだと思うんですが

そういうことが私にはわからないのがちょっと残念でした。


カーマイン・ストリート・ギター

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映画「カーマイン・ストリート・ギター」 令和元年8月10日公開 ★★★★★

(英語 字幕翻訳 大西公子)

 

 

グリニッジ・ヴィレッジにあるギターショップ「カーマイン・ストリート・ギター」では、

携帯電話もパソコンも持たずに黙々とギターを作る職人リック・ケリーさんと彼の母、

そしてパンキッシュな風貌の弟子シンディさんが作業をしていた。

この店には、リックの腕を認めたギタリストが世界中からやって来る。

彼らが求めるのは、ニューヨークに現存する最古のバーといわれている

マクソリーズ・オールド・ エール・ハウスやチェルシー・ホテルといった

街のシンボルとなっている建物から出た廃材を材料にしたギターだった。   (シネマ・トゥデイ)

 

   ↑

先週、新宿シネマカリテのロビー展示はこれだったんですが、

今日来てみたら、ちょっと変わっていました。

 

 

なんと、中央にリックが作った本物のギターが展示されているのです!

今日はトークショーもある回をいち早く予約し、ギターファンの夫も誘ったので

いやがおうにも期待が高まります!

 

内容はいたってシンプル。

グリニッジ・ヴィレッジのカーマインストリートのギター工房

「カーマイン・ストリート・ギター」に1週間密着し、そこにやってくるギタリストと

ここの職人リック・ケリーのおしゃべりをおさめたドキュメンタリー映画です。

 

リックはたくさんのファンを持つ腕利きの職人なんですが、

特筆すべきは、ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを作っていること。

古い建物が取り壊される情報を聞くと、すぐに行ってタダでもらってくるとか。

伝説のホテルだったり、禁酒法時代のもぐりの酒場だったり、

自殺者を出した売春宿だったり、火災にあった教会だったり・・・

200年前に切られてニューヨークの建物を支えて、時代とともに生きてきた木を

すべて手作業でギターに再生することをライフワークにしてきました。

 

 

すでに工房の天井まで使いきれないほどの廃材が積み上げられていますが、

ニューヨーク最古のバーといわれる「マクソリーズ・オールド・ エール・ハウス」が取り壊されると聞くや

この時もすぐにでかけていって、廃材をもらってきて、さっそく制作にとりかかっていました。

 

 

この工房のもう一人の職人は、プラチナブロンドに黒いネイル、パンクファッションの若い女性、シンディ。

彼女は職人というよりアーティストで、ピンルーターを駆使してギターのボディーに

ウッドバーニングの手法で細かい細工をしたり、独自のセンスでペインティングしたり。

ギター作りの技術もリックから教えてもらっているようで、

手本も師匠も学校もなく、すくない文献をたよりに試行錯誤しながら会得したリックの匠の技は、

この25歳の女性が引き継いでくれるんでしょうね。

 

そしてもうひとり、この店の事務を一手に引き受けるのが、

リックの母のドロシー・ケリーです。

リックが69歳なので、たぶん90歳を超えているんでしょうけど、

毎日電話をとり、はたきをかけて掃除をし、ジャーナル付きの電卓でお金の計算をします。

リックはネットもやらず携帯すら持っていないので、

ドロシーの取る電話が客からの連絡手段のすべてなんですね。

 

ただ、シンディが「♯ヤバいギター」とかハッシュタグをつけてネットに発信しているので、

インスタにあがったカッコいい画像は、日本にいながら、私たちもみることができます。

こちら →  https://www.instagram.com/carminestreetguitars/

 

 

 

この日はシンディのお誕生日で彼女の友だちが花束とケーキを持ってきてくれました。

テーブルの上にあるのはギターではなく、ギターの形の手作りケーキです。

すごい完成度!職人の友だちもやっぱり職人なんですね!

 

ところで、リックのところを次々に訪れるギタリストたちなんですが

多分みんな有名な人なんでしょうけど、私がわかったのはジム・ジャームッシュだけ。

(なので、以下、ほかのギタリストの名前は省略しています)

ジャームッシュは、愛用のギターを持ち込むんですが、

修理じゃなくて、弦の張替えだけにやってくるんですね。

弦くらい自分で張れそうなものですが、たぶんリックとおしゃべりしたくて来るんでしょうね。

 

リラックスした雰囲気のなか、いろんな人とのおしゃべりのオムニバスということでは

ジャームッシュの「コーヒー&シガレッツ」を思い出したんですが、

本作は彼の監督作ではありません。

ただ、リックのことを監督に紹介した張本人がジャームッシュなんですって!

 

店を訪れるギタリストたちは、思い思いに気に入ったギターの試し弾きをするんですが、

それが既存の曲なのか即興なのかもわかりませんが、とにかく、全員上手い!

もうそれだけでも変なコンサートよりも、ずっと価値があります。

 

リックは誰にでも親身に受け答えし、演奏の悩みをきいて

「こんなのはどう?」とその人に合いそうなギターを持ってくるんですが、

これが、(オーダーでなくても)その人にぴったりなんですよ。

 

車のドアに指をはさんだギタリストが、治療のためにコルチゾン注射を打ったら

骨のなかに感染して、中指がマヒしてしまい、ずっとリハビリしてたんですが、

もう動かなけりゃ動かないまま弾く覚悟ができたとか。

リックのおすすめのギターを手にしたら、めちゃくちゃ弾きやすくて、

「クソなリハビリより、このギターを買うんだった」と・・・・

 

リンカーンホテルを支えていた古材を使ったギターを弾いて

「ニューヨークの一部を弾いてる感じ」

「ビートニク気分!」といっていたギタリスト。

 

「リリースされる楽曲を光とすると、

影の部分はギターを作ってくれたり、弾く場所を提供したりしてくれる人たち」

「支える人あっての楽曲なんだ」

という別のギタリストのことばも印象的でした。

 

ギターのネックをつくるには

ドローナイフ→ 小さいカンナ → やすり の順におおよその輪郭から最後の削りまでやるんですが、

リックの工房には、とてつもなくたくさんの種類の工具がおいてあります。

その中でも、ドローナイフは祖父がそのまた父から譲りうけた大切なもの。

祖父もやっぱり、あちこちからクズを集めてくるような人で、

他人が片付けると烈火のごとく怒ったそうな。

道具の置場所も自分なりにきまっているから、ひとにいじられるとわからなくなる。

「他人には散らかってるように見えるかもしれないけど、秩序があるんだ!」と。

 

ギターを手にしたのが運のつきで、一生貧乏だけれど、

「古材をギターにかえて命を吹き込む仕事を死ぬまでずっと続けたい」

というリックの一片の迷いもない言葉がとても素敵でした。

 

 

上映後のトークショーは、音楽にもNYにも詳しい、鈴木慶一さんと長門芳郎さん。

リックのキャラクターは、ギターを作ったりリペアしてくれたりする職人さんに共通の「あるある」で、

携帯もってない率もけっこう高いそう。

頑固な職人気質というより、人当たりのいい人が多いんでしょうかね。

店にいくと、一点物のギターがいっぱい飾ってあって、

試し弾きさせてもらうと、欲しくなって、家に帰っても気になって、結局買っちゃう・・・・みたいな。

 

そして鈴木さんが、ロビーに飾ってあったあのギター、

チェルシーホテルの廃材からリックが作った本物のギターを弾いてくれました。

空洞のないソリッドギターで、アンプにもつないでないから、本来は音がしないはず。

それでも、最後列に座っていた私のところまで、しっかり共鳴音(NYの音?)が届きました。

感激でした!

 

いやー、いい経験をさせてもらいました。

ギターに無縁の私でもこんなに楽しかったので、

ギター好き、音楽好きにはたまらない、というか、しびれると思います。

東京でもシネマカリテとイメージフォーラムだけしかやっていないけれど、

これはおすすめですよ。絶対に映画館でみないと!

 

公開中・公開予定の映画の原作本 (63)

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公開中 「ブレス あの波の向こうへ」 ← 「ブレス 呼吸」 ティム・ウィントン 現代企画室

 

 

 

公開中 「天気の子」 ← (同名ノベライズ) 新海 誠  角川文庫

 

 

 

公開中 「僕たちは希望という名の列車に乗った」 ← 「沈黙する教室」 ディートリッヒ・ガルスカ アルファベータブックス

 

 

 

公開中 「ニューヨーク公立図書館」 ← 関連本 「未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告」 菅谷明子 岩波新書

 

 

9月14日公開予定 「今さら言えない小さな秘密」 ← 「とんだタビュラン」 ジャン・ジャック・サンペ 太平社

 

 

シークレット・スーパースター

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映画「シークレット・スーパースター」令和元年8月9日公開 ★★☆☆☆

(英語 ヒンドゥー語  字幕翻訳 藤井美佳 )

 

 

インド最大の音楽賞のステージで歌うことを目指す14歳の少女、インシア(ザイラー・ワシーム)。

しかし彼女の父はそんな夢がかなうわけがないと、彼女が歌うことを禁じる。

それでも諦められないインシアは、顔を隠して歌っている姿を撮った動画を

ひそかにYouTubeにアップロードする。

その歌声は、瞬く間に人々の心をつかむ。

そして彼女は、落ち目のプロデューサーであるシャクティ・クマール(アーミル・カーン)と出会う。

                                                       (シネマ・トゥデイ)

 

事情があって正体を曝せない少女が、歌手になる夢をかなえる話・・・なんですけど

なんかいろいろ単純明快すぎて

アーミル・カーン大好きな私ですが、個人的にはダメでした。

 

・・というのが、見て直後の率直な感想。

とりあえず、あらすじを書きますね。

 

14歳(字幕では15歳)のインシアは歌の大好きな少女ですが、歌手になる夢は父につぶされています。

仕事人間の父は家では暴君で、父が家にいるときはいつも暴力におびえています。

でも父のいない日中は、弟のグッドゥと3人の楽しく暮らしており、

ある日母はインシアにノートパソコンを買ってくれます。

 

 

インシアはブルカで顔を隠した姿で、自作の歌を歌い、

それを動画サイトにアップすると、その歌声と匿名性が世間の注目を集め、

元大物歌手でプロデューサーのシャクティからも連絡がはいります。

 

ところが、ある日、このPCは父が母に与えた宝石を売って買ったものだと父にバレて

インシアはPCを窓から放り出して壊し、歌手への夢をあきらめます。

 

それでもクラスの男子チンタンが連絡係になってくれて、シャクティからのeチケットも受け取り、

学校を抜け出してムンバイまでひとりで出かけていき、レコーディングも済ませます。

 

「SNSで注目されたブルカの少女がシャクティに出会って

スーパースターになる」

世間はこのシンデレラストーリーに大騒ぎし、音楽賞にもノミネートされますが、

すでにインシアにとって「自分が歌手になる」ことよりも、

「今の父との生活から抜け出す」ことのほうが先決。

シャクティを離婚裁判で打ち負かしたサバワラという腕利きの女性弁護士を紹介してもらうと

離婚への必要書類を受け取り、家へと戻ります。

 

ところが、母は「離婚を娘に強要させられるなんて。。。」と激怒。

さらに、単身赴任と思っていたサウジアラビアへの転勤だったのに、

今回は家族全員連れていくと父にいわれ、向こうに行ったら

リヤドの「優秀で裕福な青年ラザーク」と結婚させられるとわかって、インシアは絶望します。

 

そして家族でリヤドへ向かうのですが、

乗り継ぎのムンバイの空港で、母が最後に荷物にしのばせたインシアのギターが超過料金といわれます。

父にいわれてゴミ箱に捨てに行くのですが、

そこで母が父にかみつき、3人は空港の外へ出てしまいます。

ちょうどその時ムンバイではインド最大の音楽賞の授賞式が行われており、

その会場に3人で向かうのです・・・・                                (以上あらすじ)

 

タイトルからは、歌の好きな無名の少女が、アーミル演じるプロデューサーと二人三脚で

夢をかなえて、音楽賞を目指す・・・・みたいに思えますが、

全然そんな話ではなく、家で録画して動画サイトにあげたら、即注目されてしまい、

スタートダッシュよく、最初の方で夢を叶えてしまいます。

 

最初は純粋に歌手になりたいのが夢だったインシアでしたが、

常に前に立ちはだかる父の存在をなんとかしなければ・・・

「両親を離婚させて、自由を取り戻したい」というのが次の目標になっていきます。

 

なので、本作は音楽映画というよりは、女性の人権映画ですね。バリバリのフェミニズム全開の・・・

「ダンガル きっと強くなれる」も一見スポ魂映画と思わせて、

やっぱりインド国内の女性差別を痛烈に皮肉っています。

ここではアーミル演じる父の成長物語みたいになっていて、

本作でも、絶対に考えを変えてほしいのはインシアの父なんですが、

どうも彼は最後までクソキャラを貫いていて、成長したのは・・・あえていえば母かな?

 

ちなみに、インシア役のザイラー・ワシームは、「ダンガル」では長女の少女時代をやってました。(左端)

 

 

この映画、「スカッとジャパン」とか「十倍返し」とか好きな人にはすごく気持ちいいかもしれないけど、

なんか、私には何分おきかにモヤモヤして、居心地悪かったです。

今回は「お笑い」に徹したアーミルのサービス精神で、なんとか150分耐えられた・・って感じ。

 

まず細かいつっこみどころから・・・

 

① 学校の友だちも、SNSの謎の歌手のことは全員知ってる感じなんですけど、

顔はかくしてるけど、家の中も映ってるし、目から眉毛は映っていて声もそのままなのに、

だれ一人気づかない?

 

② 曲はたしか自作だったと思うんですが、歌はそんなに大したことないですよね。

声もブルカ越しだし、音響も悪いし・・・

歌詞がみんなの心に刺さったのかな? 

ネットでも新聞でもテレビでも大騒ぎしたわりに、やっぱり身元が割れません。

家に取材にきたりしたら、父にはバレるけど、父の暴力もバレて、

インシアの望む結果になりそうなもんですけどね。

 

③ラストで、グランプリをとった実在の人気歌手が、その賞をインシアに譲るシーンがあって

どうもここが「号泣ポイント」らしいんですけど、そんなのあり??

 

この程度のつっこみどころを書いてたらきりないので、この辺で。

 

以降は、本作の肝である「女性差別」のことを書きますが、

クラスメートのチンタンとか、弟のグッドゥたちは、いつもインシアに優しく、

それ以外の登場人物でとくに女性差別をしてる若い子は登場しません。

これは、学校教育がちゃんと成果をあげている、ということでしょうか。

 

本作ででてくる「フェミニズム」には、いくつか温度差があって、

それは分けて考えた方がいいと思うんですが・・・

 

①シャクティの別れた妻 ← いちばん軽微な女性軽視

3人と不倫して家庭をないがしろにするシャクティに怒って、離婚訴訟をしています。

負ければ一文無しで放り出される可能性もあるところ、

「11人の男たちに人生のどん底を味わせてやった」

という敏腕弁護士のサバワラのお陰で巨額の慰謝料をむしりとることができました。

 

②インシアの家庭 ← かくれDV

父はエリートのエンジニアで、はた目には幸せな家庭にみえるんでしょうけど、

たまに帰ってくると、これが、とんでもないDV夫です。

ただ、母がいつも目にあんな青タンつくっていたら、周りにもわかりそうなもんなんですけどね。

インシアはなんとか離婚してほしいんですけど、

当の母がその気になってくれないので、難航しています。

 

③インシアの大叔母の話 ← 過去からずっとつづく女性差別

インシアの家には、(あらすじには省略しましたが)両親、インシア、グッドゥのほかに

大叔母の老女が同居しています。

おそらく父の親の姉か妹だと思うんですが、子どもがいないから、父が養ってるらしいので

甥にあたる父には逆らえないんでしょうね。常に父の味方をしています。

 

大叔母はインシアが生まれたときのことを、こっそり教えてくれるんですが、これがショッキング。

「お腹の子どもが女だとわかったとき、みんなで「堕ろせ!」といったのに、

「次の女の子は堕ろすからこの子だけは」といって、どこかでこっそり生んで、

赤ん坊を抱いて戻ってきて、その赤ん坊にインシア(女)と名前をつけた」・・・・と。

「(お前が女だからと差別されるのは)お前が悪いんじゃない。

産んだ母さんが悪い。

何も言わずに育てた母さんの胸のうちを考えなさい」

 

そして、大叔母自身のことについても、もう人生も終わりに近づいている今でも

「なんで女になんか産んだのか、殺してくれなかったのか、

(今でも)親を恨んでいる」

というのです。

 

私はこの言葉がいちばん印象に残っていて、ショッキングだったんですが、

どのサイトをみても、あんまり取り上げられてないですね。

「女の子だとわかったら堕胎する」というのが一昔前の常識なんでしょうか?

もしそうだったら、女性は生まれず、インドが世界一の人口になるなんてことは

ありえないんですけどね。

 

 

多分教育や社会意識が変わったところで、底辺に流れる「女性蔑視」は

未だに消えてないことを言いたかったんでしょうけど、

インドの実情がわからない私には理解不能でした。

インシアの家はムスリムみたいですが、それも関係あるのかな?

 

ストーリーに戻りますが、

インシアは動画配信のお陰ですぐにスターへの道が開けますが、

そのあとの道は簡単ではありません。

 

(第一の関門)  

父が自分が与えた宝石を母が売ってPCを買ったことがバレて、

それを壊す羽目になったとき。

正確にいうと、父が壊したのではなく、壊したのはインシア。

父は最初宝石を売ったことを怒っていたのだから、壊したら逆効果なのにね。

(そのあとテープで直してくれたグッドゥがかわいい♡)

そのピンチを救ってくれたのが、クラスメートのチンタンで、

自分のPCも携帯も持っていて、ムンバイへの道を開いてくれます。

 

(第二の関門)

サウジに引っ越すことになり、ムンバイの空港で、大事なギターまで捨てる羽目になるとき。

このピンチを救ったのは、今まで父に隷属していた母親です。

 

母のことばは、メモに残してあったので、転記しておきます。

まずは、インシアが離婚調停の申込書を母に渡した時の母のことば。

 

「あなたは、自分の親を離婚させたいなんて人に話をしたの?」

「私は父に(無理やり)結婚させられて、

今度は娘に(無理やり)離婚させられるのね」

「ここが私の世界よ、よその世界の夢なんて見ちゃダメ」

「あなたのバカな行いが私の人生まで無駄にするのね」

 

そして、ムンバイ空港でのことばはこちら

「夢は人間に与えられた権利よ」

「リヤドにはもう行きません」

「私を殴れば娘の動画サイトに載せる」

「あなたは、親権も家も仕事も失うのよ」

 

 

まったく、同一人物の口からでたとは思えない振り幅の大きさですね!

たぶんこのセリフに至るまでの母の葛藤が、私の一番知りたいことなんですが、

いきなり豹変しちゃうのはどんなもんなんでしょう?

せっかく150分もあるのに、なんか唐突!

 

インドでは大ヒットしたそうだから、この2つの言葉とも、

多くの人たちに共感もてる言葉なんでしょうか?

 

アーミルは今回は肉体改造とかはたぶんなく、引き立て役に徹していましたが、

キレッキレのダンスはさすが!

ただ、歌の方はけっこうへたくそで、

完璧人間のアーミルの意外な弱点をみつけたようで、

ちょっとニヤニヤしてしまいました。

究極の絶景本棚

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去年の秋、「古本まつりは絶景本棚」という記事を書いたのですが → こちら

一面のお花畑とか、渓谷とか、花火とか、イルミネーションとか、そういうのより、

自分好みの本棚をみているほうが私にとっては絶景で、

年中「絶景本棚」の本を見てるんですが、

せっかくの夏休み、どうせなら本物の絶景本棚のあるところに行きたいと・・・・

 

で、調べて出てきたのが、駒込の「東洋文庫ミュージアム

駒込駅から本郷通りを南に8分ほどいった、六義園の先にあります。

 

 

入り口をはいるとこの吹き抜けスペースがあって、奥の方は行き止まりで、

しばらく迷ったあげく、この左にある階段を上っていくというのが分かりました。

ここ上るのけっこう怖いです。

階段下はスカスカで、下の展示に気をとられて転びそうになりました。

このバリアフリーの時代、エレベーターを使えばよかった、と思ったんですが

エレベーターの利用は「フロントに要相談」とのことでした。

 

でも、二階に着いたとたん、お目当ての「モリソン書庫」が待っててくれました。

壮観!

 

 

 

 

ロンドンタイムズ記者だったGEモリソンが北京駐在中に収集した2万4000冊の東洋に関する書籍を

岩崎財閥の三代目岩崎久彌が今の貨幣価値70億円で一括購入したものだそうです。

その後、関東大震災を生き延び、戦争中も宮城に疎開していて空襲を逃れ、ここに存在しているのです。

 

実際に手に取ることができないのは残念ですが、

中央におかれた小さいソファーに座ってながめていると

何時間でもいられそうです。まさに絶景!

 

この日は「漢字展 4000年の旅」という企画展をやっていたんですが、展示の数はかなり少な目。

館内案内図がどこにもないので、

「もしかして私は全部見てないのかも?」とも思ったのですが、

施設面積(ショップやレストランも含め)700㎡・・・とあったので、これがすべてだったのでしょう。

館内でWi-Fiにつなぐと解説が聞けたり、興味のあることはPCで検索できるようになっていて

「もっと深く知りたい」という人の欲求はちゃんと満たしてくれてるようです。

 

この展示点数で入場料900円はちょっと高くも思えますが、とりあえず、モリソン書庫は満喫できたし、

「美しさと知性」を兼ね備えたちょっと他にはない素敵なミュージアムでした。

 

2階には、高所恐怖症の人には絶対に渡れない「回顧の路」というのがあったので、

お知らせしておきます。

 

 

ここは通路にあたるところなんですが、何か所かガラス張りになっていて、

のぞくと、奈落の底みたいになっているのです。

実際は高さ10cmなのを、合わせ鏡で深いように錯覚させるしかけになっていて

「クレバス・エフェクト」というのだそうです。

頭でわかっていても、足に感じるガラスの触感が、今にもバリっといきそうで、

怖いものは怖いです。

 

素敵だけど、足腰弱い人と高所恐怖症の人は要注意ですね。

 

 

せっかく駒込まできたので、岩崎弥太郎、久彌つながりで、六義園と、旧岩崎邸に行ってきました。

 

旧岩崎邸は今工事中で、景観はイマイチでしたが、見学はOKでした。

ただ、ここはエアコンがないから、猛暑日はちょっときついですね。

 

 

私の見たかったのは洋館1階の「書斎」の本棚だけなんですけどね。

 

 

残念ながら、書斎の本はこの左側のキャビネットだけ。

机は大きくて立派でしたが、本棚がこれだけとは!

しかも、入ってる本も適当に棚を埋めました、って感じ。

 

 

パネルにも家具としてのキャビネット自体の説明しかなかったような・・・・

かつてはちゃんとした蔵書がはいっていたんでしょうけど、

一般的にいうと、

ゴージャスなキャビネットの中に

絶対読んでないような百科事典や全集物を並べるのって、

「ちょっと昔の成金あるある」ですけど、

こういうのこそ、

お金はかかっていても、バカ丸出しでみっともない本棚ですよね。

 

ここの洋館エリアは、迎賓館としての用途だったので、客室や食事する広間ばかりで、

生活空間は(当時は広大だった)和館のほうでした。

洋館のなかで、この書斎だけが、ここの主(あるじ)がリラックスして

プライベートに使う空間だったようです。

 

不忍の池から湯島方面は来る機会がなかったんですが、

この周辺は、ラブホテル、というか、連込み宿の密集地帯なんですね。意外!

 

あと、帰り道にふと見上げたら、なんかとてつもない光景が広がってました。

 

 

ちょっとカメラを向ける気にはならず、↑↓はネットで拾った画像なんですが、

この右側にも同じような建物があって、実際にみると、かなり迫力があります。

 

 

各階にはベランダがなくて、エアコンの室外機は壁に張り付いてるんですが、

エアコンの修理とか交換とかどうするのか、だれもが気になるところです。

 

家に帰って調べたら、九龍城みたいな巣窟ではけっしてなく、

1969年に建てられた「湯島ハイタウン」というビンテージマンションで

リノベーションしてそこそこのお値段で売りにでてる部屋もけっこうありました。

 

また、「室外機マニア」にとって、ここは聖地になってるそうです。

だから、そういう人たちにとっては、まさにこういう写真が「絶景」なんでしょうねえ。

 

逆にこのマンションの窓からは、旧岩崎邸庭園が一望できて、まさに絶景!

ただ、この猛暑の中、エアコンが故障しても、すぐには取り付けてもらえそうにないから、

ちょっと私は遠慮しときます(笑)

それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫

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映画「それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫 」 令和元年6月28日公開 ★★★☆☆

 

 

アイスクリームでできたお城があるアイスの国では、国の主が魔法のスプーンを使ってアイスを作っていた。

ところがバニラ姫はアイスを作ることができないため、国中からアイスが消えてしまう。

お城を飛び出したバニラ姫はアンパンマンやコキンちゃんと出会い、さまざまなことを学ぶ。

そのころアイスの国にばいきんまんが現れる。                          (シネマ・トゥデイ)

 

 

最近映画は一人で観ることが当たり前になってきているんですが、

今回初めて「3歳の孫と観る」という経験をしました。

 

私自身が子どものときは、幼稚園の頃からテアトル東京の難解な超大作に連れていかれる一方で

近所でやってる「東映まんがまつり」的なアニメもみてたんですよね。

(DVDとかなかったから、映画館はすごく近しいものでした)

 

それなのに、娘たちが幼いころには、ほとんど映画館に連れていくことはなく、

従妹たちにさそわれて、セーラームーンに一回行ったかな?という程度。

ちょっと待てばビデオで見られたというのもあるけれど、

「子どもには(量産されるアニメ映画よりも)良質な生の舞台を見せなければ」

という意識高い団体に入っていたので

ちょっと映画を下にみてたかもしれません。

 

今もそういう活動している人はいらっしゃるので、ちょっと言いづらいですが、

今にして思うと、親の自己満足だったかな?って・・・・

 

「それいけ!アンパンマン」も幼い時の娘たちは大好きで、1989年には劇場版ができてたのに

一度も連れて行かなかったなあ~と思いつつ、

通算31回目の「それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫」を

孫とみてきたんですが、初めて知ったことが3つ。

 

① 2本立てか3本立てと思っていたら、1本だけなんですね。

wikiを見たら、2015年までは2本立て、3年前から1本になって

トータルの上映時間もちょっと短め(本作は62分)になりました。

 

② 入り口で入場者プレゼントのマラカスをもらいました。

振ると音の出るものを上映前に渡されて驚いたんですが、

冒頭キャラクターたちが

やなせさん作詞の「手のひらを太陽に」とかを、同じマラカスをふって歌うシーンがあり、

みんなもいっしょにうたってね~!ということになっていました。

これはもう、鳴り物入りの「応援上映」ですね!

 

あさイチの回で3組しかいなかったから、静かにみられたんだけど、

もし大勢の子どもたちが本編に入ってもマラカス振りつづけてたら

ちょっとうるさい気もするんですけど、どうなんだろう?

 

③入場者プレゼントとは別に、ムビチケを買うとその時点でバッグのプレゼントもありました。

 

 

子ども料金900円なのに割があうのかしら?

と思ったんですが、子どもひとりでは来られないから、

付き添いの大人料金(もちろん大人にはプレゼントなし)でペイできるんでしょうね。

 

③ 場内が暗くならなくてびっくり。

たしかに暗くなると泣きだす子がいると思うので、これは必要なことだと思うのですが、

想像以上に明るかったです。

上映終了後も明るさが全く変わらず、なんか映画を見た気がしないんですけど・・・・

レビューを見ていたら、「暗くて怖がった」というものもあったので、

暗さは映画館に一任しているのでしょうけど、

時間帯によって暗さを変えてもいいような気がしました。

 

本作は6月28日公開だったんですが、(うちの近所のシネコン2館に限って言えば)

一番遅い上映回でも2時くらいなので、幼稚園行ってる子は平日行けないんですよ。

ていうことは、最初のひと月近くは、平日は2歳以下の子しか来られないってことですよね。

こういう時間帯は暗くしない方がいいと思うけど、

夏休みに入ってからは、暗い回もあってはいいのでは?と思いました。

 

 

 

ところで、お話の方ですが、これが、もっと大きい子や大人の鑑賞にも耐えるようないいお話でした。

 

アイスの国では代々そこの王様が魔法のスプーンをつかって国中のアイスクリームを作っていたのですが、

両親が亡くなり、バニラ姫は魔法のスプーンを相続したものの、全然使いこなせない。

(姫というよりは、女王的立ち位置ですね)

呪文を唱えても、霧みたいなのが一瞬たちのぼるだけで、すぐに消えてしまいます。

側近のジェラートは「修業が足りない」「早く作れるようにならないと国の存亡にかかわる」

みたいなことをいってプレッシャーをかけるので、

頭にきたバニラ姫は家出してしまいます。

(このスプーン、魔法のほうきのように、空を飛ぶこともできるんですね。それができるだけでもすごい!)

 

そして天衣無縫キャラのコキンちゃんと出会い、ジャム工場で楽しくすごします。

コキンちゃんから

「お姫様なんてやめちゃえ、やめちゃえ!」といわれて、気が楽になるバニラ姫。

ただ、ジャム工場にいると、毎日アンパンマンたちは朝早くからパトロールにでかけ、

欠けた顔でボロボロになるまで仕事をして帰ってくることを知ります。

彼らが「みんなの笑顔をみると心があたたかくなるんだ」と明るく言い放つのを聞いて、

「私は今まで使命とか義務感だけでがんじがらめになっていたけれど、

みんなの幸せのためにアイスをつくろう!」

と目覚める・・・・・って話です。

 

 

バニラ姫はゲスト声優の榮倉奈々。下手ではないけど、素人さ全開でした。(褒めてます)

ホラーマンが(肝付兼太さんが亡くなって)ほかの声優さんに交代したことはすぐわかりましたが、

ジェラート大臣は誰がやってるのかな?と。

まさかみやぞんがやってるとは気づきませんでした。もともと多才な人だけど、驚くほど上手でした。

 

声優交代、といえば、先ごろ増岡弘さんが引退発表をしたので、本作が最後のジャムおじさんとなりました。

「サザエさん」ほどではないですが、もう30年以上やっているアニメなので、

声優交代はしかたないところ。

でも、最近の「ドラえもん」のアニメはイメージ違いすぎて、全然見る気がしないな。

61歳の戸田恵子さんにはまだまだ頑張ってほしいです。

 

孫との初鑑賞。

やっぱりアイスが食べたくなって、いっしょにサーティーワンにいってから帰宅しました。

楽しかった!

こんどは(いつも無駄にしている東映の招待券を使って)「プリキュア」とかもみにいっちゃおうかな?

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